中央改札 交響曲 感想 説明

エンフィールド幻想譚 クリスマスを過ごそう:後編
正行


エンフィールド幻想譚
クリスマスを過ごそう:後編





「それじゃあこれからプレゼント交換を始めるぞ」
参加者は、
アイン、志狼、紅蓮、久、ヒロ、輝羅、雅信、メルク、ライフ、総司、レニス、
マリア、ピート、リサ
もらった物は必ず開けなければならない。
みんなはどんなプレゼントが当たったのだろうか?



(さて、一体誰に当たるんでしょうね)
(誰があれに引っかかるかなー。くぅー、楽しみ!)
(あれを手にとった瞬間・・・楽しみだぜ)
(知り合いにツテでもらった物を出してみましたが、まぁ大丈夫でしょう)





case1 ―ライフ―

ライフは蒼い箱が当たった。
「うー、ドキドキしますね」
このプレゼント交換では必ずその場で開けて、中身をもらわなくてはならない。
さて、ライフは何が当たったのか?
「あ・・・これは絵、ですね」
「ああ、それは僕のだね」
「アインさんのですか」
「うん。どうかな?プレゼントが趣味の物で悪いけど」
「いえ、とっても温かみがある絵ですよ」
「ありがとう」



case2 ―アイン―

「僕のは何だろう」
アインが包みを解くと、
「お手伝い券?」
「あ、俺のはアインに当たったのか」
「これって肩たたき券みたいに無償で何か力を貸してくれるの?」
「ああ。俺にできる事なら」
「そっか。あ、期限は?」
「あ・・・そーいえば決めてなかった。まあ無期限って事で」
「そう。じゃあ好きな時に使わせてもらうよ」
「おう」



case3 ―志狼―

志狼が手にしてるのはやけに細長い箱だった。
「なんだろう・・・・・?」
出てきたのは東洋風の巻物みたいだった。
「?」
紐を解いて広げてみる。
どうやら掛軸のようだ。
「・・・・・・さ、さっぱり読めん」
が、書いてある文字は達筆すぎてミミズがのたくった風にしか見えなかった。
「雅信、これお前のだろう」
「おおっ、よく分かったな」
「こーゆーのプレゼントするヤツはこの中じゃあお前くらいのもんだって」
「この前読んだ本にいいのがあったのでな。それを書いてみたのだが、中々いい出来だ
 ろう」
「いや、俺には全然分からん。一体何て書いてあるんだ?」
「ふむ・・・・
 『祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響き有り。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を表す。
  〜中略〜
  ひとへに風の前の塵に同じ・・・・』
 だ」
スパカーン!
「あうち!」
「お前は俺にこれをどーしろと!?」
「それよりそのスリッパは一体どこから出した・・・?」
「俺ん家には代々四次元の荷物入れが伝わっててだな・・・・じゃなくて、こんな物を
 店のどこにかけろと?」
「だったら志狼の部屋なんかはどうだ?」
「絶対嫌だ!」



case4 ―ヒロ―

「ふっふっふ。ああ、プレゼント。なんて甘美な響き」
なんて言いながらヒロが箱を開けると、
「ティーカップのセット・・・・?」
「あら、私のだわ。大切に使ってね」
「輝羅・・・・」
「なに?」
「これ質に入れたらいくらになる?」
「即行で換金を考えないの!」
「でも俺、紅茶なんてそんな高級品・・・・」
「ヒロ、あなたそこまで・・・・・」
「うう、視界が滲んでよく見えない」



