中央改札 交響曲 感想 説明

テオリア星系戦記 第6話 作戦
埴輪


 幾度かの戦闘を繰り広げた後、グレイロックは惑星セアルの衛星ステーションに入航する事になった。惑星セアルはテオリア星系の第四惑星で、やや主星テオリアからの距離が遠いため、色々と手は加えてある。
「ふむ、色々ガタがきてるな・・・。」
「戦艦って、そんなやわなシロモノなの?」
「こいつ自体が実験艦だからな。折角だから、ここで改造をかましていく。」
「ま、頑張って。」
 門外漢ゆえ、そうとしか言いようのないシンディ。
「それと、お前さんはちっと休暇にはいるのは待ってくれ。」
「へ?」
「サイフレックスの再調整をする。」
「なんでまた・・・。」
 怪訝な顔をするシンディ。
「単純なことだ。調整しなおさないと、機体がもたねえ。」
「・・・軟弱ね。」
「生半可に性能が高いのも問題だな・・・。」
 ヴァルスやシュヴァイクなら無茶が出来ない分、逆にここまでダメージを受けない。
「とりあえず、フレームの補強はすんでるはずだから、後はマジックブースターの調整だけだ。」
「出力を増やすとか、そう言う真似はしてないはずなんだけどなあ・・・。」
「倍速はきつすぎだろ・・・。」
「今、3倍速に挑戦してるんだけど・・・。」
「却下だ。」
 結局、その日一日は再調整に付き合わされることになったのだ。


 休暇も終り、再び宇宙に出たシンディ達を待っていたのは、新たな作戦であった。
「砦攻め?」
「ああ。今回は他の部隊と合同だ。頑張ってくれよ、マクガルド中尉。」
「はい?」
 今、聞き捨てならない単語を聞いた気がする。
「今、聞きなれない単語を聞いた気がするんですけど・・・。」
「何の事だね、中尉?」
「私、何時の間に昇格したんですか?」
「休暇に入る前だ。ついでに言えば、この作戦の戦果によっては大尉に昇格する。」
 唖然とする。
「ちなみに、評価の直接の対象はL4コロニーでの戦闘機24機だ。それも周囲に被害を全く出さずに、というところがな。」
「単に、被害の拡大を食い止めただけですが・・・。」
「だが、あの時それが出来る手段はなかった。やり方は少々非常識だが、評価せん訳にいかんだろうよ。」
 なんか釈然としないシンディ。
「それともう一つ。今回の作戦、中隊の指揮はお前さんが取ることになってる。」
「無茶言いますね。」
「3つの小隊の小隊長が、全員階級が同じでな。リンバード中尉が提案してきたんだ。」
 それを聞いて、意外な顔をするシェラ。
「あのマンボウ中尉が?」
「ああ。ここは若い人にやらせてはどうかってな。自分も世間一般じゃ若造だって言うのに。」
「ま、俺は悪くないと思いますよ。この中尉殿は、非常に優秀だ。」
 問題は、他の部隊が聞いてくれるかどうかだ。
「大丈夫大丈夫。隊長は他の部隊でも有名らしいから。」
「でも、まだ実地について半年よ?」
「半年で何機落とした?」
 すでに、大隊2つが出来る程度である。そもそも、初陣でブライン4機も記録的な物である。
「つまり、お前さんはすでにエースなんだ。胸はっていいぞ。」
「エース、ねえ。」
 いまいち釈然としないシンディであった。


