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未来への旅人8 過去の時間
月虹


〇月×日
今日は、ボスの念願の日がやって来たでありまス。
ここ、エンフィールドにやって来て始めて理論研究の成果が実験に移されたでありまス。
ボスはジョートショップの仕事の合間に魔道の研究をノートなどに書く事などをしていたのでありまス。旅の途中に得た新たな知識や今までの理論などを今回の実験で試すつもりだったでありまス。
ボスは今までも街などに寄った時などに研究所などの施設を借りて自分の理論を研究、実験しさまざまな道具を作り上げたりしたのでありまス。
今日は、ジョートショップの仕事も休みであったので一日中実験に没頭していたのでありまス。
ボス曰く、趣味とも言えるこれをやっている時、心が一番高揚する、というらしいでありまス。かくゆう自分もボスの手伝いができるのはとても嬉しい事でありまスが・・・・。
あ!そういえば実験中、テディ殿とアレフ殿が覗きに来たでありまスが、すぐ帰ってしまったでありまスが如何したんでありまスかねえ?





〇月×日
きょう、オヤビンのてつだいをしたんやっス。
ウチはこのひをどんなにまちのぞんだか、ことばにいいあらわせられないほどやっス。
オヤビンのてつだいができることもさることながら、やっぱりいちばんのたのしみは・・・オヤビンのごほうびがもらえることやっスね!
そういえばとちゅうアレフはんとテディはんがアリサはんのさしいれをもってきたやっスけどすぐにかえってしまったんやっスけど。
どうしたんやっスかねえ?






〇月×日
今日、ご主人様に頼まれてファバルさんの所に昼食を持っていったっス。
出掛ける前にアレフさんがジョートショップに来たので一緒に付いて来てもらったっス。
ボクとアレフさんは目的地に着くと研究員の人に隔離された小さな部屋に案内されたっス。
部屋の前につくとその人はすぐにどこかに行ってしまい、ボク達は部屋の中にいるファバルさんに声を掛けて中に入ったっスよ。
ファバルさんに促されて部屋に入ったボク達は、そこで・・・そこで・・・・。






〇月×日
フフ、この俺が女性の事以外で日記を書くなんてな・・・。
多分これっきりになるだろう。
ほんのちょっとした好奇心からあんな物を見るなんてな。
いや、そもそもファバルに手伝いを頼もうとした事に罰が当たったのか?・・・まさかな。
ファバルの奴も気づいていたみたいだから、直す気は無いんだろうな。






















ジョートショップ

「それじゃあ行くっス。ご主人様。」
 そう言ってテディが包みを持つアリサを急かす。
 そのアリサはジョートショップの戸締りをしていた。
「あらあら、テディったら。でも戸締りはちゃんとしなくちゃだめよ。」
「ういっス。」
 アリサの言葉に元気よくテディは答える。

コンコン
ジョートショップをいざ出ようとした所へノック音が響いた。
「どちらさまでしょうか?」
「俺です、アレフです。」
 アリサの質問にアレフがドア越しに返事を返した。
 そして返事をするや否やドアを開けてジョートショップに入った。
「どうしたのアレフ君?」
「どうしたっスか?」
 アリサとテディがアレフに尋ねてくる。
「いえ、ちょっとファバルの奴に用があったんですけど・・・」
 そう言って部屋の中を見回す。
「ごめんなさいね、ファバル君出掛けているのよ。」
 そう言ってアリサはすまなそうな顔をする。
 その場に沈黙がおとずれる。
「い、いえ、別にいいですよ。それよりアリサさん、どこかに出掛けるんですか?」
 アレフが話を逸らそうとアリサの包みを見てアリサに尋ねた。
「ええ、ファバル君の所に差し入れをね。」
「そうっス!ご主人様の手作りのピザっス!」
 アリサの答えにテディが元気良く付け足してきた。
 アリサの持つ包みに注意を向けると確かにそこからはピザの良い匂いがしてきていた。
 アレフはそれを見て、手を頭に当てどうしようか悩んでいた。悩んでいた事は勿論これらどうしようかという事である。
 少しの間悩んでいたが、何か思い付いたらしくアリサに声を掛けてきた。
「アリサさん良かったら俺がファバルの所に持って行きましょうか?」
 アレフはアリサにそう持ち掛けてきた。
 そう言われたアリサは悩んでいた、そんな事を頼んでしまうのはアレフに悪いと、だがその事を聞いたアレフは自分もファバルに用があると言ってアリサを説得した。
数分後、結局アリサはアレフに持って行ってもらう事にした。
「悪いわねアレフ君、それじゃあお願いね。テディもよろしくね。」
「ういっス。行ってくるっスご主人様。」
「じゃあ、行って来ます。」
 バタン、という音と共にドアが閉まりアレフとテディが出掛けて行った。