と、まあここまではマトモで・・・・・・



case5 ―雅信―

「何が出るかな♪何が出るかな♪」
浮かれた歌を口ずさみながら箱を開ける雅信。
しかもその箱が結構大きいときたもんだ。
大人の身長分はある。
けど、その割にはえらく軽いが。
「おおっ!」
なんと、箱の中には更に箱が入っていた。
「ふーむ。これは・・・・中々いい箱だな。この形、色、艶といい。正に絶品の箱だ。
 ぜひともこのままとっておかねば」
「へー、そうなんですか?」
「おお、ライフ。この微妙な陰翳といい・・・・」
「うーん、私には分からないですけど・・・・それ、私が5Gで雑貨屋で買ってプレゼ
 ント交換に出してみたんですよ。でもそんなにすごい箱だったんですかぁー」
「・・・・・・・・・・・・・・・さて、この箱を開けてみるか」
「あれ?このままとっておくんじゃないですか?」
「いいのいいの。どうせ5Gなんだし」
「さっきと言ってる事が違うような・・・・?」
「気にしない気にしない♪」
そして箱を開けると中には・・・
「おおっ!ふーむ、中々いい箱だな。この形、色、艶といい」
「へー、そうなんですか?」
「うむ・・・って、すまん。やっぱりライフ相手にこのノリは無理か。いい加減さっさ
 か話を進めるとしよう」
「?」
んで、やっぱり箱の中には箱が。
それを繰り返していくと段々小さくなって、ついには手の平サイズになってしまった。
「ゼイゼイ・・・・どうだー、ここまできてやったぞ。ザマアミロ」
あたりには段々小さくなってく箱が並んでいる。
「さーて、中身は・・・っと」
箱の中にはちっさな紙がたたんであった。
「なんだ?」
がさがさ。
―――当たり。もう一本―――
「は?」
そして―――――ポン!
いきなり同じ箱がでてきた。
「・・・・・・・・・また開けろという事か?」
振り出しに戻る。
「ふっふっふ。やってやろーじゃないか。ここまで来たら意地だ!この挑戦受けたぁ!」
     ・
     ・
     ・
ぜーぜーぜーぜー。
「ざ・・・・ざまあみさらせ」
また、最後には小さな紙が入ってた。
(これでまた同じパターンっていうことはないよな・・・・・)
さすがにそれだけはかんべんしてほしい。
「なになに?」
読む。
・・・・とりあえず、これだけは言っておくべきであろう。
「それは胎教やろ!」
「なんて書いてあったんですかー?」
ライフが横から顔を出す。
「えーとぉ、『大凶。といっても妊婦に音楽を聞かせる事ではない。まあとりあえず苦
 労するも報われず。しかしそれでもめげるな若人よ!いつかきっと君の努力は実を結
 ぶ日が来る!・・・・あ、けどそれとこれとは何の関係もないからー。ただこれだけ。
 まあこんな事されても笑って許せるくらいの度量は持つべきじゃん?無駄な努力ごく
 ろうさま、おまぬけさん。キャハハハハハ。てなわけでー、バーイ』」
「・・・・・・・・・・・・誰がこんな物を商品化したんだ」



case6 ―総司―

「おや、何の紙でしょう」
箱を開けたら何やら大量の紙が。どうやら法的書類の類のようだ。
「ふっふっふっふ」
「ヒロ、なんですか?」
「このプレゼント交換では受け取った物は絶対開けて、もらわないといけないルール」
「それが?」
「つまりだね!そういう事なのだよ、分かるかね総司!」
「つまり、借金全部押し付けようって腹ですか」
ヒロのプレゼント箱に入っていたのは、今までヒロがこしらえた借金の請求書と、それ
と同じ数だけの要するに「私が代わりに借金を払います」ってな正式書類だった。
「さあ!それにサインを!」
「ええ。いいですよ」
「・・・・え!?ほんと!?」
さらさらさらりん。
全ての紙に手際よくサインをしていく。
まさか本当に借金を引き受けてくれるとは思ってなかった。
ヒロ、大感激!
「あ、ありがとうございますぅ!」
男泣き・・・・じゃないが、とにかく泣いていた。
「ああ、なんて空が高いんだろう。なんて肩が軽いんだろう・・・・
 ぶっちゃけて言えば、色々あったけど、生きててよかった!!」
顔全体が輝いて、今にも空へ羽ばたきそうな程舞い上がっている。
「なんか今ならどんな事言われても笑っていられそーな気分だ。ううう」
ポン。ヒロにとっての天使様が肩に手を置いた。
ヒロ、総司の顔が眩しくて眩しくてとても直視できない。
「とりあえずこれで今までの分全て私が責任もって回収しました」
・・・・・ん?何か引っかかる。
回収?
「というわけで、今後は私に借金を返してくださいね。とりあえずは利子だけでも返し
 て頂けるといいですが。このままだと利子だけで一生ものかもしれませんよ」
天使は堕天使だった。
しかも先の尖った黒い尻尾付きの。
再び肩に借金という名の見えない重りが降ってきた。
がっくりと地面に膝と両手をつく。
それでもヒロは笑っていた。
もう笑うしか彼にはなかった。
「ふむ。借金のほんの数%をみんなに受け持ってもらうっていうのも面白そうですね。
 いやいや、それならいっそパティだけに一部権利を譲渡するというのも・・・・」
借金、本体を返す前にまず利子を返しきれるかどうかすら怪しいのでは?



