中央改札 交響曲 感想 説明

ライシアンの少女A
蟲田


 「203号室異常なし」
 静かにドアが閉められ、パタパタという足音が遠ざかっていく。充分離れてから少女は身を起こした。こっそりと、入院着というらしい服から、元々きていた服に着替える。看護婦というらいし女の人たちに会わないように耳をそばだてながら。消毒の匂いのする大きな建物から出ると外は真夜中だった。人に見つからないようにしばらく歩き回ってから、重大なことに気が付いた。

少女(そういえば、道を知らない・・)

 人に聞けばわかるかもしれないが、今まで会ってきた人たちの反応はいいものでなかった。保安局員のミラと名乗った人も、一様笑顔で話し掛けてくれたが、動物的な勘を持つ少女にはそれが作り笑いであることに気づいていた。しかも、「何があったの?」とミラに何度もしつこく聞かれ、なんだか責められているような気分になった。しかし、大きな耳のある少女は意を決したように、大勢の人の声がする方向、旧市街の方向に歩き出した。

少女(また、「珍しい。」て、言われるのかな・・・)





『ライシアンの少女A』




ルシード「四捜だ」

 不機嫌な声でルシードは電話に出た。ルシードは不機嫌だった、原因は夜のミーティングの時、メルフィが「明日は新人が配属されてくる。」とみんなに伝えた。それに対し大半のメンバーは「知らない。」と答え、メルフィは「ずいぶん前に、資料を回したはずだと。」注意した。資料を止めていたのはバーシアで「どうせ、見やしないんだし。」と言い。ルシードはそれに対し「そりゃそうだけどな、気が変わって見てたかもしんねぇだろ。」と普段、資料に目を通していないことを肯定する発言をしたのが悪かった。メルフィの怒りは頂点に達し、そのあと長々と説教が続いた、それだけなら自業自得と諦めもついたが、他のメンバーを解放した後、メルフィはルシードに集中攻撃し始め、今まで回した資料を読みなおさせた。それでも自業自得には変わりないが、資料室で資料を読んでいる時、ビセットやルーティ、ティセの笑い声に理不尽な怒りを感じイライラさせられたうえに、電話のかかってきたのはルシードが眠りに落ちた直後だった。まあ、ルシードでなくとも安眠を妨害されたら不機嫌なるなきっと。

フレッド「その声はアトレー室長か?私は一捜のフレッドだ。」
ルシード「あ?雑用なら自分のところでまかなえ。」
フレッド「ご挨拶だな。おまえらが興味持ちそうなことを、教えてやろうってのに。」
ルシード「なんだよ、言ってみろ。」
フレッド「実は、・・・・」


 ルシードは電話を切ると考える仕草をした。

ルシード「あのライシアンの子が行方不明だと・・・」

 あのライシアンの子とは、先日の旅芸人一座襲撃事件で最後に救助された少女のことだ、BFも何度か病院に様子を見に行った。もっとも、ルシードはほとんど会話らしい会話はせず、ビセット達が少女に一方的に話し掛けるのを見ていただけだが。

ルシード「一応、うちの連中も使って探してみるか、知らない相手でもないしな。」

 そこに、メルフィは寝巻きの上にいつもの上着を羽織った、電話のベルを聞きつけたらしいメルフィが事務所に入ってきた。

メルフィ「ルシードさん?何の電・・・」
ルシード「おう、起きていたのか。ちょうどいい、全員集めてくれ。」
メルフィ「・・・・・」
ルシード「あ、ティセはいい。寝かせとけ。」
メルフィ「・・・・・」

 メルフィは答えない、ただ顔が赤く微かに震えているだけだ。

ルシード「ん、おい、どうした。」

 メルフィの様子にルシードが心配して近寄ると、ズザッと後ろに下がった。ルシードがさらに近寄ると、ズザザッ下がり背中が食堂へのドアにぶつかる。

メルフィ「は、は、は・・・」
ルシード「は? なにが言いてぇんだ、はっきり言え!」

 怪訝な顔をしたままルシードがたずねた。

メルフィ「は、裸で近寄らないでください!!」

 ルシードは、そこではじめて自分の姿に気が付いた。電話のベルに腹を立てすぐに事務所に来た為、普段寝ている姿、いつもの黒いズボンのをはいただけの上半身半裸の姿だった。




ザワザワ
ルーティ「大体・・・。何で、こんなにいっぱい人がいるの・・・?」
ルシード「ここらへんはこの時間からが本番なんだ。朝までこの調子だぜ。・・・たく、俺らの学生時なんて・・・」
ジラ「おや、保安学校は全寮制だって聞いたけどね?」

