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剣鬼の少女 第二話


第二話 「エンフィールド〜マスクマンの恐怖〜」

 サガがジョートショップで働くようになってから一月、サガもこの街に慣れ、親しい友人もできてきた現在、ジョートショップは…

      閑古鳥が鳴いていた

 いままで肉体労働派な人物がいなかったジョートショップに肉体労働者が新たに来たにもかかわらず経済状況が悪化している。
その原因は…

「いたたたたっっ!!痛いよサガさんっ!!やめて〜〜〜!!」

…とサガにうめぼしの刑(こめかみをグリグリするアレ)をやられてる大きなリボンをつけたポニーテールの少女、サガの友人の一人トリーシャにあった。
 お喋りな彼女が友人に、

「ねぇねぇ!知ってる?ジョートショップにサガさん、っていう元傭兵のすっごい綺麗な女の人が働き始めたんだよ!」

と話し、伝言ゲームの要領で「ジョートショップにサガという名の胡散臭い傭兵が働き始めたらしい。」まで変化し街の噂として定着したからだ。
 噂というものはまず良い所から無くなり、その後に悪いところが付け加えられることが多い。
 今回はそのパターンで、なおかつサガという男か女か分かり難い名前の所為もあるかもしれない。

「で、どうしてくれるの?この状況、このままだとご飯もろくに食べれなくなるかもしれないじゃない。」

「う〜、ごめんなさ〜い。」

「ごめんで済んだら自警団はいらないわねぇ。」

 カランカランッ♪

「失礼し…またやってんのか…」

「あぁ、カイン、何?何か仕事?」

 入ってきたのは自警団第三部隊隊員のカイン・ノクターン「自警団の何でも屋」のあだ名で知られるお人好しである。

「うん、コロシアムの警備の手伝いをお願いしたくてね。」

「いいの?自警団の仕事でしょ、それ。」

「あぁ、今回はモンスターが出るからね、隊長は体を壊して安静に、とのことだし第一部隊は忙しい。で戦える人が少ないんだ。」

「分かったわ、じゃあトリーシャ、アリサさんが帰ってくるまで留守番お願いするから。」

「うん、いってらしゃ〜い。」

  〜グラシオコロシアム〜

 コロシアムは熱気にあふれ今迄ここに来たことの無いサガはその熱気に少々圧倒されていた。今サガ達は観客席の一番上の端にいる。全体が見渡せる様に、とのことらしい。

「すっごいわね〜、いつもこんな感じなの?」

「いや、今日はメインイベントがあるからね。」

     ワァァァァァァァァァァァァァァァァ!!

 観客席から歓声が上がる。
 見るとかなりの巨漢の男が現れた、250cmはあるだろうか?筋肉の塊のような大男でマスクをしている。今まで見てきた参加者のなかで一番強そうな印象を受ける。

「彼はマスクマン。コロシアム最強の選手だよ。今迄99戦無敗で今回の100戦目が今日のメインイベントなんだ。」

「へ〜強いんだね。」

 司会が音声拡大のマジックアイテム『マイク』を手に上機嫌で喋る。

『皆様!大変長らくお待たせいたしました!これより本日のメインイベント、マスクマンさんの100戦目が始まります!それにあたりまして本日の対戦相手をマスクマンさんから発表していただきます!』

 本来ならここでこの日のために魔術師組合に頼んで魔法強化されたオーガの名が呼ばれるはずだった。だがマスクマンは観客席の一角を指差した。
 
    −即ちサガ達のいる場所を−

 司会が予定と違う行動に戸惑いながらもそちらを見、納得しながら喋る。

『あそこにいるのはカイン・ノクターンさん。なるほど自警団でもトップクラスの実力を持つカインさんなら申し分ないですね。』

『違う。』

 マスクマンはそう言い司会からマイクを奪った。

『その隣の娘!降りてきて…私と闘え!!』

      ザワザワザワザワザワ!!

 観客席がどよめく一見か弱そうな少女(今迄説明をし忘れていたが彼女の容姿は見事な銀髪に蒼と紅のオッドアイの可愛いというより綺麗とかカッコイイといった感じの細身の美少女である。)に闘技場の覇者マスクマンが挑戦しているのだから当然かもしれないが。

「実力、バレたみたいだけど、どうする?サガ」

 その問いにサガは当然!といった感じで

「売られた喧嘩は買わなきゃね。」

 と嬉しそうな笑顔で答えた。あまりにもいいその笑顔にカインの顔が見る見る赤くなる。そして…

      ジャッッ!!

 サガがジャンプして−カインの隣から−闘技場の舞台の端に着地する。
再び観客席がどよめく。今度は人間離れしたサガの動きを見ていい試合になるかも、と期待してのざわめきである。

「やっぱ化けモンだな、サガって。」

 カインが呆れる。そして…

「名を聞こうか娘…」

「サガ。サガ・シューティングスター。」

「なにっ!?…ククククク……」

 マスクマンが笑い出す。獣の様な笑いだ。

「クハハハハッ!まさかこの様な所で高名な『剣鬼』サガと合間見えようとは思わなんだぞ!さぁ剣を取れっ!生ける伝説として名高い貴様の力をこの私に見せよ!!」

 サガはその声に応えマーシャル武器店で購入した刃の無い剣(マーシャルは「伝説のなんたらソードアル」とか言っていたが真っ赤な偽物だった)を抜き、正眼に構える。

『そ、それでは試合開始!』

 マスクマンが突っ込んでくる。
 その巨体からは信じられぬ速さで間合いを詰めるや連続攻撃を仕掛けてくる。
 ただ速いだけでなくフェイントを織り交ぜる等の高度な闘い方である。
 一気に決着を付け様としているのだろう。

  ドガガガガガガガガッ!!

