しばしば社員がソファで寝ていた
株式会社ハッシュの場合


 株式会社ハッシュの勤務時間は朝9時半から夕方6時半までで、実働は8時間。したがって1時間でも残業を行なえば、それは時間外労働です。しかしハッシュは2割5分増しの賃金を支払うどころか、残業代を1銭も支払っていませんでした。そしてそれは、夜10時以降の深夜残業に関しても同様。社員は夕方の6時半から後、全くのタダ働きを強いられていたのです。
 残業を強いられる機会が少なければ、それでも我慢できていたかも知れません。しかしハッシュでは夕方6時半までで帰宅する社員など、滅多に見かけられませんでした。残業は毎日の日常茶飯事で、しかもしばしば会社への泊りこみすら強いられていたのです。
 会社の規模には不相応な大きさの応接セットが、ある日ハッシュに運びこまれました。ソファの長さは2メートル近くあり、腰をかける部分の奥行きも普通のソファを超えています。表面は皮やビニールでなく、なぜか布張りになっていました。小さなオフィスの片隅に置かれた応接セットは、とても場違いに感じられたものです。
 しかし数日後、この応接セットは実にハッシュに適していると社員の誰もが納得するに至りました。ソファの長さが2メートル近いため、その上へ誰でも身を横たえることができます。奥行きも深いので、寝ている間に転がり落ちてしまう気づかいはありません。しかも表面は布張りなので、皮やビニールよりも肌触りが良いのです。
 かくして不相応に思われた応接セットは、社員にとって格好の仮眠ベッドと化しました。朝1番に出社してくると、応接セットで寝ている社員を見かけることが何度もあったものです。それまで床の上や事務用の椅子を並べた上で寝ていたことに比べると、別天地のような心地好さだったと言えるでしょう。あの応接セットを会社に入れたのは、泊りこみが多い社員に対する石田徹社長の、せめてもの気づかいだったのでしょうか。もちろん、そんなことで法律違反の罪ほろぼしができるわけではないのですが。



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