case7 ―メルク―

「ん・・・・?タプンタプンいってますね」
箱を動かすと液体らしき感触がある。
「何でしょう?」
箱を開けてみる。
パカ。
箱一杯に透明の袋があった。
そして袋の中には何とも言いがたい色をした液体が。
言うなら適当に絵の具を混ぜ合わせたような・・・・
シュー・・・・・
「!?」
パパンパン!!
バシャ!
いきなり袋が破裂。
「おー!よっしゃーー!ひっかかったな!!」
ピートが喝采。
辺りには緑のような赤のような黒のような色が撒き散らされて、メルクもかなり引っ
被っていた。
しかも匂いがすごい。決して悪い匂いではないが、ここまで強いと・・・・
「へっへー、ペンキと香水をたくさん混ぜたヤツに爆竹をしかけてたんだー」
いたずらが成功した少年のような・・・というかまんま得意げそうだ。
「それはそれは。危ないところでしたね」
「ええっ!?」
後ろからの声に驚くピート。
振り返るとメルクがいた。
「え?あれ?だって前にもメルクが・・・・」
微笑しながら、後ろにいたメルクがすごい匂いを発するメルクに近づいて、
「はいっと」
鼻をちょっと押したら顔も服も何もない、簡素な人形になった。
パーマン?
「ちょっとダミーを残して異空間に潜らせてもらました」
「ちぇー、何かよくわかんねーけど失敗かー」



実はこれでもまだマトモな方だったという。




case8 ―久―

「これは・・・なんだ?」
にょき。
「自動虫叩き鬼(機)、ですよ」
「総司・・・これはおめえのか」
「はい」
久の前にはずんぐりとして全体的に丸みのあるゴーレムらしき物が。
短足短手。胴体だけがやけに大きかった。
「機能を説明するとですね、ハエだろうと蚊だろとこれが速やかに自動的に叩いてくれ
 ます。これで夏の夜も安眠できますし、食べ物にハエがたかる事もなくなるでしょう」
「ほう・・・・・」
久、聞きながら胡散臭げな目。
なんかキャッチセールスみたいだ。
でもどうやったらあんな短い手で虫を叩けるのだろうか。
何か道具を使用するにしても、指がないのでは扱いにくいだろう。
設計ミスか?
「まあ百聞は一見に如かず。とりあえず起動してみますか」
ひょい、と久をゴーレムの前に持ってくる。
ゴーレムの空洞の目が何故かキランと光った。
あ、顔は土偶やハニワみたいのを想像して頂ければいいかと。
『マスター登録を始めます』
どこからかゴーレム、というかハニワの声らしきものが聞こえてくる。
それに従って、パスワードやマスターの名前、声紋、指紋など色々登録する。
『マスターを確認。オールチェック完了。マスター名、煌久。これは条件コードBに当て
 はまります。ただいまコードBへ移行中。・・・・完了しました。
 ではこれから最終登録を始めます』
「今度は何だ?」
ススス、と総司が久から離れていった。
『最終登録。マスターが私のマスターに相応しいかどうか、私と戦ってもらいます。
 私に一定値以上の有効打を与えた時点で終了。ルールは無制限。これより一定範囲内
 に結界を張ります』
「は?」
『ではスタート』
「ちょ、オイオイ」
キラン。
目の穴である空洞の奥、暗闇の中で何かが光った。
そのまま虚ろな目がこちらに向いて―――
ブオン!!!
張り手が伸びてきた!
しかも速い。
「うお!?」
頭を一個分ずらして避ける。
そのまま伸びた手は店の前のレンガ造りの道へ。
ズガン!!
いとも簡単に補強されているハズの道がえぐれ、レンガの破片が粉々に飛び散る。
ついでに何故か道のど真ん中に鎮座していた信楽焼のタヌキ(但し総鋼鉄製)をもその
手刀は貫き、タヌキは鉄くずへと無残な最期をとげた。
「おひ・・・・・・・・・・・」
さて、ここで問題です。
果たして人間の頭と鋼鉄、どちらがより硬いでしょうか♪
「総司ぃぃーーー!」
ニコニコ。
「どうです?あれなら虫叩き機としての機能は充分でしょう。強さも速さも申し分なし。
 まさにハンター。一撃必中必殺。これで夏の夜も安心ですよ」
「そういう問題ぢゃねえ〜〜〜〜〜!!」
壊れたタヌキの頭の欠片を指差して、
「あのバカげた威力はなんだ!?明らかに対虫用のラインをぶっちぎってんぢゃねえか、
 オイ!」
「まあまあ。大は小を兼ねるともいいますし」
「あれはやり過ぎぢゃねえか!」
「それに―――」
ここでキッと表情を引き締め、
「もしかすると世界には鋼鉄以上の強度を有する蚊やハエがいてもおかしくないとは思い
 ませんか?」
「いてたまるか!」
「ほう?しかし彼は一度その身で刀を受け止めたと・・・・」
「コケーコッコッコ」
「・・・・・・・・・・」
「さあ、納得してくれたところで、まだマスター認可試験は継続中ですよ」
今のやりとりの間に何やら子ハニワとも言うべきモノがたくさん口から出てきてる。
そして一斉に突撃してきた。
『カーマインスプレッド』
何故か魔法も使っている。さっきも結界を張っていたが。
正に虫叩き機の範疇を越えた万能ハニワっっ!
これはハニワ界の新時代の幕開けか!?
でも、やっぱり虫が人の顔とかにとまったらあの轟拳で叩こうとするのだろうか。
死ぬぞ。
マジで。
「おっ?おっおっ?おおおおーーー!?」
ペガ○ス流星拳のような張り手を次々と避けている久。
『ヴァニシング・ノヴァソード』
バシュ!!
口からビーム!?
ある程度、総司の魔法はインプット済みのようだ。
久、健闘を祈る。



