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U.相手が理解できるスケッチを描く  
 

3.ラフを描くテクニック(遠近法)
前回は遠近法について書きました。遠近法は、物体を自然に捕らえる方法であると共に、より絵に奥行きを感じさせ迫力やドラマティックな感覚をもたらす事が出来ます。

この効果を自由に操れると表現の幅が広がります。決してメカニカルな部分だけでは無いと考えています。
   
ある意味で、パース(消点の距離を短く)をきつく掛けることにより、ドラマティックな感覚は強くなります。これは、ワイドレンズで撮影した写真に似ています。50ミリ(35ミリフイルムで)が標準的な見え方だとして、28ミリぐらいのワイドレンズで撮影した写真は、ドラマ性を感じると思います。写真をあまり撮らない人にはピンとこないかもしれませんが、きつめのパースが掛かったような写真です。
   
ちょっと周りに行くほど歪のかかったような写真ですが、極端に歪むと魚眼レンズになります。ポイントになる被写体と他の物との大きさの差が、メチャクチャ出来るような物です。それでいて、ピントはほとんどすべてのものに合っているのです。この点が次の望遠レンズとは違います。
   
長ダマ300ミリぐらいの望遠レンズを使った効果も絵の技法にあります。
300ミリのレンズを使った写真は、人物写真に多いのです。女性(モデル)を撮影する時、周囲の背景が邪魔な時など300ミリぐらいのレンズを使ってぼかす事が可能です。
   
モデルの顔だけにピントが合っていて、周りが(バック)ボケている写真を良く見ると思います。写真のポイントをより強調でき、周囲のボケの美しさが出る作品になるのですが、絵画でもポイント以外をぼかす描き方が良く使われます。

   
そこまで、極端ではないにしても地球には空気があり、その空気の層が厚くなればなるほど、つまり自分から遠くのものはその空気の層に邪魔されぼやけて見えてくるのです。物の形のエッジがぼやけてきたり、空気の層の厚みのためにコントラストが弱まって来ます。
   
これを取り入れたのが、空気遠近法です。
   
遠くの山はかすみ、近くの家はハッキリ見える。
   
宇宙ではどう見えるのか。私は宇宙に行っていないので、感動的には語れませんが、たぶんかなりの距離の星までクリアに見えていると思います。空気の層が無いので空気遠近法は、宇宙では意味が無い技法だし宇宙空間を描こうとしたときは、その辺を考えないといけないのかも知れないですね。
幾何学遠近法(前回説明)のみで表現するとある意味で、宇宙空間の感覚になるのかも知れません。
 
空気遠近法は、ダビンチの「モナリザ」でも見る事が出来ます。中心のモナリザとそのバックの田園風景の描き方の差がこれです。
   
2〜3q離れたもの以外でもこれは使います。人の顔を描く時でも正面から見た場合、鼻のテッペン(たぶん大体の人は)が一番描き手から近く、頬の部分から凄い勢いで遠くなってきます。耳の部分はもうかなりの遠方です。そこからわずかに後頭部への回り込みが見えるのですが、そこはもう遥か彼方の部分です。
このぐらいの感覚で人の顔を考えてみるのもひとつの方法です。
   
そう考えると、顔を描くときに輪郭をクッキリと単調に描く事の怖さが分かってくると思います。つまり、アウトラインがすべて描き手から同じ距離にあるのかどうかを一度考えてみてください。平らな板を正面から見ているとしたらその輪郭(板の端)は等距離と考えられますが、複雑な形の物を見たときにその輪郭はその形(物)のどの部分が作り出しているのかを見る事です。
 
頭の上の方は髪の毛が輪郭を作ります。耳の部分がアウトラインの一部に入ってきて、そのあとアゴや頬のラインが輪郭の一部に成ります。これは横から見たときどのような位置関係になっているのかを考えることが物を見る事のひとつの方法です。
 
そう考える事によって、空気が描けるようになります。
 
その物体を取り巻く空気が描けるのです。
   
物のムーブメントが表現出来たりします。絵全体の空間が表現できて来るわけですね。
サインペン一本でラフを描く時もこの事を考えてください。
形を描くとき、線をどのように描いていくかのヒントがあると思います。

   
今まで書いてきたことは、ある意味、ものを見る見方であり、それを自然に表現する時のひとつのやり方です。だから、個性ある絵を描く時にすべて当てはまるとは限りません。これらを理解した上で独自の表現を確立するアーティストにとっては、あえてリアルな表現を無視する事もあるからです。
ただ、基礎を理解している人があえて逆をやるのと、知らないでやるのとでは、違う結果になると考えています。
   
基本的にこの講座は、デザイナーが第三者に物事を伝えるためのラフの描き方ですから、リアルに描く場合の方法をまずは身に付けてください。
これが出来ると、同じように人物を表現する時でも、その最終表現が写真なのかイラストなのかの違いの描き分けが出来るのです。

 
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