中央改札 交響曲 感想 説明

金色の翼   第九章
ましゅまろ


 太陽がぽかぽかして気持ちのいい午後、
「こんにちはフレイお兄ちゃんいる〜?」
 ジョートショップにローラがやってくる。彼女の目当てはずばりフレイだ。
 この町で唯一ローラに触れることのできるフレイはローラにとってまさに運命の王子様である・・・・まあ、王子様にしては無愛想で言葉遣いがどうも偉そうAND爺くさいが、

 そんなわけで彼女はフレイの仕事が休みの日になると嬉々としてジョートショップにやってくる。以前は仕事中にもやってきたが、それはやめてくれとフレイに言われたために仕方なくお邪魔するのは休みのときにしている。
 もっとも今日はフレイがいない。セリスが個人的な頼みごと(実際には謀りごと)をしたからだ。
 ローラは当初はぶーたれていたが、やがてセリスと女の談義に花をさかせはじめた。

「ねえねえ、ほんとにセリスお姉ちゃんはフレイお兄ちゃんと何にもないの?」
 いきなり突っ込んだ質問をするローラ、なんにもないの?とはもちろん二人の間に恋が芽生えるようなことはないか、ということである。
 ローラからしてみれば自分の運命の相手(と、勝手に思ってる人)がミスコンにでればぶっちぎりで優勝しそうな美少女と一つ屋根の下に住んでいるのである。そのうえ行き倒れていたところを助けるという運命的な出会いを果たしているのだ。危機感をもって当然といえよう。

 しかしローラの問いに対するセリスの答えはこうだ。
「でもフレイさんは家族ですよ?」
 曰く、家族以上の感情は持ち合わせていないらしい。
「ふ〜ん?」
 とりあえずは一安心といったところか。

しかしローラは知らない。セリスがまったく同じ質問を、シーラ、パティ、マリア、エル、シェリル、トリーシャ達から受けていることに!!!
 彼女らがジョートショップの手伝いを申し出た理由には実はそういう背景がある。
 がんばれローラ、負けるなローラ、とりあえずライバルは6人いるぞ、現在判明してる限りでは・・・・・・(汗)





悠久交響曲 金色の翼
第九章:過去を知るもの






 薄暗い天窓の洞窟では凄惨な光景が繰り広げられていた。
「せい!」
 アルベルトがハルバードを横に薙ぎ、数体のリザードマンを吹き飛ばす。
「これで何匹だ?」
 アルベルトがぼやく
「アルベルトが30匹、私が22匹だ」
 ご丁寧にフレイが答えてくれる。アルベルトはため息をついた。あわせて50匹以上も倒した計算になるが、リザードマンの数は一向に減る様子がない。後から後からわらわら出てくる。別に汗一つかいてはいないが、さすがにうんざりしてきた。
(しかもこいつと共闘!呉越同舟もいいところだ!)
 そして別の意味でもうんざりしていた。
 ふとフレイのほうを見ると1匹のリザードマンがフレイの方に近づいていく。魔法使いは接近されると弱い・・・アルベルトは思わず叫んだ。
「フレイ・・・危な・・・・・・・」
「ウインドボム」
 しかしフレイがあわてず唱えた風系の魔法により、リザードマンは吹き飛び、壁面に叩きつけられ、動かなくなった。

ウインドボム。風系の初歩魔法で手のひらから圧縮した空気を高圧でふきだし、敵を吹き飛ばす魔法。この魔法そのものに殺傷能力はなく、吹き飛ばした相手を硬い地面や壁にぶつけることでダメージを与える。また射程は極めて短い(2メートル程)。

 フレイはアルベルトの方に振り向き、
「何か言ったか?」
「な、なんでもねえよ」
 アルベルトはあわててフレイから目をそらした。その顔は少し赤い。

「このままではキリがない、おいフレイ!」
「何だ?」
「ここは俺が引き受けるからお前は奥へいって元を絶て!恐らく奥に召喚用の魔方陣があるはずだ!」
「わかった」
 フレイがうなずく。フレイは自身にシルフィードフェザーをかけて移動速度を上げると、洞窟の奥に向けて魔法を放った。
「カーマイン・スプレッド!」
 巨大な炎が洞窟内を通り抜け、そこにいたリザードマンを焼き払い、その後に道ができる。そこをフレイは一気に駆け抜けた。


 洞窟の奥、広場になっている所、天井から光が差し込み、草がところかまわず生え、岩がごろごろ転がっている・・・そんな場所にそれはあった。

 魔方陣―――究めて高度な魔法を使う際に術者の手助けとなる力を持った図形。それが淡い光を放ち、そこにあった。
 魔方陣からは一定の間隔でリザードマンがポコポコ出てきた。
 この図形の一部分を壊すだけで魔方陣はその力を失う。

「ルーン・バレット」

 チュド――ン

 図形の一部が爆発で崩れ、魔法陣から光が消える。ついでに今まさに出てこようとしてたリザードマンも吹っ飛んだ。これで魔方陣は無力化された。実にあっけない。てっきり邪魔が入るとばかり思っていたフレイはいささか拍子抜けしてしまった。