case9 ―輝羅―

「どうやらマトモな物が当たったようね」
その手にはいくつかのクッキーが袋に入っていた。
早速一個つまんで口に運ぼうとする。
ゾクッ!
背筋に悪寒が走り抜ける。
動物なら誰しも持ってる生存本能、または第六感というヤツである。
恐る恐るもう一度クッキーをよく観察してみた。
「・・・・・・・・・・」
いや、形・外見も匂いもどれをとっても「ボクはクッキーでごわす」って主張してる。
なのに・・・・・
なのに、何故こうもバックに黒いオーラが見えるのだろう?
しかしこのプレゼント交換ではもらった物はちゃんと頂かないといけない決まりだ。
返品・廃棄は基本的に認められない。
嫌な予感を追い出すように、頭を軽く振って
「・・・・!」
意を決した表情で口にした。
     ・
     ・
     ・
「・・・輝羅?どうした!」
第一発見者レニスが倒れている輝羅に駆け寄る。
「しっかりしろ、一体何があった?」
「あ・・・・レニス」
ほとんど命尽き果てる一歩前の状態で、顔も青白い。
声もかすれて死相が見えてもおかしくないくらい、ヤバイ。
「そ、それを・・・・・・」
残りの命を振り絞って輝羅が何かを伝えようとしていた。
ふるふると震える指が指し示したのは、地面に散らばったクッキー。
「これは・・・・」
「レ・・・ニス」
「安心しろ。この事件はかつて迷探偵と呼ばれた俺が責任もって解決して殺る」
すいません。最後、殺るって聞こえたんですけど。
「この、クッキー、あなたの・・・・・!」
トス。
「輝羅、喋ると余計に体力を消耗するぞ」
「・・・・・・・・・・」
「は、いかん!しっかりしろ、輝羅!おのれ犯人め、許すまじ!」
レニスは立ち上がる。
友人の最期(オイ)に静かな怒りを心に秘めて。
つと、散らばってるクッキーに目が向いた。
「お、手が滑った」
―――紅一式・爆神撃―――
跡形もなく消滅。
ついでに輝羅の横の地面に書き残してあった『L.E』という文字を自然に口笛なぞ吹
きながらゲシゲシと何回も何回も不自然なまでにこすり消しながら明後日を向く。
レニス青年の事件簿!
後にこれは彼が初めて遭遇した事件としてその1Pに載せられる事となる。
果たしてこの難事件をどう壊決するのか!?
乞う御期待!!





