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血戦[前編]久遠の月


   悠久幻想曲   龍の戦史   第23幕 


龍よ・・・・・・・

汝に問う・・・・・

我等は・・・・・・

そしてお前達は・・・・・・・・

何を為すために産まれてきたのだ・・・・・・・・

何のために・・・・・・

誰の為に・・・・・・・




月が紅く輝いていた。
その月をぼんやりと眺めるヒビキは小声で歌っていた。
この街の・・・・・いや、この世界に、この時間に住む人が使うものとは明らかに違う発音の歌を・・・・・。
上位古代語にも似たそれは、冬の澄みきった夜空に微妙な余韻を残し、消えて行く。
精霊達も彼の心情を汲んだのか今日は騒がず・・・・・・ただ静かに彼の歌声に身を任せている。揺れるように・・・・・・眠るように・・・・・。

「何やってるんだろうな、俺・・・・」

右手でやや長めな前髪を梳くと、ポツリと呟く。それは一切の感情すらない、人形じみた声だった。
それでも・・・・・・・・
また、彼は歌い始めた・・・・・・・



「レディース、アンド、ジェントルメン!さあ、運命の日がやってきました!今をもって、エンフィールド大武闘会を開催しますっ!!!」

ワーーーーーーー!!!!!

歓声が上がる中、ヒビキは目を閉じて、顔を空に向けた。
カスミとほのかは無言でこめかみを抑え、他の人達は間抜けにも大口を開けて硬直した。
稀に見る間抜けな光景である。
「なんで・・・・・」
「あいつが・・・・・」
リサとアレフはそう言葉を吐き出す。底知れない脱力感に襲われながら・・・・・。
「うっわーーーーい♪」
「うっわ、何でアイツあんなとこにいるんだ?」
何故かメロディは喜び、ピートまでもが呆れている。メロディに関してはちょっとアレだが・・・・・。
「シーラ大丈夫?」
「・・・・・え、ええ・・・」
全然大丈夫そうじゃないシーラとそれを心配するパティ。それほどショッキングだと言える。
「「・・・・・・」」
クリスとマリアは未だフリーズしているのでセリフなし、である。
すうぅ・・・・・・
風を切るような息吹の音が聞こえた。

「何やってんだ、おまえはーーーーーーーー!!!!!!!!」

ヒビキの絶叫が歓声に呑みこまれた。
彼の絶叫の先にあったのは・・・・・
何故か司会をするシンの姿、であった・・・・・。
そいつはご丁寧にもこちらの一群に向けて手を振っていたりする。


結局ジョ−トショップ関係の大会参加者はヒビキ、アレフ、リサの3人であった。エルは相応の実力者なのだが、
「めんどい」
の一言で出場拒否している。パティもそれなりに強いのだが・・・・
「私は見るのが好きなの。何、文句あるの?」
との有り難いお言葉が返ってきた。
出場手続きをしたのはテディだった。散々自分ですると言っていたのだが、
「な〜んか途中で逃げそうッス・・・・」
との事で逃げ道を塞ぐ意味で手続きをしたらしい。
「そんなに俺は信用ないのか?」
と聞いたところテディだけではなく他の人物達にも
「ない」
ときっぱりと断言されて不貞腐れていたヒビキがいたのは確認済みである。大会前の騒動はこんなところである。


「はい、これが大会用の剣です。」
やや上気した受付の女の子がヒビキにそう言うと剣を渡した。
「ありがとう。自前の剣とかは使えないんだったよね?」
確認の意味でそう聞くと、
「はい。安全第一ですので・・・・・」
何故か恐縮してしまう女の子にヒビキの方が慌てた。
「あ、責めたわけじゃないんだから落ち込まないでよ?」
「はい。御武運を・・・・・」
そう言うとにっこりと微笑んでくれた。
「その笑顔に見合うだけの努力はするよ?」
ヒビキの方もそう微笑みかける。
・・・・・・・問題なのは、殺し文句を言っているヒビキの認識が全くないことである。自分の一言で顔を真っ赤にしている少女を、
「風邪でもひいてるのかな?」
とか思うところもう救いようがないのであろう・・・・・。


