伏流水

伏流水


地表に降った雨水、あるいは地表の融雪水は、地表を低い方へ流れるもの(表流水)と地下に浸透するものに分かれる(その他に蒸発するものや植物体に吸収された後、発散するもの、すなわち蒸発散水がある)。浸透した水は地下水となり、やがて地表の凹地や谷壁に湧きだして河川水となる。地表を流れる表流水と河川水に対して、地下を流れる水が伏流水である。伏流水は地中の保水性の高い層(粘土層や、固い基盤の上方の砂礫層や、割れ目の多い溶岩層など)に集中して流れているが、その速さは一般に地表の河川水より遅いと考えられる。時には、また所によっては、地下にほとんど停滞し保存された状態となる。富士山のような火山灰や割れ目のある溶岩の厚い層からなっている大火山は、とくにその広くゆるやかな裾野の地下に深部まで続く保水性の地層をひそませているので、富士山体は巨大な地下水貯蔵庫だといわれている。1983(昭和58)年の夏の三つの台風の際、富士五湖の一つ、河口湖の水位が異常に上がり、かつ長期間その水がひかないという災害が発生した。直接の原因は伏流水の増加であるが、元来水位の増減が激しい湖畔の低地を埋め立て利用した場所であること、御坂山地が富士山麓の天然地下水ダムからの排水を一層遅らせるような働きをしたことにある。

『現代用語の基礎知識』 (CD-ROM版)_ 1991年
           発行所=株式会社 自由国民社