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エンフィールド幻想譚 平凡な街に:第五話
正行


エンフィールド幻想譚
平凡な街に:第五話





三日、おとうさんとおかあさんが家に帰ってこなかった。

そして四日目、全く知らないおじさんがボク達を訪ねてきた。

―――君達がリリアちゃんとヴィルト君だね?

―――おじさん、誰?

―――・・・・君達のお父さんとお母さんの知り合いだよ。

―――!! ねえ、おとうさんとおかあさんは・・・?

不安そうにボクの後ろに隠れている弟のヴィルを守るようにしてボクは尋ねた。

―――もう、この世のどこにもいない・・・・・・

え・・・・?それって、死んだ、っていうこと、なの・・・・?

少しずつ・・・目の前のおじさんの言葉が頭に入ってくる。

いや、本当は最初から頭には入っていた。だけど・・・・だけどよく分からなかった。

分かりたくなかった。

でも10歳のボクはその意味を理解し、受け入れられるだけの知識はあった。

それに急な音信不通。今まで1,2日家を空ける事はあっても3日なんて一度もなかった。

4日目の今までどんどん嫌な想像が膨らんで、その中には今のケースもあった。

だから分かってしまった。

そうだ。もう、分かってしまったんだ。

一度分かってしまえばもう後には引けない。

あ・・・あれ・・・どうし、て。どうしてこんなに体が言う事を聞かないの?

足が震える。

動悸がする。

息が乱れる。

ボク達の日常が瓦解するには一瞬でこと足りた。

昨日まで描いていた、見る事のできるはずだった未来の崩壊。

それは同時に明日への恐怖とすりかわっていく。

でも後ろのヴィルはよく分かってない。

ボクの汗ばんでゆく手を不安そうに握っている。

それがボクの唯一の命綱。

正直言って悲しみよりこれからの自分達の事を考えるので手一杯だった。





《自警団本隊》

「全員落ち着け!冷静になれば対処できない相手ではない!それより決して一人にならず
 に必ず四人一組で固まって当たれ!それと明りを絶対に絶やすな!」
地面から次々と這い出してくるアンデッド系のモンスターに一時軍はパニックになった。
さらに夜という事もあり、いくら灯りがあるとはいえこの平和な時勢、戦争の経験のない
若者も大勢いるという状況で平静を保てというのはどだい無理な話だ。
しかし、戦場に現場指揮官のリカルドの声が響き渡ると潮が引くように落ち着いていった。
この一種カリスマ的な存在力を持つ人間はこの街といえどリカルドをおいて他にいない。
根本的に人間が違うのだ。
「長!」
「うむ」
リカルドの呼びかけに応え、打ち合わせ通りに魔術師組合の長は呪文を紡ぎ、魔力場を展
開していった。





《西門》

死霊達が召喚される少し前、レニスは一人森に沿って歩いていた。
今では、息を潜めているように静かな夜の街となり、これはこれでいい夜の散歩となる。
もしこれで緊急時でなければどれ程よかっただろう、等と惜しい思いをしていた。
そして、

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ここだな」
歩みを止め、森を凝視する。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜の森はどこまでも際限なく深い闇のように思える。さらに月が淡く照らす事で絵本の
幻想の世界に迷い込んだような錯覚さえしそうだ。

・・・・・・・・・・・・・・・キィン・・・・・・・・・・・・・

だがその錯覚すら無骨な金属音ですぐさま引き上げられる。
今この街は戦いの場なのだ。
「二人・・・・・いや、三人か?」
森の中で誰かが争っている気配がする。
「今の状況で問題は敵か否かだな」
もし工作員ならば見逃すつもりはない。
しかし・・・戦っているという事は少なくとも二人いて、お互いの思惑が一致していない
事を示す。果たして争っている(少なくても)二人の内、どちらが味方なのか。
もしくは両方ともこちらにとって敵だったり、中立だったりするケースもあり得るが。

・・・・・ドカ!!!・・バキバキバキバキ!

