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SLEEPING MURDER第四話
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SLEEPING MURDER
第四話 契約の力
                                          

「ところであんたらはだれなんだ?」
クロウは席につき今きずいたかのように(とゆーか本当に今きずいたんだろうけど)エルとトリーシャにたずねた。
「え?えーっと・・」
「クロウさん、エルさんとトリーシャさんはクロウさんを見つけてご主人様といっしょにクロウさんを町へ運んでくれた人っすよ。」
当然クロウの性格を知らず、いまごろそんな事をきかれて返事につまったトリーシャを多少はクロウを理解しているテディが落ち着いてフォローした。
「なるほど、二人ともありがとうな。なんか礼でもできればいいんだが・・困ったな。」
本当に困ったように考え込むクロウを見て二人も目の前にいる一見怪しげないでたちの男が悪い人間ではないと感じ、初めて自分から口を開いた。
「そんな事気にしなくていいよ、僕らが好きでやったんだからね。」
「そうそう、それに物で礼をしよう、なんてのは逆に相手に失礼だぞ。」
その言葉からクロウもまた二人の人柄を悟り、笑みを浮かべて二人を見つめた。
「なるほど、それじゃあそれはお言葉に甘えるとして、なんか聞きたいこととかあるか?」
「ああ、ありすぎて困るぐらいだ。とりあえず・・名前はクロウでいいんだよな?」
「名前ってゆーかあだ名なんだけどな。」
などとあっさり言う。正直なのか何も考えちゃいないのか多分後者なんだろうが当然それを聞いて怪訝な顔をするエル。
「あだ名ってそれじゃあ本名はなんなんだ?」
「いやー実は記憶喪失なもんで本名どころかいつ何処で生まれたのかもわからねーんだよ。」
などとけろりといってのける。そこまであっさり言われてしまうと驚くこともできず、そのまま会話を続けるエル。
「それじゃあ、とりあえずはクロウでいいんだな?」
「おう、クロウ、クロすけ、黒子、クロぴょん、クロちゃんに・・後は何があったか、まあとにかく好きなようによんでくれ。」
「ああ、わかったよクロウ。」
多分気にしたら負けなのだろう。エルは本能的にそれを感じとり他の質問に移った。
「それで、お前がジンの契約者なのか。」
「うん、そう。」
結構重要であろうこの質問にもクロウはあっさりこたえた。あまりにあっさりとした返答にエルは一瞬ジンのほうの反応をみるがにやにや笑ってるだけで何も言わない。
「いいのか?そんなにあっさり言って?」
思わず聞いた本人が咎めてしまう。
「だってききたかったんだろ?」
と、これまた軽くかえされる。
「それはそうだけど、初対面の奴にそんな事しゃべっていいのか?」
エルの言葉にクロウは少し首をひねった。
「と、ゆーかそもそもこのごくつぶしのことなんか俺にとって重要性はかけらもないからなー。」
「おいおい、いくらなんでもごくつぶしはないだろ。」
「やかましい、文句があるならエリアルとかルイスなみに役にたってみろ。」
「えーと、ちょっとそこらへんで止めてくれないかな?」
また不毛な掛け合いを始めそうになったのでトリーシャは手早くとめた。ちらりと横のエルを見るとなにやら頭を抱えている。トリーシャとしても似たような気分ではあったが、彼女の人一倍強い好奇心がそれに勝った。
「とりあえず、精霊との契約っていったいなんなの?ボク一応魔法を学校で習ってるんだけどそんな事きいたことないよ?」
そう、トリーシャの習う、又は調べられる範囲では精霊とは、精霊魔法と言う魔法で彼らの力をかりて自分の身体能力をあげたり自然の力で人を癒したりできるていどの存在でしかない、それが目の前にめっちゃ普通に存在しているんだからトリーシャとしては不思議でしかたないだろう
「ふーむ、ちぃーとばかし長くなるけど、かまわないか?」
「うん、エルもまだ大丈夫だよね?」
「ああ、私も詳しいことは知らないから興味あるからな。」
「さて、とそれじゃあ何から話すか、そうだな、まず聖域って知ってるか?」
聞きなれない単語に二人は首を横に振る。それを見てクロウはまずその説明から始める事に決めた。
「まず、精霊ってのは基本的にこの世界の住人じゃない、それはわかるな?」
「うん、精霊界からこっちがわに干渉してるんだよね。」
「そう、つまりその精霊界と人間界をつなぐ場所にして上位精霊が唯一存在できる場所が聖域なわけだ。わかるか?」
ここで一旦区切って疑問がないかどうか確認する、もっとも多分疑問だらけだろーからひとつずつ区切って確認しなけりゃならんだろーけどな。
「えっと、上位精霊っていったいなんなの?」
