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テオリア星系戦記 第12話 突撃 その2
埴輪


「本当に10分で合流できるのか?」
 グレイが、とりあえず気になっていたことを突っ込む。
「アルの切り札がどんなもんかはしらんが、こんだけスピードに差がつくと、それだけで・・・。」
「問題無いわ。内部で、こんなスピードで動き回るわけじゃないし。」
 基地の破片を回避し、言葉を続ける。破片といえども、この速度でかすめれば致命的である。
「第一、こっちだって、中で障害を排除しなきゃいけないから、ね。」
「そーいや、どうやってこの速度を殺すの?」
 ロケットブースターで5分加速した、ということはすなわち、ロケットブースターで5分、減速する必要があると言うことだ。
「シェラ・・・、そいつは愚問だぜ・・・。」
 予想済み、といわんばかりにロックバスターを前方に構える。インパクトキャノンも一緒である。
「あ、なるほど・・・。」
 シェラもそれに習う。
「全く、俺までこういう無茶に付き合うはめになるとはなあ・・・。」
「アタシ、どこで道を間違えたんだろう・・・?」
「馬鹿言ってないの! 歯を食いしばらないと、意識を持ってかれるわよ!!」
 そう言うと、目の前に迫った基地の壁に向けて、ロックバスタを持続モードで発射する。さすがに、3本もロックバスターが束になれば、洒落にならない破壊力になる。そんなものが至近距離で炸裂すれば・・・。
「くう!!」
「があ!!」
 当然凄まじい衝撃が襲う。爆発によるダメージはジェネレーター用の冷却剤と指向性の爆薬で殺し、更にその爆風でクッションをつくるが、それでもスピードを殺すための衝撃は消えない。
「・・・さすがにここまでやれば当然か・・・。」
 工場が半壊し、基地への通路がもろ見えになる。
「何時も思うんだけど・・・。」
「何時も思うんだが・・・。」
 グレイとシェラが同時に言う。
「なによ?」
「そんなほっそい体のどこに、そんな頑丈さ持ってるの?」
「隊長、なんでこう言うことして平然としてんだ?」
 やっと衝撃から立ち直ったばかりの二人が、呆れて聞く。
「あら、あれぐらいで意識を持っていかれるほどやわだと思ってたの?」
「・・・聞いた俺が愚かだったよ。ああ、この上なく天井知らずの愚かもんだったよ。」
「そこまで言うの・・・?」
 さすがに憮然とするシンディ。最も、その間も通路を広げるための攻撃はしっかり行っているが。
「シンディ・・・。ここまできて、まだそんな大物ぶっ放すの?」
 さっきの余韻が消える暇すら持たずロックバスターをぶっ放しているシンディを見て、呆れながらシェラが言う。言葉遣いがタメ口に戻っている。
「作戦内容、基地の破壊。」
 物騒な話である。


「迎撃部隊、第1陣、第2陣共に全滅です!」
「敵パワードシェル3機、基地に侵入しました!! 残りの1機もこちらに向けて、再度移動を始めました!!」
「第1工場、第2工場全壊、残りも半壊です! とても生産を続けられません!!」
 革命軍の司令部は、パニックに陥っていた。
「ば、バカな・・・。敵はたかが4機のパワードシェルだぞ! それに6個大体が全滅だと!」
「しかも、第2陣は新型だけで構成されていたのだぞ!?」
 目の前の光景を信じられず、思わず唸る。
「第一、あのスピードをどうやって殺した!? 慣性制御装置など、まだどこも開発していないはずではないか!?」
「そ、それが・・・。」
 一部始終をモニタしていた管制官が、恐る恐るという風情で声を出す。
「何をした、というのだ?」
「ロックバスターを3本まとめて発射して、その反動で減速したようです・・・。」
「・・・・・・。」
 一瞬、司令部に沈黙が走る。
「・・・やつら、人間か?」
「一体、どこの部隊だ!?」
「進入して来たのは、AS−05、07、09の3機です。」
「シンシア・マクガルドか・・・。」
 たかが小娘と思っていたが、認識を改めねばなるまい。
「しかし、本当に1個小隊の戦闘能力か?」
「そもそも、ここがどうして分かったのだ?」
 可能な限り巧妙に隠していたはずだ。事実、内乱開始からこちら、一度もこの場所は見つかっていない。戦線そのものが、はるかに離れているからだ。
「他の基地や要塞も無事だというのに・・・。」
「とにかく、迎撃しろ! 刺し違えてでも叩き潰せ!!」
「他の基地から援軍を呼べ!」


