中央改札 交響曲 感想 説明

悠久の刻 第五話
らむだ?


第五話  

〜さくら亭〜

「ちょっとリョウ、うちの店に来てまでそんな訳の分からない本読まないでよ。陰気くさいわよ。」
パティが店の中で本を読んでいる凌斗に苦情を言った。
凌斗が読んでいるのは空間転移などについて書かれた古い本で図書館の書庫で見つかったのをイブに頼み込んでようやく貸してもらったのだ。

「でも何故かかっこいいって娘もいるぜ。」
とアレフが茶化す。

「うるさい、明日には返さなきゃいけねえから急いで読んでるんだよ。」
と反論し、考え込んでしまった。
(空間転移の理屈でやるにしてもあちこち染みとかで読めねえとこが多くて、俺が居た所に戻れるかどうかも疑問だし、第一向こうで魔法が使えるかどうかも分からない、多分使えないだろうが。)

「パティ、こんなやつほっとけよ。それより、このあとヒマ?」
とアレフがパティを口説きだした。しかし結果は、

「あんたとデートするほどヒマじゃないわよ。で、注文は?」
ときっぱり断った。パティはアレフとデートした事がない数少ない女性の1人だろう。

「俺はボンゴレとアイスコーヒー。」「ミートパイとアイスレモンティー。」

「アレフがボンゴレ、リョウがミートパイね。あ、いらっしゃい。」
シュウとイブがやってきた。

「よお、第3部隊隊長殿。仲のいいことで。」
前任者が死んだためシュウが第3部隊の隊長として抜擢されたのだ。

「同じところで働いてるんだから一緒に来る事になるのは何もおかしくないと思うけど。」
とイブが冷静に返した。

「茶化すな。そういえばアルベルトがお前を探してたぞ」

「アルベルトが?ほっときゃいいさ。しかし、アレフも懲りねえな。」
アレフはカウンターの奥のほうに居たシーラをナンパしている。

「シーラ、一緒にリヴェスティス劇場にオペラを見に行かないか?」

「え?私は・・・、パティちゃんどう?」
シーラはパティに話を振った。

「私はそんなガラじゃないわよ。ちょっとアレフ、いい加減あきらめたら?」

「いいじゃないか、1人で行くのも寂しいから一緒に行かないか?」
とアレフが口説き続けると、凌斗が、

「じゃあ俺が一緒に行ってやろうか?」
と言いながらアレフの頭を掴んで後ろにのけぞらせた。

「痛てて、なにすんだよ。俺はシーラと行きたいの、お前男同士で行きたいか?」
と言いながらアレフが後ろを向いた。

「んなわけねぇだろ。誰がお前と・・・ってそうじゃない、
いい加減やめろ、アレフ。シーラが困ってるだろうが。」

「困ってるんじゃないんだよ、照れてるんだよ。」
と相変わらずの調子、そのとき

「ここにいたかリョウ!」
とアルベルトが店に入って来た。

「やかましいぞアルベルト、騒ぎたいならよそへ行け。」
と凌斗があしらう。

「うるさい!お前、昨日の夜、何をしていた?」

「うるさいのはお前だ。夜寝る以外に何をするんだ?」

「誰かそれを証明する人間は!?」

「だからうるさいって、いるわけねぇだろ。」

「そうか、お前をフェニックス美術館盗難事件の重要参考人として連行する。」

「とうとう頭に蛆でもわいたか?」

