中央改札 交響曲 感想 説明

雫の2:ヘリオス
正行


雫の2:ヘリオス・レヴィスト











「お〜い」
後ろから声がかかる・・・・と同時に反射的に俺は身を横にずらす。
「ヘリオスっ、―――っとわぁ!?」
今まで俺がいた空間を何かが横切る。
ずしゃあぁ!
無論空中に飛びついてきたその人を優しく受け止めるような物体など存在している
はずもなく、至極当然の事ながら慣性の法則、及び万有引力の法則に従って最も
質量の大きい地面に浅い角度からダイブしていった。
「・・・・・・・・・・・」
その人の姿を確認して―――いや、確認するまでもなく自分でも眉間に皺が寄ってい
くのがわかる。
「―――小父貴」
「うう・・・ヘリオス、おじさんの事がキライなのか!?そうやって避けるなんて」
憐れっぽい声と目でいまだ地面にうつ伏せたまま見上げてくる人は艶やかな黒髪に漆黒の
両目をした男性、雅信・ノウスおじさん。
俺――ヘリオス・レヴィスト――を育ててくれた人だ。
「別にない」
「でも声をかけて避ける動作に入るまで何のためらいもなく一瞬で、しかもやけに
 流麗で動作に淀みがなかったような気がするんだが」
・・・・・それはおじさんが今まで何度も同じことをしてきたからでしょうが。
「それより小父貴、いきなり飛びついてきたりしないでくれ」
もう40にもなるのに。
「いいじゃないか。暖かい親子のスキンシップだぞ♪」
「・・・・・・他に仕様がある」
「俺はこれがい〜の。それよりちょっとおじさんに付き合わないか?」
「・・・・・・」
無言で背中を向ける。拒否の合図だ。
「な〜な〜、最近土いじりや勉強ばっかりでぜんぜん構ってくれてないだろ?」
「・・・・・・・・・・・」
無視。
「今日ぐらいいいじゃないかぁ〜」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
あくまでも無視。ここで構うと負ける。
「ううう。ディアナ、聞いてくれ。ヘリオスがおじさんを無視するんだ・・・・」
う・・・・・
「すまんな、ディアナ。俺の教育が悪かったせいでお前の息子がこんな風に育ってし
 まって・・・そうだよな。所詮はおじさんはおじさんだもんな。思えば19年前。
 お前に出会って――というかほとんど強制だったが――ヘリオスが生まれてからの
 長い間、薬草師として日々を過ごしながらアメやカッセルと一緒に育てて、障子は
 破るわ俺の後を付いて来るわ、俺の布団で寝小便するわで・・・・・・」
「だあーーーーー!!!」
耐え切れず振り向けば小父さんは鳥たちとしんみりと語り合っていた。
「おじさん、どこぞとも知れない野鳥に母さんの名前をつけるなっ!」
「昔はよくアメを引っ張ったり振り回したりとやんちゃな子で・・・・・」
「だからってバッタにすればいいって問題じゃない!」
「ああ、5年前のあの時に言ってくれたあの言葉―――」
「いい加減に止まれぇ!」
「・・・・・・・・・・・・」
止まって横目でこっちを伺ってくる。核爆級に嫌な確信が。
「で、おじさんの用は?」
先にイニシアチブをとらないと身の危険が及ぶかもしれない。
「ああ。一緒に昼寝をしようと思ってな」
くるり。回れ右。
「そーだなぁ。今度は7歳の時にルミリアの体を撫で回したあげくキスの嵐を振りまい
 た事でも皆に―――」
「だーーわーーーたーーーー!!!」
後ろからとてつもなく個人の尊厳を失墜させる提案(?)が!
「な、なななな、何を!?」
「事実だろう」
「あれは、違う!その、ああ、仔犬!そう、仔犬であって・・・・!」
「ほう? という事はやっぱりちゃんと憶えていたのか」
「―――――!!?」
しまっ・・・・・!
「そ〜だよなー。昔は同じ布団で眠ったりしてたもんな」
ぐ・・・・
「・・・課題と復習、及び剪伐」
我ながら苦渋に満ちた声だと思う。
だがこれ以上あの話題を続けるのは命取りだ。
「ん?」
「・・・・・・・・・」
「ああ、そうか。じゃあ俺も少し手伝おう。そうすればそれなりに時間ができるだろう」
それに、とおじさんが続けて、
「いつものお返しだ」
―――――!?
「何のことだ、小父貴?」
「さて?」
「・・・・・・・・・・・」
「あっ、こら。おじさんを置いてさっさか行くなんてひどいぞ〜」
「・・・・昼寝、するんだろう」
「ん?」
「今日は剪伐だけでもいい」
「そっか。おじさん、嬉しいぞ」
「・・・・・・・・・・離れてくれ」







ヘリオス・レヴィスト。
紫銀色の髪に鮮紅色の瞳。
まだ設定は本決まりではないですけど。
本当はすっごい口下手で照れ屋な青年。
こんな風なのは家でだけ。
ちなみに雅信が薬草を栽培してたり、家庭菜園を持っていた影響からか、
13の時に趣味で小さな土地でもってミニ果樹園を始めてます。
彼はまあ色々あって雅信がディアナから預かって育ててます。
そのあたりの話はおいおい幻想譚『夢見る佳人』で。
でもこれってほぼ完全にオリキャラしか出てこないんですよねー(汗)
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