■EVER17
KIDの美少女ADVです。いわゆる「ギャルゲー」に分類される作品です。
海洋テーマパーク「Lemu」で発生した突然の浸水事故により海中に閉じ込められた
男女7人がお互いに協力し合いながら脱出を試みる、というSF+サスペンスなノリの
ストーリーです。
スタイルはオーソドックスな選択式のアドベンチャーゲーム。
主人公として選択できるキャラクターは2人で、それぞれの視点で物語は展開します。
それぞれの主人公に対し、ヒロインが2人割り当てられており、選択肢によってそれぞれの
ヒロインのストーリーへ分岐していきます。
ゲームの概要はそんなところ。大雑把ですが。
で、一通りプレイしての感想なのですが……一言「やられました」。
この手のゲームの構造としては変な造りだなぁと感じていたのですが、最後までプレイして
なるほどと納得。逆にいうと、普通の恋愛アドベンチャーとしてプレイする(お目当ての
キャラクターと仲良くなることだけを主目的とする)と、恐らく評価はかなり低くなるものと
思われます。
プレイされるなら(テキスト量はかなりのものですが)最後までプレイすることを強く
オススメします。
中盤の展開のダルさは緊迫感をそぐのでそのあたりがつらいとは思いますが……。
(以下、かなーりネタバレとなります。読まれる方はご注意ください)
さて、何にやられたかというとそれは「叙述トリック」です。
ミステリをある程度かじってないとわからない言葉だと思いますが、要するに作者が
読み手(この場合プレイヤー)に対して仕掛けるトリックのことです。
プレイヤーがゲーム開始時に選択する2つの視点はそれぞれ同一の事件を別の角度から
眺めていたものではなく、実は2つの事件はそれぞれ同じ場所で発生した別々の事件で
あり、それが最終シナリオにて明らかにされます。
そこから、膨大な数の伏線(なんと、それまでに見た数々のエンディングすらも伏線
である)が回収され、最後のグランドエンディングへと収束していくわけです。
……いやもう実に爽快感たっぷり。
まさにADVのゲームシステムを逆手に取ったシナリオです。
しかし、おそらくコンシューマのミステリゲームでも叙述トリックを扱ったものなんて
なかったと思います。それだけに実に不意を突かれました。
まあ、人に言わせりゃSF的な考証がどうとかシナリオの細かい矛盾がどうとか、
ってのがあるようなんですが、自分的にはその辺はもう全然お構いなし。画面の前の
プレイヤーすらも取り込んでしまうという大技の前ではそのような瑣末な事柄はもう
どうだっていいッスよ、ええ。
つーか、悔しいね、実に。
(ここまで)
というわけで、このゲーム「ギャルゲーだから」という理由で敬遠するにはもったいないです。
ミステリ好きな人にオススメ。
……まぁ、自分は笠原嬢目当てに買ってしまったので偉そうなことはいえないんですが。
|
|