中央改札 交響曲 感想 説明

悠久自由曲〜昔話inキレイな玉〜
蟲田


「あ、これ、アルバムじゃない。うわっ、これ小さい頃のルシード?うっわ〜、かわいくない。」

 真夜中だというのにバーシアが高いテンションで声を上げた。もっとも完全な夜型人間の彼女にとってはこれからが活動時刻なのかもしれない。

「何、見てんだ。玉を探すんじゃねぇのか?」
「え?ああ、探してる探してる。」

 そう言ってはいるがバーシアはアルバムから目を離さない。ルシードはため息をいて自分の部屋を見回した。
 無駄な家具が一切なく飾り気のない部屋だが、壁には大きなポスターが貼られている。ポスターの中の女性はルシードに向かって微笑みかけていたが気分は晴れなかった。

(そろそろ飽きてきたな、新しいのに貼り変えよう。ヤローのポスターなんて貼りたくないから、また女優あたりにするか・・・)

 と、今部屋にいる『女じゃねぇヤツ』のことを思い出す。

「アルバムの中には隠せねぇだろ。とっとともとの場所に戻せ。」
「はいはい。」

 バーシアは返事はしたが、アルバムを本棚には戻さずベットに投げだし、家捜しを再会した。
 ん、なに?真夜中に女を自室に招き入れるのは不謹慎だって?
 まあ、一応こいつは生物学的には女ではあるけどよ・・・。こういう状況になったのにはわけがあるんだよ。
 何日だったかまえ、バーシアの買い物に付き合ったときのことだ。こいつが川で妙な玉を見つけてそれを拾ってきた。宝石のような光沢をしてたもんで、一応本部に拾得物として届けたんだが、今日、持ち主が現れなかったという理由でブルーフェザーに送り返されてきた。だけどよ、その日の内にバーシアがその玉がなくなったと大騒ぎしやがった。
 そんでもって、俺をつきあわせて他のメンバーの部屋を家捜ししていたのだが、見つからないと今度は俺に疑いの目を向けたってわけだ。ったく、馬鹿ばかし。
 バーシアの家捜しは終わりそうにない。手持ち無沙汰になった俺はベットに投げ出されたアルバムをのぞこむ。投げ出された衝撃で開いているページの写真には、必ず紫色の髪を伸ばした子供が写っている。日付からいって自分が5〜6歳の時の写真達だった。ほとんどがいつの間にか撮られているものだが、一枚だけ整列して撮られているものがある。
 中央で金髪碧眼の15〜6歳の娘が競技剣術の防具をつけて立っている。その左となりに同じ年頃の黒髪の娘がいて。優しく微笑みながら前にいる6〜7歳の黒髪の少女に抱きつくように前かがみになっている。少女は抱きつかれて嬉しそうだが、それを表情に出すまいとすました顔をしている。
 俺は中央の娘の右隣にいるが、あまりいい表情をしていない。きっと隣にいるゼファーが俺に肩に手を置き、「この子よりお兄さんです」って顔をしているのが気に入らなかったんだろう。他のヤツが見たらいつもの無表情だって言うかもしんねぇけど・・・。



『悠久自由曲〜昔話inキレイな玉〜』



 俺はルシード・アトレー、6歳。いままで両親と離れて影の民の村で暮らしていた。両親は共働きで家にはあまりいないし、俺の強い魔力が暴走するとあぶねぇ。そこである程度魔力を制御できる年齢になるまでは、そうしたほうかいいと考えたらしい。あ?両親と離れて寂しくなかったかって?いや、全然。面倒見てくれた李夫妻は自分の子供のように扱ったし、夫妻の養女の楊俐(ヤンリー)、楊薇(ヤンチャオ)とは姉弟のように育ったからな。今は親の休みに合わせて生まれ故郷「サンドワーフ」に楊俐、楊薇と共に遊びに来ている。これといった特徴のない町だけど歴史だけはあるんだとゼファーが言ってた。でもなぁ、

「なんで、こんなことしなくちゃなんねぇんだ?」
「・・・・・・・・。」
「ゼファア、何とか言えよ。」
「フッ、どちらにせよ、シルビィはおまえに押し付けただろう。あきらめるんだな。」

 シルビィ、本名シルビア・レカキス、俺が武道を習っている人の娘で、後輩の間では「おねーさん」と呼ばれている。
 競技剣術大会でも何度も優勝できるぐらい強い人だが、トロフィーや表彰状には興味がないらしく、行方不明にしてしまうことが多々あり、それを探し出すのに俺とゼファーも借り出されたってわけだ。本人と楊俐、楊薇も別のところを探しているはずだ。

「む、なんだこのツボ?」
「ん?」

 ゼファーが蔵で見つけたのは、何の変哲もない壷だった。壷は布で封をされている。
 ルシードには、ゼファーが興味を持った理由がわからない。

「どうしたんだ、変なものでも入ってたのか?」
「いや、物が入っているにしては軽すぎる。」

 ゼファーは考えるような仕草をすると、壷をルシードに渡してきた。

「ちょっと中身を確認してくれ。」
「あ?まあ、いいけどよ。」

 今のルシードならばなんで自分に頼むのかと怪しむが、このときまだ6歳素直に壷の封を解いた。
 次の瞬間、カッと光がほとばしると壷から何かが飛び出してきた。
 ルシードとゼファーは、壷を放り出し身構えた。

