中央改札 交響曲 感想 説明

果て無き道を歩む者 外伝:秋風のノクターン
正行


果て無き道を歩む者
外伝:秋風のノクターン




















・・・・・夢を見た・・・・・




















・・・・・色あせた・・・夢・・・・・・










・・・・遠い・・・ずっと遠い憧憬・・・・・・・










・・・・・・ああ、声が・・・聞こえる・・・・・・・・










そうだ・・・・・・










・・・・・・・みんなが・・・・呼んでる・・・・・・・・










・・・早く行かないと・・・・・・・・・・
















       ―――実験は・・失敗か―――


                     ―――・・・なんだ、この力は―――



   ―――この村から出て行け!―――



―――あ・・あ・・ああ・・・ああああああああああああああああああ!!―――




      ―――おとー・・・さん・・・おとーさん―――


 ―――・・どこ・・・みんな・・・・どこ―――



                  ―――あうっ・・・・ひっく・・・ああぅぅ・・―――




    ―――どうしたの、キミ―――




                       ―――なんで・・・この子を!―――


 ―――ちがう・・・ぼくは・・・・こんなことしたかったんじゃ・・―――




                       ―――いやだ・・・ぼくがやったんじゃない―――

   ―――あく・・・・ま・・・・―――



           ―――嘘だ、こんな・・・嘘だ―――



                        ―――なんで・・・?―――





―――・・・死ねよ―――

                          ―――こんな子どもが・・・―――




            ―――どういうつもりだ?クソやろう―――



                     ―――雅信ちゃん―――


        ―――どけ―――


 ―――今日こそは、テメエを殺してやる―――




    ―――自分が殺される覚悟もないのにか? まだまだ子どもだな―――



                        ―――ほら、雅信ちゃんもこっちおいでよ―――


            ―――・・・・ガキか―――

                         ―――あ、ひっどーい―――



  ―――いい子いい子―――


          ―――・・・たのむからやめてくれ―――




―――君、一人なの?―――



        ―――君のお姉さんがこの事を聞いたらどんな顔をすることやら。ふふ―――




                 ―――赤い・・・赤い・・・月?・・・あかい・・・血・・・―――


  ―――あは・・・ははは・・・・―――



                ―――はははははははははははははは!―――





  ―――あ・・・・・・?―――



                  ―――ようやく・・・目が覚めたか、バカ息子―――



      ―――親父・・・・なん・・で―――



                         ―――そうか、お前も・・・か―――



   ―――ミランシャ?―――




                    ―――貴様ら!そういう事か・・・・!―――





  ―――ご安心を。あなた方は英雄として語り継がれるでしょう―――




                ―――己が身を省みず『箱舟』を封じた英雄として―――



―――よくもぬけぬけと・・!―――



                      ―――もう時間がない・・・さようならだ、じいさん―――


―――       ―――・・・・・ここは?―――




           ―――珍しい。ここに来てから初めてのお客さんじゃの―――


   ―――頼みがある―――


                      ―――正直・・・分からない―――

            ―――こいつを・・・頼む。私の分身だ―――




   ―――久しぶりの外だのう・・・・さて、どこに行こうか・・・―――


              ―――ようこそ、アメ。ここが儂・・・僕らの世界だよ―――




                  ―――お前達は・・・何者だ?―――



                        ―――汝、摂理に背きし者。輪の離脱者―――



―――なんで・・・お前は生きてるんだよ。なあ、答えろよ―――

      ―――シヴァン・・・―――



                                  ―――どうして!―――



  ―――・・・テオドラ―――



                       ―――来ないで!―――


            ―――・・・・すまない―――





           ―――なあ、傭兵や賞金稼ぎなんてヤクザな商売をするのは止めておけ―――



  ―――そんなのより、毎日の食べ物を作ってくれる人達の方が何十倍も偉いさ―――





     ―――なんだ、貴様は。この世界の住人か?―――



             ―――警告する。このまま退かぬあらば排除する―――



―――我らには・・ないのだよ―――



       ―――正雪・・・頼む―――


                    ―――あ、起きちゃった―――



       ―――んー、何だか危なっかしいからかな―――




                         ―――俺は・・・お前が好きだ―――




   ―――ねえ、あなたもたまには一緒に歌いましょうよ―――



                       ―――ここから先は危険です―――



         ―――イリア?―――





   ―――ふざけるな―――