「!!」
何か―――――人らしき何かが木々を枝を撒き散らしながら森から飛び出してきた!
レニスは咄嗟にその人型弾丸の軌道を横飛びに避け、戦闘態勢をとる。
「チッ」
影がこちらに視線をやると同時に舌打ちする。
吹っ飛ばされたらしいその黒装束に身を包んだ影は空中で転回し、着地を整えると同時に
すぐ近くのレニスに襲い掛かってきた。
レニスも瞬時に敵とみなし、剣を構える。
襲撃者はたっぷりと速度の乗った太刀をぶつける。
ギィン!!
一瞬青白い火花が散る。
「!!?」
剣を合わせたその瞬間襲撃者は驚きに目を見張る。
よもやこの一撃が受けられるとは思ってもなかったのだろう。それだけの鋭さがあった。
だが、それは一瞬ですぐさま二人は30m程距離をとった。
そしてわずかな間だが、襲撃者の様子を観察する時間ができた。
襲撃者は黒装束だが、前の戦いでボロボロになったのか破れたその下には鎧らしきものが
見える。残念だが未だ顔は見えないものの、声の様子から20前後あたりの青年だろう
と見当をつけた。
一瞬の思考の後、再び襲撃者が爆発的な加速と共に太刀を下段後方に引いた構えで距離を
詰めてきた。
この時点でレニスは完全に敵と確認し、飛び出す。
「・・・・・・・・・・」
襲撃者の口が小さく動いた。魔法を使う気だろう。
襲撃者の空気すら切り裂きかねない一撃。
レニスはバックステップ。
さがったレニスに襲撃者の目が光る。
そこで襲撃者が魔法を解き放った!

―――シルフィードフェザー・・・―――

更に加速して追い討ちをかける。
シルフィードフェザーは使用者に風の加護を与え、素早さを増す魔法だ。
戦闘において素早さは攻撃、回避、逃走というように幅広く役割を果たす。
今までのスピードに慣れ、闇の中の黒装束もありレニスの目からその姿が一瞬消え―――

―――フレイムジェイル!―――

すかさずノータイムでレニスが魔法を放つ。
フレイムジェイルは炎の檻で対象者を閉じ込め、燃やす魔法。
この時、魔法の対象者は―――――レニス自身。
「―――――――!?」
襲撃者はレニスの全方位を囲む蒼炎の檻に突っ込もうとする。
フレイムジェイルを防御壁として使用したのだ。
「くっ」
だが瞬時に踏み込みの動作に更なる力を込める。
その勢い、力を利用して炎を飛び越えるように無理矢理回避した。
襲撃者が方向転換を試みると同時に炎のドームを解き、中から無傷のレニスが現れる。
絶好の好機。
飛び上がり、体勢を崩した空中の無防備な襲撃者に魔力も篭めた渾身の一撃を見舞う。
ガギィン!
再び闇の中に青白い光が煌く。
襲撃者はなんとか太刀で受け止めたものの―――
「―――――くぁ!」
バレーのアタックをされたボールのように地面に叩きつけられ、それでも飽き足らずその
まま背中から滑るように土を掘り起こしていった。
ちなみに、襲撃者が森から出てきてここまで3,4秒しか経ってない。
レニスにはまだまだ余裕が窺える。どうやら実力が違うようだ。
「お前の太刀・・・やはり魔力を帯びているな」
でなければすでにレニスによって叩き折られているだろう。
襲撃者はすぐに立ち上がった。無言で飛び上がり、
ダンッ!!
逃げの一手に出た。

が、

カカカカカカカ!!!
森から無数の何かの線が襲撃者の足を止め―――
「crow,crow・cluck!(同時通訳:プロミネンス・バースト!)」

ヒィィィィィィィィィーーーーー・・・・

・・・・・ふわぁ

ドドオオオォォォーーーーーン!!!!!!轟轟轟轟轟轟轟轟轟!!!!

