中央改札 交響曲 感想 説明

エンフィールド幻想譚 二人の誕生日
正行


―――7月10日―――


自警団寮。とある一室にて。
「うーむむむむむむ〜〜〜〜〜」
パティさんはともかく、ヒロさんが喜びそうなもの・・・・
お金・・・?
だめです! だめだめ! 大却下です!!
もっとこう、生産的なものを・・・・
そうだ! こういう時はあの人に相談をしましょう!



そして一方。
「ふう。こうしていると落ち着くな・・・・・」
のんびりと、広がる湖を望みつつお茶に手を伸ばす。
「そんなのんきにお茶をすすっている場合じゃないですよ!」
そこへずかずかと騒動がやってきた。



―――7月11日―――



さくら亭にて。

「それで、どうしたの? 今日はいつもと違ってやけに羽振りがいいけど」
注文を聞いて、即、訝しがるパティ。
ヒロはぴらぴらと取り出した券を振りながら、
「いやなに。ライフからさくら亭のタダ券をもらってね。それも今日限定」
「はぁ? なにそれ」
ひょい、と券と取り上げて見ると―――確かに50Gまでの引換券、とあった。
そして何故か紅蓮のサイン入り。
だがそもそもパティにはこういったサービス券などというものに覚えはない。
「ちょっと紅蓮! どういう事よ!」
聞いてないわよ、と詰め寄ると、
「ん? ああそれか。ちゃんと店長の許可はもらってるぜ」
「・・・そうなの?」
「まー、ライフのやつからちゃんとお金は受け取ってるから、なんだったら俺が支払って
 もかまわねーぜ」
「・・・分かったわ」
ん?
「パティ、ちょっと」
「? なによ」
ぐいっと顔を近づける。
それこそこれからキスでもしようかってぐらいに。
「ちょ、ヒロ!?」
「ん! やっぱり」
「なにがよ」
「パティ、お前が香水つけるのって珍しいな」
「! あ・・・分かった・・・の?」
香水とはいえ、パティがつけてるのはほんのごくわずかだけで、それこそ近くだとなんと
なくいい気分になる、といった程度のものなのに。
「ん〜いつもと違うからな」
「そ、そう」
ヒロのコメントにいつものパティとは違った反応。
それがどうにも可笑しい。
コホン、と無意味に咳払いなんてしてるのなんて滅多にお目にかかれないだろう。
「ハハハ。それに気づかないわけないだろ」
「あ・・・・」
「まあいっか。それよりメシ」
「・・・・・・・!」
その瞬間、なぜかパティの中で何かが大暴落した。
いつもの抜けたヒロの顔を見てて、何かふつふつと沸きあがるのを押し込め、厨房に戻る。
(・・・・・・・・・・・)
黙々と包丁を振るうその後姿に近寄りがたいオーラが見え隠れしている。
(まったく・・・雅信も輝羅も言った事と違うじゃない!)
時々、ダンッ! といった、やけに力んだ包丁の音が聞こえてきた。
「・・・・・お待ちどうさま」
注文を運んで、さっさと引き返そうとしたパティをまたもやヒロが呼び止めた。
「あ、そうそう」
「・・・今度は何よ」
「エプロン変えただろ。似合ってるぞ」
「・・・・・・」
ぱかん!
「いいからさっさと食べなさい。それ、できたてが一番おいしいんだから」
「んー、ていうか箸がない」
「はい!」
ぶっきらぼうに渡すパティだが、その様にはすでに先程までの棘はもうどこにもなかった。
「ああ、そうそう」
「ん? もぐもぐ」
「・・・・おめでと、ヒロ」
「パティもな」





そしてさくら亭の片隅にて。

(やったぁ! 大成功ですっ!)
(そうだな)

パン!

その様子を遠くから見ていた雅信とライフはハイタッチを交わしていた。

これが二人からのささやかなプレゼントだった。





7月11日。
ヒロ・トルース
パティ・ソール
二人の幼馴染が生を受けた日。





Happy Birthday to you.

Thank you for the life.

Best wishes to you.





エンフィールド幻想譚
二人の誕生日





     了

あとがき>

ちなみに、ヒロの金券はライフで協力者は紅蓮。パティの香水は雅信、エプロンは輝羅。
香水や新しいエプロンをプレゼントする際、雅信と輝羅がなんて言ったのかは不明(笑)
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