                      ―――ならば、俺がお前を止めるさ―――




 ―――なぁ、なんで俺達はこんなことしてんだろうな?―――
 




       ―――・・・・・ああ、分かってる。分かってるさ―――





            ―――何か・・・言ってよ―――





                ―――俺が・・・お前達の両親を殺した仇だ―――





      ―――やめて!―――


                         ―――ヴィル・・ほら、姉さんこんなに強いでしょう―――



     ―――雅信、お前・・・・・―――




―――・・・・ん? 拓也にーちゃんどうかした?―――




            ―――くそ・・・っはぁ、また・・・『発作』か―――





 ―――・・・信じたいのでしょう?―――




                       ―――これからは・・・月が満ちる―――






             ―――もう決して、俺様には近づくな―――




              ―――雅信・ノウス。俺様はお前の事ならなんでも知っている―――




 ―――ばかやろう・・・・どうして・・・―――


        ―――分かってくれなかったんだよ・・―――




                            ―――ああ、言ってなかったか―――




        ―――だからエルと同じく俺も社会のゴミということになるな、マリア―――



   ―――ライ・・・フ?おまえ・・・―――



                  ―――やめろーーーーー!!―――



      ―――ククク・・そうか、そうか!お前は・・・!―――




                  ―――そんなもん分からねえし、一生分かりたいとも思わねえよ!―――





  ―――おぬしは何故・・・泣いているのだ?―――



                            ―――エルが飲み込めばいいんだ―――






―――この子に負けられない理由があったように、
          俺にも負けられない理由がある―――




   ―――私はね・・・・あなたが憎いんですよ―――




                   ―――分かりますか?この恐怖・・・―――


                                ―――私は・・・私はみんなと違う―――




              ―――私は・・・決して、みんなと一緒にはいられないんですよ―――



    ―――・・・ローラもメロディも、泣いてたぞ―――




―――ヒャハハハハハハ!―――





                     ―――俺とお前の決定的な違い・・・教えてやろうか?―――





  ―――みんな・・・俺を信じてくれ―――


                            ―――もう・・・終わりにしよう―――



           ―――雅信!―――

                              ―――正行さん―――

   ―――雅信くん―――

                    ―――正行―――

       ―――じいさん―――

                               ―――ま〜さちゃん―――










あれ・・・・・・みんな、聞こえない・・・・・・聞こえないよ・・・・・・










・・・・・待って・・・・・どこに行くの・・・・・・










熱い・・・・・火が・・・・・・・・









燃えている・・・・・・










ああ、真っ赤に・・・・・なにもかも、真っ赤に燃えて・・・・










みんな・・・・みんなはどこにいるの・・・・・・?





                                    ふふ、こうなったら・・・





ねえ・・・・・・・どこに行ったの・・・・・?





                          ―――さん!? 何を持っていってるッスか!?





ねえ・・・・・・・・・





                                       雅信くん、起きて♪















そうか、部屋で眠ってたのか・・・・・・・・・・それはいい。しかし、
「頭がズキズキする」
「あら、そう?」
「シーラ、なんで持ってるフライパンが凹んでるんだ?」
「これで雅信くんの頭を一発殴ったからよ」
「そうかそうか。それで―――って、オイ」
「ほら、下でみんなが待ってるわよ」
「サラっと流すな!」
「細かい事は気にしないの。そんなんじゃ大人になれないゾ♪」
「いや、シーラさん、そんな子ども扱いして尚且つ鼻をチョンと可愛らしくつついても
 誤魔化されないと思うが」
「ひ、ひどいわ。あのアヴァンチュールな一夏の夜は嘘とでも!?」
「って、無理矢理大人の方に持っていかなくてもいいっちゅーねん!それに全く脈絡も
 ないし人聞きの悪いことを言わないでくれ。そもそも今年の夏は俺、いなかったし。
 アヴァンチュールな一夏の夜って何やねん!一夏の夜って何やねんなーー!!」
叫び終えた後、水を打ったように静まる部屋。
「・・・・・ふふ」
「・・・・・・・・・・はっ!?」
今更ながらに気付く。今までの己が所業を。
だが時既に遅し。
「っん。で、シーラは何の用だったんだ?」
「・・・そうね。とりあえず今の件は後でじっっっくり話し合うとして」
するのか、話・・・・・
「私の用件は一つよ。ほら、下に降りてきて」
「下に? 今日はやけに店に人がいると思ったが・・・」
「いいから早く。ね」
「ああ、分かった。分かったからそう背中を押さないでくれ」
しかし・・・なんだろうか。微かにいい匂いもするし。
・・・・・・・・あ、そういえば今日は、っと・・・まさか?
トントントン、と二重の音を出しながらのんびりとジョートショップの一階に降りてか
ら、首を巡らした時―――



パンパン! パパパン! スパパパパパパーン!!


