中央改札 交響曲 感想 説明

悠久幻想曲Symphony 第五節『目薬茸騒動―影との遭遇』
風倉天覇


ルーカスはその日―

「あ〜・・・・・・だりぃ〜・・・・・・」

おもいっきりだれていた(ぉ
理由は至極単純

「なぁ、テディ・・・残ってる仕事何かないか〜?」
「同じ事四回も聞かないで欲しいっス・・・」

テディは投げやりな風にルーカスに返す

「うー・・・暇だよー・・・」
「暇なら図書館に行ってくれば良いじゃないっスか?」

テディはルーカスの趣味の一つである読書に行く事を勧める
しかし、そのテディの言葉を聞いたルーカスはテーブルに屈して一言

「・・・・・・今日は図書整理の為、休館だそうな・・・」

元気なく呟く
そんな折、ジョートショップに来客

「ルーカスさんいる!?」
「どうした、トリーシャ? そんなに慌てて?」

ドアを乱暴に開けて入ってきたのはトリーシャだった
そして、次の一言は暇なルーカスにとっては、最高の一言だった



「アリサおばさんの目が治るかもしれないんだ!!!」






悠久幻想曲Symphony 第一楽章『タナトスの歌』 第五節『目薬茸騒動―影との遭遇』






「さて、諸君・・・今日集まって貰ったのは他でもない・・・アリサさんの為だ」
「おばちゃんの為?」

アレからルーカスはトリーシャに話を聞き、集められる面子を集めてジョートショップで打ち合わせをしている
そして、ルーカスに一番近い席に座っている赤毛の少年がルーカスの言葉を反復する

「そうだピート・・・もしかしたらアリサさんの目が治るかもしれないと言う話だ」
「えっ!? おばちゃんの目が治るの!?」

赤毛の少年―ピートは心底驚いた風に言う

「でもよ、ドクターでも無理だったのが、その・・・何だっけ?」
「目薬茸」
「そう、その目薬茸で治るのか?」

アレフが不思議そうに言う

「トリーシャの話では目薬茸と言うのはあらゆる目の病を治せるらしい」
「へぇ・・・そいつならアリサの目も治せるかもね」

ピートの隣にいるエルが感嘆する

「そういう事だ・・・で、その目薬茸とやらが天窓の洞窟とやらに生えてるらしい」
「で、私達に応援を頼もうって訳だ」
「そんな所だ・・・尤も、ピートを誘う予定はなかったがな」

