中央改札 交響曲 感想 説明

金色の翼   第7章
ましゅまろ


 悠久交響曲 金色の翼
 第7章:『ナンパ師やめます』
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 今日の出席者は、アレフさん、クリスさん、リサさん、エルさん。
 でもアレフさんはさぼりです。
 今日の業務は急遽、女の子と食べ物に目がないモンスターの捕獲に変更。お母さんが出かけていていないので、私だけ残って店番です。
 お昼休みに、さくら亭に行ったわたしは――――

            ―――セリスの日記より抜粋―――


カランカラン♪

「こんにちはパティさん」
 さくら亭にセリスが来ると、パティは苦笑した。別に彼女が嫌いと言うわけではない、ただセリスがさくら亭にいる間、客の回転率が異様におちるのだ。なんとなく看板娘の名が泣くような気もする。
「いらっしゃいセリス」
 おきまりの挨拶を交わした後、セリスは窓際の席に向かう。そこにはシーラとシェリルの姿があった。
「こんにちは、シーラさん、シェリルさん。」
「あ、こんにちは・・・」
「こんにちは」
「ここ、いいですか?」
 相席を求めると2人とも快く応じてくれた。席につくと、すぐにパティが注文を聞きに来た。
「何にする?」
「焼きうどんです」
「・・・セリス・・・時々妙なもの頼むわね」
「?」
 首をかしげる。その時・・・

カランカラン

 さくら亭に一人の男性客が入って来た。真っ白なスーツを着こなした見るからに気障な男だ。
「おお〜こんな所にこんな美しい女性がいるとは・・・ここに泊まって正解だったな」
 見かけ通りに気障なセリフをのたまいながらセリス達の席に近づいてくる。
 男はセリスのすぐ側まで来ると、気障ったらしく礼なんぞしつつ・・・
「美しいお嬢さん。今日1日私とお付き合い願いませんか?」
 いきなりセリスを口説き始めた。
「・・・・・・・・・・・・」
 もぐもぐもぐ
 もし、口説いた相手がふつうの人・・・例えばシーラであれば、男性が苦手な彼女はしどろもどろになるだろう。例えばシェリルであれば、やはり真っ赤になっていたであろう。実際二人は顔を真っ赤にしながら状況を見守っている。
 しかし、このセリス・アスティアという少女はいろんな意味で普通ではなかった。
「・・・・・・・・・・・・」
 むぐむぐむぐ
 彼女はただもくもくと焼きうどんを片付けている。気障な男の口説き文句を彼女の脳が言葉として認識しなかったからだ。
「・・・・・・・・・・・・」
 ちゅるる・・・ごっくん
「え〜〜〜と(汗)」
 むなしい、ものすごくむなしい。気障な男はセリスにむけて礼を決めたポーズのまんま固まっていた。その顔は微妙に引きつっている。
「あの・・・セリスちゃん?」
 おずおずとシーラが声をかける。セリスは口の中の焼うどんを飲み込むと顔を上げた。
「どうしたの?」
「え〜と。そこの人が・・・」
「そこのひと?」
 ようやく気障男の存在に気づいたようだが男は今だに固まっていた。
 そのためセリスのこの男に対する第一印象は『妙なポーズで固まっている人』であった。 
「あの〜何か御用ですか?」
 目的の人物から声をかけられた事により、ようやく男は硬直から脱出した。そして気を取り直して一礼し、再び気障なポーズで口説き始める。
「お美しいお嬢さん。私は放浪のナンパ師ガイ。世界を旅し、女性に一夜の夢を与える者です。」
「え?」
 言葉の意味が判らずキョトンとするセリス。その仕草は凄まじくかわいい。
 それを見て脈ありと感じたのだろう。ガイはセリスの手を取り、そして・・・
「お嬢さん・・・この私とお付き合い願えませんか?」
「お付き合いって・・・・・・『どこに』ですか?」
 ・・・・・・ガイは再び固まった。
「セリスちゃん今のは・・・」
「多分そう言う意味でいったんじゃ・・・(汗)」
 呆れたように呟くシーラとシェリル。
「ありゃりゃ・・・また玉砕したのが一人・・・」
 一方パティは別の意味で呆れたようだ。別に今に始まった事でもないらしい・・・セリスのボケは・・・
 さくら亭に新たな客が入ってきたのはそのときだった。

