中央改札 交響曲 感想 説明

「ライシアンの少女B」
蟲田


 ある日曜日の午後、ビセットはいつものようにクーロンヌにきていた。もちろん、昼過ぎの空いた時間を狙ってである。この時間に来ればいつもなら忙しく動き回っている、このケーキ屋の看板娘リーゼ・アーキスにも少し余裕が出てくるのか、話し合い手になってくれることが多いのである。
 リーゼは金髪の美人で、とび色の目にいつもやさしげな笑みを浮かべている優しそうな女性だ。なにしろ彼女を目当てに店に来る男が後をたたないぐらいだから、非常に人気のある女性というわけだ。ビセットも当然この女性のファンであるわけだが、今日彼の話し相手をしているのはリーゼの妹シェールだった。
 この娘は姉とは正反対の性格で、活発で明るく元気な娘だった。ビセット向かいの席に座っているのがシェールなのが少々不服そうだったが、リーゼもレジに立ちながら話を聞いていたので、得意そうに話しつづけている。
 今回の話題はついこないだ解決したばかりの旅芸人一座襲撃事件の顛末だ。更紗がジラに引き取られた三日後、BFは襲撃事件の真犯人というべき魔物と戦うことになった。そのくだりを話すころにはビセットの声は自然と大きくなり、店の中に響いていたが他の客がいなかったので、リーゼは注意することが無かったし。シェールにいたっては持ち前の好奇心を発揮し、「それで、それで」とか「その時魔法は使った?」などといっては話をねだっている。

ビセット「それで、ゼファーの意見を参考に俺の作戦で魔物をおびき寄せたんだ。これは魔物の性質をよく理解したプロじゃなきゃできないことなんだ。」
シェール「へ〜、魔物にも個性があるってこと?」

 ビセットは興奮しているようだ、たまに身振り手振りを交えて話している。

ビセット「で、俺のからだの4倍はある、デッカイ鎌を持った魔物と戦闘になったんだけど。ここからが俺の本当の見せ場なんだ。」
シェール「活躍って言うとバンバンって、鉄砲とか撃つの?」
ビセット「いやいや、銃じゃ魔物にはほとんどダメージを与えられないんだ。飛び交うのは強力な攻撃魔法!!」

 BFでは常識的でしかないことも、民間人のシェールにはまったく新しい知識だ。そのことに優越感を覚えたのか、ビセットはますますヒートアップする。そのとき、店のドアを開け3人の客が入ってきた。リーゼは楽しそうにビセットの話を聞いていたがすばやく対応したが、ビセットとシェールは話に夢中でまったく気づいていない。

リーゼ「いらしゃいませ。」

 先頭になって入ってきたのは、大きな帽子をかぶった黒髪で茶色の瞳をしたボーイッシュな容貌の女の子だ年齢は15歳程度。その子に連れられるようにはいってきたのはさらさらの青い髪と茶色の瞳を持ち白と青で統一した服を着たおとなしそうな娘で黒髪の子より2〜3年上だろうか?最後は中肉中背でやや癖のある長い薄紫の髪で、黒服の上に薄茶の上着を羽織った、綺麗な顔立ちの18〜9歳の青年だった。暗赤色の深い瞳は鋭く吊り上っていたが、リーゼにはなぜか優しそうな瞳に見えた。
 後の二人は初対面だったが、先頭の子はなんどもこの店に足を運んできているのをリーゼは覚えていた。

リーゼ「こんにちは、また来てくれたのね。」

 黒髪の子はうれしそうに「今日は同僚を連れてきた。」と答え、青髪の娘も2,3挨拶程度の会話をしたが、青年はじっとビセットの話を聞いている。ビセットの話は魔物に止めをさしたシーンまで進んでいた。

ビセット「まだ新人のフローネを庇いつつ。オレは魔物の攻撃魔法をかいくぐって、必殺の物理魔法『コンクエスト』を叩き込んで、海に落としてやったんだ。その魔物は水にも弱くてすぐに溶けてしまったってわけさ。」
シェール「どんな魔法なのその『コンナントカ』て?」
ビセット「『コンクエスト』、オレの熱い拳を文字どうり炎の拳にするのさ。」

 そう言ってビセットはグッと拳を突き出して見せた。シェールには分からない事だったが、ルシードやゼファーの鍛えられた拳に比べると数段見劣りしている。

シェール「そういえば、新リーダーの人は?」
ビセット「ダメダメ、ルシードなんて、まだまだ経験不足で遠くから援護するのが精一杯でさ、センパイのオレがカバーしてやらなきゃ何にもできないの。」