 丁度フレッシュジュースを出しながら、会話に割り込んできたのは、今いる酒場ミッシュベーゼンの女将ジラである。BFとはつい最近起こった、幽霊騒動で知り合うことになった未亡人である。
 フレッドからの連絡の後、ライシアンの少女を探すことにしたBFの面々はバーシア&ビセット班が病院周りを、ルシード&ルーティ班が旧市街を捜索して回っていたのだが、ルーティが人と酒の臭いに酔ってしまい、休憩を取ろうとここに立ち寄ったのである。
 本来人探しはBFの任務ではないが、他のメンバーは特に文句を言わなかった。もっとも本来行方不明者の捜索を担当している第三捜査室の捜査員は、その旨を伝えた時にはあまりいい顔しなかったが・・・。

ルシード「俺が品行方正なわけねぇだろ。寮の管理人の監視なんて簡単にごまかせる。」
ジラ「悪ガキだね〜。教官たちに睨まれていたんじゃないかい。」
ルシード「俺は実技も筆記も顔もよかったからな、文句のつけようがなかったのさ。」

 そう言ってルシードは得意そうに胸を張った。ちらりと横を見るとルーティはジュースのストローをくわえたまま呆れた顔をしていたが、顔色はだいぶよくなってきている。

ルシード「さて・・・、おかみさん、この辺でライシアンを見かけなかったか?」
ジラ「ライシアンとは、めずらしいね。あたしは見てないけど・・・なんか悪いことでもやったのかい、そいつ?」
ルーティ「ううん、小さな女の子なの。まだケガしてるのに行方不明になちゃって・・・。」
ルシード「ま、知らねぇならしょうがねぇ。見かけたらウチに連絡をくれ。」
ジラ「はいよ、おやすいごようさ。店の客にも聞いといてやるよ。」
ルシード「おう、助かるぜ。いくぞ、ルーティ。もう一踏ん張りした後、いったん事務所に戻るぞ。」

 ルシードはフレッシュジュースの代金を置きながらルーティをうながした。

ルーティ「うん、そうだね。あたしたちが倒れちゃったらシャレになんないもの。」

 結局その日の捜索では、ライシアンの女の子は保護できなかった。が、翌朝、新人を迎えに行くか、それともすぐさま捜索を再開すべきか、思案している時にミッシュベーゼンのジラから、ライシアンの女の子を保護したとの連絡を受けた。ルシードはゼファーに新人のこと頼むと、他のメンバーを休ませ女の子を迎えに行くことにした。



ルシード「おかみさん、女の子を迎えにきたんだが・・・。いねぇな?」

 ミッシュベーゼンに着いた、ルシードを迎えたのは女将のジラではなく、人のよさそうな男だった、潮焼けした顔が港湾区で働く人間であることを示している。

常連客「ああ、おかみさんなら、さっき出かけましたよ。」
ルシード「なに!? 一人でか!」

 これで仕事も終わりだと思っていたルシードは驚いたが、常連客の次の言葉で少しだけ安心した。

常連客「確かライシアンの子を連れてましたよ。おかげで私、店番任されちゃって、大変ですよ、ホント・・・。」
ルシード「そりゃ災難だな。でだ、どこいったかわかるか?」
常連客「さあ、そこまでは知りませんが、新市街のほうに向かっていったみたいですね。」
ルシード「まあ、女将さんが一緒なら大丈夫か・・・。」

 判断に困ったルシードはBFの参謀役ゼファーの意見も聞こうと通信を入れた。

メルフィ「あら、ルシードさん。あの子には会えたの?」
ルシード「それはまだだがな・・・。ゼファーはいるか?」
メルフィ「ええ、戻っているわ。ちょっと待ってください。」

 メルフィの慌てた足音が聞こえ、少しの間の後ゼファーが通信に出た。

ゼファー「どうした、ルシード?」
ルシード「ああ、実は・・・。」

 ルシードがミッシュベーゼンのことを伝えると、ルシードの予想しなかった答えが帰ってきた。

ゼファー「ああ、俺が事情を話したら、フローネがそれらしい人物を見たといっているぞ。」
ルシード「新人が?どこでだ?」

 資料を読んだだけでまだ会ったことのない、新人の顔を思い出しながらルシードは聞き返した。

ゼファー「ボジェーロスクエアあたりらしい。デパート通りをエクエナス山の方面に北上していったらしい。」
ルシード「なるほど・・・。んじゃ、いってみるか。バーシア達も出動だ、エクエナス山山道入り口で合流しよう。」
ゼファー「フローネはどうする?」

