中央改札 交響曲 感想 説明

設定:能力について
蟲田


「ルシードさんちょっといいかしら」
「あん?」
「この間の個人面談が合ったじゃない」
「個人面談?」
「ええ、この間の日曜日の・・・」
「ああ、アレか・・・。それがどうした?」
「日曜日は私がルシードさんを評価したじゃない」
「評価ってそんなたいそうなものだったか・・・?ま、いいけどよ。アレがどうした」
「今度はルシードさんがみんなのことを評価して欲しいのよ」
「・・・なんで?」
「上半期労働評定の期限が迫ってるのよ」


〜〜〜「設定:能力について」〜〜〜


 事務所に顔を出したルシードにメルフィがそんなことを言ってきた。途端ルシードは口をへの字に結び頭をガリガリとかいた。もはやブルーフェザーで知らないものはいないが、ルシードはデスクワークなどの細かい仕事苦手なのである。事務能力がないのではなく性格の問題なのだが・・・。
「そんなこといったってな。本部に上げんだろ?苦手なんだよなそういうの、告げ口しているみたいでよ」
「告げ口って・・・」
「てきとーにお前が書いておけばいいじゃねぇか。ある程度高く見積もったって本部だって文句言ってこねぇだろ?」
「ええ、私もルシードさんが書いてくれるなんて期待していないわ」
「おい」
 メルフィ−のいいようにルシードは半眼になったが、そんなルシードの様子にメルフィはまったく気付かず続ける。
「ルシードさんには捜査に出ている時のみんなの様子を教えて欲しいのよ」
「様子つってもな。お前、何度か出動に付き合ったことあるだろ」
「私は戦闘訓練を受けているわけではないし、アレだけでは長所や短所は分からないわ」
「あ〜、ようするに得意分野と弱点を言えってんだな」
「あと、効率的な指揮の仕方とか、捜査能力、戦闘能力、あと・・・」
「ああ、ちょっとまて。一度に言うなこんがらがっちまう」
「え、ああ。ごめんなさい」
「それにここで言うのか?」
 ルシードは食堂に続くドアを眺めながらいった。事務所はみんなが集まる食堂に直結している、誰かがひょっこり顔を出す可能性がある。さすがに本人を前に率直な意見を言うと相手を傷付ける事があることぐらいは、鈍感なルシードも理解している。
「フローネさんの予定は読書だったわね」
「ああ、あいつのこった。あと2時間は資料室に缶詰だろうな」
「なら、大丈夫よ。午前中から事務所に顔を出す人なんていないわ」
「あ〜、そうだな」
 顔を出す可能性があるのはゼファーぐらいのものだが、今回彼はあまり関係ないし、今は本部に出向いている。さて、ルシードが同意したの見てメルフィはペンと雑用紙を取り出したメモを取るつもりらしい。


「で、誰のどんな評価をすりゃいいんだ」
「そうね。じゃあ、階級順でお願い」
「じゃあ、バーシアからか・・・」
「いいえ、ルシードさんからよ。」
「・・・最こ」
「客観的意見をお願いします」
「ボケを封じるなよ」
 ルシードが冗談めかして自分の評価を口にする前に、メルフィは客観的を強調して言ってきた。ルシードはため息を一つすると、仕方なく自分と他のメンバーを比較し始めた。
「そうだな、ルシード・アトレー、階級:准等警官」
 ルシードが真面目に話をし始めたのを見て、メルフィがペンを走らせ始めた。几帳面の字体が雑用紙にルシードの名前を示していく。
「ま、特技は魔力を這わせた物理攻撃と精神波による攻撃だな。弱点は特にないぞ、属性も便宜上『火』になってはいるがほとんど中庸だしな」
「それがルシードさんの戦闘力になるわけね。もう少し分かりやすい評価の仕方はないかしら」
「そうだな・・・。同期・・・いや、平均的な成績の局員相手だったら、何とか3人ぐらい相手にできるぞ。ま、単純に戦闘能力って意味だったら俺が一番強いだろうよ」
「わかったわ。捜査能力のほうは?」
「ああと、中の上って所じゃないか?まあ、だいたい、事件は解決しているわけだし・・・」
 今まで書いた始末書の枚数を考えたせいで、ルシードの言葉は尻すぼみになった。メルフィもペンを止めて考える仕草をしたが何もいわなかった。