 普通の相手だったらここで終わっていた。カインでももうすぐダウンする寸前だろう。
            −だがサガは違った−
 常人では反応もできないであろう攻撃を全て防いだのだ。
 が、この信じられない攻防もマスクマンの読みの中にまだあった。

(次で決めるっ!!!)

 今までの全てがマスクマンのフェイントだったのだ。奥の手より少しだけ遅い攻撃を続け目を慣らさせ、奥の手を確実に当てるための。
 マスクマンは『闘い』において天才であった。
 −平和な現在。命のやり取りは戦うために特化した技術を持たない『モンスター』としかしたことがない。それ以外は−

「F・Cチョップ!!」

 マスクマンの今迄でもっとも強力な一撃だった。どんな相手だろうが吹っ飛ぶほどの破壊力を持った攻撃。

          当たりさえすれば…

 だがサガという『剣鬼』には通用しなかった。
 サガは相手を殺すことに特化した技術をもった『人間』を相手に命のやり取りをしてきた。死に掛けたのも一度や二度ではない。記憶は無くとも体が今までの戦いを覚えていた。
 サガは『戦い』の天才なのだ。
 
 人間が意識集中を極限まで高めると、通常の数倍の長さに時間を「引き延ばして」感じることができる。そしてそれが一定を超えると、その「引き伸ばされた」時間に体がついていこうとして、普段無意識にかかっている体のリミッターをはずす。
 早い話が走馬灯と火事場の馬鹿力を会わせたような状況になる。
 
 サガはそれを無意識のうちに実行しマスクマンの攻撃を避けたのだ。
 そしてサガが移動した先はマスクマンの間合いの内側。
 零距離の状態、その状態から拳をマスクマンの腹に当て、全身のばねを使い力を一点に集中させ打ち抜く。
 相手を吹き飛ばさせずに衝撃を100%叩き込んだ、と思えば速い。

 観客にはマスクマンがF・Cチョップを放ったところまでしか分からなかっただろう。
 マスクマンが口を開く。

「次は…勝つ。」

 血を吐きながら後ろに倒れる、その腹部は拳大に陥没した後がある。

       沈黙がその場を包む。

『さ、サガ選手の勝利です!!』

 司会がかろうじて口を開く。

  ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!

 コロシアム全体が割れんばかりの声援に包まれる。
 あのマスクマンに勝てる奴がいたなんて、という感じの声である。
 司会がマイクをサガに向ける。

『勝利者にインタビューです。あの、どちらに泊まっておられるのですか?』

『あっと、ジョートショップに住み込みで働いてるんですけど…』

『えっ!では貴女があの胡散くさ…失礼、ジョートショップで働き始めた傭兵の方?こんなお美しい方だったとは…』

 そこにカインが割り込んできて、

「おい、このままだと帰れなくなるぞ!」

 と手を引いて連れて行ってしまった。

『あ、サガさ〜ん!まだインタビューが…』

 その日からジョートショップにモンスター退治などの荒事が依頼されるようになり、おまけに「サガちゃんファンクラブ」なるものができたらしい。
 この闘いがきっかけでサガは年末に開かれる大武闘会に女性初の参加者として認められることとなった。

 〜同時刻とある場所にて〜

 エンフィールドのとある場所そこで二人の男が密談をしていた。

「では、計画の実行の方は任せましたよ。ちゃんとできるんでございますか?」

「あぁ、任せなちゃ〜んとやってやるよ。それよりアレは手に入るのか?」

「あの『できそこない』でございますね。もちろんでございます。それの作成ノウハウまでちゃ〜んと用意してあげましょう。」

「ヒャ〜ハッハッハ!そうじゃなくっちゃな!じゃあ今夜作戦を実行してやるよ、あっちのほうはまかせたぜ!」

「ゲラゲラゲラ!当然でございます!…しかしよろしいのですか?アレはコントロールできないから『できそこない』なのですよ?」

「そっちの対策はちゃ〜んとしてあるさ。俺様が襲われない位にはな。」

 そういうと男は影に溶けるように消えた。

       運命が動き始める日の前日の話である…

                                つづく

あとがき
焔(以下H):包帯まみれですいません。焔です。
サガ:サガで〜す!…よくそれだけで済んだわねぇ。
H:さて、今回のゲストは…
サガ:闘技場の覇者マスクマンさんです!
マスクマン(以下M):うむ。
サガ:さて質問。「なんでマスクかぶってるんですか」だそうよ。
M:我が一族は代々私の様なファイティングスタイルの戦士でな一族の中でも一流の証としてマスクを付けるのだ。
H:ちなみにマスクマンは一族の歴史の中でも上位の強さです。
M:ほぅ、そういえばどこが「マスクマンの恐怖」なんだ?
H:まぁそこはそれ、あぁ、話の中で『戦い』と『闘い』ってありましたよね。あれは『闘い』がスポーツ的なものという解釈で。『戦い』が…
サガ:殺し合いってわけね?
H:はい。ちなみにマスクマンのプロフィール。どうぞ。
M:身長246cm体重130kgそれ以外は黙秘だ。
サガ:で、これからの予定は?
M:山に篭ろうかと思う。
サガ:そぅ。がんばって。
M:次は負けんぞ(退場)。
H:いっちゃいました。
サガ:では次回は「冤罪〜ジョートショップ本格始動〜」でお会いしましょう。…でも今回の話必要なかったんじゃないの?
H:大武闘会の前章だよ。
サガ:カインってやっぱ2ndの主人公?
H:Yes。
サガ:そういえばさっきからその包帯の中身蠢いてない?
H:いや〜体直すためにある組織に改造してもらって。中身はこんな感じ。
サガ:(ちらっ)グロッ!!
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