―――赤い線が一条、暗闇の中を走り、足元に突き刺さると同時に天へと昇る煉獄の炎柱
が包み込んだ!
それはうねり、ねじり、ひたすら中の異物に圧力を加え続ける。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
それをレニスは一転してひたすら無気力な目で眺めていた。
なんか心の底からどーでもよくなってきたらしい。
なぜなら、レニスにはこの声に心当たりが百発百中でしかもオールワンホールショット
ってなくらいにあるからだ。
チラリと先程、足止めをした何かに目を向けると地面には鶏の羽がいくつか突き刺さって
いた。
「そういえばこいつ、硬気功ができたな」
ある意味宿敵でもあるその声の主は―――――

「―――――!」
森から襲撃者を追って出てきた『彼』はじっと炎から目を逸らさず集中して炎を繰る。
炎の中、耐える襲撃者。
それが続く。
更に炎の圧力を倍化させようとした一瞬。
「おおおおーーーーー!」
襲撃者が吼える!
『彼』が別動作に切り替える一瞬の隙を読み取り、制御が緩んだ瞬間に炎を消し飛ばす。
「つう・・・」
縦に裂かれた炎柱から太刀を垂直に振り上げたままの格好で出てくる。
出てきた体はブスブスという音が聞こえそうなほどボロボロだ。
「チクショー!さっきから何なんだよー!コイツらはーーーーーーー!!!!」
大声で内の不満をぶちまける襲撃者。
A:見たまんまです
しかし初めて口を開いてでたセリフがこれか。
『彼』は炎がやぶられるや否や間合いに飛び込む。そのスピードはレニスの目でも残像し
か捉えられない。
それは閃光!
次々と襲撃者の体を切り刻み、黒い血しぶきが舞う。

「・・・・よし、お手玉でもやるか」
レニスは一人呟き、取り出した手には30を越える玉があった。

変幻自在な動きは完全に相手を翻弄し、動きを封じていた!!
一歩も動けず、棒立ちになったままの襲撃者。
視界に何かが動くものを捉える度に体に裂傷を負う。
「くそぉ!」
タイミングを見計らって放った横薙ぎの一撃は『彼』を真っ二つにする!
「―――――な・・・?」
しかしその太刀が切り払うべきハズのものはいなかった。
「コケッ(同時通訳:どこを見ている)」
その声が『頭上』から届くと同時に後頭部に衝撃が走った。

「なるほど。太刀が切り裂く瞬間を見切り体を入れ替え、足で太刀の腹を蹴って頭上に
 跳んだのか」
レニスがお手玉をしながら解説する。ただのお手玉では飽き足らず、それぞれの玉は複雑
怪奇な軌道で一種幾何学的な図形を描いている。しかも一つもぶつかっていない。
にしても『彼』のやってのけた事やレニスがしている事はあまりにも滅茶苦茶な離れ業だ。
ある意味どちらとも激しくどうでもいい事だが。