「次はバーシアさんね。階級は局士長」
「特技が長物、バランスがイイから弱点はこれといってないが、持久力になんありってところだ。そうだな戦闘においては結構いい評価してやってもいいんじゃねぇの。経験積んでるぶん判断力もあるし、槍の大会でもありゃ入賞できるぐらいの腕前も持ってる。自分の身は自分で守れるヤツだ、立ちまわり次第で2〜3人ぐらい任せられるだろう。捜査に関しては・・・。ああ、そうだ土地感があるのと交友関係が広いところが長所だろうな、聞き込みなんかで役立つことだ多いな」
「なるほど、さすがはバーシアさんだわ」
 ルシードの高めの評価にメルフィの声が弾んだ。いつもバーシアを叱ってばかりいるメルフィだがバーシアには一定の敬意を持っていることが分かる。しかし、メルフィにしては珍しい反応についついイタズラ心が刺激されてしまう。
「低血圧で午前中に何かあっても、ほとんど頭働いてないけどな」
「・・・・・・」
 メルフィの動きがピタリと止まる。きっかり2秒硬直した後、ペンが再び動いて雑用紙に何事か書き込む。書き込んだ姿勢のままメルフィは無感情に言った。
「・・・次」


「次は一様ビセットか・・・」
「ええ、ここに来たのはルシードさんより1ヶ月早いわ」
「たった、一ヶ月だろ」
 ルシードは腕を組んでグルグルと首を回しながら、自分に対して先輩顔をしてピンぼけした命令をしてくるビセットを想像してみる。・・・あ、殴りてぇ。ルシードは唸るような声を出してメルフィに聞いた。
「まさかと思うがあいつに対して敬語使えとか言うつもりか?」
 ルシードは鼻で笑うが、軍隊と警察組織においては先輩後輩の関係が絶対視されることがまれにある。
「いえ、まさか。階級でも年齢でもルシードさんが上でしょ」
「だよな、言ったらおまえの正気を疑う」
「・・・とにかく、ビセットの評価を」
「ああ、そうだな。ビセット・マーシュ、局士・・・。弱点、魔法が攻防共に勉強不足てっことだな。特技は・・・なんだろうな?」
「なんだろうて、ビセットさんは格闘技が得意なんでしょ?」
「ま、型は知っているみたいだけどな。問題は得物を使わないってことなんだよ」
 メルフィの顔を見ると、何を言いたいのかさっぱり分からない、といった顔をしている。武術の心得のないメルフィにどう説明をしようか考えたルシードは、兵法を習っていた時姉弟子に聞いた話をそのまま話す事にした。
「剣道三倍段て、知ってるか?」
「いいえ」
「剣を使うヤツってのは素手のヤツよりも遠くから攻撃できるだろ。だから、素手で剣を使うヤツに勝つには、剣を使うヤツの3倍の技術が必要なんだ。剣を持っている俺と素手の俺がケンカしたら。剣を持っている俺の方が勝ちそうだろ?」
「はあ」
メルフィにしては珍しく生返事を返してきた。まあ、実感の沸かない知識を与えられたらこんなものだろう。
「それに格闘技ってのは、人間の急所を突く技術であって。獣型のモンスターにはほとんど役に立たない。人とは急所の位置が違うからな。」
「そうなんですか。・・・でも、そうするとビセットさんの評価が・・・」
「そうだな・・・、あ〜素手で戦うことの利点は魔力の伝導率がいいってことだ、幽霊みたいな魔力で存在を保っているようなヤツが相手だと相性がいい。半人前ていや半人前だけどよ、年を考えるとよくやってるほうじゃねぇか?」
「〜っ」
 メルフィが頭を抱えた、今彼女の頭の中ではビセットに好意的な評価を探すためにフル回転していることだろう。
「捜査能力のほうは、地味な作業と隠密活動が苦手だが、体力があって作業員としては優秀とでも書いとけ。」
「はい・・・」


 メルフィはいったんビセットの評価を中断することにしたらしい。ペンが動いて今度はルーティ・ワイエス、局士と書き込まれた。
「ルーティか・・・、反射神経がいいみたいだな。一撃離脱を繰り返していれば、まあ安心できるかな。魔法は威力がないぶんを手数で勝負ってとろだ。弱点は防御力のなさだろうな魔物に一発もらうだけでほとんどの場合闘えなくなっちまう。」
「防御力不足・・・」
「単純に戦力と考えるとビセットと似たり寄ったり」
「ルーティさんも半人前だと?」
「細かく言うなら、ビセットが0.8、ルーティが0.7人前だな。ま、保安学校出の俺やバーシアと比べる方がおかしいだろ」
「そうね、捜査能力のほうは?」
「そうだな、世話好きで困っている人を見逃せないお人よしで、開けっぴろげな性格のせいか聞き込みなんかの調査が上手い。」
「なるほど、いい材料ね」
 メルフィは好意的に頷いたが、ルシードはそこが問題だと続けた、
「そのせいで拾って込んでいい問題拾ってきちゃ、大騒ぎして俺らに押し付けてくよなあいつ」
「まあ・・・、そうかしら」
「そうだろ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 二人は顔を見合わせて同時にため息をついた。保護者は辛い・・・