「そういえば、アレフさん。ファバルさんに何の用だったスんか?」
目的地が近づいてきた時にテディがアレフに尋ねてきた。
 尋ねられたアレフはというと、
「お!あの女の子なかなか・・・5年後が楽しみだ。おお!あっちの女性も・・・」
 辺りをきょろきょろと見回して女性鑑賞に夢中になっていた。
「アレフさん!話聞いてたっスか!」
「・・・ん?テディなんか言ったか?」
 テディが大声で尋ねるとアレフは数瞬遅れてテディの言葉に反応した。
 しかしアレフの言葉にテディはため息をつきながら答えた。
「もういいっス。それより、もうすぐ着くっスよ。」
 テディの言葉を聞いて、ハッと気づいたらしく歩調を速めた。


ショート科学研究所に着くとアレフ達は所員にファバルの居場所を聞きその場所へと向かった。
 そこは所員達が使っていた場所とは少し離れた場所にあり、隔離されたその部屋は薄汚れた場所の一角で外から見るとまるで物置のようだとアレフ達は感じた。
しかし、それでも帰る訳には行かないので、部屋の扉をノックする。
コンコン
だが、返事はない。仕方ないので今度は強くノックする。

ドンドン
「・・・誰だ?」
 数秒後にそう言いながら扉を開けてくるファバル。
 そしてアレフ達をみると、
「何だ、おまえ達か。で、何の用だ?」
 と、言い放つ。
 そして、レンズの丸いサングラスを直しながら尋ねる。
「何だ、は無いだろう。それが差し入れを持ってきた奴に言う言葉か?」
「そうっスよ!ご主人様の手作りのピザっスよ。」
 ファバルの言葉に少しムッ、ときたのか少々怒り気味な口調で返事をする。
「悪い悪い、集中している所へノックされたもんだから、少し虫の居所が悪かったんだ。それはそれとして、差し入れは助かる。晩飯まで篭っているつもりだったからな。」
 その言葉にアレフ達は唖然とした、そしてその事になにか言おうとした矢先に、
「ああ、今はこんな事を喋っている暇はないんだ。差し入れはありがたく貰っておくぞ。」
 と、アレフの手に有った包みを受け取るとクルッと踵を返した。
「・・・そうだ、興味があるなら少し覗いて行くか?」
 背中越しにファバルがアレフ達にそう尋ねる。そしてファバルは返事も聞かず部屋の中に戻って行ってしまった。
 アレフ達はお互いに顔を見合わせ、そしてファバルの後を追い、バタンという音と共に扉を閉めた。


 部屋の中は今までまったく使っていなかったのか、埃だらけだった。辺りを見回すと壊れたビーカーや試験管、破損した棚、その他訳の分からない機械などが辺りに放置されていた。アレフ達は先程感じた物置というのはあながち間違っていないと思っていた。
「悪いな、今日はちょっと掃除する気は無いから埃だらけだが我慢してくれ。」
 そうファバルが言うと、机に向かって何かの作業を開始した。
 アレフ達はそれを見て何をしているのか尋ねようとした所、机の上に動くものを発見した。近づいてみるとそれは・・・コクバとアメリだった。
「どうかしたんスか?」
 と、テディが心配そうに尋ねた。
 よく見るとコクバとアメリはうずくまって震えていた。
「おい!大丈夫か?おい、ファバルこいつら大丈・・・」
 アレフがファバルに問い掛けるとファバルは何かの作業に没頭していてアレフの言葉などにはなんの反応も示さなかった。仕方がないのでアレフはコクバとアメリをクラウド医院へ連れて行くことにした。
しかし、いざ連れて行こうとした瞬間2人の震えは収まり、数秒後にはムクッと起き上がってきた。
「お、おい。」
「大丈夫っスか?」
アレフとテディが2人に声を掛けた。だが、
「「・・・・・・・・・」」
 2人は無言でその場に立ち尽くしていた。
 そこへ更に声を掛けようとした刹那。
「・・・シ・・・」
 コクバが小さな声で言葉を発した。
「・・・シ・・・」
「「し?」」
 大きくなったコクバの声を聞き取れたアレフ達はオウム返しに言葉を発する。
 アレフ達はもっとよく聞き取ろうと耳を近づけた。
その数瞬後!









