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デザイナーのための用具・材料学
  第2回)ペーパー・セメントについて  
  今でこそDTPなどといって、パソコン上で素材を貼ったり剥がしたり、移動したりとマウス操作でおこなったりしていますが、以前はデザイン・版下の基本は糊を使って紙を貼ることでした。
だからといって糊を使ってのペーストアップが、時代遅れな作業というわけではありません。 ひとつには、プレゼンテーション等のボード作成には、パソコンから出力されたプリントをボードに貼ったりすることが必要になるからです。他社より美しく仕上げなくてはならない作業です。これが美しく出来ないようでは、ちょっと困ります。 また、まだまだパソコンを介さない作業は沢山ありますし、デザインの修学をする上で、素材を切ったり貼ったりの作業はパソコンスキルの問題を考えずにすみ自由度が高いので、大変重要なことだと考えています。
デザインで使う糊は「ペーパーセメント」といわれるものです。これは水分を使う糊とは違い、ソルベントという溶剤を使用しています。そのため紙が伸びたりすることがありません。デザイナーなら「ヤマト糊」で素材を貼りつけるようなことはしないで下さい。「スティックのり」を最近は良く見かけますが、これも貼り合わせると、紙がボコボコに波打ってしまいます。事務的な作業(封書の封をするとか、領収書を貼りつけるなど)には使用するとしても、デザイン作業にはやはり使って欲しくありません。
それと「ペーパーセメント」の良さは、貼るだけでなく剥がせることにあります。先ほど書いた溶剤「ソルベント」を使用することによって、貼ったものを移動させたいときに綺麗に剥がせます。そんな便利な「ペーパーセメント」ですが、選び方使い方に若干の問題を感じています。今回はそれを述べてみたいと思います。
 
  「ペーパー・セメント」のいろいろ  
  現在、どこの画材店または大型文具店でも手に入るものが「MITSUWA」の製品だと思います。これについて説明していきたいと思います。画材店で「ペーパーセメント」の売り場に行くと、3〜4色の缶が並んでいると思います。色で覚えておくと良いでしょう。

1.シングルコート・ペーパーセメント(緑色の缶)
2枚の紙を貼り付けるときにペーパーセメントを、貼りつける紙の片側だけに塗れば良いものがこのタイプです。気軽に素材を貼ったりするのに適しています。また、貼る場所をあまり考えていないときなども便利です。例えばマトリクスのような表を作るとき、大きなボードにいろいろな項目や商品写真などを貼りつけていくわけですが、貼る位置は相対的に変化していきます。このような場合、片方の素材のみにセメントをつけて貼りつけられるシングルコートが便利です。

2.ダブルコート・ペーパーセメント(青色の缶)
こちらは貼りつける紙の両側にセメントを塗って貼り合わせるタイプです。一見シングルの方が簡単で使いやすそうだし、何故両面タイプがあるのか疑問を持たれると思います。しかし、私はこちらを通常の作業には使用していますし、生徒にも勧めています。その理由は、まずシッカリ貼れる点です。これには商品的理由と作業上の理由からと2つの理由があります。

紙の両方にセメントを塗っているため、貼り合わせる紙に主従関係が存在しない訳です。どちらも同等の状態であるわけで、これが貼り合わさっている状態を強力に保持していると考えています。
また、作業上、貼ろうと考えている素材をカッターで切り取る前にセメントを塗っても、片側だけでは粘着性が無いので楽に切りぬきの作業が出来ます。その後貼り合わせるので、すべての面に綺麗にセメントが塗られている状態が作りやすいのです。ちょと分かりずらいかもしれませんが、物を貼るときには、切りぬく前に糊を塗って置くのが基本です。貼るものの端まで確実に糊が塗られている状態を綺麗に作るためには、この方法を守るとよいと思います。その原則を守ったときに作業性が良いのが両面タイプなのです。片面タイプはセメントを塗ってからの切り取り作業が面倒です。だから生徒の多くは切り取ってからセメントを塗るのです。そのため出来あがりが美しくありませんし、ちゃんと端まで接着されていない作品が多いのです。
学校で斡旋しているペーパーセメントが「シングルコート」なのが問題です。もちろん使い方次第で綺麗な作業は出来るのですが、最初のうちは両面で基本をしっかり身につけるべきだと考えています。
作品とボードを貼りつけるときも断然両面をお勧めします。密着度が違うと思います。プレゼンで提出した作品ボードが、クライアントの手に渡ったあとボロボロ剥がれていたりしたらと考えると、適当な糊付け作業は出来ませんよね。
 
  専用ディスペンサーの画像 専用ディスペンサー(ソルベント)の画像 筆を取り付けた画像  
  1.専用ディスペンサー 2.専用ディスペンサー(ソルベント) 3.手作業で取り付けた筆  
  3.ソルベント(赤色の缶)
1.2のペーパーセメントを好みの硬さにするために混ぜる溶剤です。また、貼ったものを綺麗に剥がすときに使用します。が、これをちゃんと使っている生徒もまた見たことがありません。
買ってきたばかりのペーパーセメントは硬すぎます。紙に塗るのに伸びが悪くて作業性が良くありません。私は「ペーパーセメント」と「ソルベント」を3:1ぐらいの割合で調合します。それからソルベントは別売りの「専用ディスペンサー」に入れて、貼り合わせたものを剥がすときなど使いやすいようにしてください。

4.ラバークリーナー
貼りつけた時に「ペーパーセメント」がはみ出したり、作品の周りに付いた「ペーパーセメント」を綺麗に取り去ることが出来ます。一箱買えば通常の使い方で、ほぼ一生使えると思います。使っているうちに汚れてくるので、気になる人は早めの交換をしてください。汚れたものでも特に問題はありません。

その他、黄色の缶の「ペーパーセメント」もあるのですが、版下作業を専門にやる人以外あまり必要では無いので省略します。それより大切なことは、刷毛の問題です。
「ペーペーセメント」自体に蓋と一体になった刷毛が最初からついているのですが、これが使えない。ワイヤーブラシのような硬いものです。何故こんなものが付いているのか理解できない。 私の場合、まず「ソルベント」のように、「専用ディスペンサー(ペーパーセメント用)」を用意します。現在「MITSUWA」製のものが1番手に入れ易いようですが、私は、アメリカ製のもう少しカッコ良いもので、小さいサイズの方を使用しています。価格がちょっと高い(2,000〜2,500円ぐらいだったと思います)のが気になりますが、あると便利です。先にも述べたように「ソルベント」で調合するときなど、これが無いと難しいし、刷毛の問題も多少解消します。さらに私は、このディスペンサーに付いている刷毛を捨てて、画材店で売っている平筆(2cm幅ぐらい)を付けています。これをやると格段に使いやすくなります。一度やったらやめられません。ぜひ試してください。

「ペーパー・セメント」についての章はここまでです。次回は「定規・スケール・テンプレート」についてです。
 
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