 ゼファーは新人をどうするか聞いてきたが、もう答えを知っているといった口調だった。

ルシード「当然出動だ。さっそく能力を役立ててもらう。」



 ルシードが山道入り口に着くと、バーシア達実働メンバーのほかに見慣れない少女が待っていた。艶やかな青い髪を腰よりも長く伸ばしている。さっそくルシードは声をかけてみた。

ルシード「あんたが、フローネ・トリーティアか?」
フローネ「あ、はい。よろしくお願いします!」

 少々うあずった声におとなしく、恥ずかしがり屋の性格が見え隠れしている。ルシードはこの少女が個性の塊のようなウチの連中にもまれて大丈夫か?と不安になったがとりあえずその思いを保留することにした。

ルシード「ルシード・アトレー准等官だ。そこの連中のおもりを命じられた、哀れな警官兼保父だ。」

 ルシードが年下のメンバーを眺めながら自己紹介?をすると。

ルーティ「なにがおもりよ〜。」
ビセット「俺の方が、ルシードよりキャリア長いんだぞ!!」

 案の定、ビセットとルーティすぐに反応を示した。するとルシードは神妙な顔をしていった。

ルシード「そうだな、おもりは間違いだったな。・・・おもりじゃなくて、子守りだった。」
フローネ「ぷっ、ふふふ。」

 フローネが堪え切れなくなったように笑い始めた。

ルーティ「あ〜、ひどいよ。フローネ。」
フローネ「あ、ごめんなさい」

 ルーティが口を尖らせたので、フローネは平謝りをした。その横ではビセットが頭を抱えている、どうやら見た目がかわいいフローネに笑われたのがショックらしい。ルシードはそれを見てニヤッと笑った、どうやらフローネの緊張を解くのも狙いだったらしい。

ルシード「さてと・・・、早く探さねぇとな。」
バーシア「って言ってもさ。この山、結構広いよ。どうするの?」

気持ちを切り替えたルシードに、バーシアが問い掛ける。普段サボってばかりいる彼女だが、事件が起こるとまじめに仕事にあたってくれることに、ルシードは最近になって気づいた。

フローネ「あ、私が聞いてみましょうか?」
ルシード「ああ、そのために呼んだんだ、頼む。」

 フローネの言葉に当然と言った顔でルシードが答えた。

バーシア「聞くって誰に?」
フローネ「え?」
ルシード「ああ、こいつら資料を読んでねぇんだ。」
ルーティ「ルシードだって、昨日まで・・・。なんでもない。」

 余計なことを言おうとしたルーティは、ルシードにギロリと睨まれ慌てて口を閉じた。

ルシード「フローネは生まれつき、動物と会話のできるという特別な能力を取っているんだと。」
ビセット「へー、すっげー。」
バーシア「便利ね。やってみてよ。」
フローネ「はい。じゃあ、あそこの小鳥さんに。」

 フローネの聞き込みの結果、大きな耳の生えた子供と太った女が手を繋いでこの道を歩いていったとのことだった。ルシード達はとりあえず幌馬車襲撃事件の現場まで行ってみる事にした。



バーシア「あーっ、やっぱりいた。おかみさん。」

 なれない山登りで息を切らしたバーシアがジラを見つけたとたん大声を出した。

ルシード「ったく、なんで店にいねぇんだよ。おかげであっちこっち走りまわったぜ。」

 結構田舎育ちで子供のころから兵法で鍛えているルシードは結構平気な顔をしている。

ジラ「そりゃすまなかったねぇ。この子が大事なモノを落としちまったらしくてね。どうしても山に行きたいって言うもんだから。」

 まだまだ、元気なお子様なビセットとルーティが少女に声をかける。フローネは声を出す体力も無いらしく息を整えている。

ビセット「それで病院を抜け出したんだー。」
ルーティ「だめだよ、まだケガが治ってないんだから。」

 やり取りを聞いてジラは驚いたようだ。

ジラ「あんた、病院を抜け出したのかい。そうとわかってりゃこんなところまで連れて来るんじゃなかったよ。」
ルシード「おかみさん、説教はあとだ。」
バーシア「そうね、日も傾いてきているし、帰りましょ。」