 その時・・・・


 パチ、パチ、パチ・・・・・・

 拍手の音が聞こえる。フレイが上を見るとそこに一人の男が浮かんでいた。
 男は薄く笑みを浮かべ、音も無く地面に降り立った。
「くっくっくっく・・・・」
 男が笑う。その笑い声を聞いた瞬間フレイの体に悪寒が走った。

 その男は異様ないでたちをしていた。拘束服を連想させる黒い皮製の服を着、真っ白な髪をぼさぼさに伸ばしている。そしてもっとも特徴的な所は、一つ目の模様の入ったバンダナで目を覆い隠している事だった。

 街中でこんな格好をしていたら、10人中9人は口をそろえて『変態だ』と言うだろう。
しかしこの男から漂う気配が、この男が只者でない事を如実にあらわしていた。

 この男は危険だ。フレイの本能が警鐘を鳴らす。

「何だお前は」
 フレイは問いかけた。『誰だ』ではなく『何だ』、と問うたのには訳がある。
 目の前にいる男が人間であるという確証すら持てなかったからだ。

 「俺か?俺はいずれこの世界を滅ぼす暗黒の覇者さ、うひゃひゃひゃひゃ!!」

 動けない。恐怖で体がすくんでいた。

「くくく・・・どうした?この俺が怖いのか?フレイ」
(私の名前を知っている?いや、少なくともエンフィールドでは私はかなり名を知られている・・・・)
 それでもフレイは冷静に目の前の男を分析した。しかし、目の前の男はフレイが何を考えているのか予想したのだろう。再度にんまりと笑い、言葉を続けた。
「言っとくが俺様がお前の名を知っているのはエンフィールドの住民だからじゃねえよ、俺はよそ者さ・・・」
(こいつ・・・・私の考えを・・・)
「私の考えを読んだか・・・・・だろ?」
(!?)

 ぞくり・・・・

 フレイの背中に怖気が走る。

「この魔方陣を動かしていたのはお前か?」
 恐怖を振り払い、何とか言葉を搾り出す。
「その通りだ。ついでに言えば半年前のリザードマン発生事件も俺の仕業さ」

 しかし男の声を聞いた途端、再び心を恐怖が支配する。

 今度は男の方から問いかけてきた。
「俺が開眼させてやった魔法の力はどんな感じだ?」
(何!?)
 質問の意味がよくわからない
「くく・・・・俺の声に聞き覚えがあるだろう?」
「!!」





(ひゃははっははははは!情けないねえ、あんな雑魚ども相手にそのザマとは)



(くくく・・・少しだけ教えてやるよ。てめえの持つ力の使い方ってやつをな)



(てめえが早く、思い出すように。てめえが何者なのか、思い出すようにな)





 聞き覚えがある!リザードマンにやられたとき、頭に響いたあの声だ。
「まさか・・・・あの時の!」
「うひゃひゃひゃひゃ・・・・思い出したようだなあ。そうさ、俺様だよ・・・・俺様がてめえの影ん中に潜り込んでてめえの体を操ってやったのさ」

「そうか・・・貴様が・・・・」
 フレイの脳裏に半年前の事件の事が蘇る。あの時、何者かに操られたフレイは魔法でリザードマン達を蹴散らし、そして・・・その場にいたセリスに対して攻撃を加えた。
 一歩間違えればセリスを・・・殺していたかもしれない。
「そうか・・・貴様が・・・・」
 フレイは拳を握り締める。恐怖ですくんでいた体が、怒りによって奮い立った。
「貴様の・・・貴様の仕業か!」
 フレイの手に膨大な魔力が収束する!

「カーマイン・スプレッド!!」

 巨大な炎が渦巻き、まるで津波のようにシャドウにむかって襲い掛かる。しかし男は一瞬で上空に浮かびあがり、炎の奔流から逃れた。

「へえ、怒りが恐怖を凌駕しやがったのか。しかしなんでそんなに怒ってんだ?てめえ・・・・俺様が操ってやったお陰でてめえは魔法を思い出したんだろうが」
「思い出した・・・だと?」
「そうさ、てめえは魔法使いだったんだぜ、それも大陸で一、二を争えるような最強の魔法使いだった。記憶の方もとっとと思い出して欲しいもんだな・・・・ええっ?」

 この男の口ぶりはまるで、自分の過去を知っているようではないか?フレイは男を睨み付けた。
「・・・・貴様は何者だ」
 シャドウは、にい、と笑った。



「俺様の名はシャドウ!てめえの・・・・過去を知る者だ!」





 続く


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 〜あとがき〜

 ついにシャドウの登場です。恐ろしい『怪人』というのが私の中でのシャドウの人物像です。
どうもゲームにおいては結構コミカルなキャラになっているのがいかん。主人公に憎まれたがってるわりにはツメが甘い。私は常々そう思っておりました。
そこで私はシャドウの恐ろしさ、異様さを前面におしだし、完璧な悪役として活躍させていくつもりです。

 次回は、さっそくシャドウの恐ろしさが大爆発。シャドウの必殺魔法とは一体?
第十章:『シャドウ・マインド』
中央改札 交響曲 感想 説明