「アサシンのことを労働基準監督署へ申告したというのは、お話ししましたっけ。ところが先日、労働基準監督署の人から連絡があったんです。アサシンが労働法規に違反した、具体的な日付を教えてくれないかって」
「だってアサシンは毎日、労働法規に違反しつづけていたわけでしょう。具体的な日付というのは、いったいどういうことなのでしょうね」 「たとえば休日に出勤しても、法律どおりの賃金が支払われていませんでしたよね。そこで具体的に、休日出勤をした日付を教えてくれというんです。労働基準監督署の人がアサシンへ調査に行った時、どの日の記録を調べればいいのか事前に知っておくためでしょう。あらかじめ日付がわかっていれば、休日出勤に対する賃金の支払いの有無を確かめる上で都合がいいのではないでしょうか。その日の分の出退勤記録と、その月における給料の支払い記録を照らしあわせればいいわけですから」 「でも休日出勤などと違って残業は、ほとんど毎日のことでしたよね。だから残業に関しては、いちいち日付を挙げきれないんじゃないですか」 「労働基準監督署の人にしてみれば、違反があった日を全て知る必要はありません。確かに違反が行なわれていた、という事実を確認できさえすればいいわけです。しかし毎日の出退勤記録を全て、手あたり次第に調べていくのは手間ですからね。だから実際に違反があった日を、たとえ一つでもいから例として知っておきたいのでしょう」 「それに対して北山さんは、どういう返事をしたんですか」 「自分の出勤時刻や退出時刻は、全て手帳につけてありましたからね。その日に自分が何の仕事をしたのか、ということと一緒にです。それを元に一覧表を作って、さっそく労働基準監督署へ送りましたよ。休日出勤や深夜労働に関しては、全ての日付を書きだしておきました。さすがに残業は毎日のことだったので、特定の一週間を例として挙げるだけにしておきましたが」 「その日付を元に労働基準監督署の人が調査をすれば、すぐにわかってしまうわけですね。それらの残業や休日出勤に対して、きちんと賃金が支払われていなかったということが」 |
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