案の上トリーシャが聞いてくる、クロウはこれからいちいち説明すんのはかったりーなーと思いつつもわかりやすい言い方を考えて答える。
「上位精霊ってゆーのは風の精霊で言うと一般的にシルフィードって呼ばれてる精霊以上の精霊のこと。」
「つまり俺みたいなのがそれにあたるわけだな。」
トリーシャがわかったようなわからないようなといった表情をしているのでクロウはさらに続けた。
「つまり、精霊界的にゆーと、シルフィードってゆーのが下級精霊で、地上世界で風を起こしたり、精霊魔法で力を使ったりしてるのがこいつら、そして主に精霊界で活動し、1ランク上の風を使うのが上級精霊で、その力を地上人が使うためにおこなうのが契約ってわけだ。」
そこまで一気に言い終えクロウはコップの水を飲み一息つき二人の反応をうかがった。二人とも内容が内容なだけにまだ混乱しているようだ。今日のところはこれ以上しゃべっても混乱がますだけだろう。クロウはそう考え、席を立った。
「今日の所はここまで、俺はしばらくジョートショップに住み込みで働くから聞きたいことがあるならいつでも答えるから。」
「えっ、それじゃあアリサさんと一緒に暮らすの?それはちょっとまずい事になるかも。」
クロウはトリーシャの言い方に首をひねる。
「そりゃあ確かに不審者を家に住み込ませるってのはまずいと思うが、今の言い方だとまるでもう問題が起こることが確定してるみたいだけど?」
「確定してるんだよ、それが。」
今度はエルが確信を持った口調でいってきた。何の事やらさっぱりわからんのに今度はテディがあっ、と声をあげた。
「アルベルトさんっすね・・」
「アルベルト?」
どうやら人間らしいが、いったい何がまずいのだろうか?この反応を見る限りではそーとー厄介な奴みたいだけど。とその時、店の扉が開き、重そうな装備をした背の高いつんつん頭の男が入ってきた。なんとなくそっちを見ていると、視線があい、その男は何故か憤怒の形相でこちらに歩いてきた。ふとみんなを見ると一様にあちゃーといった表情をしている。もしかしてこいつがアルベルト?とか思ってる間に男はエル達には目もくれず俺の目の前まで来て俺をジロジロと見てきた。
「黒髪、黒目、黒いコートに黒いズボンに黒い靴、間違いない、お前がクロウだな!」
「うん、そーだけど。」
何故わかったのかはともかくあっていたのでクロウは素直にうなずいた、が、アルベルトはその
軽い態度にさらに怒り、クロウの胸倉をつかんだ、いや正確にはつかもうとした。
「な、なんだと!?」
アルベルトは戸惑いの声をあげ、エル達も驚きの表情を浮かべた。なぜなら胸倉をつかもうとのばされたアルベルトの手が後数センチのところで止まっているからだ。傍目からみてもアルベルトの腕には相当の力がこめられている、にもかかわらずまるで目の前に壁でもあるかのようにアルベルトの手は動かない。
「なんだ、フィールド展開してたのかよ。」
「ああ、精霊の話をするときふと思い出してな。」
「このおっ!舐めるなあ!」
二人の態度にさらに怒ったアルベルトがもう片方の手でクロウに殴りかかる、が、クロウは表情を変えず迫り来る拳を眺めながらただ一言つぶやいた。
「アマラ、やれ。」
その瞬間、アルベルトは糸のきれた人形のように崩れ落ちた。クロウはすばやく立ち上がり、そのまま地面に倒れる前に体を支えた。
「アルベルトさん!?」
声をあげるトリーシャを落ち着かせるために、とりあえずクロウは説明した。
「心配ない、眠らしただけだ。」
「それが、上級精霊の力か?」
エルもそれを聞いて落ち着いて質問をしてきた。
「ああ、アマラの眠りの風、あのままだとこの店に迷惑がかかりそうだったからな。そうなったら俺はいいとしてもこいつはまずいことになるだろ?みたところどうやら自警団っぽいし。」
「そっか、アルベルトさんのことを考えてくれたんだ、ありがとうクロウさん。」
「いや、別にそれはいーんだけど、なんでこいつは俺にキレてるんだ?」
結局怒るだけ怒ってなんで怒ってるのか言わなかったのでクロウはずっと悩んでいた。
しかしトリーシャはものすごく困った顔をしたまま口を開いてくれない。
「むう、いいにくいことなのか?」
「うん、まあおいおいわかると思うけど、やっぱりボクの口からはいいにくいな。」
「そっか、それじゃあしかたないな。」
とりあえずおいおいわかるんならいいか、と思い席を立つクロウ。
「それじゃあ俺は帰るよ、そいつが起きるとまずいだろーし。いくぞテディ」
「あ、それじゃあまたねクロウさん。」
「ああ、トリーシャ、エル今後ともよろしくな。」
「ああ、それじゃあな。」
三人のやりとりを見てジンは心のなかでガッツポーズした。
(第一段階クリア、これからおもしろくなるぞー)
ちなみにクロウにおいていかれたことにきずいたのは、これから5分後のことだったと言う。
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