 ビセットはそう随分と自分の活躍が増えている、事件簿をしめくくった。と、そこに質問の声があがる。

青年「ほう、そんなに何にもできないやつがリーダーやってていいのかよ。」
ビセット「そうだな、ルシードもとっととリーダーの座をオレに譲ればいいのに・・・。」

 いってしまってから、ビセットは質問の声の主の正体に気づいた。ハッとして振り向いた次の瞬間、目に飛び込んできたのは、この店の雑誌コーナーにあったはずの週刊アイリスの表紙であった。

ルシード「こいつの言うことは、九割九部九厘引きぐらいに考えておいてくれ。」

 ビセットに雑誌を叩き込んだ長い薄紫の髪の青年ルシードは、シェールに向ってこう言って、雑誌をもとの位置に戻そうとしたが、ルーティが横から雑誌を取り上げ「汚すな」文句を言われている。シェールは声をかけられた時不機嫌そうな視線を向けられたので、ウッと言葉に詰まっていたがビセットとフローネの会話で我に返った。

ビセット「いてて・・・。」
フローネ「大丈夫、ビセットくん。」

 顔を押えたままのビセットにフローネが声をかけた。

ビセット「このくらい平気だよ、でもどうしてここに?」
フローネ「ルーティちゃんがおいしいケーキ屋を知ってるって言って案内してくれたのよ。センパイとはちょうどこの近くで会って、ルーティちゃんが一緒にどうって。」
ビセット「げー、よりにもよってルシードに教えるなよ・・・。」
シェール「えっ、ルシードって・・・、新任リーダの?」



ルーティ「も〜・・・、何が刑事としての勘で魔物を特定したよ。」
ルシード「『コンクエスト』だぁ?まだぜんぜん使えねぇだろうが。」

 アーキス姉妹はBF自己紹介した後、同じテーブルについて事件の話を聞いていた。ルシードは部外者に事件を詳細を話すことをためらったが、ビセットがほとんど話してしまったと聞いて諦めた。もちろん、ビセットをプライバシーにかかわるような事をベラベラしゃべるな、と怒るのも忘れなかったが・・・。

ルシード「下調べはほとんど一捜がしていてくれただろうが。」


『ライシアンの少女B』


 更紗がジラに引き取られてから数日後、「アクア宝飾工房、魔物と思われる傷害事件が発生した。」と、BFに必要要請が入った。一捜のヴィレス室長の報告によれば、被害者は13人、全員鋭い爪のようなもので切り裂かれていた。また、現場の状況が旅芸人一座の状況に告示していたことから、同じ魔物の仕業かと思われたが、トリアケレスの爪(ルシードが戦闘で切り落とした腕もの)と比較したところ、まったく違うものであること判明した。BFは一捜と分かれた後、唯一無傷で済んだという目撃者接触し、さらにもう一度更紗と会い一座が襲撃されたことを聞くことにした。ジラの説得もありBFは話を聞くことに成功した。魔物の名は『シンカー』、一座で壁抜けのショーをしていた魔物でキラキラしたものが好きで、それを与えていれば大人しくしていたらしいが、事件の日山道から見える海面の光を見たとたん突然暴れだしたとのことだった。また更紗は魔物の特徴を事細かに教えるだけでなく、赤ん坊の時から持っていたお守り代わりの宝石も貸してくれた。

ルシード「影の民のが魔族や魔人を封印するのに使っていた石に似てるな。」
ゼファー「おそらく、水の精霊を結晶化したものだろう。現在では失われてしまった技術だが、ライシアンは比較的錬金術魔法を得意としていたと聞く。」

 めずらしく捜査についてきたゼファーが、ルシードの手の中の宝石を覗き込んでいった。

更紗「シンカー、この石嫌いなの・・・。持っていると近寄ってこなかった。」
ルシード「ありがとう。すぐに返しに来るぜ。」

 ルシードはニィと不敵に笑った。こうしてシンカー退治の作戦は立てられた。





 人どうりの少ない港湾区でルシードは待機していた。因みにビセットとゼファーはガラス工房に出向きガラスの破片をもらいにいっている。バーシアはここまでの道を監視している。