「オバケダゾ〜〜〜〜〜ッ。」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「ハッハッハッ、キョウフノアマリ、コエモデナイカ。」
「アホ。」
「ナ、ナンダト〜〜〜ッ。」
「アホじゃなきゃバカだろ、いまどきそんな登場の仕方をする幽霊がいるか。」
「ムムムッ」

 ルシードはちょっとマジになってしまった自分を責めながら、ゼファーの方を向いた。
 ゼファーはいつもの無表情で一体何を考えているのか、メモをとっている。

「おい、ゼファア。メモなんぞしてねぇで何とかしろ。おまえが開けろって言ったせいだろ。」
「ルシード。」
「あん?」
「人のせいにしてはいけない、実行犯はおまえだ。」
「やかましぃ。とにかくおまえの魔法で何とかしやがれ。」
「・・・む、そうだな。」

 ゼファーが攻撃呪文を唱える。

「オーカー」

 ゼファーの呪文に答え、魔力が砂塵となって自称オバケを巻き込む。

「ハッハッハッ、キカン、キカン」
「む。」
「あ?」

 砂塵が消えた後には全く無傷の自称オバケ。しかも心なしかさっきよりも大きくなっている。

「なんだこいつ!」
「・・・・・・・・・。」
「ハッハッハッ、モットマホウヲトナエテミロ、キュウシュウシテ モットツヨクナッテヤル」
「バカの癖に妙な能力持ちやがって。」
「ナンダト〜〜」

 ルシードの言葉に怒ったお化けが魔力の塊を打ち出す。

「げっ!!」
「むっ!!」

 ドンッ!!!

 間一髪、二人は蔵の外に転がり出る。蔵はまだモウモウとホコリが待っておりオバケの姿は見えない。

「ルシード。」
「あん?いい案でも思いついたのか。」
「おまえが魔法を使えといった・・・」
「実行犯はてめぇだ!!」

 ルシード達が漫才をしている間にホコリが晴れてきた。蔵の中からオバケが姿を表す。

「ヒャハハハハ…」
「な、なんだよこいつ!」

 オバケは先ほどより大きく肥大し、頭のネジが二、三本取れたが画家が描いた人物がのような姿になっている。いくつかの人骨を取り込んだ巨大なアメーバにも見える。

「さっきよりパワーアップしてるぞ!」
「この辺にいる低級霊を取り込んだようだな。」
「でっ、対処法は?」
「・・・・・・・・・。」
「役立たず。」
「む。」

 ルシードとゼファーが睨み合った。そこにオバケが触手を伸ばし、二人を薙ぎ払う。

「って〜な。」
「ヒヒヒヒヒーーッ!」

 こんどは二人を取り込もうと、十数本の触手を伸ばしオバケが迫る。

「・・・むっ。まずいな。」

 パンッ!!

 乾いた音と共にオバケの動きが止まる。

「カ カ ラ ダ ガ」
「影の民の力を封じ込めた破魔の弾丸打ち込みました。あなたはもう動けません。」

 右手にダブルデリンジャーを持ち、オバケに話し掛けたのは黒髪を腰まで伸ばした女、楊俐だった。まとっている影の民の民族衣装が、全身から溢れ出す神秘的な雰囲気をいっそう強めている。
 楊俐はオバケを説得するように言葉を繋げる。

「目に見えぬ気の糸でがんじがらめにしたようなものです…あきらめてもといた世界に返りなさい…。」
「イ ヤ ダ、 ヒ ト リ デ シ ヌ ノ ハ ヤ ダ」

 オバケの言葉を聞くと、楊俐は悲しそうな顔をした。

「ごめんなさい、この二人を連れて行かせるわけにはいかないの。」

 パンッ!!

 ふたたび響いた小さな炸裂音と同時にオバケは四散した。
 楊俐は悲しそうな顔で目を伏せ、しばらく黙とうすると顔を上げた。その頃には悲しそうな表情は消え、普段の優しい表情に戻っていた。

「さあ、二人ともどんなイタズラをしたの?」


                 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


(・・・思い出した!ゼファーの野郎あの後全部オレのせいにして逃げやがって。そのせいで散々説教くらって大変だったんだ。ああ、なんか思い出したら腹立ってきた。)

 思い出に浸っていると、玉探しをしていたバーシアが突然声を上げ、ルシードを現実に引き戻した。

「・・・ない。」
「あたりまえだ。」
「一体、どこ隠したのよ!白状しなさい!」
「俺じゃねぇっつってんだろ。」

 バーシアはまだ疑っているらしい。

「じゃあ、アタシの玉、一体どこに行ったのよ。」
「知るか。ん?あと1ヶ所、探してないトコがあったな。」
「えぇっ!?どこ?どこなの!?」
「おまえの部屋だ。」
「‥‥‥‥。アンタ、バカじゃないの。アタシの部屋にないから探してるんじゃない。」
「現場百辺。捜査の基本だ。」
「…わかったわよ。部屋に行きゃいいんでしょ。」
「そう言う事だ。」