あ、もちろん嘘ですよ♪



case10 ―レニス―

「ランプ?」
当然こすってみる。
モクモクモクモク
「むっ?」
お約束通りに半裸の(やけにマッチョで男臭い)巨人―――魔人が出てきた。
「はぁーーはっはっは!!」
「帰れ」
なんと1秒の早技♪
さすがCランチの鬼だね♪ ←関係無い
「はうっ!?ま、まだ何も言っておらんぞ!?」
「いいから帰れ。とっとと帰れ。今すぐ帰れ」
「し、しかしだな・・・・」
「聞く耳もたん。消えろ、失せろ、二度と出てくるな」
「・・・・・・・・いじいじ」
隅っこで『の』の字を書き綴る魔人。
「うっとおしい、見苦しい、暑苦しい。土の下に潜ってろ」
「・・・・・・・・・・」
ここまで言われると人間(?)逆らう気もなくなるのか、素直に穴を掘っている魔人。
「夜がふたたびぃ〜訪れた時にぃ〜〜」
スコップで掘り起こしながら『Sound of Silence』を歌う後姿がなんとも物悲しい。
「ちょっとレニス!せっかくのマリアのプレゼントに何してんのよ!」
「これは当然の対応だろう」
「何がよ!とにかく、プレゼントはちゃんと最後まで受け取るルールなんだからねっ」
「分かった分かった」
レニス、溜息。
「静かにおしよ〜せるぅ〜悲しみとくる〜しみぃぃ〜ぼくには〜聞こえて〜こな〜い〜」
ザクッ、ザクッ。
まだ穴を掘っていた。
「で、用件はなんだ?」
「おおっ、聞いてくれるのか!」
「まずその涙と鼻水を拭け。見苦しい」
チーン!ずびびびびびびび・・・・・
「はぁーはっはっは!よくぞ我を呼び出した青年よ!」
「・・・・・・・・・・」
くるり。スタスタスタ。
「すいません。どうかこの憐れな私めにお話をさせてくださいぃ〜」
「さっさと言え」
「はい!で、ですね。我と闘ってもらおうかと・・・・」
スタスタスタ。
「待ってください〜。それが決まりなんですよぉ〜・・・・」
「何故戦わねばならんのだ」
「我を封印した人間に言ってくださいよ〜」
「一体何を考えてるんだその人間とやらは・・・・」
「確か3人の内一人が、『ランプをこすったら魔人が出てきて願いを叶えてくれる、
 なんて面白くないし、現実は甘くないって事を教えてやらないとな』って。
 で、たくさん戦えばその内そこから出られるぞって言ってましたので」
「まあそれはどうでもいい。とにかくやっぱりお前は冬眠してろ」
「問答無用!とゆーわけで我と戦ってもらおうぞ!」
魔人が襲い掛かってきた!
「ふん!」
どげしゃぁ!!
蹴り1発で魔人が地面に沈む。
「ふふふ、どうやら我が本気を出すに値する実力があるようだな」
むっくりと起き上がる。
「さあ!括目して見よ、これが我の100%だ!!」
「・・・・・」
ゴス!
ゲンコツ1発で地面に逆戻り。
「ふ、ふふふ。どうやら甘く見ていたのは我のようだったな。こうなったら我が真の姿
 を見せてくれるわ!」
ペカー、と光ったと思ったら・・・・・そのまんまの魔人がいた。
「何を言う!ちゃんと変わっておるぞ。ほれ、ここの口髭がよりだんでぃに」
ドス!
「よ、よくぞ我を倒した。だが我はただの戦闘員。次は魔人愛好会の五天魔貴族がそなた
 の息の根を止めにやってくるであろう・・・・」
しゅるるるるー、と魔人がランプに戻ってゆく。
そして、再び煙と共に魔人が―――否、赤のスーツと仮面を付けた魔人がでてきた。
「はぁーははは!我こそは五天魔貴族が一人、赤の魔人!!」
まんまだ。
「お前、さっきの魔人と同じ魔人だろう」
「はぁーははは!・・・・・何の事かんっ!?・・・・・・うう、舌噛んだ」
バキ!
とりあえず無言で沈める。
しゅるるるるー。
「はぁーはっはは!我こそは五天魔貴族が一人、黒の魔人!!」
ドカグシャベキボキャ!!
とりあえず再起不能になるまでボコる。
「はぁーははっは!我こそは五天魔―――」
―――紅一式・爆神撃!―――
だが、何故かまた無傷で出てきた。こいつギャグキャラ属性だな。
「はぁーはははっ!」
―――紅十三式・紅十字!―――
(ん?まて。『五』天魔で赤、黒、青、今ので黄ときたら残りは・・・・・!)
「」
―――紅三十二式・乱龍閃!―――
魔人を視界に入れる前に速攻で潰す。
それはもはや世界に対する冒涜、全世界の敵と言っても過言ではない。
「うう・・・カギカッコに一文字も入れさせてくれないなんて」
当のレニス、ザコのくせにあまりのしつこさにちょっと嫌気が。
「いいだろう。そなたの実力、あい分かった。どうやら大魔人様直々にお相手をする資
 格ありと認めよう」
「まだあるのか・・・・・」
それが少年マンガの王道ですから。
「だがその前に、我らを倒したそなたに敬意を表し魔人の祝福の儀を行おうではないか」
バッ!
赤、黒、青、黄、ピンクの魔人が5人、一同に会して―――
「ふんっ!!」×5
各々がマッスルポーズをビシっと決めた。
其は肉体の宴。
躍動する筋肉。
輝き、飛び散る汗。
次々と核廃棄物級精神汚染の光景が広がる。
そろそろ精神的に限界(ガタ)がきていたレニスはとりあえず、
「ガフレイド クォータードライブ!」
手札の中で最強のものをぶつけても存在してられるか、ギャグキャラの限界に挑戦して
みる事にした。



