「OAインフォメーションの制作費として菱田社長は、世間の相場の何倍にものぼる金額を犬塚商会からだましとっていました。にもかかわらず私たち社員に対しては、法律どおりの賃金を支払っていなかったわけです。すなわち菱田社長は犬塚商会と私たち社員の両方から、お金を巻き上げていたのだと言えるでしょう。そしてその金を菱田社長は、ただ単に自分がぜいたくをするためだけに費やしていたわけですよ。そういう意味で犬塚商会と私たちとは、どちらも菱田社長による犠牲者どうしだと言えるでしょうね」
「これまで僕たちアサシンの社員や退職者は、あくまでも社員としての立場から行動してきましたよね。経営者としての菱田社長の責任を追及し、その横暴ぶりを改めさせるために。しかし菱田社長が咎めだてられるべき点は、何も社員に対する態度だけではありません。顧客としての犬塚商会や他のメーカーに対する悪徳な手口に関しても、明らかにしていくべきだと言えるでしょう。そう考えて私は先日、犬塚商会の社長に宛てて手紙を出しておいたんですよ。これまで菱田社長が犬塚商会のことを喰い物にしてきた事実を伝え、今後は気をつけるようにと助言するための手紙を」 「えっ、そいつは初耳だぞ。いつのまにやら山さんは、そんな手まで打っていたのか」 「犬塚商会の社長に宛ててって、いったいどんなことを書いたんですか」 「雑誌の制作費という名目で菱田社長は、犬塚商会から法外な金額を受け取っていましたよね。それが世間の相場の何倍かにあたっていたことを、犬塚商会に対して伝えたんです。あいかわらず犬塚商会の人たちが相場を知らず、自分たちが菱田社長によって喰い物にされてきたという事実に気づいていないとしたら大変ですから。そうだとすると犬塚商会が今後、また再び菱田社長につけこまれないとも限らないわけじゃないですか」 「あの菱田社長のことだもの、その機会が与えられさえすれば悪だくみを試みるのは間違いないだろうな。顧客のために努める気など全くなくて、自分の利益だけしか考えていない人なんだからさ」 「さらには菱田社長が、その金を自分の個人的なぜいたくのために費やしていたことも書いておきました。実態を知らない犬塚商会の人にもわかりやすいよう、なるべく具体的な例を添えた上でね。たとえば取材という名目で雑誌の制作費を使って海外へ旅行しておきながら、その成果が誌面には全く反映されなかった件などです」 |
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