アレフの隣に座るリサを見ながらルーカスは答える

「へっ、このオレを抜きに冒険なんてズルイからな!」

ピートが親指で自分の胸を指す

「ま、使えない訳じゃないから良いけどよ・・・」

そう言うとルーカスは立ち上がる
そして―

「よし、皆さん・・・行きましょうか!」






「は、良かったんだが・・・何処であの馬鹿はこの話を聞いたんだ・・・?」

ルーカスは山道を迂回した森を歩いている
理由は単純

「ま、トリーシャの事だ・・・街中に言いふらしたんじゃないか?」
「トリーシャさんの事だから考えられるっス!」

エルがルーカスの後ろを歩き、同意したテディは相変わらずルーカスの頭の上だ

「・・・だろうな・・・でなきゃ、あのバカベルトにこの話が伝わる訳ないよなぁ・・・」

ルーカスはため息をつく
今話に出たバカベルトことアルベルトだが、何故かルーカス達と同じ様に目薬茸を目指して天窓の洞窟に向かっている

「でもよ・・・本当にこの道で大丈夫なのか?」
「あ? 何で?」
「だってどう考えたって遠回りだぜ?」
「『急がば回れ』って言うじゃん、良いの、良いの」






そんな風に談笑しながら歩く一行は、件の洞窟の前まで来た
辺りに人の気配はない

「ほら、誰もいないじゃん」
「でも先に入ってるかもしれないよ?」

そういうリサが洞窟を見据えている

「ふむ・・・だったら・・・よし!」

ルーカスは一頻り考えると、何処からかスコップを3本取り出した

「・・・何をするんだ、ルーカス?」

アレフがルーカスにおっかなびっくりに聞く
そのアレフの問いにルーカスは、人の悪い笑みを浮かべて―

「何、猪除けを作るんだよ♪」









ルーカス達が洞窟に到着してから数十分後、アルベルトとその部下2名が洞窟に到着した

「着いたぞ!」
「そんなの見れば分かりますよ、アルベルトさん・・・」

部下Aは呆れたような顔をしながらアルベルトを見る

「ふっふっふ・・・これでアリサさんの為に目薬茸を持っていけば・・・アリサさんも俺の事を・・・!」

アルベルトは半ば妄想しながら肩を揺らしている

「まったく・・・アルベルトさんも私用に巻き込まないで貰いたいよな・・・」
「あぁ、まったくだ・・・」

小声で愚痴る部下Aと部下B

「よし、行くぞアーノルド、ボブ!」

アルベルトは2人の部下を呼ぶ
部下Aことアーノルドと部下Bことボブは渋々ながらアルベルトの裏を歩く
そしてアルベルトが足を前に出し、地を踏む
しかし、その直後、その足場は消失した

「「「・・・・・・・・・へ?」」」

当然、足場が消失した以上、起きる現象はただ一つ―



「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!?!?!?」」」


落ちるしかない訳である
そして、彼等は―




ドボーンッ!




着水した








「・・・・・・今、誰かの絶叫が聞こえた気がする」

洞窟のを歩く面々の最後尾を歩くエルが呟く

「気のせいだろ、気のせい♪」
「ルーカスさん鬼っス・・・」

先頭をご機嫌なルーカスが歩く
手にはナイフを逆手に持っている
テディはルーカスの着ているトレーナーのフードの中に入っている

「しっかし・・・2mばかし掘ったら地下水脈に繋がるとはね・・・びっくりしたぜ」
「ほんとだよなー」

その後ろを歩くアレフとピートはぼやく様に言う


彼等は対アルベルト用に洞窟の入り口の手前ぐらいに落とし穴を掘った
穴を掘ったまでは良かったのだが、実はその穴が地下を流れる水脈に当たったのだった


「ま、俺を敵に回すアイツが悪いんだよ」

ルーカスは邪笑を浮かべてご機嫌に歩く
尤も、皆は後ろを歩いているからその笑みを見る事はない

「しかし・・・いつまでこんな道が続くんだろうね・・・?」

アレフとピートの間にいるリサが呟く様に言う


先程から一同が歩いている道だが、狭くどうやっても大人一人しか通れない様な横幅しかない
天井も低く、ルーカスが普通に歩くと髪が掠ってしまうほどしかない
故に、テディはルーカスのトレーナーのフードの中にいるのだ

「ま、その内広くなんじゃないの、って、噂をすれば何とやら・・・かな?」

ルーカスは足を止め周囲を見渡す
一同もルーカスと同じ様に周囲を見渡す

「ん〜・・・自然のホールって所かな・・・?」
「そうみたいだね・・・」

一同は広い、ホールの様な所に出た
30uぐらいの空間が自然に出来上がっていた

「ふむ、アレが天窓の洞窟たる由縁かな・・・?」

アレフは上を見上げる
天井の所々に出来た穴から射す太陽光が洞窟内を照らす
これが天窓の洞窟たる由縁なのだろう

「おー、結構綺麗だなー」
「へぇ、ピートもそんな事言うのかい?」
「あっ、何だよエル! それ、どういう意味だよ!?」
「ふふふ、そのまんまさ」
「なにーっ!?」
「エル、ピートをあんまりからかうな・・・後でめんどくさくなるから」

ピートをからかうエルを嗜めるルーカス

「分かったよ・・・」
「そうだ、そうだー!」
「お前も調子に乗るな」
ポカッ
「いてっ、何するんだよルーカス!?」
「さてと・・・いつまでもここにいる訳にもいかんでしょうに・・・行きますか」

怒っているピートを無視して先に行こうとするルーカス
アレフや他の面々も付いて行こうとしたその時



「ちょーっと、お待ち下さい!!」



後方から声がしたので全員一斉に振り向く・・・尤も、喋り方で誰かは一発で分かるが(ぉぃ
そして、ルーカスが相手の顔を見て一言


「・・・・・・・・・埴「それだと他人の名前になるでしょうが! せめてカタカナかひらがなにしなさい!!!」(大汗
「・・・・・・現実のネタを持ち出すのはお世辞にも良いとは言えないな」