フローネ「センパイ、私はどうしたらいいんでしょう?」
ルシード「言った通り、キラキラしたもの、ガラスの破片でおびき出して油ぶっかける。」

 簡単なやぐらに油つぼをのせただけの簡単なワナを、剣の鞘で指しながらルシードが言った。やぐらにはロープがついていて引けば油が撒かれるようになっている。

ルーティ「単純じゃない?」
ルシード「ワナってのは単純なものの方が引っ掛りやすいんだぜ。」
フローネ「いえ、そうではなくて・・・。」

 フローネは不安なそうな顔をしているので、ルシードとルーティは顔を見合わせた。

ルシード「んじゃ、なんだ?」
フローネ「シンカーが出てきたら、戦闘になるんですよね?戦闘ではどうしていいかわからなくて・・・。」
ルシード「ああ〜。」

 考えてみればフローネはこれが初陣だ不安にもなるだろう。ルシードは事務の仕事を中心にしてもらうつもりでいたが、この少女は何を思ったのか戦闘にも参加したいと、志願してきたのである。基本的に本人の意思を尊重するルシードはフローネも実働メンバーと同じ扱いにすることにしていた。

ルシード「なにもするな。」
フローネ「え?」
ルシード「え?じゃねーよ。なにもしないほうが助かるな、戦闘訓練をはじめて1週間の素人にウロチョロされたら邪魔だしな。」

 ルシードの発言にルーティが怒った。

ルーティ「ルシード!!何よその言い方。」
ルシード「ホントのことだろ、素人その二。今でも戦闘じゃおまえとビセットを、俺とバーシアの二人でフォローしてる状態なんだ、これ以上はとてもじゃねぇが手がまわらねぇ。」

 うるさそうにルーティを押しのけながら、ルシードが言った。フローネはそれを聞くと下を向いて黙ってしまい。ルーティはフローネを慰めようとしているのか声をかけていたが効果はなく下を向いたままだった。しばらくしてルーティの慰めの言葉が続かなくなってから、ルシードはボソッと言った。

ルシード「誰かが怪我したら回復呪文を頼むかもしれねぇ。」

 フローネが顔を上げると、ルシードはあさっての方向を向いたまま続けた。

ルシード「誰だって最初は素人なんだ。だからそんなに落ち込むな。」

 言い過ぎたと思ったのか、彼なりに励ましているつもりらしい、フローネはなんだかうれしくなって、元気よく返事をした。




 ガラスの破片を仕掛けてから十数分後、運良くシンカーが誘いに乗ってくれた。何も無い地面にできた影からゆっくりとシンカーは現れた。地面を掘って移動してきたのではない、地面に何の影響もあたえずすり抜けて来たのだ。
 土でできたような丸い体に、死神の持つ鎌のように発達した前足と短めの後ろ足の4脚歩行の魔物で、ゴキブリにカマキリの鎌を無理やりつけたものにも見える。シンカーはなかなか素早い動きで、ガラスの破片に向った。

ルシード「よし、油ぶっかけろ。」
ルーティ「それっ。」
シンカー「キシャアアアアア。」

 ルーティがワナのロープを引くと、油がうまくシンカーに命中した。

ルシード「一気に片付けるぞ。」

 ルシードの掛け声でBFが体制を整える。いつもの陣形で今回は最後尾にフローネが着いた。BFはルーティの『ブラスト』を主力に、補助魔法を多用して果敢に攻めていたが、シンカーの体は硬くなかなか決定打を与えられない。

ルーティ「え? うそ…。」
ルシード「ちっ」

 ルーティが何度目かの『ブラスト』を放とうとした時、拮抗していた攻防のバランスが崩れた。疲れのせいかルーティが魔法を失敗してしまった、それをカバーするためルシードが間に入りシンカーの爪を受け止める。

ギイィィィッ

 甲高い金属音をたてて剣が半ばから折れ、ルシードの顔をかすめる。迂闊にもルシードは一瞬目を閉じてしまった。

バシュッ

 その隙をつかれ、ルシードが爪に弾き飛ばされ背中からルーティに激突してしまう。

ビセット「ルシード!、ルーティ!!」
バーシア「フローネ、援護して。」
フローネ「は、はい。」

 ビセットがシンカーの気を引き、フローネも不慣れな動作で『スプラッシュ』を唱え始め、バーシアが二人に駆け寄り『サンドリング』の呪文を唱えようとしたが、そのころにはルシードは立ち上がり銃を引き抜いていた、彼は先にルーティの回復をするように命じるとシンカーに視線を戻した。

フローネ「生々流転なす四界のの源流よ、青き水の流れよ、汚れ清めたまえ!はぁっ!」

 フローネの『スプラッシュ』がビセットとシンカー間に炸裂した。狙ってやったのではない失敗したのだ。

ビセット「あわわ・・・。」
フローネ「ああっ・・・、ごめんなさい。」

 ビセットも驚いたが、魔法を放ったフローネも驚いた。それ以上に驚いたのがシンカーだった、いや、驚いたというより怖がっている。

ルシード(地属性なのに、風よりも水の魔法を怖がった?)