「!!」





                                    (いっせ〜の)

            『誕生日おめでとう!!』





クラッカーの中身が盛大に部屋を舞う様子を少々ぼうっと見やる。
そこには色とりどりの料理が台の上に所狭しと並び、部屋のあちこちが飾り付けられ、
なんといっても、笑顔のみんながいた。
後ろを振り返れば、そこにも満面に笑顔のシーラが。
「ほらっ、アンタも何か言いなさいよ」
パティが横にきて肘でつつく。
「あ・・・えっと」
今日は11月1日。

俺の―――誕生日。

「ありがとう」
あんな夢の後だったからだろうか?
昔を思い出したからだろうか?
「はは・・・・」
いや、違う。そんな事じゃない。
「みんな―――本当に、ありがとう」
ただ、嬉しい。それだけだ。
「あの、雅信さん、こっちに来てください」
クリスが手を引く。そこでイスに座らせられた。
そしてアレフがおもむろに手を広げ、
「ん、んー。それでは、これからこの羨ましいヤローの誕生パーティを開催しよう。
 では、まずは一番! 今やかの芸術の都一番の話題を掻っ攫ったシーラ・シェフィール
 ドによるピアノソロ!」
祝ってくれる友人達がいる事は・・・幸せな事だよな。
「それでは、私シーラ・シェフィールドから送る曲をお聴きください」
一礼して部屋に用意してあったピアノの前に座る。
一つ、息をして、その指が鍵盤の上を舞った。
「・・・・・・・・・・」
みんなが、聞惚れる。
荘厳な祝福の曲。だけど、不思議と暖かさを感じる。
「うん。いい曲だ」
シーラの奏でる世界にゆっくりと耳を傾ける。
やがてくる終わり、その余韻が終わるまで、じっとシーラの声を感じていた。

始まりと同じように一礼をする。
俺は微笑でそれに応えた。
「くぅ〜。ええい、この幸せ者めっ!こんなに素晴らしい友人を持って!俺も誕生日に
 シーラのピアノが聴きたいぞ!」
お前だと、他の女性たちが黙ってないんじゃないのか?
「では次、2番! エルからだっ!」
「ふん・・・ほらっ」
「これは、チェスの駒か?」
手渡されたのは木彫りの彫刻。一見見事だが、すぐに手製のものだと気付く。駒を逆さ
にしたら銘が彫ってあった。
「この前のチェス、あれでアタシとの戦歴は100戦になったんでな」
驚いた。
「そうか・・・」
「今度はアタシも将棋を覚えてやる。そして、これからもよろしくな」
不敵に笑ったエルに、俺は「ああ。楽しみにしている」とだけ応えて握手した。

「続いて3番!マリア・ショート嬢!さあ、みんな料理の防衛はOKか!?ちなみに爆発
 物はクラッカーを除いて持ち込み禁止だからな」
「ちょっと、アレフ!人をなんだと思ってるのよ!」
「ははは、マリアはとびっきり可愛い女の子と思ってるに決まってるだろ」
「え? ふふん、そうでしょそうでしょ」
いや・・・何も言うまい。
「さあっ、雅信。ありがたく受け取りなさい」
「ああ、ありがとう」
「あのね・・・マリアももう立派なレディーなんだからね」
おっと。いかん。つい頭を撫でてしまった。
「ああ、すまんすまん」
「ぶ〜☆」
「そうだ、今度俺特製の野菜・果物ミックスジュースを作ってやるから」
「えっ、ホント?」
ぱっ、と分かりやすいくらい顔を輝かせるのを見て、心の中でこっそり頬を緩める。
「やった〜。ねえ、それじゃあ今度はオレンジお願い!」
「ああ、いいぞ」
「えへへ〜☆・・・ん?って逆じゃない」