 作戦会議。基本的に小人数での砦攻めである。
「とりあえず言えることは、最高性能を持っているのはAS小隊だって事だ。」
 サイザー小隊の隊長、カズト・ミシマ中尉がプランを提示する。
「いくら頑張っても、こっちの戦力、シュバイクが6機って言うのはきつい。」
「ヴァルスとグランビュートが1機ずつじゃあ、援護が精一杯ですう・・・。」
 相変わらずマンボウを飛ばしながら(いや、実際に飛んでいるわけではないが)、セリアが言う。これでも、実際にはかなりの腕前だから世の中分からない。ちなみに、グランビュートは白兵戦にまとを絞った機体で、性能自体はヴァルスとどっこいである。
「とりあえず、こちらにも色々と手はあるんですが、要塞となるとパワー不足が響いてきますね。」
 正直、対艦兵器ぐらいでは要塞を攻めるのは厳しい。
「正直、予想される敵戦力は3個大隊以上。戦力差は9倍って所だ。エースクラスが集まってても、かなり厳しい。」
「その上、要塞砲なんかも注意が必要、となると・・・。」
 少し考えこむ。
「切りこみは、やっぱり私達ですね。」
 その言葉にうなずくカズトとセリア。
「あとは戦艦のロックバスターを、いかに上手く使うか、ですね。」
 ロックバスターキャノン。現在開発されている兵器としては最強の破壊力を持つ。だが、消費するエネルギーも桁外れで、パワードシェルではまずまともに使えない。基本的には戦艦の主砲である。
「そうなるな。」
「そうですねえ・・・。」
 実際、基本的に砦攻めと言うのはそういう物だ。いかに要塞の主砲を封じて戦艦の主砲を叩きこむか、である。
「そういう事になるから、ザコには出来るだけかまうな。」
「了解しました。」
「後、切りこみ隊の人に難しいことを言うようですけど〜。」
 遠慮がちにセリアが言う。
「出来るだけ、ちゃんと指示を下さいね〜。」
 かなり無茶を言う。だが、やるしかないだろう。
「分かりました。指揮系統の徹底をお願いします。」
「その辺は大丈夫だ。うちの隊は腕のいいパイロットには敬意を払う連中ばかりだ。」
「こっちも大丈夫ですう。命の恩人ですから、ちゃんと言うことを聞いてくれると思いますよ〜。」
 なんか、頭の痛い話である。何時のまにやら、自分がやけに大物になってしまったような気分だ。
「後はやるだけやるしかないか・・・。」


「カー君と一緒の作戦ですぅ〜。」
 二人だけになったとたん、セリアはカズトの腕にしがみつく。
「だ〜!! カーくん言うな!!! 引っ付くな!!!!」
 どうやら、この二人はデキてるらしい。しかも意外なことに、ちゃんとセリアは公私の区別をつけているようだ。
「だって〜、カー君はカー君ですう・・・。」
 たれ目がちなでかい目でウルウルやる。本気でこいつは20歳を超えているのだろうか?
「だ・か・ら! やめいと言ってるんだ!!」
「だって〜・・・。ここのところ会えなくて寂しかったんだから〜。」
 軍人どうしのカップルだと、会えないほうが普通である。最も、こいつらの関係は、セリアが一方的にカズトに惚れた押しているような感じであるが。
「ああ・・・、俺なんでこいつと一緒なんだろう・・・。」
 カズトが頭を抱える。どんなに逃げ回っても、どう言うわけか必ず何処かで一緒になる。それも、ほとぼりが冷めかけた頃にだ。そして何より悪いのが、カズト自身がセリアを放って置けないことである。危なっかしい上に怖くて、とてもそんな事出来ない。
「分かった分かった!! 分かったから離れてくれ!!」
 プライベートな時間をこいつに食われるのは嫌だが、無理やり離れたら、それこそカズトを探し回って、あちらこちらに被害を出すことであろう。
「うう〜。」
 名残惜しそうに離れるセリアを見て、カズトは小さくため息をつくのであった。