受付のお嬢さんに渡された大会の日程表を見て、最初の対戦者を確認する。
「お前誰と当たったんだ?」
アレフがヒビキの肩に右腕を乗せながらそう聞く。
「お前」
「はい?」
「だから、お前だよ」
「うそだーーー!」
この世の終わりとばかりにアレフは叫ぶ。何しろ、アレフは自分が勝てない事を知っている。暇な時をみて、何度も鍛えてもらった師匠がヒビキである。それこそ自分との間にどれほどの差があるのかは見をもって確認していた。
「まあ、アレフも運が悪かったと思って諦めるんだね」
「リサ〜、お前はヒビキと当たってないからそんな事が言えるんだよ!」
「あたしは当たってないから、言えるんだよ」
「アレフ、今日は試験代わりに全力でこいよ。こちらもそれ相応の対応をするから」
言下に手加減したら怪我するぞ、と言っている。アレフにとってヒビキのそういう所は苦手の一言だ。
「へ〜〜〜〜い」


「くっ!」
アレフは剣閃をのらりくらりとかわし続けるヒビキに思わず呻き声を上げた。
「ほら、どうした?」
剣が後数ミリで当たるという所まで見切ってるヒビキ。もはや神業である。
「瞬閃!」
更に数段速い薙ぎ払いすら体捌きだけでかわすヒビキ。
「まあ、合格かな?」
「この!」
呟くヒビキに振りぬいた状態から更に踏みこんで当身をかける。
「おー、おしい」
「はあはあ・・・・・」
「魔法と剣を同時に使ってみな。面白いものが見れるぞ」
アレフはヒビキの答えに流されるまま、アイシクルスピアの詠唱と共に斬りかかる。
振りぬくと同時に剣より冷気の塊が飛び出し、ヒビキに襲いかかる。
そんな事は些細な事とばかりにヒビキは剣を青眼に構える。
「行き当たりばったりに良くも出来たもんだ・・・・・」
剣圧だけで冷気の塊を真っ二つにすると、そのまま7メートル位先にいるアレフとの距離を詰める。
「はっ!」
それもアレフの予想の通りだったのか待ち構えて突いてくる。
ヒビキは反復横飛びの様に左に小さく横に飛び、交差功法気味の肘を脇腹に叩き付ける。そしてそれが決着だった。

「それまで!勝者、ヒビキ!」

アレフはその後医務室に担架で運ばれて行った。
「坊や・・・・あれは少しきつ過ぎ何じゃないかい?」
「ああ、あれ?外傷はないよ。全部衝撃にして気絶する様に仕向けただけだから」
さらっととんでもない事を言い出す。
「で、リサは?」
「あたしかい?残念ながら負けたよ。シャドウって奴にね」
「シャドウ?あいつが出てるのか?」
「ああ。かなり強いよ。イヴァン・・・・いや、レオン以上かも」
「へぇ・・・・・」
リサは見た。その時のヒビキの口調が楽しげに笑っていた事を・・・・・。


一方観客席では、売り子の売っている御菓子やらジュースやらを口にしながら遠慮のない会話をしていた。
パティ:「アレフはやっぱり負けたわね・・・・・」
シェリル:「まあ・・・・・・・当然ではないでしょうか?」
トリーシャ:「シェリル・・・・。結構辛口・・・・」
シェリル:「そ・・・・そうでしょうか?」
マリア:「でも、アレフってあんな事出来たんだー」
エル:「どうせ行き当たりばったりだろ?」
クリス:「でも。アレフ君だってやる時はやりますよ?いつもはいい加減だけど」
パティ:「クリスも言う様になったわね〜」
クリス:「アレフ君は友達ですから」
シーラ:「でも・・・・ヒビキ君が勝つのは‘当然’としても、リサさんが負けるなんて・・・・」
トリーシャ:「何者だろ?」


「俺とあいつの闘いに誰であろうが邪魔はさせない・・・・」
シャドウはポツリと呟くと自身の血を液体に混ぜていく。
「これで・・・・篩に掛けられる」
口元を楽しそうに歪めながら・・・・・。
「勝負だ、神殺し」
脳裏に浮かぶ宿敵を見据えながら・・・・・・
「最初の・・・・・そして永遠の闘いの幕開けだ」




〜あとがき〜

どうも、久遠の月です。第23話、いかがだったでしょう?実際は全然違うお話だったんですけど、投稿時の記入ミスで一つ丸まる没にした挙句、書く気が無くなったのでシナリオを一つ繰り上げました。結構大事なお話だったんですけどね?

短いという苦情なら聞けません。一応多忙ですからね?プロットはもう決まってるので後は時間さえあれば近いうちに次話が出来上がると思います。

それでは〜
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