「Date」
遅い。そろそろ先方との打ち合わせに出かけなければならないのに。
海城の奴はまだこんのか?まだ出社してない?
まったく。何をやってるんだ、あの娘は。今時の娘なのに携帯の一つも持ってないで。
おい、誰かあいつの家の電話番号知らないか?ああ、これか。わかった。
ぴっ。ぴっ。ぴっ。ぴっ。
トルゥゥゥゥゥゥ。トルゥゥゥゥゥゥ。
がっちゃ。
「・・・・はい、もしもし。風宮ですけど・・・・。
え?あ、ああっ!どうも、ご無沙汰してます。風宮、あ、いえ。風月と言った方がいいですか?
ええ。今9時半ですね。時計そうなってますし。
あれ?海城がまだ出社してない?今日出社予定で?
え、ええ。隣で寝てます。すぐに起こしますから。
涼ちゃん。涼ちゃん。りょうちゃーん!ほら、起きて!会社から電話だってば!
んー?ちゃん付けで呼ばないでってば。今日は出勤日じゃないでしょー?昨日遅かったんだからもっと寝かせてよー。
いや、榊原課長がなんかどっかと打ち合わせあるからすぐに出て来いって。
課長が?あれ?今日何日だっけ?
6月最終週の日曜日の朝だよ。
え?ええーっと。ええっ!?あ、あ、あーっ!!!ちょ、ちょっと、あすか君!何で起こしてくれなかったのっ!!!
さんざん起こしたじゃないか。それに、何も聞いてないし。
きゃーっ!完璧遅刻じゃないの!ああっ。急いで支度しなきゃ!あすか君。あたしがシャワー浴びてる間に珈琲お願い!
ドタドタドタドタッ!!!
ジャーッ。カチカチカチカチ。カチャン。
ザザザーッ!
あすかくーん。ゴメン、下着とタオル取ってくれない?
下着ー?えーっと。これでいいかな?
ちょっとー!どうして会社に行くのに勝負パンツなのよっ!もっと普通のあるでしょ!普通のっ!
普通のねぇ。ああ、これか。あれ?ねえ。ヘソクリって書いてる茶封筒出てきたけど?
あ。そんなとこにあったんだ。隠したは良いけど見つからなくて困ってたのよ。あたしが良く見そうな所においといて。
それじゃあ、とりあえず冷蔵庫の中に。って、あ。お湯吹き零れてるし!
ドタドタドタドタッ!!!
カチャンッ!
シュシュシューッ!
涼ちゃーん。マグカップが流しの底の方に沈んでるんだけどどうする?
湯飲みでいいよ。湯飲みで作って。
涼ちゃん。湯飲みも流しの中。たまには洗い物しないと溜まる一方じゃないか。
じゃあ、お茶碗で!
はいはいはい。
こぽこぽこぽ。
うん。こっちの支度はできたよ。
はい、珈琲。・・・・・・なんか、あんまり美味しそうじゃないけど。
いいの、いいの。お腹の中に入れば一緒、一緒。さんきゅー。
ごくごくごく。
ごっそうさん。
はやっ!
それじゃあ、あたし行って来るから。訪問販売と勧誘電話きたら断っといてね。
わかってるって。
それと変なしゅーきょー来ても、もう論破しちゃ駄目だからね!目を付けられるのあたしなんだから!
わかってるってば。
あとちゃんと原稿仕上てよ。期待してるからね。
はいはい。頑張りますよ。
それじゃあ、行ってきまーす。
あ、涼ちゃん忘れ物。
何?って、こ、こら。ちょっと待っ・・・・・・・・・・・・・・・・・ん。んっ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
あ、あのねー、あすか君。あたしが急いでるってわかってるでしょ!?もぅ!
知ってるよ。それくらい。
君はまったくこれだからー!ま、いいけどね。じゃあ、もう行くから!
うん。気をつけて。課長によろしくね。
ドタドタドタドタッ!!!
バタンッ!!!
ああ、もしもし。榊原さん?
え、ええ。海城涼。今家から出しましたので。
すみません、すみません。ご迷惑おかけします。以後気をつけますので、なにとぞ。
はい?はい。それは大丈夫です。任せて下さい。
いつもいつも大変だって?そりゃあ、まぁ。大変と言えば大変ですが。
・・・・・・それでも、その。
まぁ、好きですから。彼女の事。
え?あはは。ま、それはおいおい、ですね。
ああ。後ほどそちらに伺いますので。それはもちろん、原稿を持って。
チャララチャ〜チャ〜ラ〜♪チャララ〜ラ〜ラ〜♪
あ。携帯が。ちょっと失礼します。
はい、もしもし。風宮ですけど・・・・。
あれ?担当君?え?今日の11時が締め切りの原稿できてるかって?
あはは。それは、まぁ。ほら、あれだよ、君。
全ては神様の御導き。なんて、ね。
わーっ!わかってる、わかってるから携帯でそんなに大声で怒鳴らなくても。
いや、しかし残念。今ちょっと家を出てるんだがね。私の居場所がわからない以上、原稿を受け取りに来る事もでき・・・。
え?いや、ちょっと待って?今なんて言った?
さっきそこで唇おさえてにやけた顔して走っていった海城さんとすれ違った。だーっ!?
トタトタトタトタ。
ガチャッ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
バタンッ!!!
ガンガンガンガンガンガンガンッ!!!
風宮センセー!原稿書いてくださいよ!書いてくれないとこのままこのドア叩き続けますよッ!
ああああああっ!五月蝿いってご近所から苦情受けるのは誰だと思ってるんだ、君はっ!?
おや?先生じゃないでしょ?ただ、先生の一番一番大事な人が苦情受けて、彼女からの矛先が先生に向かうだけで。
君も段々性格が悪くなるねぇ。
嫁さんにも言われましたよ。どうしてくれるんですかッ!
あはは。実は資料は全部家に置いてきてしまったんだ。まいったなぁ。あれらが無いと書くこともままならないのに。
はいはい。資料、新聞受けから中に入れておきますから。
ドサドサドサドサ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
原稿書いて先生が出てくるまでココから動きませんからねッ!
あー。以前それでマンションの住民から警察に通報されて職務質問受けたの忘れたのかな?
何。もう皆慣れてくれるでしょう。それが証拠に、誰も様子を見に来ませんし。さ、先生。もう2時間ないんですよ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ああ、もしもし。榊原さん?
あの、すみません。そちらに向かうのはちょっと遅くなりそうでして。ええ。
いえ、大丈夫です。野暮用ですから。すぐ終わらせますよ。
いつもいつも大変だって?そりゃあ、まぁ。大変と言えば大変ですが。
・・・・・・はい。大変です。
っと。すみません。野暮用でもそろそろすませないと、ドアが壊れそうなので。
ええ、それじゃあ、また。はい、はい。はい。失礼します。では後ほど。」
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あすかとあすかの彼女海城涼ちゃんの朝の風景をヤシロンから頂き。
彼の御陰で大体涼ちゃんの設定が固まりました、こんなカンジー。