「シェ――――――――――――――――!!」
「「ぐわっ!?」」
 コクバが奇声を大声で発し、その声に驚いたアレフ達は体を仰け反らせる。
 近くでその声を聞いたためにアレフ達は耳を押さえていた。そしてその数秒後、頭をブンブンと振り、コクバに文句を言おうと目を向けてみると。
「ジジジ、ジ――――――ザスクライシ――――ス!!」
「お、おい?」
「スゥゥゥ――――パァァ――――マァァ――――――ケットォオオオオ――――!!」
 アレフの問い掛けにも答えず、コクバは右人差し指を天井に向け、そして訳の分からない言葉を絶叫する。
「・・・ク・・・ククク・・・」
 アレフ達の後ろから今度はくぐもった声が聞こえてきた。
 振り返ってみるとそこには、何時の間に移動したのかアメリが居た。
「ど、どうしたんスか?アメリさん。」
 テディが聞くとアメリは、口元にあった手を放しそして、
「ク・・・クククク・・・ケェケケケッケ――――!!」
 コクバと同じように大声で奇声を放った。
 アレフ達はコクバとアメリの姿を見て呆然としてしまっていた。
 コクバとアメリはそんなアレフ達を尻目になおも奇声を上げながら動き回っていた。
 しばらく呆然としていたアレフ達だったが、ハッと気を取り戻しファバルにこの説明を求めようとファバルに近づいた。
「おいファバル!あいつら、どう・・・し・・・た・・・」
「どうしたんスか?アレフさん。」
 尻すぼみに声が小さくなっていくアレフにテディが声を掛ける、そしてファバルの方に目を向けると。
「ババンババンバンバン、ハビバノンノン♪」
 コクバとアメリに気を取られすぎて気が付かなかったが注意してファバルの方に意識を傾けるとファバルも自分の世界に入っているようだ。コクバとアメリに比べれば歌を歌う事ぐらいおとなしく感じるが普段とはまったく違う姿にアレフとテディは呆然としてしまっていた。
「・・・さてと、テディ帰ろうぜ。」
「・・・そうっスね。」
 アレフとテディはクルリとドアの方に振り返りドアに近づいていった。
「早く帰るっス!ご主人様が料理を作って待ってるっス!」
「お!いいな、俺もお相伴させてもらおうかな。」
完全に現実逃避し、ジョートショップへと帰って行くアレフとテディ。

ギィィィ、バタン

古びたドアの悲鳴と共にドアが開き、そして重々しい音と共にドアが閉まりアレフとテディは帰って行った。



残されたファバル達はアレフ達が出ていった後も変わらず騒いでいたが、そんな状況であってもファバル達の手は動き、黙々と作業を続けていた。









〇月×日
今日は待ちに待った日が来た。ジョートショップの仕事を耐え、日に日に迫って来る今日を。
案内された場所は所員たちが日頃使っている大きな研究室ではなく、隔離された小さな部屋だった。
見られたくない物があるか、厄介払いされたか・・・まあこの疲びれた部屋を見る限り後者とみる方が妥当だろう。
まあ、まったく使用不可と言う訳ではないからな修理・掃除しながらでもある程度は使用可能だろう。
途中アレフとテディが差し入れを持ってきたがすぐに帰ってしまった。
常人ならアレを見たら何も言わなくなるだろうなぁ・・・俺もあいつらの事は言えないがな。
今日は、たまたまあいつ等がああなっただけで。俺が、あんな風にならないと言う保障は何処にも無いからなあ。
まあ、見られたら見られたで別に構わないがな。
・・・そう言えばあいつ等の日記を見たが、コクバはともかくアメリの奴は・・・ちゃんと字を教えないといかんな。


















ファバルは自分自身も変わっていた事にまったく気が付いていなかった。
ファバルは普段通りにアレフ達と会話をしていると思っていた。
中央改札 交響曲 感想 説明