――真っ黒な宇宙空間。
ブースターユニット「運び屋」に乗ったモビルスーツが3機と、補助役と見られる
補給機の、計4機という最小構成な小隊が、闇にまぎれて進んでいた。
「……なんで、私ともあろうものが、こんなつまらん任務に回されねばならんのだ」
右手の機体のパイロットがつぶやいた。まだ若い女性だが、その翠色にきらめく瞳
には、物騒なまでの自信が満ち溢れている。
「――独り言は、一人で言ってくれないか、レギナ少尉」
他の2機と違い、額にツノを付けた、隊長機らしき中央の機体のパイロットが、わ
ざわざ通信機のスイッチを入れてグチを言う彼女の行為に苦笑いしながら、答えた。
こちらも、隊長とはいえ、まだ若い男だ。
「しかしね、ウルサス隊長。あんな小さな、辺境のコロニーをイジメる任務なんて、
なんの手柄になるっていうんです?」
「イジメるとは何だ、イジメとは」
「イジメでしょう、こんなの。あんな辺境のコロニーなんて、ロクな守備隊もいない
でしょうし。おまけに、『守備隊を殲滅せよ』まではわかりますけど、『市街地を破
壊せよ』って、そりゃ戦闘任務じゃなくて、テロじゃないですか」
「上には、なにか考えがあるのだろう。でなければ、最新鋭機種であるギラ・ドーガ
を3機も与え、それこそナナイ・ミゲルのニュータイプ研究所出身であるお前を、わ
ざわざ寄越しはせんよ」
「ですがねえ。釈然としませんよ。……おい、アクス少尉、おまえはなにか、言いた
いことはないのか?」
レギナは、黙っている左手の機体のパイロットに、話を振った。
「……自分は、ただ任務をこなすだけであります」
若いレギナより、もっと若く見える青年パイロットが、にこりともせずに答えた。
「そう言うと思ったよ。かっちん玉のおまえに、聞くだけムダだった。あーあ」
「くすくす……」
レギナの荒れっぷりに、後方の補給機からも笑いが漏れてきた。これも、若い女性
の声だ。
「笑いごとじゃないぞイーレ。考えてもみろ、この命令内容はつまり、民間人の虐殺
をしろってことだろ? そんな任務を、やらされる身にもなってくれ」
「う――ごめんなさい……」
「――そこまでだ、レギナ少尉。それ以上言うと上層部批判になるぞ。それに、向こ
うも馬鹿ではあるまい。MS(モビルスーツ)部隊の接近を知れば、市民をシェルター
に避難させるくらいはするはずだ。破壊活動までで、虐殺にはなるまい」
「そう願いたいもんですがね」
「大丈夫だろう。――それより、もしかしたら、辺境であるということを隠れ蓑に、
新型機のテストなどが行われていても不思議はない。それを引っ張り出し、確認する
ための破壊活動――と考えると、辻褄も合うしな。決して油断するなよ」
聞くなり、レギナの瞳が喜悦に輝いた。
「ふふふ――そうだと……いいんですが。いや、そうであって欲しいな――そうでな
いと、イヤだ……」
レギナの、ある種不気味な笑い声を伴奏に、小隊は闇を進んだ。
やがて、その行く手に、淡く巨大な光を発する建造物が見えてきた。
小隊の目標である、コロニー≪タカマガハラ≫である――
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