憮然とした顔で相手を睨みつけるルーカス
ってか、勝手に出したお前が悪いんだろうが(大汗

埴輪さん、心からお詫び申し上げます 風倉天覇

「んな事、最後にやれよ・・・」

勝手にほざき始めたお前が悪いんだろうが

「・・・・・・クソ作者が」
「・・・・・・・・・作者との喧嘩より我々をかまって欲しいのですが・・・」

器用にも、はにわの様なお面から汗を垂らす来訪者達
改めて、来訪者達を見るルーカス

「で・・・はにわ仮面が俺に何の用?」

ルーカスがはにわの様な仮面を付けた相手を睨みつける

「おー、恐い、矢張り前科者の目は恐いですなー、ゲラゲラゲラ!」

はにわ仮面はルーカスの目を見てゲラゲラと笑い出す
それを取り巻くごろつき風の奴らもクスクスと忍び笑う
それを聞き、ルーカスは更に強く睨みつける

「なんだ、てめぇは・・・何様だよ、いきなり人を前科者呼ばわりしやがって・・・」

その声も先よりドスがかっていて恐い

「おい、ルーカス・・・」
「大丈夫だ、俺は冷静だよ・・・」

そうは言うものの、どう考えても冷静に見えないルーカス

「クックックッ・・・ちょっと煽ると怒り出す・・・これだから前科者は恐いですねぇ・・・」
「ちょっと・・・アンタ、いきなり人を怒らせる様な事言って・・・何者さ?」

耐え忍ぶように笑うはにわ仮面にリサが詰め寄る

「おっと、申し送れました・・・私、ハメット・ヴァロリーと言う者です・・・以降、お見知りおきを・・・」

はにわ仮面―ハメットと名乗った男は慇懃無礼に一同に挨拶する

「で・・・そのハメットさんとやらは俺に何用で?」

ルーカスもハメットと同じ様に慇懃無礼に聞き返す

「貴方に用事はございません・・・私が用のあるのはこの洞窟にあるお宝のみです!!!」
「行くか、皆」

ルーカスはハメットの話を半分も聞かずに踵を返し、奥へ進もうとする

「な、だからお待ちくださいと申しているでしょう!?」
「うるせぇ! そんな夢物語みたいなモンがここにあるか!!」

ルーカスはハメットに向けて親指を立てた状態の拳を下に向けて、怒鳴り散らす

「な、何と下品な事を!? これだから前科者は・・・!」

ハメットが肩を震わせる様を見て、ルーカスの中の何かがキレた

「野郎・・・聞いてりゃ人を前科者、前科者って・・・てめぇ何様だよ!!?」

ルーカスは中指を立ててハメットに向ける


そんな事するから下品って言われるんだよ?


「はんっ、前科者に前科者と呼んで何が悪いのでございますか!?」

その一言にルーカスは握り拳を解き、その掌をハメットに向ける
その掌にルーカスの体内の魔力が集まり、徐々に赤い色のエネルギーを形取る
そしてルーカスは魔なる法を繰るキーワードを言い放つ

