中央改札 交響曲 感想 説明

雫の4:雅信
正行


雫の4:雅信・ノウス









ここは森の奥深く、そこへ薬草を摘みに来た雅信。
「さて、これぐらいでいいかな」
大きな樹の根元から離れて、荷物を置いている場所まで歩く。
「しかし・・・今日は暖かいな・・・ちょっと一眠りしていくか」
そう言って手短な樹に背を預けて座り込む。
「ふう」と一息吐いて、そっと瞼を落とした。



・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・ポツ・・・ポツ・・・

・・・ポッポッ・・・ザアアアアーーー

やがて、通り雨だろう、しかし土砂降りとなった強い雨はしばらく止む気配がない。
その中で、大きな傘の下で眠っている雅信だが、そこが雨で濡れるのも時間の問題
だろう。
だが、それでも雅信には有り得ない事だが、目を覚ます様子はなかった。
バサアッ・・・
そこへ大きな、樹齢千年を超える大木の背すら追い越す白い竜が舞い降りた。その目に
樹の下で眠る無防備な人間を捕えて。


・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・



ゆっくりと、黒一色の世界に裂け目が生まれる。
「ん・・・・」
薄暗い森の中、所々に太陽の光で光る雫が見える。それに森に雨が降った後の独特の空
気を感じて雅信は「雨が降っていたのか」と思うが、すぐに打ち消す。なぜならまだ遠
くから雨音がしているからだ。
その疑問はすぐに氷解した。
雅信の正面に、巨大な白い竜が鎮座しており、その大きな翼が雅信の頭上に広げられて
いた。その巨体が雨に濡れていた事からも、それが雅信の傘代わりになったのだろう。
「・・・白皇竜」
またの名を、法皇竜。
彫像かと見間違うくらいの荘厳な佇まい。目の前の竜は希少な白竜の中でも更に特殊な竜。
その竜の瞳からは目の前の存在への敬いの色が見て取れた。
「・・・ありがとう。もう大丈夫だ」
この竜は一般に人以上に知能が高い。無論人語をも解せる。
そして、自然よりの存在だからだろうか、雅信にソレを感じ取ったのは。
竜は相変わらず無言のまま。その雄大な翼を静かに音を立てずにしまう様は自然と
偉大なる者たる風格を感じ取れる。
その竜は一度、人間の社会に合わせたのだろう、恭しく頭を下げ、再び無音で
飛び立って行く。飛び立った次の瞬間にはもう姿はどこにも見えない。
それを残った者は黙って見送った。
「そうか・・・今日は満月だからか・・・」
そうこぼして、雅信は街へと帰って行った。まん丸をした夕月を空に冠して。

ちなみに、エンフィールドでは巨大な白い竜、人前に全く姿を現す事のないレアな幻獣
を見たとかいって大騒ぎになっていたとか。








・雅信・ノウス。
この世界の生きとし生ける者達の中で最高・至高の存在。ある時には畏れられ、又は
敬われてます。ただし、ある条件下でですが。
最高であって、最強ではないのであしからず。
でも、ある意味全ての存在と等しくもありますが。
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