 カランカラン♪

 アレフである。
「みつけたぞ!お前がガイだな!」
 アレフはガイをみるなり血相を変えた。近づき、ガイの胸倉を掴む。
「何をするのかな?」
 ガイ、硬直から復活。
「うるさい!」俺のキャッシーを返せ!俺はキャッシーをナンパするのに3日もかけたんだ!」
 しかしガイはアレフの手を振り解き、髪をかけあげ気障ったらしく笑った。
「ふっそれは彼女が君ではなく私になびいたと言う事・・・振られた男がなにを言おうとそれは負け犬の遠吠えだ・・・」
「くっ!」
 状況から鑑みるにアレフがナンパしようとした女を、ガイにとられたと言う事か。
「ふーん、アレフも女の子をとられた口なんだ」
 パティが暇になったのか、セリス達の側で二人の言い合いを見ている。店内の喧嘩を嫌がる彼女が黙っているのは殴りあいにはならないと考えているからだろう。
「パティちゃん、ガイって人をしってるの?」
 シーラが尋ねる。
「うちの宿泊客。世界中を旅してるナンパ師みたいよ」
「ナンパ師・・・ですか?」
「それが面白いのよ!アレフみたいに女の子の部屋の鍵を鍵束にして集めてるんだってさ」
「さっきパティさんが言ってた『アレフも―』というのはどういう意味なんですか?」
「ああ、彼に恋人をとられた男って結構多いらしいわ」
「へえ・・・」
「あ、私も聞いたことがあります。なんでも女性と一晩だけお付き合いして、次の日には別の女性と付き合い始めるって」
「そんな!そんなのまちがってると思う」
「でも今までトラブルはないみたいよ」
「それでも今までは・・・ですよね?」
 女性4人の会話のあいだにもアレフとガイの口喧嘩はヒートアップしていった。
「ふっ、この町に私と同じナンパ師がいると聞いていたが君のことかな?」
「ああ、そうだ!」
 思いっきり肯定するアレフ、だがいいのか?その言葉はまわりのひんしゅくを買うぞ?
「ならどちらが優れたナンパ師なのか、白黒つけようじゃないか」
「いいだろう!勝負の方法を言え!」
 辺りに雷鳴が轟き、龍虎相対す――本人同士はそう思っているのだろうが店中の客全てが絶対零度の視線をむけている。
「勝負の方法は・・・任意に決めた女性を先にナンパしたほうが勝ちとしよう!」
 ガイは高らかに宣言する。さらに周りのひんしゅくを買いそうなその内容にさすがのアレフも顔色を変えた。
「なっ俺はそんな事のために女性をナンパするなんてできない!」
「負けるのがこわいのか?」
「ちがう!ナンパは真剣にやるもので勝負の材料にはできないと言ってるんだ!」
「そうだなターゲットは・・・」
 ガイはアレフの言葉に耳を貸さず、店の窓から外の通りを見渡した。そして通りを歩いている一人の女性に目をつける。
「おお!あの女性がいい!あの猫耳の少女の隣を歩いている女性だ!」
 猫耳?怪訝に思ったアレフが外を見ると、メロディが見たことのない女性と一緒に歩いていた。その女性はすぐに角を曲がって見えなくなる。
「あの女性を先にナンパできたほうが勝ちだ」
 一方的にそういうとガイはすぐさま店を飛び出していった。
「あ、ちょっと待て!俺はそんなことでナンパをするとはひとことも・・・」
 アレフも慌てて外にとびだしたが、ガイはもう見えなくなってしまった。頭を抱えるアレフ。その時背後から声がかかる。
「で・・・どうするんですか?」
「どうするってそりゃあ・・・ってセリス?」
「こんにちはアレフさん、仕事をさぼって何をしてるんですか?」
 アレフが振り向くとセリスがにこやかな笑みを浮かべて立っている。しかしその額にはでっかい血管マークが張り付いていた。
「い、いや〜それは・・・」
 アレフはうろたえながらも必死で言い訳を考える。美人は怒ると怖いという通説があるが、本気で怒った彼女はものすごく怖い事をアレフは知っていた。さらに言うなれば、彼女はアレフがさぼった事よりもそれによってフレイ達に迷惑をかけた事の方に怒りを覚えるタイプである。
「仕事さぼって何をしてるんですか?」
 再度の問いかけ、別に早く答えろと急かしてるわけではなく、この場合、早くあやまれと言っているのではないかとアレフは判断した。
「ごめんなさい・・・」
「私ではなく皆に謝ってくださいね」
 とりあえずセリスから怒りのオーラが収まっていくのを感じる。アレフは最大のピンチから逃れられた事を悟った。
「それで・・・どうするんですか?」
「え?なにが?」
 どうする、とは勿論ナンパ勝負のことである。
「あ〜そうだよな〜まさか本当にナンパするわけにもいかないし」
 再び頭を抱えるアレフ。そこでセリスは1つの提案をした。即ち、
「ターゲットの女性になにもかも話してしまうというのはどうでしょう」
「いやしかし、そんな不正な事は・・・」
 しかしこの提案はアレフのお気に召さなかったようだが・・・
「じゃあ、ナンパしますか?勝負目的で、メロディちゃんの知り合いと思われる人に」
 どのみちアレフに選択の余地はなかった。店内のギャラリーが白い目を向けたせいもあってか、結局アレフはその提案を受け入れた。
「それじゃあ、パティさん、ちょっとアレフさんと行ってきます。ごちそうさまでした」
「ちょっとセリス、アレフにつきあうつもり?あんな奴ほっとけば?」
 パティが何気にひどい事をいう。
「そうはいきません。ほっといたら明日の業務もサボりそうですから」
 セリスも何気にひどい答えを返し、涙するアレフと出て行った。