「・・・ブレイズ!」

すると、ルーカスの手から炎が放たれ、その炎は真っ直ぐハメットの許にまで飛び、ハメットの足に纏わり付く

「うおおぉぉっ!?!?」

ハメットはいきなりの攻撃魔法に戸惑いながら足をじたばたさせる

「よっしゃ、今の内に行くぞ!」

ルーカスはそう言うと洞窟の先へと走って行く

「あ、ちょっとボウヤ!」

リサがそれを追い、それを更に他の面々が追う様に走った



ルーカスは例のホールから100mぐらい走った所で止まった

「はぁ・・・はぁ・・・ここまで来りゃ追っかけて来ないだろ・・・」

ルーカスは腰を下ろし肩で息をする
それを後から追いかけて来た面々が追いついた

「おい、ルーカス、いきなり走ってく事は無いだろ・・・」
「そうだよ、まったく・・・」
「はは、わりわり」

アレフとエルが口々に文句を言い、それに苦笑するルーカス

「まったく・・・ボウヤも酷い事するね・・・」
「でも、スッキリしたな〜!」

リサとピートが先程ハメットに魔法を撃った事に関してコメントする

「ま、因果応報って奴だな」
「そうっス! ルーカスさんの事を悪く言いまくったからあんな目にあったっス!」

フードの中で色々と言うテディ
息を整えたルーカスは腰を上げる
そして辺りを見回すと、ある事に気付く

「ん・・・・・・あんな所に」
「何かあるのかい?」

ルーカスの後ろからエルが覗き込む様に見る
アレフ達もエルと同じ様に覗き込むように見る

「湖か・・・地底湖、って奴かな?」

ルーカスは目前の地底湖に向けて足を伸ばす

「何するんだい、ボウヤ?」
「喉渇いたから水飲んでくる」

ルーカスは地底湖のすぐ傍まで来ると、水面に浮かぶとあるモノを見つけると―

「・・・・・・」

足元の石を拾い上げ、ソレ目掛けて―

「てりゃああっ!」

思い切り投げつけた


ゴツン


投げられた石はソレに当たり―

「がぶっ!?」

ソレは呻き声を上げ、地底湖の湖底へと沈んで行った

「・・・・・・今のアルベルトじゃ・・・?」
「・・・まさか?」
「いや、でもあの地下水流が繋がってれば・・・」

後ろで密談する一同を無視し、ルーカスは地底湖の水を両手ですくい口に運ぶ

「ん・・・・・・中々の美味・・・よし、折角だし・・・アリサさんの土産に持って帰るか」

すると、ルーカスは何処からか水筒を取り出し、それに水を汲むと一同の許まで戻る

「よっしゃ、それじゃま行きましょうか」
「あぁ」

ルーカス一行は再び洞窟の奥へと足を向けた

「しっかし・・・何処まで続くんだろうな・・・この洞窟」

地底湖から十数分程歩いた所でアレフが呟く

「ん・・・もう少しだな」
「何で言い切れるんだよ?」
「アレ」

ルーカスが指差すその先から光が漏れている

「そうみたいだね」
「よし、行きますか」

その直後―

「マデ」

ルーカスの目の前に一人の―否、一体の魔物が現れた
その魔物は他の動物に例えるのならアルマジロの様な硬い皮を背に持った魔物だ
人語を理解し、話すと言う事は、それ相応の知能もあると言う事だろう

