雫の8:シーラ・シェフィールド 〜それゆけシーラちゃん! 疾風怒濤編〜
「ああ、シーラ・・・」
「雅信くん?」
熱い情熱を含んだ瞳、熱病にかかったような表情。
そう、雅信は完全に目の前の虜となっていた。
「その白魚のような手・・・つぶらな瞳・・・」
その全ては、彼女のせい。
ゆっくりと、雅信はシーラとの距離を詰める。
「ま、雅信くん・・・」
シーラもまた、その雅信の様子にポッと頬を赤く染める。
「思わず食べたくなるようなその体・・・濁った目・・・」
・・・ん?
「ああ、その全てが・・・」
そして、いよいよ距離が0になり―――
「ああっ。大好きだ、シーラカンスのシーラちゃん!」
がばっと―――シーラの横に何故か置いてある大きな魚の入った浴槽に抱きついた。
〜シーラカンス(シーラカンス科)〜
COELACANTH
分布
南部アフリカ東岸
(大コモロ島、アンジュアン島周辺)
体長
1.5m
1938年12月22日に最初の個体が発見されてから現在までの間に、200個体以上が
捕獲され世界中の博物館 などで標本が展示されている。およそ6500万年前に恐竜
などといっしょに絶滅したとされていた総鰓類の仲間 だったため「生きている化
石」として大きな話題となった。1987年にドイツの調査隊が生態撮影に成功した
が、 生息水深が100m以上と深いため、未だ詳しい事はわかっていない。
引用>htt○://eco.goo.ne.jp/wnn-z/files/data/tour/6/sirakans.html
ちなみに、チャットで聞いたところシーラカンスは食べれるようです。
不味いそうですが。
「ひどい・・」
「?」
「ひどいわ、雅信くん・・・」
「シーラ・・・?」
シーラはふるふると肩をを震わせ、拳を握り締める。
そしてキッと睨みつけ、己が押えきれない衝動をぶつける。
「シーラカンスだからシーラなんて名前が安直すぎよ!」
「そっちか!!」
結局、どこまでもボケるシーラだった。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
沈黙。
やがてシーラがぼそっと呟いた。
「・・・30点」
雅信がその言葉にガクッと膝を折る。
「うーん、ちょっとオチが弱いわね。それにネタもイマイチだし・・・」
「シ、シーラ。お願いだからもう勘弁してくれ・・・」
その雅信の様子は、かの千本ノックを終えた後のようなグロッキー状態に見えた。
シーラに捕まってからかれこれもうずっとこんな調子だ。
「あ、ちなみに800点満点だから」
「なにぃ!?」
「ほら、よくいうじゃない。五教科六科目って」
「それは違う!」
「ま、それはどうでもいいわ」
雅信は「よくない」と即座に、しかし心の内で激しく主張してみる。
何故口にしないか。それはせっかく終わりそうなのにわざわざやぶ蛇でつぶす事
もあるまい、という事だ。
「雅信くん、それはインドアよ」
「頼むからナチュラルに心を読まないでくれっ! しかもインドアの言葉の使い方が
違うし。ていうか指を差さない」
「さてと、今日はもう遅いわね」
「ああ、そうだな・・・俺、今日は一体何をしてたんだろう・・・ふふふ」
そんな風にイイ感じで遠い目になっている雅信にシーラが笑顔を向けて、
「じゃあ、後は家で泊り込んで集中特訓よ」
「・・・・はい?」
「さ、行くわよ。大丈夫、遠慮しないで」
「え?え?え? いや、えーと、アリサさんに・・・」
「それはもう了解は取り付けてあるわ」
「連絡を・・・って、計画的!?」
「言ったでしょ、私強くなるって」
「ね」と10人中10人が見惚れる微笑を唯一人の男に向けるシーラ。
・・・但し、言葉の内容は遥か地平の向こうへとイってしまっているが。
「い、いや。いくらなんでも女性の家には・・・」
「やあね、雅信くんは友達じゃない。その点は信頼してるから」
何かのメロディを口ずさみつつ雅信をズルズルと引きずっていく。
そのメロディは・・・
「なんでシーラが『笑点』のテーマを知ってる!?」
シーラはそれに魅力的なウインク一つ、
「お笑いの魂はね・・・全てを超えて繋がってるのよ♪」
「あ"あ"あ"、シーラ。頼むからこっちに帰ってこいーーー!」
「あ〜る〜晴れた〜昼下がり〜♪」
「ドナドナはやめれ〜〜〜!!」
ズルズルズル・・・・