「お前の部屋から盗まれた美術品が見つかったんだよ。」

「はぁ!?」
と6人ほぼ同時に驚いた。

「とにかく来てもらうぞ。」

「仕方ない、じゃ、行くか。」

〜自警団留置場〜

「おい、どういう事だ?」
と凌斗が聞く

「だからお前の部屋から盗まれたものが見つかったんだよ。」

「そうじゃなくてなんで俺はこんな所に入ってるんだと聞いてるんだ。」
凌斗は留置場に入れられていた。

「それは私から説明しよう。」
とリカルドが入って来た。

「隊長いつお戻りに?」

「ついさっきだ。」

「おっさん、オレは重要参考人とは聞いたが容疑者とは聞いてないぜ?」

「最初は確かに重要参考人扱いだったが目撃者はそろって君だったと証言している為、容疑者とさせてもらった。」

「そうか、いくつか聞いていいか?おっさん。」

「いいだろう。」

「美術品はオレの部屋から見つかったんだよな?」

「そうだ。」

「オレの部屋の何処から?」

「そんなこと貴様がよく知っているだろう。」
とアルベルトが口を挟んだ。

「黙ってろアル、クローゼットの中で毛布に包まっていた。」

「そうか。」

「さっさと罪を認めろ。」
とアルベルトが再び口を挟む。

「はぁ、黙って聞いてりゃ無茶苦茶だな。」

「なんだと!」

「静かにしろアル、どういう意味だね?」

「じゃあ聞くが何でオレはわざわざそんなところに隠さにゃならんのだ?
ましてや、なんでオレはトンズラせずにいるんだ?盗んだその足で街を出ていった方がよっぽど楽じゃないか。」

「そんなこと知るか。」

「頭の使えないバカは黙ってろ。」

「なんだと貴様! 黙って聞いてれば。」

「黙ってねえだろ。」

「居候が偉そうな顔しやがって。」
アルベルトがそう言うと、リョウは柵の鍵の裏側を指でなぞった。
するとガチャンという音がして留置場の扉が開いた。

「行っておくがこんなとこから出るのなんか造作もないことなんだぜ。その辺肝に銘じておけよ。」
そう言って壁際に戻った。

「凌斗君、さっき君が言ったことも一理ある。しかしやってないと言う確たる証拠がない以上君を捕まえるのが我々の仕事だ。ほかに質問は?」

「反証がない以上どうしようもないな。」
その時自警団員が入ってきてリカルドに耳打ちした。

「ふむ、凌斗君釈放だ。」

「無罪が証明されたか?」

「残念だが違う、正確に言うと仮釈放だ。アリサさんが保釈金を出してくれたんだ。」

「その保釈金っていくらだ?」

「君の場合は10万ゴールドだな。」

「そんな金どうしたんだ?」

「それはわからんな。」


「無事だったッスか? 凌斗さん。」

「俺はな、それよりどうしたんですか?10万ゴールドも。
とても出せる額じゃあないでしょう。」
最初は戸惑ったがさすがにそれ位はわかる様になっていた。

「ええ、親切な人が土地を担保に貸してくれたの。」

「そうですか。(あの二人がばらまいたとしても早すぎる、怪しいな。)」
あの二人とは当然トリーシャとローラのことだ。第一、半年ほど前まではこの街どころかこの世界自体に縁もゆかりもない人間のためにこんな大金を貸すというのが信じられない。