「ぐ・・・っそ!」
倒れこみそうなところをこらえ、攻撃が止んだこの隙に後方へ離脱する。
「おい!そこのお前!!」
「・・・・・・・俺か?」
「ああそうだ!」
「ちょっとまて。今いい所なんだ」
事実、手はおろか足まで使っているくらいの忙しさだ。
やる気があるんだかないんだか。
「こいつらは一体なんなんだ!俺が納得できるよう説明しろっ!!」
たまらず敵であるハズのレニスにわめき散らす。
ビシィ!と突きつけた指の先には、鋭い眼光。引き締まった肉体。
一分の無駄も隙もない鶏がいた。
彼の名はカイザー。
新手の威嚇なのか、体中には幾何学的な紋様が白光しながら浮かび上がっている。
これぞカイザーの完全戦闘形態全4段階中2段階目の姿なのだ!!!(※鶏です)
残念ながら変身はしませんので念のため。
・・・・・・・巨大化はするかもしんないけど。(※鶏です)
「ふむ。見て分からんか?」
「・・・・・・・魔物か?」
そう思う気持ちは分からんでもないぞ。
「何を言っている。ニワトリも知らんのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あーっと・・・本気で、言ってんのか?」
「それとも何か、どこぞのジョーカー史上最低最悪のアホ生命体にでも見えるのか?」
「そうか、まさかとは思っていたがお前・・・・だからこんな夜に一人で徘徊して」
「何を考えているのか敢えて聞こうとは思わんが、さっきのを理解できた時点でお前のそ
 の憐れんだような目は自分のクビを絞める行為だぞ」
「知らない知らない。俺はなーんも知らねえぞー」
「コケー
(同時通訳:さっきから何を言っているのか分からんのだが・・・・・
      鶏:(庭鳥の意)キジ目キジ科の鳥。古くから最も広く飼養された家禽で、
        原種はインド○ナ・マ○ーに分布するセキショクヤケイ。卵用(レグノ
        ン・ミノルカなど)・食肉用(コーチン・ブラマなど)・卵肉用(プリ
        マス-ロックなど)・愛玩用(長尾鶏・東天紅・チャボなど)など品種
        は極めて多く、色彩・形態もさまざまであるが、みな頭頂に鶏冠を持
        つ。古名、かけ・くたかけ。
      岩○書店 広○苑 第五版 新○出編 より抜粋)」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「コッ(同時通訳:以上だが何の問題もなかろう)」
「なあ、ちょっといいか。
 「コケー」と「コッ」でこれだけの量の翻訳ができる事に突っ込むべきなのか?
 それともさっきの会話を理解できた俺は、理解できなかったコイツより汚れているとか、
 いや、鶏に鶏の事を教わっているとか、
 鶏の品種なんて白と茶としか知らない俺よりコイツの方が物知りとか、
 自分で何の問題もないと完璧に言い切るとか、
 同族をさらりと食肉用と言いのけるとか、
 あまつさえ説明にやけに○が多いとか、
 そもそも鶏は魔法なんか使えないし発光もしないだろーーーーーっ」
「とりあえず、さっき知らないと言っていたがやはりお前は自分が汚れていると分かって
 はいるんだな」
「ぐっはぁ!?」
自爆。
それにしても志狼がここにいないのが非常に悔やまれた。
本っっっ気でどうでもいい事だが。
「そ、それよりも!お前はアレのどこを見て鶏だと主張するんだ!?」
「お前こそ、アレが鶏以外の何者に見える?」
「うっ・・・・た、確かに白光しているのを除けば外見は鶏だが・・・」
違う!何かが致命的に間違っていると俺の中の何かが必死に叫んでいる。
「だろう。俺にはお前が何故アレが鶏でないと言うのかが理解できんが」
「うう・・・・・・」
違う!違うんだ!!
「鳴き声も普通の鶏と何ら変わりないだろう」
ち、違う・・・・・・・
「それに白光しているのは独特の『氣』のせいであって、これは全ての生き物が有してい
 るのだからなんら不思議はないだろう」
違わないのか・・・・・・
「どうだ、これでもまだ納得しないのか?」
俺が・・・間違っていたのか?

―――真実はいつも苛酷じゃ。もっとしっかりしなされ。

「はっ!?なんか今脳裏にうで卵を愛する僧院長の死に顔が・・・・・」
両手で耳をふさぎ、いやいやをする襲撃者。
「だいたい、これほど肉が引き締まってうまそうな鶏はそうはいないものなのだぞ。
 その純然たる事実の前に、コイツが白光しようが魔法を使おうがそれは極些細な事だ」
「って、うまそうなら何でもいいんかいっ!!」
「おう」
「うわ、即答しやがった」
ここで今まで人事(鶏事?)のように沈黙していたカイザーが動いた。
「さて、聞きたいことがある」
一歩、カイザーが歩み寄る。ザッと前に出る音のなんと重々しいことか。
「!!」
反射的に身構える。
「何故お前程の者が街の外にいる奴らについている?」
「・・・・・・(ち、ちくしょう。ヤツがとてつもなく巨大に見えやがるだと!?)」
「目的は何だ?」
「はぁ・・はぁ・・・・・・(声が・・・・・声が出せねえ)」
また一歩、歩み寄る。
「やはり沈黙か・・・・ならこれだけは言っておこう」
ピタ、と歩み寄るのを止める。
「誰が相手であろうと俺が必ずエンフィールドを守る・・・・!!」(※・・・鶏です)
それは誓いを通り越して絶対的な効力を有する法。それだけの重みがあった。