「軍曹・・・、その装備は何?」
 スプライトを見たとたん、シンディがいったのはその一言であった。
「見ての通りのマイクロミサイルだよ?」
「それはわかるんだけど、なんでそんなに積んでるの?」
「簡単だよ。中尉見てて思いついたことが会ってね、丁度いい機会だから試してみるの。」
 実際のところ、ミサイルの形はしていても推進剤は積んでおらず、どちらかと言えば単なる爆弾に近かったりする。マイクロと言えども、その図体に爆薬を大量に積めば大型ミサイルとタメぐらいの破壊力は得られる。
「・・・無茶な事、考えてるでしょ?」
「中尉ほどじゃないよ。」
「それはどうも。」
 見ると、ドラグーンも武装はインパクトキャノンとエネジーシューターだけにしている。
「インパクトキャノンだけじゃ、弾切れにならない?」
 インパクトキャノンは、結局は火薬式の拳銃と同じである。大穴をあけることは出来るが広範囲に大きな被害は与えられない。
「エクスプローダーにしてあるからな。雑魚に手間取らなければ大丈夫だろう。」
 それぞれ、必要と思われる武器は積んであるようだ。
「サイフレックスは何もしないのか?」
「下手にいじるとバランスが崩れるから。」
 再調整したばかりであるから、そこらへんは止めておく事にする。
「まあ、その辺は好きにすればいいが。」
「とにかく、出撃ね。」


 予想どおり、大群が現われる。よくもまあ、これほどの数を用意できたもんだと言う感じである。
「サイザー小隊とサンフィッシュ小隊は散開、敵を迎え撃て!」
 事前に打ち合わせていた通り、サイザー小隊が右翼を、サンフィッシュ小隊が左翼を形成し、敵をつつみこむようにして少数ずつ撃破していく。
「おかしい・・・。」
 一気に突っ込んでいき、要塞の砲台をいくつか破壊しながら考える。全体の動きを把握し、それぞれに指示を出す。現在はこちらが優勢である。
「なんか、妙に手応えがない・・・。」
 漠然とした不安。と、いきなり自分達を取り囲むように増援が出撃してくる。
「数で押してくる? 違う、そんなレベルじゃない・・・。」
 出てきた増援が、すべてミサイルで破壊される。シェラが放ったミサイルだ。しかし、妙な軌道を取っていたような気がする。
「なるほど、考えていたことって、そういう事か・・・。」
 どうやら、念動魔法で操作したらしい。
「ってことは、そう連発は出来ないって事か・・・。」
 一気に接近し、要塞表面のハッチを叩き切りながら考える。と、大爆発。爆発が起こったのは要塞砲のあったあたりである。
「これで、要塞砲は沈黙したみたいね・・・。」
 だが、いやな予感は消えない・・・。ふと、それが強くなる。
「敵の様子は!?」
 何処からか、新手が出てきたらしい。クリムゾンだ。妙に長い物を持っている。味方の位置関係は・・・。
「まずい!!」
 クリムゾンの射線上に固まってしまっている。
「各機、現在の位置から急いで離れて!!」
 叫ぶと同時に自分も動く。1機、敵に手間取って動けないシュバイクを体当たりではじく。直後、閃光が走る。
「く! ロックバスターか!!」
 どうやら、相手はパワードシェル用のロックバスターを開発していたらしい。光に右足をもっていかれる。
「やってくれる・・・。」
 だが、対応が早かったため、サイフレックスの右足以外の被害はない。
「味方を巻きこんで、平気な顔とはね・・・。」
 呟いて、魔法を発動させる。
「いくよ!!」
 爆発的なスピードで突入する。泡を食ったクリムゾンがロックバスターを向けてくるが・・・。
「遅い!!」
 あっさり真っ二つに切り捨てられる。そのまま、相手のロックバスターをもぎ取り、無理やり接続して発射する。
「な!!」
 それを見て泡食ったのは、むしろ味方である。
「中尉、無茶をするな!!」
「これぐらい、無茶のうちにはいんない!!」
 ロックバスターが要塞を貫く。わらわらと寄ってくる敵を、更にもう1射して追っ払う。そこでサイフレックスのエネルギーが切れ、行動不能になる。
「こんな効率の悪いもの・・・。」
 よく作ったもんだ、というのがシンディの正直な意見である。
「全機、要塞を攻撃!!」
 シンディが指示を出す。相手は徹底交戦のかまえのようだが、すでに勝敗は決している。まもなく、要塞が沈黙する。
「終った・・・みたいね・・・。」
 降伏勧告をする前に、要塞が自爆する。つくづく自決の好きな連中だ。
「ごめんなさい・・・、誰か回収して。」
 この一言が、今回の作戦の最後の一言であった。
中央改札 交響曲 感想 説明