中央改札 交響曲 感想 説明

悠久幻想曲Symphony 第七節『ルーカスの平凡?な日常』
風倉天覇


「うむ、傷の方に特に問題はないな・・・」
「つー事は・・・完治したって事?」
「あぁ、お前も特に変な症状がないのであれば完治と言う事になるな」

そこはクラウド医院の診察室
そこに医院の主であるトーヤとルーカスがいた
ルーカスは上半身の服を脱いでいる
ルーカスの体付きは中肉中背と言った所だ
だが、普通の人と違い、右胸の下辺りに傷がある

「よっしゃ、これで万事解決だぜ♪」

手近に置いてあったシャツを着るルーカス

「しかし・・・お前も凄い奴と言えば凄い奴だな」
「? 何で?」

トーヤは呆れながらため息をつき、ルーカスを指差す

「肝臓を刺されて、おまけにアレだけの出血をしていたんだ・・・その上で生きてるお前はある意味凄い奴だ」
「なーに、ただ俺がしぶといだけだろ」

上着を着てトーヤを見、苦笑するルーカス
トーヤは皮肉めいた笑みを浮かべる

「そうかもな」
「そうだってば」

苦笑を浮かべるルーカスはトーヤに背を向け、診察室の扉を開ける

「じゃあな、ドクター、また今度怪我した時によろしく」
「以前に怪我をするんじゃない」

ドクターの声を背中に受け、ルーカスはクラウド医院を後にした









悠久幻想曲Symphony 第一楽章『タナトスの歌』 第七節『ルーカスの平凡?な日常』









「さて・・・そろそろ昼飯時ですが・・・どうしますかね・・・」

ルーカスが独り言を呟きながら立っていると―

「おーい、ルーカスさーん!」

ルーカスは呼ばれた方を向く
そこには―

「トリーシャに、エルに、マリア・・・・・・これまた珍しい面子が揃ってるな」

ルーカスが目をやった方にはトリーシャ、マリア、エルの三人が一緒になって歩いていた
一番前を歩いていたトリーシャがルーカスのすぐ傍まで来る

「探したんだよ、ルーカスさん!」
「俺を?」
「うん、実はマリアがね」

その続きは後方から着いてきたマリアが語を繋げた

「うん、この前のお礼をしようと思って」
「・・・この前のお礼?」

ルーカスは頭の上に?マークを浮かべる
それに、エルが助け舟を出す

「ほら、マリアの家のペットモンスターを捕まえた時だよ」
「あぁ、アレか!」

ルーカスが手をぽんと叩きながら思い出す


先日、マリアが買い始めたペットモンスターが逃げ出し、その際、ルーカスとトリーシャ、それにエルの助力があり、ペットモンスターを捕まえる事があったのだ


「で、お礼って何?」
「えっとね、マリアが皆にお昼を奢ってあげようかなって」
「ほぅ、随分と嬉しい事してくれる訳だね」

ルーカスは嬉しそうに唇端を持ち上げる

「うん、それでね、さくら亭に行こうって話になったんだ」
「ふむ」
「で、アンタをジョートショップに迎えに行ったけど居なくて、アリサに聞いたらここだって言ったから皆で迎えに来た訳さ」

エルがご丁寧に説明してくれた

「ふーん、成る程」
「で・・・アンタは何で病院なんかにいるんだい?」
「あぁ、ほれ、俺が行き倒れた時の大怪我を診て貰ってたんよ」
「・・・あの時の怪我かい」

エルの表情が少しだけ曇る

「ま、ドクターが完治したって言ってくれたからな・・・問題ないさ・・・それよりも、行かないのか?」
「あ、そうだね、行こうか」
「うん、行こう☆」

そうして彼等はさくら亭に向かった








「ふぅ・・・・・・ごっそさん」

ルーカスは手を合わせる

「美味しかったね、特にこのブイヤベースとか」
「うん、マリア気に入っちゃった☆」
「そうだね、私はスズキの香草焼きも良かったと思うよ」

女性人がメニューの批評をしている
食事中にちょっとした事があったが、どうやらそんな事は頭の中からすっきり忘れ去ってるようだ

「さてと・・・俺はこの辺でお暇するかな」
「え、もう行っちゃうの?」

トリーシャの言葉に苦笑するルーカス

「あぁ、ちょっと約束があってな」
「約束?」
「あぁ・・・何なら着いて来るか?」
「良いの?」
「あぁ、約束たって大したもんじゃないしな」
「じゃあ付いてこうっと♪」
「じゃあマリアも☆」