「あいつら、本当に1個小隊か?」
 あてがわれた機体の操縦席で、そんなことを呟くカズト。目の前の、冗談みたいな光景に対して、思わず漏れた言葉である。敵も同じことを言っているなど、彼は予想だにしていない。
「味方でよかったですねぇ〜。」
 傍らで、そんな能天気なことをとろい口調で言うセリア。だが、残念ながら(セリアと同意見、というのは大変に遺憾だが)、それは全く否定できないし、する気もない。
「俺達の援護なんて、本当に必要なのか?」
「まあ、枯れ木も山のにぎわいと言いますし〜。」
「俺達は枯れ木か・・・。」
 とりあえず、グレイロックに連絡を取る。
「援軍第一号は、お前さん達か。しかし、なんで2機だけなんだ?」
「といわれましてもね。準備が間に合ったのが、俺達だけなんですよ。第一、救援信号から3分でたどり着いたんですから、むしろ誉めて欲しいぐらいですよ。」
「どこからだ?」
「パルティアルのステーションからです。乗ってる機体見て、分かりませんか?」
 カズト達は、AS−0シリーズのプロトタイプ、AS−01と02に乗ってきていたのだ。調整当もいい加減、武装も寄せ集めと、正直兵器と呼ぶ気も起こらぬシロモノだが。
「そんなガラクタ引っ張り出すとはな。」
「でもぉ、量産されてるどの機体よりも性能はいいですよ〜。」
「実際、シュヴァイクやグランビュートじゃ、あそこまで無茶な加速をした日にゃ、1分と立たずにばらばらです。」
 慣らしもしていないのに、無茶な運用でびくともしない。シンディ達が無茶をできるわけである。
「04、06、08の3機はどうなってる?」
「パイロットがいないので、そのまんまです。」
「そうか・・・。っと、敵さんも援軍が来た見てえだ。悪いが、頼んだぞ。」
「了解。」
 ロックバスターの銃口を向けながら、あっさり言うカズトであった。


「効率が悪いから、ばらばらに行動しましょう。」
「だな。」
 アルと別れてから6分ほどしたあたりで、シンディが言う。正直、全体の3割、といった程度の被害しか与えていない。効率の悪いことおびただしい。
「で、アルとはどうやって連絡取るの?」
 高速行動中の機体とは、連絡の取り辛いことおびただしい。
「後4分したら、連絡を入れるわ。適当に行動しろってね。」
「うわー。感動的ね。」
 呆れて言う。
「とにかく、とっととけりをつけるわよ。」
「そうだな。こんな胸糞悪いところ、長居したかねえしな。」
 エネジーソードで壁をぶった切って、グレイが言う。
「じゃあ、アタシはこっち。」
 90度角度をかえて、壁をぶち抜く。
「さて、内部からの破壊なんてやったことないから、どれぐらいの時間を見るのがいいのやら・・・。」
 歩いてきた道をそのまま進むことにする。
「まあ、とりあえず30分。30分後に外に集合。」
『了解。』
 3人それぞれ選んだルートを進み出した。