case11 ―紅蓮―

「ナイフか?」
出てきた物、ナイフをしげしげと眺める。
そして柄を持ってみた。
”ふはははははは!我輩は自由〜♪”
「んだぁ!?」
いきなり頭に響いてきた男の声。
そして紅蓮は駆け出した。
ナイフを片手に。
「どおおおおーーー!?」
首から下がまったく言う事をきかない。
「まさか!つーかこれしかねぇ!このナイフ呪われてんのか!?」
そして紅蓮は見た。
駆け抜ける一瞬。
久が笑っていたのを。
「久ぃぃーーー!これはテメエか〜〜〜〜!!」
「どうも前の持ち主の怨念が体を乗っ取るタイプみたいだな。ま、ガンバ」
紅蓮が聞けたのは前半だけだった。
「お、おい!てめえ一体何するつもりだ!?」
そのまま紅蓮に取り付いた男は体を何処へともなく走り去っていった。

その数十分後。
街のいたる所で悲鳴が木霊した。
付け加えるなら、それはほぼ全員が女性だった。

証言1
「ええ。私見たんです・・・・女子寮5階の壁に、何の取っ掛かりもないのにヤモリみた
 いに張り付いてジェシーの着替えを覗いてる黒い影を・・・あれはもう怪人としか言い
 ようがなかったわ。
 声をあげたらそのままガサガサって屋上の方に逃げて・・・可哀想に、ジェシー泣いて
 たわ」
証言2
「えぐっえぐっ・・・・二階の、ベランダに、何か、人影が降りてきて、ボクの服とか
 干して、あったもの、全部、とって、いったんです。怖かったよ〜〜〜。ふえ〜ん」
証言3
「私がお風呂に入ってたら、なんか舐めるような視線を感じたんです。それでチラっと
 見たら・・・・何か、何かがいたんです!一瞬、窓から見えたあの顔。口は耳まで
 裂けて血走った目、長い舌。そしてあれは確かにニヤリと笑ってました!
 最後に一声、ケケケケケって鳴いて・・・・どこかに行ったわ」

etc,etc



その話を聞いた細目のS氏と某中華料理店のH氏、氷の女王Eさん、小説家の卵のSさん
はそれぞれこうコメントした。
(プライバシー保護のため、目を黒で塗り潰して声は変えてあります)

「やはりカエルの子はカエルですか」
「血は争えねえな。つーかこっちの方が人間として下だろーな」
「最低ね」
「まさか○○さんがこんな事する人だったなんて・・・・テ『ピー』さんが可哀想」



「俺じゃねえつってんだろーーーー!!」
”まだまだまだまだぁーーーー!我輩はまだ満足しておらぬぞぉ!次次次ぃぃーー”