「自警団の立場がないな」
なんだかお手玉がハンカチに触れて消えたと思ったら白いハトになった。
手品にも開眼したのか、レニスよ?
ハトはそのまま上空でぽっぽぽっぽと旋回している。

「ふざけるな!!貴様に・・・貴様ごときに呑まれてたまるかぁ!!」
ブオン!!
何かを断ち切るように虚空を斬り、風圧がカイザーの体を撫でる。
「俺は・・・俺はずっと、それこそ幾度となく死線をくぐり、その度に生還し、時には友
 をも失って今まで生き延びてきたんだ・・・・・!」
「・・・・・・・・・・・」
「それが・・・・それが・・・・・畜生ごときに負けたとあっちゃあ俺を生かしてくれた
 皆に顔向けできねーんだよぉ!!」
「言いたい事はそれだけか?つまらんプライドだな」
「!!!」
「どんなヤツでも吠えることはできる」
「・・・・・・・・・・・・」
「男なら黙ってコレで示してみろ・・・・」(※だから鶏なんだってば)
ヒュン!
空を切る白い音が過ぎた後、頬に何か生暖かいものが伝ってくる。
背後の木に刺さっていたものはただの羽根だった。先がわずかに赤くなったただの羽根。
「・・・・ふっ、確かに悪くないな」
ニッ、と一転してどこか清々しい笑みが目に浮かぶ。
すでに現状に対して何も違和感はないらしい。
「だが残念ながら今回はお預けだ」
タン、と軽やかに間合いの外に出る。
「逃がすと思っているのか?俺はそれほど甘くはないぞ」
今までやる気のなかったレニスが髪を掻きながら前に出る。
「あ、いたのか?」
「いや、このままなら俺も出るつもりはさらさらなかったんだが」
牽制なのか、左腕が赤く光っている。
「早く帰らないと文字通りクビが飛ぶんでな。この年で亡者の仲間入りはしたくない」
「ああ。そういう事なら心配するな。地獄からさまよい出るような体どころかチリ一つと
 て残してやらん」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・・・レニス」
「ああ分かってる、カイザー」
「?」
襲撃者が眉をひそめる様子が手に取るように分かる。彼一人だけが分かっていないようだ。
「まあいい。とりあえずコレはお前達への挨拶だ。受け取れ」
ボッボッボ、という音と同時に上空から赤い光が。
旋回していたハト達が次々燃え上がったかと思うと火球となってこの辺り一帯、でたらめ
に降り注いだ。
ドドドドドドドドドド!!

―――トリニティ・フレア―――

間断なく次々とレニスは攻撃を繰り出す。
獰猛な炎の龍が2匹(本来は3匹なのだが)、歓喜の怒号を上げながらレニスから解き放
たれた。
1匹は襲撃者へ真っ直ぐ、そしてもう1匹は闇を切り裂きながら森へと突き進んでいく!
襲撃者は太刀でなんとか押し止めていたが、やがて勢いを失ったところを真っ二つにした。
何もない森へ向かった1匹は木々を食い千切ろうとして―――――闇に呑まれた。
「光射す箱庭は深々と凍え、宝石の涙で散りばめられた道を行くは月の女神の馬車」
森が詠う。
カイザーが声に向かって魔法を飛ばすが手応えはない。魔法が発動した様子すら。
「一人荒野で道化は踊る。月よ。彼の者に愚者たらしめる詔を」
「『ルナ』様!?いつから―――――」
襲撃者がその声を最後に掻き消える。いや、彼らにはそう見えた。



     続く
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