「では、爆発もしなかったようだし、次!」
「ぶ〜☆」
「4番! ピート・ロスの番だぁ!」
「お〜うっ! 俺にまかせとけっ!」
何を?
「というわけで、雅信。これが俺からの永遠の親友の証だ!」
これは・・・珍しいな。
「オオシロモンダイショウの抜け殻か?」
「おう! それこそがピート探検隊隊長から隊員へのプレゼントだ!」
「ああ。ありがとう」
微笑んでそれを丁重に受け取り、戸棚に近づく。
「ほら、腕を出せ」
「へ?」
「腕だ。ケガしてるだろう。これを塗ってやる」
戸棚から取り出した箱を空け、一つのビンとガーゼを取り出す。
「い、いいって!」
「・・・いいのか?」
そこで、俺はチラリとある人物に視線を流し、それをピートが追うと・・・
「ピートくん、ケガしてるの?」
「うっ、おばちゃん・・・」
「さあ、腕を出してくれるな?」
いくら人狼の回復力があるとはいえ、キズをそのままにしておくのは気分が悪い。
「・・・へーい。分かったよ」

「さあさあさあ! 次なる5番!いってみよー!
 ―――――」
そんな風に過ごしていて、ふとぼんやりと、頭の片隅で何かがそっと流れ出す。



聞こえてくるのは古き柱時計の針。

目を閉じてそこにあるのはセピア色の油絵。

膨大な時の流れに身を委ねる。

色んな声が鈍く、途切れがちに、鮮明に、近くから耳をうつ。

色んな姿が虚像となって、実を結び、映される。

見上げれば雲。広い空を、みんなと見上げてた。

駆ければ平野。風が草を揺らし、疲れれば木の根元で横になる。



ああ・・・そういえば、いい事もあったな・・・





              ―――おとーさん?―――



                              ―――ねえ、お歌、歌ってよ―――



               ―――だ〜れ〜か〜な〜? お漏らしして隠そうっていう悪い子は〜―――



―――わー!出たぞー、妖怪鬼婆だー!―――



                      ―――こらー! 誰が鬼婆よー!―――




        ―――ま〜だ夜が怖いの?はいはい。一緒に寝てあげるわよ―――



  ―――すまないが相席、いいかな?―――



                 ―――ふぁい?―――


               ―――ミラ、口に食べ物を入れたまま喋らない事―――





   ―――ほら、ちゃんと芽を出したでしょう?―――



                              ―――心配ないわ―――



       ―――ほら、手を出して―――


                           ―――ね、怖くないでしょう―――



             ―――あなたが一番恐れていた事―――




  ―――それが、あなたが一番欲しがっていたもの―――




              ―――いつか、言葉が、触れ合いが、思い出が―――



  ―――人が、あなたを救う標にならんことを―――





                       ―――おー、変なモンが釣れたな―――



                            ―――俺ぁ、カッセルってんだ―――




        ―――へっへーん。セアお姉ちゃん、これやるよ―――




    ―――ありがとう。雅信くん―――


                           ―――元気でね―――





    ―――あたしは、ミーシャ・ノウスよ―――




 ―――フローレス・・・―――




―――拓也にーちゃん!―――



                  ―――雅信、お前な〜、そんなにはしゃぐなよ―――




          ―――だってボク子どもだもん♪―――




     ―――言ったろ?例え雷鳴山の奥底でも助けに行く、ってな―――




                    ―――イリ・・・ア・・・―――




     ―――じゃあ・・・最後に・・頼みがある―――



                             ―――あの日・・約束してたよな―――



   ―――ええ、いいですよ―――




                        ―――・・・一緒に―――





            ―――最後の歌詞・・・あれは?―――



    ―――ふふ、今、浮かんだの―――

                        ―――そうか―――



 ―――じゃあ・・・これで、さよならだな―――







        ―――アリサさん・・・ただいま―――


               ―――おかえりなさい。雅信くん―――





「ほーら、主役がなに壁の花してるんですか!」
「みんな、ピザが焼きあがったわよ」
「お、いいねぇ」
「ボクもご主人様のピザは大好きッス!」





今は・・・まだまどろんでいよう



もうしばらく、このままで・・・・・










     了
中央改札 交響曲 感想 説明