 ターゲットの女性はメロディと一緒にいたことと、二人が歩いていった方角から考えて、恐らく二人は由羅の家に行ったと思われる。
 セリスとアレフが由羅の家に向かって走っていくと、はたしてターゲットの女性においつくことが出来た。
「あのお、すいません」
 アレフとセリスはその女性に声をかけた。
「あれ?あれふちゃんに、せりすちゃん」
 先に振り向いたのはメロディ、遅れて女性もゆっくりと振り向いた。
 その女性は、まるで吸い込まれそうな漆黒の眼をしていた。
 瞬間アレフは、体に電流が流れたような錯覚に陥る。
(この全身に電流が流れるような感じは・・・まさか!)
 それはアレフにとって初めての体験、だが経験豊富なアレフは、この現象がなにか、瞬時に理解した。
(まさか・・・これは人目惚れ?)
 この瞬間アレフは当初の目的をすっかり忘れてしまった(笑)
(そうだ!これはガイとの勝負なんて関係ない!俺の本能がこの美しい女性とお近づきになりたいと叫んでるんだ〜!)
「あの、アレフさん?」
 セリスはアレフからひじょ〜に不穏当な空気(主に邪気)が流れてくるのを感じた。
「お嬢さん、俺と一緒に・・・」
 習慣というものは恐ろしいものである。例え我を失っても何千回とナンパを繰り返しているアレフの体は反射的にナンパモードへと移行していった。隣にメロディやセリスがいるのに・・・である。
 アレフは優雅なしぐさで一礼し、ガイの如く口説き文句に入った。
 しかし、女性はアレフを半眼になって睨み、

「なんの真似だ・・・アレフ」

瞬間、時間が止まった。アレフは、女性に向けて、手を差し出したその姿勢のまま、口をパクパクとさせた。その女性の声が彼のよく知る男性の声にそっくりだったからである。
「ま・・・まま、まさか・・・」
 セリスはその女性に顔を近づけ、その目をまじまじと見つめた・・・そして一つの結論に達する。
「ひょっとして・・・フレイさんですか?」
「その通りだ」
 女性――フレイは肯定した。
「うわああああああああ!!!!俺の!、俺の青春を返せえええええ!!!」
 その途端アレフは絶叫をあげながらのた打ち回った。
「うにゃあ〜?あれふちゃん。どおしたの〜?」
 一方フレイはどうやってこの格好を説明しようか考えていたが、聡明なセリスが事の真相を見切ったため、手間が省けた。
 曰く、女好きのモンスターを釣るために女装したらしい。メロディとは由羅の家に服を返しに行く途中で会ったとのことだ。(ちなみにメロディは一目でフレイの女装を見破ったらしい)
「ふれいちゃんおねえちゃんみたいにおめかししてるから、びっくりしたよぉ」
「な、なるほど、それで女装を・・・」
 アレフは今だショックから立ち直っていないらしい。悪い夢でもみるような目でフレイを見ており、時々なにやらぶつぶつ呟いている。
「なるほど・・・それでナンパを・・・」
 そして、アレフ達の事情を聞いたフレイは、呆れたようにアレフを睨んでいる。
「しかし、ガイか・・・成る程」
「どうかしたんですか?」
「いや、さっきジョートショップに寄った時にキャッシーという娘から依頼をうけてな」
 ピクリ。その名にアレフが反応する。
「なんでもガイという男に騙されたらしい。自分は本気だったのに相手は遊びだったとか言っていたな、それでその男に渡した部屋の鍵を取り返して欲しいそうだ」
「何!キャッシーが?」
「さらに何人かの娘が同じ事を依頼してきたな」
「ひどい・・・」
「くっ、許せん!とっちめてやる!」
 怒りで復活したアレフは拳を握り締めた。セリスも怒りを禁じえない様子である。メロディは全く状況が判ってないようで、フレイはなにやら考えていたが、やがて口を開いた。
「ふむ・・・アレフ、ここは私に任せてくれないか?」
「?、お前に?」
「ああ、ガイは私をナンパしてくるのだろう?私が男だとも知らずに」
 セリスはああ、と声をあげる。
「なるほど、一度ナンパをうけて、後で鍵を渡してくれるよう交渉するんですね?」
「待て!それだけじゃ、俺の気がすまない!」
「わかった。それではその男にお仕置きを施すとしよう。最後に私が男である事を教える事でな」
「な・・・なるほど・・・そりゃあ奴のプライドはずたずたになるだろうな〜」 
 さっきプライドをずたずたにされた男は頷いた。
「そういうわけだからメロディ」
「うにゃあ?」
「後は二人に送ってもらってくれ、二人はメロディを送ったらジョートショップでまってて欲しい」
「あ、ああ」
「わかりました」
「じゃ〜ね〜ふれいちゃん。ばいば〜い」
 メロディがバイバイをする。
 