 銃で攻撃しながら疑問に思った。シンカーはその場から近寄らず咆哮を上げた。それを見たゼファーが珍しく大声を上げた。

ゼファー「ルシード!魔法を使うぞ!」
ルシード「ちっ、伏せろ!」

 砂塵のドームがBFを閉じ込め体力を奪っていく『サンドヒル』の呪文だ。

ビセット「ゴメン…オレ、もうダメ…。」
フローネ「私…これ以上戦えません…。」

 魔法に対して抵抗の低い二人はもう戦えそうも無い、地の属性の呪文と相性の悪いルーティもフラついている。しかし、シンカーはそれ以上近寄ろうとしない、シンカーの前には『スプラッシュ』で出来た大きな水溜りがある。

バーシア「どうするの、ルシード。」

 バーシアが緊張した面持ちで声をかけてきた。ルシードは答えずに更紗に借りた宝石を取り出しシンカーに突き出した。

シンカー「キシャーーーー。」

 シンカーの声は悲鳴に変わった。ルシードはバーシアに宝石を渡すと白いコートを脱いだ、何か隠し武器を込んでいるらしくガチャッと音を立てる。

ルシード「ゼファー、この石水の精霊で出来てるんだったな。」
ゼファー「ああ、正確には・・・」
ルシード「説明はいい! それより、こいつを海の中に叩き込んだらどうなると思う?」

 ゼファーは一瞬のうちに結論を下し答えた。

ゼファー「やってみろ。60秒で片付けろ。」
ルシード「おう、バーシア下がってろ。」

 一人で片付けると、いわんばかりのルシードの態度に、バーシアは今まで苦戦していたのを忘れたのかと驚く。

バーシア「ちょ、ちょっと、援護は?」
ルシード「いらねぇ、そいつら守ってやってくれ。」

 言ってルシードは駆け出す。あっという間にシンカーの懐に飛び込む、その体からはオオロラ色をした光がにじみ出ている。ダンッと強く踏み込むと同時に拳を突きだす。

ビシッ

 殴られたシンカーの腹にヒビが入る。ゼファー以外の残りのメンバーはギョッとした、今までどんなに攻撃しても外傷らしい外傷を与えられなかった硬い体にたった一発で! そうしている間にもルシードは信じられないような速さで動き回りドカスカと殴りつづけている、さすがのシンカーもなすすべなく後退していく。だが、一歩で埠頭から落ちるところまで後退させられると最後の反撃に出た、大きく爪を振りかぶると思いっきりルシードに向って叩きつけた。渾身の一撃をもらいルシードの体が揺れた。

「ルシード!!」
「センパイ!!」

 バーシア達は悲鳴を上げたが、ルシードのケガは頬を少し深く切った程度で、その傷もみるみる塞がっていく。ルシードは何も感じなかったようにとどめの蹴りを放った。シンカーはたまらず海に転げ落ちしばらくの間バシャバシャと暴れていたが、泥団子を水に入れたかのように崩れていった。

ルーティ「やった〜。」
ビセット「す、すげ〜。」

 BFメンバーが駆け寄るとルシードはガックリと片膝をついた。

フローネ「センパイ!」
バーシア「どっかやられたの!?」

 心配したメンバーに答えたのはゼファーだった。ルシードはまだ荒く息をしている。

ゼファー「極度に疲労しているだけだ。極度に気と魔力を消耗する技を使ってな。」
ルーティ「技?」
ゼファー「そうだ、魔力を使いはするが呪文の補助や制約を必要としてはいないからな。魔法が規制される遥か以前に『エーテルバースト』と言って身体能力を格段に引き上げる呪文があったらしいが、理屈は同じだ体中の魔力を加速させて身体能力を引き上げる。」
ビセット「じ、じゃあ、オレにもつかえる?」

 ビセットがゼファーに詰め寄る。

ゼファー「魔力と気の融合だからな可能性は高いな。だが見ての通り弱点も多いぞ。」
バーシア「すぐに疲れる?」

 バーシアがまだ息を切らせているルシードを見ながら言った。ゼファーはうむと頷くと続けた。

ゼファー「呪文の補助や制約は安全装置のような役割も果たしているからな。この技は一度使うと自分では止めることが難しいそうだ。・・・ルシードらしい無茶な技だな。」
ルシード「・・・や、やかましぃ。」
ゼファー「フッ。」