そのルーカスの言葉に、頷くトリーシャとマリア

「エルはどうする?」
「私は帰るよ、マーシャルに昼には帰って来るように言われてるしね」
「そうか」

そう言って立ち上がるルーカス

「うし、んじゃま行きますか」











そこは日の当たる丘公園
休日は暇人で一杯になる場所だ(ぉ
その公園の一角でナイフを片手に向かい合ってる男女がいる
男が先に動く
ナイフを順手に持ち、女に向けて突き出す
女はそのナイフの切先を自分のナイフで逸らし、男のバランスを崩す
バランスを崩された男はそのまま前に突っ込む
そんな男の背中に女が蹴りを放つ
しかし、男は一歩踏みとどまって、バックブロー気味にナイフを振り回す
女はその予備動作を見切り、蹴りを放つのを直前にやめ、一歩後ろに退く
男は、女に向き直り、再び刺突を繰り出す
女はそれを動いて躱す
男は先と同じ様にバックブローを放とうとする
が、しかし―

「チェックメイト・・・かな?」

後頭部にヒンヤリとした感触を感じ、放つのをやめる

「・・・・・・また、俺の負けか・・・」

男―ルーカスはため息を吐く

「でも、前と思うと随分強くなったんじゃないか?」

女―リサはナイフを腰の鞘にしまう

「そうかね・・・?」
「そうだよ」

ルーカスはナイフを腰にしまってから腰を下ろす

「でも、ルーカスさん格好良かったよ」
「うん、マリアもそう思った☆」

傍で見ていたトリーシャとマリアがルーカスを褒める
それに対し、ルーカスは苦笑を浮かべる

「でも、負けは負け・・・さ」
「ま、それもそうだね」

リサがそう言った直後
公園の入り口の方から叫び声が聞こえた

「マリア様あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「・・・・・・この声・・・まさか・・・?!」

ルーカスは顔を青褪めさせながら入り口の方を向く
すると、その方角から土煙を立てながら何かがこちらに向かって疾走して来る


「マリア様ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」


失踪してきた人物―マリアの家の執事は―

「げぶほっ!?」

ルーカスを轢きながらマリアの前に止まる

「マリア様、何故ここにいらっしゃるのですか!?」
「え、ルーカスに付き合って「何ですとぉ!?」

執事は次の瞬間、手に一丁の拳銃を取り出す
454カスール弾を使用したリボルバー拳銃―レイジングブルと呼ばれる代物だ

「えぇい、マリア様と付き合う等百万年早いぞ、何処へ行った?!」

執事は辺りを見回す
当然、足元でずたぼろになってる対象は目に入っていなかった








それから数十分後、意識を取り戻したルーカスは開口一番

「殺す、絶対に殺す!」

手にナイフを持って執事に襲い掛かろうとする

「ちょ、ボウヤ、やめなよ!」

それを後ろから羽交い絞めしながら説得するリサ

「そ、そうだよルーカスさん、真面目に恐いよ!」
「そうだよ、ルーカス!」

米神に汗を垂らしながら必死にルーカスを止めようとするトリーシャとマリア
対する執事は土下座しながらルーカスに謝り続ける

「も、申し訳ございません、私の早とちりが悪かったです、ですからどうかお命だけはご勘弁を・・・」

流石に目がイッちゃって、ナイフ振り被ってる人は恐いようだ(ぉ

「・・・・・・ちっ、次は本気で殺すかんな・・・」

物騒な発言をしながらナイフをしまうルーカス
それを見て安堵する執事
その執事に声をかけるマリア

「で、マリアに何の用なの?」
「おぉ、そうでした!」

執事は立ち上がり、ズボンに付いた草を払う

「マリア様、モーリス様が帰ってきて欲しいとの事です」
「パパが?」
「はい」
「ふーん・・・分かった、じゃあマリア帰るね」
「そう言って頂けるとありがたいです、マリア様」

そう言って一礼する執事
コレだけ見てると、とても執事っぽい
マリアはルーカス達の方を向く

「それじゃ、そう言う事だからマリアはここで☆」
「おぅ、じゃあな」
「じゃあね、マリア、また学校で」
「じゃあね、マリア」

マリアは執事と共に公園を離れて行った
それと、入れ違いにこちらに向かってくる人物が一人
男、中年の背の低い男がこちらに向かってくる
男はルーカス達の目の前に止まると一言
「貴方がルーカスさんですね?」
「ん? あぁ、そうだけど?」
「ちょっと言い難いんですが・・・借金の返済、お願いできますか?」








「アレフ!」

ルーカスは扉を開け放つと、自分の悪友の名を呼んだ

「ルーカス、来てくれ―」

アレフが座っていた椅子から立ち上がり、ルーカスの方を向き、何か言いかけたが―

「死ねぇっ!」


ドギュンッ!!