とまあこんな調子で身体的・精神的・社会的にボロボロになってく者が続出した。



残りはマリア、ピート、リサだが、

マリアはメルクのプレゼントを引き当てた。
メルクはツテでもらったと言っていたが中身は知らないとのこと。
中身は召喚壷。
出てきたのはウサギ。
しかし、ダンジョンの地下3階に出てくるといういわく付。
世界一のしぶとさを持つアインさえもその一撃には抵抗すらできないという。
そんな世界最凶最悪のウサギだ。
しかもわらわらと出てくるし。
更にマリアを追っかけるし。
追われる方はたまったものじゃない。
いつ首が飛ぶかわからないのだ。
血が凍る思いで全力疾走。
捕まれば即、死に直結。
少女にじゃれつこうとする人畜無害そうなウサギから(文字通り)必死の形相で逃げ回
るマリアはどこか「犬恐怖症の少女が可愛い子犬から逃げ回る」光景に見えなくともな
かったそうな。

付け加えるなら、これ下手すれば一夜で街が滅んでもおかしくない事態でもあった。



ピートはリサのプレゼントを。
中身は、まず箱を開けたらバネ仕掛けのパンチがアゴにヒットし、
次に人形が出てきてクイズを出題。
答えられなかったピートは数十匹のカンガルー
(しかも全てボクシングの格好をしてる)
に囲まれて1対多数のボクシング、という名の集団リンチが発生。
只今劇画チックに奮闘中。例えるなら『あしたのジョー』とか『北斗の拳』だろうか。
なかなか善戦している。



リサは紅蓮のを。
中身はミミック。
開けて、箱の底に文字があったので念入りに警戒して空気より重い気体が入ってる可能性
とかを考えたが、一応は大丈夫と判断。
そして覗いたら・・・・・
いきなり巨大化。
箱の口に牙が生えた。
なんかフタに目ができた。
ついでに足と手も生えてきた。
そしてリサは喰われた。
いや一応まだ完全ではなく、口から下半身がはみ出て暴れている。





謎のハニワがピームを出しながら暴れ、
眠れる美女はいまだに医者を呼ばれないまま放置されており、
踊る5体の魔人は爆発と共に吹っ飛ばされてはすぐさま復活し、
街の各所では女性の悲鳴が後を絶たず、
汗と涙と恐怖で歪んだ顔をした少女がウサギに追いまわされ、
少年はえらく老けたような濃い顔をしてカンガルーボクサー達と五分に渡り合い、
人間が箱にモシャモシャと食われそうになっている、
そんな光景。





怨み逆巻く聖夜。
後に語るには、これが闇・プレゼント交換の第一歩となったという。





終焉は唐突だ。
一匹のウサギが偶然にも誤って暴れていたハニワにクリティカル!
首を落とされたハニワ。
安堵する久。
だが―――
「緊急事態発生。エラー4219に該当。エラー処理実行に移ります」
「4219・・・・っておひ!?」
久の顔が青ざめる。



ボン。
上からだとエンフィールドの一角にちっぽけな光が灯ったように見えたそうな。





何故か会場は無傷で残っている中、見覚えのあった顔はいまや消し炭となって死屍累々
と転がっている。
「これは・・・来年は止めるべき―――」
「何を言ってる志狼」
ぽん、とススだらけの何かが肩に手を置く。
「もちろん来年もやるに決まってるだろ」
振り向くと消し炭がいた。
「え・・・・・・?」
周りを見るといつの間にやら復活している面々。
『来年が楽しみだな』
不毛な争いは続く・・・・・?





     了


>あとがき

すいません。温かくキャラを貸してくださったみなさんほんっとーーにすみません。
なんかえらくヒドイ目にあってます。特に、8以降のキャラで紅蓮が一番ヒドイかも。
もし不快だったり、気に入らなければすぐに連絡してください。
知り次第、即行で修正しますので。

というか、闇・プレゼントをやろうとした時点でキャラがひどい目にあう事に気付く
べきでしたね。これ、書いてて気付きましたし。

闇プレゼント交換。もし次回またする時はプレゼントを何にするかキャラごとの作者
さんがたに聞いてみるのもいいかも。
ちなみに闇・プレゼント交換の元ネタは『電撃ドクターモアイくん』より。
中央改札 交響曲 感想 説明