「労働基準監督署にアサシンの違反を確認してもらうことが、全ての出発点になるわけか。すると実際に菱田社長を懲らしめるのは、その次の段階だという話になるんだね。それがすなわち、残業代などの未払い分を支払うように求める裁判だってわけだな」
「残念ながら労働基準監督署による調査そのものには、大した効果を期待できません。アサシンが労働法規に違反しているのをやめさせるための手段としては、やはり裁判を利用する必要があるでしょう。先ほど残業代などの未払い分が、これまで二年間の合計で八千万円くらいになるはずだという話がありましたよね。しかし賃金の未払い分に関しては、それと同額の付加金も支払うように裁判所が企業に命じる場合があるんですよ。これが最大限に認められれば、総額は一億六千万円にも達します。菱田社長にとっては、かなりの痛手に感じられるのではないでしょうか」 「その付加金とやらが加えられない八千万円のままだって、菱田社長は出ししぶるだろうな。それを支払わなければならない羽目になったら、地団太を踏んで悔しがるんじゃないのかい。なにしろ社員に対するボーナスを、一人あたり十数万円しか出さないような人なんだからさ」 「それだけの悔しさを味わったなら、いくら菱田社長だって思い知らされることでしょう。法律どおりの正しい賃金を社員に支払わなければ、どれだけ高くついてしまうのかということをね」 「それによって今後は、法律どおりの正しい賃金を支払うようになるはずだというわけですね。なるほど、そうなってくれれば会社に残っている私たちにとっても朗報だわ」 「過去の二年間にアサシンで働いていた人ならば、賃金の未払い分を支払うよう会社に請求することができますからね。すでにアサシンを辞めている人たちも、ここ二年間のうち自分が在籍していた間の分は請求できます。もちろん私たちとしては、なにも金が欲しくてアサシンを攻めているわけではありません。あくまでも菱田社長たちに反省を促し、法律を守るようになってもらうことこそが私たちの本来の目あてです。しかし今の社会で法律を守るよう相手に求めるためには、裁判を起して金銭の支払いを求めるくらいしか手だてがないわけですよ」 |
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