ルーカスは全力のボディブローをアレフに叩き込む

「がはっ!?」

ルーカスの一撃により数センチ程宙に浮くアレフ
アレフはそのまま地面に倒れ、腹部を抑え悶絶する

「これで終ると思うなぁ!!」

そんなアレフに蹴りを入れようとするルーカス
それを見て、その場に居たリサとトリーシャ、周りの人間が必死にルーカスを止める

「放せ、こいつをボコらせろ、いや、殺させろ!」
「ぼ、ボウヤ! お、落ち着きなって!」
「そ、そうだよ、ルーカスさん!」
「そうだ、若いの! それに、コイツは今勝負の真っ最中なんだぞ!」

周囲に居た中年男の言葉を聞き、ルーカスは動きをピタリと止める

「・・・勝負?」
「そう、コイツはそこのディーラーと勝負してたんだよ」

中年男が指差すその先にはディーラー服を着た男が立っていた
男はルーカスが見ているのに気付くと、軽く頭を下げる
ルーカスもそれに釣られて軽く頭を下げた
その下げた頭を、そのままアレフに向ける

「で・・・何で勝負なんかしてるんだ?」
「うぅぅ・・・それは・・・」

アレフは腹部を抑えながら立ち上がり、ルーカスを見据えて―

「今は、言えない・・・」
「もっぺん喰らっとくか、ボディブロー?」
「・・・兎に角、勝てば借金はチャラなんだから、少し待っててくれ!」
「おい、アレフ!」
「アレフ、あんた一体何考えてんだい・・・!?」

ルーカスとリサの言葉を無視し、アレフはディーラーの前に座る

「ったく・・・アレフの奴何考えてんだか・・・」
「そうだよねぇ・・・」
「あぁ、そうだ―」

リサが言葉を途中で止め、アレフ―否、アレフの奥のディーラーを見る

「リサさん、どうしたの?」
「あいつ等・・・イカサマしてるよ」
「何!?」

リサの言葉に声を荒げたルーカス、リサと同じ様にディーラーの手元へと視線を移す
ディーラーの手の動きを注視すると、確かに、普通にやっていなかった

「野郎・・・やってくれるじゃねぇか・・・」

ルーカスは米神に青筋を立てながら、手を合わせる

「ルーカスさん・・・何しようとしてるの?」
「ふっふっふ・・・イカサマ等と言う事をしようとする奴には・・・こうさ!」

ルーカスは邪な笑いを携え、手を大きく振った









「はっはっは、いやーすっきりした!」

ルーカスはジョートショップまでの道をアレフ、リサ、トリーシャの四人で歩いていた

「ルーカスさん、凄いねー! ボク、尊敬しちゃうよ!」
「そうだね・・・私もアソコまで手際やるとは思わなかったよ」

トリーシャとリサがそれぞれにルーカスを褒める

「はっはっは、伊達にエンフィールド魔法学園の講師勤めてる訳じゃねぇからな!」

ルーカスはそれを鼻高々として笑う

「そうだね、あんな綺麗な交換魔法は初めて見たよ!」

トリーシャはルーカスを敬いの視線で見つめる

ルーカスはあの時、ちょっとした魔法を使った
それは、交換魔法と呼ばれる魔法で対象Aと対象Bを交換すると言う簡易な魔法だ
イカサマにもってこいの魔法ではあるが、普通に使うと、交換される際に発生する光でばれてしまう
が、しかしルーカスは、別の魔法で光を消したのであるのだが、それは一同には説明してない

「ふははは、どうだ、凄いだろう、褒めろ、褒めちぎれ、ふははははは!」
「はいはい、図に乗るんじゃないよ、ボウヤ」

豪快に笑うルーカスを嗜めるリサ
それを黙って見ていたアレフが急に口を開けた

「ルーカス、悪いな・・・迷惑かけて」
「ん・・・何だよ、急に?」
「いやさ、今回の事で迷惑かけたなと思ってよ・・・」

アレフが普段からは考えられない神妙な顔を浮かべる
それを見てルーカスは微笑を浮かべた

「ま・・・借金もオールチャラになったんだし俺はよしとするけど・・・お前、キャシーさん―」

ルーカスがキャシーと言う名を出した刹那―

「あああっ、それを言うなああ!」

アレフは頭を抱えて、悶える

「はは・・・ひょっとして、思い切り痛い所突いたかな・・・?」
「ひょっとしなくてもそうじゃないのかい?」

リサの言葉を受けルーカスは数秒の間を置き、一言

「・・・・・・放置して逃げるかな」

そう言ってアレフに背を向け、ジョートショップへと向かう

「そうだね、私も行くかな」

そう言ってルーカスの後を付いて行くリサ

「あ、ちょっと、待ってよぉ!」

それを追うトリーシャ
アレフは相変わらず頭を抱え込んでのた打ち回っている


こうして、ルーカスの平凡?な日常は幕を閉じたとさ・・・
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