「次にいきましょう、次」
「フローネかぁ・・・」
「あら、わたしは高い評価が期待できると思っていたのに」
「魔法に対するポテンシャルは高いな、でも、運動神経ないだろアイツ」
「ええ、まあ、外で走り回っている姿は想像できないわね」
「俊敏でもないし、体力と防御力がないから基本的に誰かと組まないと、魔法を出す前にやられちまう」
「でも、うちは基本的にチームで行動でしょ」
「ああ、ま、基本的に結界をはるのが仕事だがな、それでも0.5人前ってところだな。今、許可が下りてる魔法じゃ魔物を倒しきれねぇうえに、魔法主体の戦闘時以外はは役に立ってねぇのが現状だ。捜査のほうは、知っての通り動物と会話のできる特殊能力が売りだ」
「様々な方面から情報を聞き出すのは重要な事ね。」
「欠点があるとすれば、証拠にはならないってことだな」
「それはしかたないわね、けど、ルシードさん達がしっかり裏付けできれば問題ないわ」
「ああ、分かってるよ、現代捜査の基本はあくまで化学だからな」
 ルシードの言葉を聞いて、メルフィ満足したように頷いた。雑用紙の束を捲って何も書かれていない紙に全体評価と書き込んだ。


「次は全体の評価をお願い。」
「全体か・・・。とりあえず戦闘面では平均的な保安局員2.5人分の働きはできるんじゃないか?」
「え、どうしてですか?」
「あ。なにかおかしなこといったか?」
「だって、ルシードさん。ルシードさんやバーシアだけで2〜3人相手にできるって言ったじゃないですか」
「ああ。それで?」
「それで、て。おかしいじゃないですか?ルシードさんが3人、バーシアさんが3人、ビセットさんが0.8人、ルーティさんが0.7人、フローネさんが0.5人なら、3+3+0.8+0.7+0.5=8でしょ」
「そりゃ素人の考え方だろう。他の連中が怪我しようと、どうしようと関係ねぇってんならそうなる。いいか、チームワークってのは掛け算なんだよ、俺やバーシアはたいてい他の連中が怪我しねぇようにフォローにまわっているから自然と戦闘能力は落ちちまうってわけだ」
「他の三人は足を引っ張っていると言いたいんですか?」
「キツイ言い方をするとそうだ。まあ、こればっかりは仕方ねぇ。何年も訓練をやってきた俺やバーシアとくらべたら、いくら何でも他の連中が可哀相だろ。」
「そうね。でも、幸いなことにここは養成施設でもあるわ。ルシードさんにはビシビシ指導してもらわないと」
「なんでそうなるんだよ・・・」
 戦闘訓練など一朝一夕どうこうなるものではない、そのうえビセット達はお世辞にも熱心に訓練しているとは言えない。意識改革には時間がかかりそうだし、正直言って面倒くさい。これ以上突っ込まれる前にルシードは話を進めた。
「捜査に関して言えば、人数が少ねぇから当然人海戦術のようなことはできねぇ。あと鑑識の類もできるやつが少ねぇな、教育を受けいているヤツが俺、ゼファー、メルフィの3人だけってのも問題があるんじゃねぇのか?」
「魔法能力者が少なくなっている現代では、人材の補給は難しいところね」
「そういうこったな」