「意外と、歯ごたえがねえな。」
 1対1、せいぜい1対4ぐらいなら、彼の敵ではない。
「行き止まりか・・・。」
 躊躇いもせずにロックバスターをぶちこむ。向こう側を見て口笛を吹く。
「大漁、てか。」
 ずらっと並ぶパワードシェル。拿捕、なども考えたが、生憎ここにいるのは彼だけである。
「つくったヤツにゃ悪いが、光になってもらおうか。」
 ロックバスターで焼き払う。さすがに、起動してない状態でしつこく焼かれれば、どんな頑丈なパワードシェルといえども一溜りも無い。
「さて、次に・・・。」
 何を思ったのか、突然冷却剤を使ってジェネレーターを冷やす。
「こっちの準備はできた。何時まで隠れてる気だ?」
「背中を向けた瞬間に撃ってやろうと思ったのだがな。」
「そりゃどうも。」
 ロックバスターを構えなおして言う。
「しかし、これだけロックバスターを連射できるとは、興味深い機体だ。」
「機体は特にいじってねえよ。モジュールが特注なんだ。」
 言いながら、ロックバスターを持続発射モードで撃って薙ぎ払う。だが。
「なるほど、そう言う芸当も可能になっているのか。」
「ああ。うちの技術者も、案外優秀だろう?」
 無傷で立っている相手に、とりあえず減らず口を返しておく。
「しかし、そっちも大変だな、手を変え品を変え、色々と・・・。」
 ミサイルをうち、インパクトキャノンを叩きこむ。
「そちらほどではない。」
「そりゃどうも。」
 平然と撃ち返してくる。
(バリア、だな・・・。)
「そう言えば、貴様の名は?」
「グレイフォード・ワイズ。少尉だ。」
 ミサイルを弾幕にして突っ込む。ロックバスターの銃身を叩きこもうとする。バリアにはじかれる。
「ロディマス・ブリッドだ。」
 攻撃の瞬間、バリアを解く。隙間を狙って、ロックバスターを発射する。寸前ではじかれる。格闘戦の間合いは取らせてもらえないようだ。
「貴様の腕に敬意を表し、コクピットは残しておいてやる。」
 言うが早いか、ドラグーンの右腕を切り落とす。
「そいつは、どうも!!」
 切り落とされた腕を棍棒がわりに使う。タイミングよく、バリアを解いた瞬間にヒットする。微かに揺らぐロディマス機。
「だが、まだ終れねえんでな!!」
 一気に踏みこんで、片手でしがみつく。
「何をするつもりだ? 無駄な足掻きを・・・。」
 ドラグーンを振りほどく。返す刀で残った左腕を切り落とす。
「かかったな!! 氷の顎よ、噛み砕け!!」
 白の光が昂然と輝く。
「アイシクル・ファング!!」
 巨大な氷の牙が、ロディマス機を噛み砕く。そして静寂。
「1機沈めるのに腕2本か・・・。効率悪いんでやんの。」
 ぼやきながら、持ってきていた弾薬類、更には壊れたロディマス機のジェネレーターなどをまとめてその場に置く。
「さて、派手に吹かして見るか。」
 基地の一角で派手な爆発が起こったのは、それから三分後であった。


 シェラの目の前には、さほど重要そうには見えない施設が点在していた。
「どうしたもんかな・・・?」
 とりあえず、ロックバスターを向けて、中にいる人間に降伏勧告をしてみる。優位に立った今なら、聞いてもらえるかもしれない。
「分かった・・・。降伏・・・。」
「それは聞けないんだがな。」
「全く、どうしてこう、血の気の多い人間ばかりなんだか・・・。」
 振り向きながら言う。
「血の気が多いのは、そちらだろう? 大人しく我々の独立を認めていればよいものを。」
「そんなの、アタシの知ったこっちゃ無いわよ。というより・・・。」
 ビシッ、と指をつきつけて、シェラが突っ込みを入れる。
「テロで始めた独立宣言なんて、認めるような弱っちい国は滅多にないわよ!」
「テロ、か。うちのボスが聞いたら、なんと言ってくれることやら。」
 苦笑しながら言う。
「さて、とりあえず聞くが、引く気は・・・。」
「引けると思う?」
「だな。」
 苦笑すると、攻撃を開始する男。
「! 速い!!」
 紙一重でかわし、冷や汗をぬぐう。
「さすがだな。隊長ばかり目立つ部隊だが、他の面子もなかなか・・・。」
「そっちも大したものね・・・。ただ・・・。」
「敵に回した相手が悪かった、か? かもな。いや、あんた達が出てこなけりゃ問題は無かったんだがな・・・。」
 凄まじいスピードで違いの攻撃をかわしながら、冷静に会話を続ける。このての高機動型どうしの戦いなど、一撃食らったほうの負けである。
「こいつでどうだ!?」
 散弾ポッドをばら撒いてくる。動きの速い機体を仕留める場合に有効な武器だ。しかも、距離が近い。
「パーティクルミサイル!!」
 持っていたミサイルを全部発射し、念動魔法で制御、全ての弾を叩き落す。
「くそ!!」
「今度はこっちからよ! グラヴィティ・プレッシャー!!」
 凄まじい重力が、動きを封じて来る。辛うじて自壊を免れていると・・・。
「これで終りね。降伏なさい。」
 小さな衝撃と共に、その言葉を浴びせられる。突如、重力場が消える。
「何をした?」
 重力場が消えたというのに、機体はびくともしない。出てくるのは、制御不能のアラームのみである。
「制御システムを破壊したの。シンディの常套手段よ。」
「あの隊長、そんな真似までしてるのか?」
「うん。最近は、正面からぶつかってもしんどいだけだから、ってね。」
 それこそ、針の穴を通すような正確な攻撃が必要な行為である。
「降参、だな。」
「分かってくれて、嬉しい。」
 15分後、グレイロックは投降者の受け入れでおおわらわになるのであった。
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