 この後、玉はすぐに見つかった。



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後書き
 最後まで、読んでいただいた方、ありがとうござました。作者です。
 今回もオリキャラいっぱいです。ついてこられない皆様、ごめんなさい。
 一応SSを書く時には、ゲームをやり直して話の内容を確かめてみるのですが、メインイベント3Aをやっていると、ルーティ、フローネ、ティセ、場合によってはルシードもですが、ペットを飼ってはいけない人に見えてきます。だって、飼い方や躾の仕方もわからないのに「かわいい」という理由でウーアを飼うって言っていますよ。子供のうちかわいいがるけど、大きくなると持て余してしまう、困った飼い主なりそうで恐いです。選択肢(やっぱり、ここで飼うか?)を選んだ時に止めに入ったゼファー、メルフィあなたたちはえらいよホント。
 話は変わりまして、今回の私設定「ルシード」。
 身体的特徴、外見は公式のものとほぼ同じです。しかし、何代か前の先祖に吸血鬼がいてその能力が使えますが、現在はかなり限定的にしか使えないことにしました。
 性格、ルシードは言動や態度の悪さなどから、某小説に出てくる金貸し魔術師Oさんと似た性格に思われることが多いようですね。しかし、小説版のルシードは感情一直線で猪突猛進、超無鉄砲、非常に綿密に計画を立てるところなんて見受けられない。これじゃあ三歳年下のはずの某マンガの豆の錬金術師の方がまだ大人に見えてしまうので、私設定ではもうちょっとシビアな考え方をする人にしているつもりです。
 戦闘能力、ほぼ中立に近い火属性 魔力をこめた物理攻撃(ジ・エンド・オブ・スレッド)やサイコウエーブ(デットリー・ウェッジ)を好み、よっぽどのことでもない限り魔法は使いません。1stのような気功による攻撃は苦手。
 交友関係、これは悠久組曲の初期親密度を参考にしました。選択キャラ←ルシードの親密度を見てルシードがベスト5に入っているキャラをルシードが好意的なキャラ。ワースト5に入っているキャラがルシードにうざいと思われているキャラと仮定しルシードの交友関係を探る。結果、好意的なキャラはゼファーのみ・・・ちょっとひどすぎる。次、ワースト5のキャラは・・・。ローラ、マリア、メロディ、ビセット、ティセ、シェール、セリーヌ、フローネ、アレフ、由羅、リサ、バーシア、以上12名。組曲の登場キャラはカッセルやハメットのサブキャラ含めても38名だから、約3割の人間はうざがっている・・・。しかも、そのうち5名はPB出演(汗)メインキャラのキャラの半数嫌うってアナタ・・・。ルシードって悠久1、2に出演していた方が幸せだったんじゃ・・・。まあ、ルシードは食べ物の好き嫌いがないぶん、人の好き嫌いが激しいってことにしておきましょう。
 好意的なキャラはゼファーのみとなると、ルシードに好かれる人間のタイプは分析できそうもないので消去法で親密になれそうなタイプを考えましょう。ローラ、マリアの親密度が低いことから、ワガママお嬢はダメ。メロディ、ティセ、セリーヌの悠久1、2、PBの三大天然ボケも親密度が低いところを見ると、天然ボケキャラもダメ。
 アレフ、由羅、バーシア、この三人はきっといいかげんな性格かな?サボっているようでやることはやっているルシードから見ればチャランポランに見えるのでしょう。
 ビセット、ティセはルシード←各キャラの親密度を見る限りだと結構ルシードを好いているにもかかわらず嫌われています。ルシードも「うるせぇ」「うぜぇ」と発言していることから、ルシードは自分の周りをしつこく付きまとう人を鬱陶しいと感じるタイプのようです。
 シェールはなんでだろう?大差はないですが、同じようなタイプのトリーシャよりも親密度が低くなっています、この差は結構重要かもしれない。組曲ルーティの憂鬱で珍しく二人が対立したことがありました、このときできた微妙な性格の差などが原因と思われる。
 後はフローネとリサ・・・他のキャラとは余り共通点がありませんね。と、いうことはホラー電波と熱血体育教師はダメってこと?あ、二人とも結構強引に自分の価値観押し付けるところがあるからそこがなのかもしれませんね。
 こう考えるとルシードはお互いに尊重しあい、必要以上に相手に干渉しないタイプが好みなのかな?となると悠久でルシードと仲良くできそうな人間はルーやイブみたいなタイプってことかな?なんにせよ、ルシードにお近づきになるのは相当難しそうだ。
 まだまだ、かってな私設定があるのですが今回はこのへんで。
 それでは機会がありましたらまた私の駄文にお付き合いください。最後にもう一度、皆さんありがとうございました。

2005年 3月12日 原作 悠久幻想曲3 PerpetualBlueより  「悠久自由曲〜昔話inキレイな玉〜」 蟲田
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