「ココカラ先ハ聖域ダ、通ス訳ニハイカナイ」

魔物はそう言うと腰を低くし、今にも飛び掛って来そうな構えを取る
それに対し、ルーカスは―

「聖域だか何だか知らねぇけど・・・アリサさんの目を治す為だ・・・通して貰うぜ・・・!」

腰のナイフを抜き、逆手に持ち、すぐにでも斬りかかれる姿勢にする

「ボウヤ、手伝うよ・・・」

ルーカスの横にいるリサもナイフを抜き、同じ様に構える
しかし、ルーカスは―

「なーに、コレぐらいの相手なら俺一人で大丈夫だって・・・!」

ルーカスはそれだけ言うと、魔物に向けて飛び掛る
まず、ルーカスは逆手に持ったナイフを袈裟に振るう
魔物はソレを一歩退き、躱すものの―

「甘いんだよぉ!」

袈裟斬りの勢いを利用した左の後ろ回し蹴りを魔物の頭に叩き込む
更に、体勢を崩した魔物の後頭部に左手を乗せ、その左手に魔力を集めて―

「ルーンバレット!」

ルーカスの指の間から赤い火が漏れる
その火が収まった時、魔物は前のめりに倒れこみ、そのまま絶命した

「ふぅ・・・ざっとこんなもんだろ」

ルーカスは足を伏している魔物の後頭部の上に乗せてリサ達の方を見て一言

「言ったろ? 俺一人で大丈夫だって?」

そして、不敵な笑みを浮かべた









「よっしゃ、これだけあれば大丈夫だろ!」

アレフは持って来ていたナップサックに採れるだけの目薬茸を詰めた

「少しは残しときなよ、でないと目薬茸が生えなくなったりする事があるから」
「分かってるよ」

エルの忠告に笑って返すアレフ

「よし、それじゃま帰りますか」
「そうだ―ね、と言う訳にはいかないみたいだね・・・」
「へ?」

リサの剣呑な声にルーカスはリサを見る
そして、リサが向く方へと再び視線を変えた時―

「な・・・!?」

ルーカスはそれを見て唖然とした
何故なら、先程絶命した筈の魔物が起き上がっていたのだ
更に、魔物は口端を歪ませ笑っていたのだ

「くっくっくっ・・・やるじゃねぇか、ルーカス・・・思った以上に強くてやられちまったぜ・・・」

魔物は先程とは打って変わって流暢に喋っている

「な、何でお前が俺の名前を知ってるんだよ!?」

対するルーカスは魔物に自分の名を言われた事に驚いている

「んな事はどうだっていいじゃねぇかよぉ・・・」

魔物がそう言った直後、魔物の足元の影が蠢き、そして魔物を包み込む
それはまるで繭や蕾の様にも見えた

「な!?」

ルーカスはそれを見て咄嗟にナイフを抜き、構える
リサやアレフ等もルーカス同様、いつ何があっても動ける様に構えを取る

「おいおい・・・そんなに身構えなくたって良いじゃねぇか・・・」

黒い蠢くモノの中から魔物の声が響く
その直後、そのモノがまるで蝶が羽化するが如く、花開くが如く割れる
そして、その中に魔物の姿はなく、一人の男の姿があった

「今回はただの顔見せなんだからよぉ・・・」

男は目を全部隠す様な眼帯を付け、更に服は拘束服に酷似した物を着用していた

「おいおい・・・魔物が脱皮してみたら変態さんでした、ってか?」

ルーカスは男を注意深く見ながら、距離を少しづつ詰めて行く

「おいおい、何を警戒してんだよ・・・兄弟」

男の兄弟と言う言葉にルーカスが反応した

「・・・お前、俺の事を知ってるのか・・・!?」


カラン


ルーカスは半ば呆然とし、ナイフを取り落としてしまう

「あぁ、よ〜く知ってるぜ・・・お前の事をな」

男は卑しい笑みを浮かべる
その一言にルーカスは―

「だったら、教えてくれ!」

左手で自分の胸を押さえ叫んだ



「俺は、俺は何者なんだ!?」



その叫びに男は―

「やだね・・・今日は顔見せだけ、って言っただろ?」

男はそう言うと、その体を宙に浮かせる

「な・・・!?」
「顔見せだから今日はここでさよならだよ、じゃあな、兄弟!」

すると、男の下にある影が再び男を包み込む

「待て、お前は誰だ、誰なんだ!?」

そのルーカスの叫びに、男は答えた


「俺か・・・? 俺は・・・俺はシャドウ・・・シャドウだ、覚えときな!」

そして、蠢く影はルーカス達の前から消失した







シャドウと名乗る男がルーカス達の目の前から消えた後、ルーカス達はジョートショップに戻った
そして、アリサに目薬茸を煎じた薬を飲ませた所、結局効果はなかった
そこに通り掛かったトーヤの説明を一同は聞き、納得し、ルーカスはアリサの目の薬を手に入れる事を改めて決意した
そして、時は過ぎ夜、ルーカスはさくら亭にいた

ルーカスはカウンター席の一番奥でグレープフルーツジュースを飲んでいる
ただ、表情は暗く、そして何かを考えているようだった

「・・・・・・・・・・・・」
「・・・ねぇ、ルーカス」

そんなルーカスにパティが声をかける

「・・・・・・何だよ?」
「あんた、さっきから様子が変だけど・・・何かあったの?」
「・・・・・・・・・なぁ、パティ」
「何?」
「俺って・・・何なんだろうな?」
「え・・・?」

ルーカスの呟きの意味を理解出来ないパティ

「結局の所、俺は自分が何なのかって事を全然知らない・・・だから・・・さ、俺って何なんだろうな、って思ったんだよ」

顔を伏せ、テーブルに屈しているルーカス
そんなルーカスにパティは―

「何言ってんのよ、あんたらしくない」
「へ・・・?」
「だから、言ってるでしょ、あんたらしくないって」
「・・・どういう意味だよ?」
「だぁかぁらぁ・・・」

パティはルーカスを指差して―

「いつも馬鹿やって、騒動起こして、お人好しなあんたが、そうやってウジウジ悩んでるのはらしくない、って言ってるのよ!」

パティの言葉にポカンとするルーカス
しかし、少しすると―

「ふふっ・・・それもそうだな」

ルーカスは笑いを堪えながらパティを見る

「な、何よ・・・?」

パティは顔を少し赤く染め、ルーカスを見据える

「悪いな、愚痴聞いてもらっちまって」

そう言ってルーカスは自分の財布からお金を出し、カウンターの上に置く

「何、もう帰るの?」
「あぁ、今日は明日の為にさっさと帰って寝るとするよ」
「明日の為? 明日何かあるの?」

パティはお金を取りながら、店を出ようとするルーカスを見る
ルーカスは店のドアノブを掴み、振り返って一言―

「何もないさ・・・けど、明日もちゃんと俺らしく居られるように・・・な」

そしてルーカスはさくら亭を後にした
中央改札 交響曲 感想 説明