「お役所でいい事を聞いたの、再審請求が可決されて再審で無罪になると保釈金が帰ってくるんですって。」

「再審請求?」
と凌斗が首を捻った。

「住民投票で八割がそれに賛成すると再審してもらえるんですって。」

「となると仕事して信頼を得るしかないな。」

「ええ、頑張りましょう。」

「さて、とりあえず人手が欲しいな。アリサさん、
ちょっとさくら亭行ってきます。」

〜さくら亭〜
カランカラン
凌斗がさくら亭に戻るとシュウは自警団の寮に、イブは図書館の仕事に戻っていた。

「あ、リョウ大丈夫だったの?」

「いや、実は…、」
と説明を始めた。

「んで、人手を集めてるんだ。雇えるのは3人位だな。」

「よし、じゃあ俺様が手伝ってやろう。」
とアレフが名乗りをあげた。

「助かるぜアレフ。」

「まっかせなさい、あと二人だな誰にする?」

「神聖魔法が使える奴がいいんだけど」

「となるとシェリルとクリス、後はマリアか。」

「いやマリアはパス、アイツはトラブルメーカーだ。第一マリアが神聖魔法を好んで使うわけがない。 」

「それもそうだ。じゃあどっちにする?」

「クリスとお前って仲良かったよな」

「ああ、じゃクリスにするか。」

「よし、行こう。今の時間だと学校の寮かな。」
と言って店を出ようとした。そのとき、

「凌斗君。」「どうした、シーラ?」
シーラが呼びかけ、二人が立ち止まった。

「あのね、もし良かったら私にも手伝わせて欲しいの。」

「協力してくれるのかい、シーラ?」
とアレフが聞いた。が凌斗は、

「別にいいけど、やめといた方がいいんじゃないか?。」
と辞退するように促した。

「でも私、前に凌斗君に助けてもらったから今度は私がリョウ君を助けたいの。」
と言った後でシーラが赤くなった。

「それで、あと1人どうする?」

「アレフ、お前魔法は?」

「一応。」

「特技は?」

「ナンパ。」

「言うと思ったよ。」
と凌斗があきれていると、

「ピートあたりどう?元気が有り余ってるし。」
そういいながらパティがレモンティーを持ってきた。

「有り余りすぎてるだろあいつは。力の加減が出来ないから物を壊しそうだし。」

「じゃ、どうするんだ?」

カランカラン

「どうしたんだい、雁首揃えて。」
エルが入って来た。

「エルか、実はな・・・。」
といきさつを説明し始めた。


「ふーん、面白そうな事になってんだね。」
とあっけなく言った。

「お前、他人事だと思って軽く言ってくれるな。」

「よし、じゃああたしが手伝ってやるよ。」

「そうか、じゃこれで面子がそろったな。」
そのときパティがミートパイを持ってきた。

「そういや昼飯。」
その時すでに三時、昼と言うに遅かった。

「ほら、焼けてるわよ。」

「これ、いつもより大きくないか?」

「何言ってんの気のせいでしょ。」
とパティは言ったが確かにいつもより大きかった。

「ま、いいか。いただきます。」

「そう言えばシーラ、仕事の間ピアノの稽古はいいのか?」

「ええ、最近は夜中心だから。」

「そうか。アレフ一応言っておくが、仕事先でナンパするなよ。」
と凌斗は釘を刺した。しかし、

「何言ってるんだ、すべての女性に愛を届けるのが、俺の仕事だぜ。」
とアレフは真顔で言い返した。

「言うだけ無駄か、トラブルだけは起こすなよ。」
凌斗は呆れながら言った。

「まーかせとけって。」
凌斗はその言葉を聞いて溜め息をついた。

「シーラ、こいつの事で何かあったら言ってくれ、俺が何とかするから。」
とアレフを親指で指して言った。

「え?う、うん。」
そう言われてシーラは顔を赤らめる

「人の恋路の邪魔するなよ。」
とアレフが不平を口にする。

「お前が節操のない付き合い方をしてなけりゃ俺も何も言わんさ。」

「同感。」
とパティが言う。

「ちぇ、わかったよ。」

「エルは店は・・・、閑古鳥鳴いてるしいいか。」

「なんだって、と言いたいとこだけど・・・。」

「事実なんだよな。」
とアレフが茶化した。
エンフィールドは基本的には平和なので武器を買うのは自警団と一部の人間くらいのものだ。第一マーシャルが趣味でやっているようなものなので実用的なものは少なかったりする。(というより皆無に等しい。)

「それじゃ、明日からよろしく。」

「ああ。」「うん。」「まかせなって。」

「パティ、レモンティーおかわり。」

「はいはい。」

「じゃ、私、先生来てると思うから、ごちそうさま。」

「シーラ、明日1時にジョートショップにきてくれ。仕事の説明するから。」

「わかったわ。じゃ、さよなら。」
と言ってシーラは店を出て行った。

「さて、そろそろ俺らも帰るか。」

「アタシも店番があるし」

「さて、と。行くかアレフ。」

「ああ。」
と言って店を出た

続く
《作者》
やっと本題に入りました、これから先しばらく他の奴が出ないかも・・・、
なるべく出すようにします。
ちなみに凌斗の呼び方が統一されてないのはキャラの性格を考えてです。
たぶん凌斗って呼ぶのは、シーラ、シェリル、イブ、アリサ、リカルドくらいかと・・・。次もよろしくお願いします。
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