リゾート法

リゾート法


正式には総合保養地域整備法。1988(昭和63)年末の国会で、消費税法のドサクサに紛れて国会を通過したときには社会党も賛成した。しかし全貌が明らかになると日本列島最後の切り売り法であることがわかった。地域指定されると、これまで開発が制限されていた国立公園地域や水源保安林、農業振興地域などもリゾート開発のために積極的に指定解除、あるいは用途変更が認められ、リゾート開発ができるようになる。日本にこれまでかろうじて残された未開発の地域が片端から不動産業者によって買い占められ、囲いこまれて商品化されることになった。

この中でも目玉商品になっているのは、事前に会員権という形で資金が集められるゴルフ場で、既設の1700カ所に加え、造成中・計画中も1000カ所を越え、第2次ゴルフブームとよばれる。値上がりが予想される会員権を地元の有力者や議員などにばらまき、地元住民の知らないうちに土地の所有権や借地権が開発業者の手に渡っていて、工事が始まってから住民が気がつくことがしばしばある。ゴルフ場が計画されるところは、多少の起伏のある山林が多いので、森林の伐採など地表の改変がいちじるしく、水の流出は一般に早くなる。伐採された樹枝などは土砂とともに埋め込まれ、そこから汚水か浸出する。標準的な18ホールのゴルフコースは200〜300億円の事業となるが、これに産業廃棄物の捨場も組み合わせると、さらに数百億円にものぼる収入が確保できる。こうして造成の段階で大規模な自然破壊が起こるうえに、人工的につくられた疑似自然であるゴルフコースを維持するために大量の農薬と化学肥料が散布される。

ゴルフ場建設への地域住民の反対運動の多くは、まずこの農薬や化学肥料による水質汚染の恐れから始まった。とくに水資源の上流などにゴルフ場を含むリゾート計画が立地することが多い。この世論に押されて、千葉県知事は農薬を使わないゴルフ場のみを新規認可すると発言したが、このためのコスト上昇はリゾート事業にとっては、さほど痛いものではなく、農薬汚染反対だけでは抑止硬貨は疑門である。

リゾート法は、金余り日本の欲ボケ現象の象徴であろう。全国地方ボスをミニ・リクルート事件に組織し、勤労者の余暇利用を名目として、国土をとことん食いつぶすことになるという警告は、早くから少数ではあったが自然保護運動で指摘されていた。手後れにならないうちに、この法を廃止するしかない。

『現代用語の基礎知識』 (CD-ROM版)_ 1991年
           発行所=株式会社 自由国民社