気持ちの良い日曜は
不思議とどこかへ出かけようという気になってくる。
「いー天気だな……」
「そうだなー」
一面ガラス張りのカフェから見下ろせばアスファルトの灰に車の色、ビルの色が混ざってその隙間にやけに綺麗な空の青。
俺と夏姫は天気がいいからとか適当に理由をつけて街へ出てきていた。
そんな理由をつけたくなるくらい天気のいい日曜。
現在は地下鉄にくっついて建っているデパートのカフェで昼食中だ。
ここのカフェは紅茶がマズイ上に高いときたもんだから入るのに物凄く渋ったんだが
疲れたとかはらへったとかもう動きたくないだのと夏姫がゴネたのだ。
一応メシは悪くないなとでかいガラスボウルの大量のチキンサラダをつつく。ドレッシングが脂っこい。
向いに座る夏姫は幸せそうに(幸せそうと言ってもコイツを知らない人間にとってはいつものぼーっとしたカオだが)ランチを食べていた。
「旨いかソレ」
「うまい」
「………失敗したかな」
「ひとくち」
あーっと口をあける夏姫をしばらく眺めてチキンとサニーサラダとパンをまとめてフォークでぶっさして口に入れてやる。
量が多かったようで物凄く顔をしかめてもごもごやってるのを俺は思いっきり笑い飛ばした。
何かいいたげにこちらを睨んでいるが知った事じゃない。
「てめぇ…」
「さっきの仕返しだアホウ」
綺麗なだけに迫力も一層増す夏姫の睨みをザマァミヤガレと意地悪く流してやった。
仕返し、と言うのはコイツが服を買うと言うので俺は一人シューズでも見てこようかとした時お前も来いと
首根っこ掴まれて無理矢理買い物に付き合わされた事だ。
俺が見ても死んだって着ようと思わない服に囲まれて1時間。
店員が笑顔で「お二人で着れば楽しいじゃないですかー」とかひらひらの真っ白いスカートを持って言った時の
夏姫の生温い笑みを俺は忘れていなかった。
「うまいか?」
「………チョービミョー」
「だろ」
素材は悪くないんだがドレッシングがマヨネーズベースなのがダメなんだろうなと紅茶を啜る。
季節の紅茶、とか言う名前も長くて覚えられなかったアイスミルクティーは上にどっぷり生クリームと柑橘の砂糖漬けの細切りが
ちょこっとのっかっていて食事にちっともあわない。というか甘い。そんでもって生クリームに量を取られてミルクティーもいつもの
半分ちょっとしか入っていない。やっぱりここの紅茶は頼むべきじゃなかった。
「やっぱビミョウだよなこの店」
「内装はいいんだけどねぇ」
「まったくだ」
やがてそんな容赦のない酷評を知ることもない店員が食器を下げて夏姫にデザートを運んできた。
季節のデザート。なんとかのショートケーキ。
横に倒れたスポンジケーキに生クリームがどっっぷりかかっていてちらっとカスタードも見える。
薄く張られた黄緑のゼラチンと小さいオレンジのアクセントが春らしい。
いかにも甘そうで、大量の甘味を食えない俺が食う気にはならなかったが。
夏姫はそれをちょこちょこつついて小さいひとカケラを口に入れる。幸せそうだ。
「幸せか」
「幸せだ」
こくりと頷いて2口目。
食後には何も頼まなかった俺は甘い紅茶をずるずる啜りながらそれを見ていた。
「欲しい?」
「そんなには」
「そうかそうかそんなに欲しいか」
にこにこと珍しく夏姫は優しく笑ってちょこっとケーキをフォークで掬う。どっぷりカスタードと生クリームをオマケして。
「あーん」
「………………………」
「あーん」
にこにこにこにことフォークを口元に突き付けられてしまった。
とりあえずフォークを取ろうとするとばしっと叩かれた。もう一回手を伸ばすとばしっと叩かれた。
ちッフォーク取って突き返してやろうと思ったのに。
「テメェ…」
「イヒヒ★」
口を開けるまでコイツは引き下がらない。既に経験済み。
ヤケクソで口を開くと躊躇してる間にさらに増えたらしいクリームがどばっと。
「………………スイマセーンミズクダサーイ」
暖かい光の差し込む店内に乾いた棒読みが響いた。
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一体全体何が書きたかったのか…。取りあえず2人は仲良し、と。
●●●モドレ●●●