 一通り評価が終わるとメルフィはこんなことを言ってきた。
「なるほど、でも以外ね。」
「なにが」
「実はゼファーさんにも皆の評価をしてもらったんだけど、ルシードさんと同じような評価をしたのよ」
「あん!ゼファーに聞いていたなら俺がやらなくてもいいだろうが」
「そう言うわけにはいかないは、リーダーなんだし一応ルシードさんにも評価してもらわないわけにはいかないわ」
「一応ってお前な・・・」
「あ」
 ルシードはあきれて半眼になった。メルフィはときどき、ズケズケした物言いをすることがある。しかも、本人にも自覚がなく、ある意味ルシードよりたちが悪い。
「ま、いいけどよ。アイツがいろいろすげぇヤツだってのは認めるしな」
「あら、そうなの?」
 ルシードは素直にゼファーより未熟なことを認めたがメルフィには以外だったらいし、あからさまに驚いて以外だという顔をしている。
「おまえな、俺を何だと思ってるんだ。」
「え・・・とっ」
 メルフィは視線をそらせて、頭に浮かんだ言葉(自信過剰、傍若無人、唯我独尊
)がルシードに伝わらないように努力したが、効果がなかったようだ。ルシードはフンと鼻を鳴らしてから話を続けた。
「単純に考えればゼファーを10とした場合、俺は7〜8の間ぐらいの力しかねぇだろうよ。それでも充分及第点だとおもうぜ」
「・・・そうかもしれないわね。じゃあ、余計ルシードさんにはがんばってもらわないと」
「なんでそうなるんだよ。前にもいっただろ、俺がゼファーやったってしょうがねぇだろ。」
「どうして?ゼファーさんが10なら、ゼファーさんを目指すべきでしょう?」
「そりゃ、おまえがゼファーと同じタイプだからそう見えるんだよ」
「わたしと同じタイプ?どういうことよ?」
「話してやってもいいけど、どうせおまえは理解できねぇよ」
 ルシードの言葉にメルフィは顔を歪めた。整った眉毛がつり上がる。「理解できない」という言い方が気に入らなかったらしい。体全体から話せというオーラを出している。話したほうがよさそうだ。
「あ〜っと、例えばだ12の力がないと解決できないような事件があったとするだろ。その事件を俺が解決しようとすると、4〜5位の被害が出る。この時ゼファーが解決しようとするとどのくらいの被害が出ると思う?」
「2でしょう」
 メルフィは当然と言わんばかりに即答した。が、ルシードの考えは違った。
「いや、12だ」
「え、だって、12−10で・・・」
「んなことわかってるよ。けどそうなんだ、あいつは自分の土俵じゃ完全無敵だけど、自分の能力を超えたことにぶつかると何にも出来なくなっちまうこころがあるんだよ。おまえだって似たようなもんだろ」
 本人も自覚していることだが、メルフィは真面目で几帳面な反面、融通がきかず突発事態に対応できないところがある。
「そうかしら?わたしはともかく、ゼファーさんはそうは見えないわ」
「そりゃ、12の事件なんて早々起きねぇからな。もし、起こったとしてもあいつなら2以上の力を持ったヤツを先に向かわせて、解決に必要な力が10以下になったところを見計らって登場するだろうよ」
「・・・そんなものかしら」
「・・・そんなもんなんだよ。ま、本人は否定するぜ。あいつ負けず嫌いだから、自分の欠点を認めねぇんだよ」
「・・・・・・」
「おい、ちょっとは信じろよ。あいつとの付き合いは俺の方が長いんだぜ」
「にわかには信じられないわ」
「あ〜そうかい、・・・ま、いいけどな」
 メルフィの反応は予想の範囲内である。どんな時も非常にクールで無表情のゼファーが万能だと幻想を抱いている人は意外と多い。ルシードも幼い頃はそう思っていてゼファーの欠点に気が付いてしまったときは、子供にプレゼントを配る赤いひげ老人の正体を知ったとき以来のショックだったことを覚えている。実際の年齢より落ち着いた物腰にまんまと騙されていたのである。とはいっても、ルシードにとってゼファーはいつか超えてやろうと思っている目標であることには変わらないのだが・・・。
「そういや、このあいだ俺の評価は聞いたけどよ。他の連中の事はどう思ってるんだおまえ」
「え、そうね・・・。」

 このあとすぐ、ルシードは自分で地雷を踏んでしまったことに気が付いたが、自分から話を振ってしまった手前、メルフィの皆に対する評価(ぐち)を永遠と聞かされることになった。



後書き
 最後まで、読んでいただいた方、ありがとうござました。作者です。
 今回はこの悠久自由曲ないでのPBの設定を書かせていただきました。実際のプレイ中はルーティ、フローネは1〜2回下級魔法を唱えるとガス穴になるは使い捨て回復アイテム、結界装置。ビセットはサボってばっかりいるのでピンピンしているので、ルーティ、フローネの壁、バーシアは攻撃してもほとんど当たらないし、物理攻撃に弱いのでいてもいなくても大して変わらないキャラだった。組曲のルシードの説明どおり使えない。そして、攻撃魔法が使えねぇ、必死になって覚えさせたコロナが敵のHPの1/10も削れなかった時は泣きたくなりましたよ。2週目以降の必殺呪文はデモリションとリダクション・・・障害魔法かよ・・・。UQ1のときシャドウとの最終戦、一撃でどのくらいダメージを与えられるか、ゲーム仲間と争った思い出がありますが・・・。あの爽快感に帰ってきてほしいです。
 それでは機会がありましたらまた私の駄文にお付き合いください。最後にもう一度、皆さんありがとうございました。

2007年 原作 悠久幻想曲3 PerpetualBlueより  蟲田
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