 やっと喋れるようになりルシードが文句を言う。

バーシア「旅芸人にとっ捕まった上に、アタシたちにノされるなんて、ついてないね、あのシンカー。」
ルシード「まあ、同情はするけどな。」
ゼファー「何はともあれ、一件落着だな。」

 その日BFのメンバーは全員でミッシュベーゼンで宴会を開いた。




 クーロンヌからの帰り道、ビセットがふいにこう切り出した。

ビセット「そういえば、ルシードって魔族の血が入ってるんだってな。」
ルシード「あん、いまさら気づいたのか、赤い目に純潔の人間はいねぇ。ゼファーあたりに聞いたのか?」
ルーティ「うん、ちょっと驚いたけどね。」

 ビセット達が知ったきっかけは、アクア宝飾工房にシンカーが現れた時無傷で逃げ出した男、ユアン・クェイドに事情徴収した時のことだった。挙動の怪しかったこのをとこを強く問い詰めると、更紗の探していた宝石を持ち逃げしたことを持ち逃げしたことを白状した。エクイナス山で事件を目撃したこの男は、何人もいた負傷者を助けることなく宝石を持ち逃げしたのだ。この話を聞いたルシードはキレかけた、彼はこの手の人間が大嫌いだったので、思わずぶん殴っってしまった。ゼファーが止めなければ骨の二、三本へし折っていたかもしれない。その時目の色が暗赤色からルビーのような清んだ赤に変わった。おそらくその時に気が付いたのであろう。目の色が変わるとルシードの魔力の質は、人間のものより魔物の物に近くなっていくのである。


ルシード「俺の母方の家系は結構な名家でな。何代か前のご先祖様はバンパイアハーフと異世界の人間の間の子だったらしい。母さんの実家のほうじゃ民話なってるぐらいだしな。」
フローネ「じゃあ、由緒正しい家系なんですね?」

 フローネが羨望の混じった顔で言ってきたが、ルシードは複雑な顔をした。

ルシード「古い家系であることは間違いないが、正しいかな?異世界の人間ってのが女好きで、結構あっちこっちに・・・」
フローネ「え、何ですか?」
ルシード「・・・なんでもねぇよ。まあ、俺みたいに特徴がはっきり出てるやつはほとんどいないが、いまさら亜人なんて珍しくないはずだぜ。」

 言いながらルシードは安心した、しょうがないことだと思っているが異種族に対する偏見はいまでもあるし、バンパイアの血を引くとなると恐れの対象となることもある。しかし、BFのメンバーは少し驚いただけでそれしか反応らしい反応はしなかった。

ルシード「(・・・転属願いが受理されるまでだろうが。よろしく頼むわ。)」
ルーティ「あれ、ルシード、どうかしたの?」
ルシード「・・・なんでもねぇよ。」





後書き
 皆様最後までお付き合いくださいましてありがとうございます。蟲田です。前回の予告どうり「ライシアンの少女」終了です。まー長々と書いたもんです、しかも前回の後書きで書いた話をそのまま書いてるし、ん〜我ながら単純だと思います。しかし、PBの世界でアーキス姉妹の扱いって酷いと思いません?メインじゃないからと言ってしまえば、それまでですけどプレイの仕方ではまったく出番なし、メインのはずのシナリオでも一枚画CGなし、とてもエンディングあるキャラには思えないんですよねー。小説版でも話のメインになることはなかったし。噂の刑事、リーゼ&シェールみたいにアーキス姉妹がメインの話がほしかったです。
 では今回の私的設定はmoo系作品といわれるものの世界観の話です。皆さんはmoo系作品のほとんどは続き物だと思っていますか?それとも別々の世界の話だと思っていますか? 私の中のPBの世界はWH、EMのあとにUQ1、2と続きPBの世界が来るものだと思っています。EAの世界とは異なるものだと思っています。EAの設定だと『イフリータ・キッス』『イシュタル・ブレス』が『アッシュ・キッス』『メリル・ブレス』てな感じの魔法になってしまいそうなので違う世界の設定ということに収まっています。てな感じでEMからの流れをPBの世界に反映させたいとの願望が、バンパイアハーフと異世界の人間子孫なんていう設定を生みました。個人的にEMの主人公結構好きなんですよね、あのスチャラカなキャラ、適度に馬鹿ですし。
 それでは今回はこの辺で、機会がありましたらまた私の駄文にお付き合いください。最後にもう一度、皆さんありがとうございました。


2004年9月2日 原作 悠久幻想曲3 PerpetualBlueより  「ライシアンの少女B」 蟲田
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