 ルシードとバーシアが促すと、少女は小さな声で言った。

少女「どこに?団長達はもういない。」

 それを聞いてフローネは、はっとした顔をし、ビセットとルーティはオロオロし、バーシアも(アンタどうにかしてよ・・・)と視線でルシードに訴えてきている。ルシードは(面倒事は俺に押し付けやがって・・・)と思いながらも、少女と目線が合うようにかかみこんだ。

ルシード「一座の連中がいなくなったのは知ってるんだな?」
少女「うん。」
ルシード「俺の実家にでも来るか?」
少女「え?」
ルシード「あ、俺の師匠のところでもいいぞ、厳しいが悪い人じゃねぇしな。」

 そうルシードが少女に提案した時、ルーティがいい案が浮かんだとばかりに言った。

ルーティ「あ、そうだうちの事務所は?」
ルシード「そういう考えもあったけどな、俺はいつまでもあそこに居る気はねぇし、責任持ちきれねぇことはしねぇ主義なんでな、却下だ。」

 そう言ってルシードはあっさり意見を取り下げさげた。

ルシード「どうする?要望があるならできるだけかなえてやるが・・・。」

 言いながら、ルシードはあとはどんな案があるか?と思案顔になと、少女は遠慮がちにオズオズと言った。

少女「あたし・・・。・・・おばちゃんの・・・とこが・・・。」
ルシード「ん?」
少女「おばちゃんのとこがいい・・・。」
ルーティ「おばちゃんって・・・。」
フローネ「もしかして・・・。」

ルーティとフローネが振り返った先にはジラがいた。

ジラ「へ?あたしかい?・・・そんな突然言われても・・・。」

 突然のことにジラは困惑しているようだった。が、フローネ達が少女の意見に賛成し、ミッシュベーゼンの常連客で付き合いの長いバーシアが「あたしはいいと思うけど?」と賛成したので覚悟が決まったらしい。「ムリにとは言わねぇけどな。」というルシードを押しのけ、「こんなあたしでもいいなら、あたしからもお願いするよ。」と少女を引き取ることを承諾してくれた。しかし、病院に戻ってその手続きをしようとしたとき、ちょっとした問題が起きた。少女が自分の名前を覚えていない無かったのである。そこでジラが少女を『更紗』と名付けた、その名は先日起こった幽霊騒動でBFが鎮めたジラの一人娘「サラ」にちなんだ名前である。その様子を見たBFの面々には自然に笑みがこぼれた(ルシードも滅多に見せないやさしい顔だった)。これで一件落着と安心したのもつかの間、数日後また旅芸人一座絡みの事件が起こった。





後書き
 皆様最後までお付き合いくださいましてありがとうございます。蟲田です。今回でライシアンの少女を完結する予定でしたがまだシンカーを倒していないのでもう少し続きます。我ながら、まあ、盛り上がりも何も無い文章を長々と書いたもんだと思います。
 前回タイトルに反してまったく出番と台詞が無かった更紗(ファンの方々すみません)、メインイベント1は更紗との出会いと顔見知りになるまでが主軸になったりするのですが、アーキス姉妹との出会いはどんなものだったのでしょう?ビセットかルーティに連れて行かれたとかでしょうか?そういえば、UQ2の隊長さんとメインメンバーの出会いも想像つかないなー、まあ、エンフィールドに住んでいたもの同士自然にといった感じでしょうかね謎です、大体自警団は女子禁制だったのでは?
 今回も性懲りも無く、私設定でルシードくんの寝ている格好を考えてみました。本文中にもあるようにルシードくんは半裸で寝てそうですね〜。他のメンバーはいったいどんな格好で寝ているのでしょう?メルフィは寝ているときもキチッとした格好をしていそう、それとも部屋着にしているジャージでしょうか?バーシアはOPで普段着のまま寝ていますし、浴槽に浸かってそのまま寝たこともあると会話イベントで言っています。フローネはそういえばビジュアルブックのP66ページで部屋着らしき格好をしてますね、ビセットとルーティは組曲にて寝顔を披露しているしていますが、う〜ん妄想は広がります・・・。格好といえば、BFメンバーはEDでも着替えをしてくれないのでちょっと物足りないですね。UQ1、2のメンバーは結構着替えてますよね、EDや限定版パッケージみたいにいろいろ、PBでは水妖の姫の話でも結婚式に行くのに着替えてくれなかった・・・mooさんもう少しサービスしてー。
 それではまた、機会がありましたらまた私の駄文にお付き合いください。最後にもう一度、皆さんありがとうございました。

2004年8月24日 原作 悠久幻想曲3 PerpetualBlueより  「ライシアンの少女A」 蟲田
中央改札 交響曲 感想 説明