株式会社ハッシュの石田徹社長は1998年の8月、社員に対して「毎晩8時までは会社に残っていろ」と命じました。ハッシュの勤務時間は朝9時半から夕方6時半までで、昼休みは1時間。すなわち夕方6時半まで勤務した時点で、1日の労働時間は8時間になります。しかもハッシュには当時、「三六協定」が存在していませんでした。したがって上記の社長命令は、明らかに労働基準法32条違反です。加えてハッシュでは、時間外労働に対して賃金を全く支払っていませんでした。これは労働基準法37条違反です。 当時ハッシュに勤務していた私(後藤)は、松本さんというお年寄りの介護をしていました。この頃たまたま松本さんは目に雑菌が入り、両目とも見えなくなってしまっていたのです。松本さんは独り暮しで、近くに身寄りの人がおりません。そこで隣に住んでいた私が病院へ迎えにいったり、入浴の世話や買い物をしていました。 病院へ迎えにいく日には、定時に会社を出なければ間に合いません。そこで私は苦労して定時までに仕事を片付け、病院へ駆けつけていたのです。そのような事情は会社に対しても、文章で説明してありました。しかしハッシュの経営陣はいい顔をせず、そのような私を解雇するぞと脅しさえしたのです。 松本さんは手術の結果もむなしく、1999年の3月に亡くなられました。医師の話によると、前年の秋の感染症が死因になったそうです。あの時期に会社が理解を示してくれて私が充分なお世話をできていれば、松本さんは死なずに済んでいたのかも知れません。それを思うたびハッシュが松本さんを死なせたようなものだと、私には悔やまれてならないのです。 |