 しかしアレフは挨拶もそこそこにメロディを家まで送り届け、すぐさまジョートショップに向かった。よほど結果が気になるのだろう。
 しかし、そんな短時間で結果がでるはずもなく、アレフはフレイが帰ってくるまでの間、セリスと一緒に残務処理をこなすことになった。
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 そして2時間後、
「あっ帰ってきたみたいですよ」
 カウンターに座っていたセリスが声をあげる。アレフが振り向くと、ガラス張りの扉の向こうから、フレイが歩いて来るのが見える。アレフは早く結果を聞こうと急いで扉に手をかけ、
「えっ?」
 そして小さくうめいた。
 フレイの隣に、ガイの姿を発見したからである。
「なんでガイが?」
 アレフは思いっきりうろたえた。
 セリスも珍しくうろたえる。
「と、とりあえず隠れませんか?」

 カランカラン♪

 二人がカウンターに身を隠すのと同時に二人が入って来た。
「君の部屋はどこだい?」
 ガイはフレイの腰に手を回し、やさしく問い掛ける。
「二階です」
 フレイは声色を使って返す。見事な女声だ。
「ふっ、では行こうか・・・」
 そして、ガイとフレイは階段を上がり、二階のフレイの部屋に入っていった
 ばたん、というドアの閉まる音を聞いてアレフはカウンターの影から顔をだし、階段から二階を見上げた。
 その頭には見事な疑問符が浮かんでいる。

 一体どういうことだろう。アレフは考えた。結果を持ってくるはずのフレイはなぜ、ガイをつれてきたのだろう。しかも状況からして、鍵もとりかえしてないし、お仕置きもしてないようだ。
 一体どういうことでしょう。セリスも考えた。どうして二人は仲良さげに部屋に入っていったのだろうか。

「一体何考えてるんだ?フレイの奴」
「どうして二人して部屋に入っていったんでしょうか」
「ええと、『一晩の夢』を実行するためだと思うんだが・・・」
「一晩の夢?」
「いや、なんつーかー・・・男と女が・・・」
「フレイさんは男性なんですよ?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「なあ、セリス。フレイはいつ男だってばらすつもりなのかな?」
「最後にって言ってましたね」
「それっていつだと思う?」
「それは・・・」
 どのみち本人がばらさなくてもガイが一晩の夢とやらを実行しようとした時にフレイの性別はばれるのだ。
 アレフはふとガイが気障ったらしいセリフを並べつつフレイの服をゆっくり脱がしていく様を想像し・・・・・・
 アレフの背中に冷たいものが流れる。
「あのさ、フレイの言うお仕置きがなんなのか思いついたんだけど・・・」
 アレフの顔からさーっと血の気が失せていく。
「奇遇ですね・・・私も思いつきました・・・・・・」
 一方セリスの頬には、すーっと冷や汗が流れ、その顔がわずかに紅潮していた。
 フレイが一体何をするつもりなのか、二人はまったく同じ結論に達したのである!



「うぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!」



 絹を引き裂く男の悲鳴(笑)が聞こえてきたのはその時だった。
 二人はあわてて階段を駆け上がり、フレイの部屋、その閉じられたドアの前まで来た。耳をそばだてる必要もなく、ドアの内側からドスンバタンという音と、悲鳴が聞こえてくる。

「お、おおお、おたすけー!!」
 この悲鳴はまぎれもなくガイの声である。今までの印象からは想像もできないほど情けない声だ。
「何故脅えるのだ?私をナンパしたのはお前の方だろう?」
 対照的にいつも通りの淡々としたフレイの声がなんか怖い。

 ビリビリビリ〜〜〜〜〜〜〜!!

 なにやら布を引き裂くような音、
「ひいいいいいいいいいい!!!!!」
 さらに響くガイの悲鳴、
「お願いします!ナンパ師やめます!ってゆうかナンパ自体もうしませんから・・・だから・・・ゆ〜る〜し〜て〜!!」
「私が何を許すというのだ?言葉が支離滅裂だぞ?マイ・ハニー」
「いやああああああああああああああああああああ!!!」

 ガラガラガラ←窓を開けるような音、

「逃げるな」

 ガラガラ―ピシャリ!!←その窓をいきなり閉めるような音、

「うひゃあおえあああああああ!!!」

 ガッチャ〜〜〜〜〜〜ン!←なにかがわれるような音

 セリスとアレフは思わず顔を見合わせた。恐らく自分達の想像どおりでの事がこの扉の向こうで起こっているのだ。
 さて、どうしよう(汗)?
「ここは・・・入って止めるべきなんでしょうか?」
「さ、さあ」
 二人が躊躇していると、部屋のドアが勢いよく開かれた

 っどばたん!

 そして中から人影が飛び出してきた。
「うわ!」
「きゃ!」
 そのとたんアレフは思わず声を、セリスは小さく悲鳴をあげた。
 なぜなら部屋から飛び出してきたのは、すっ裸のガイだったからである。
 ガイは右手で股間を隠し、左手で自分の服をひっ掴んだ情けない格好のまま、
「ひゃおえあうあいあおえあうああああ!!」
hhhh などとわけのわからない悲鳴をあげながら・・・

 どたばたどたばたどたばたどたばたごろごろごろごろごろ

 ものすごい勢いで階段をかけおり途中でこけて転がり落ちて・・・

 っばあん!!

 そのままジョートショップを出て行った。

「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
 目の前で(正確には見たわけではないが・・・)おこったひじょ〜にとんでもない出来事の前にアレフとセリスは完全に固まってしまった。
「ふむ、依頼達成だ」
 部屋からフレイが出てくる。既にいつもの黒づくめの格好に戻っている。その左手には鍵の束が握られていた。
「え〜〜と〜〜」
 とりあえず『ごくろうさま』と言うべきなのだろうか、だがセリスの口はふるえていてうまく動かない。いつもの笑顔で応対しようとするが、その笑顔はおもいっきり引きつっていた。
「それでは、依頼人の所に行って来る。オーナーが帰ってきたら、帰りが遅くなると伝えておいてくれ」

キイ・・・・・・バタン・・・

 そのままフレイは出て行った。
 のこされたアレフとセリスはしばらくの間、顔をひきつらせたまま、固まっていた。







 翌日のエンフィールド新聞より抜粋。


  ○月×日
 ここしばらくエンフィールド中を騒がせていた放浪のナンパ師ガイがストリーキングの罪で逮捕された。
 ガイを逮捕した自警団のA氏に話を聞いた所、ガイは昨日の午後6時半頃、陽のあたる丘公園付近を、何故か素っ裸で走っていた、と語っている。
 キザで放浪のナンパ師を自称するガイが何故そのような行為に及んだのか自警団が取り調べを行なったが、ガイは非常に錯乱し、わけのわからぬ事をつぶやくばかりで一向に要領をえないため、一部では病院に移送する話がもちあがっている。




 ちなみにこの新聞を読んだフレイは、
「運が悪かったな・・・」
 とただ一言だけ呟き、その場にいたアレフを大いに戦慄させたという




 第7章 終わり
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 〜あとがき〜

 やっちった――――――!!!!
 以上、私の心の声でした。今回の話は、前回の話と、同じ日に起こった話で、それぞれセリス視点とフレイ視点のザッピングシナリオとなっております。こういう形式にしたのは、もちろんフレイの女装という非常識な状況を正当化するためです。
 さて、次回のキーパーソンはA氏!第8章『てめえなんかと』
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