第七話
〜街道〜
「んー、こんだけ採れりゃ十分だな。」
凌斗とエルはトーヤとラ・ルナからの依頼でハーブと薬草を採りに来ていた。
「そうだね。じゃ、どうする?」
取れた量は優に1kgはある。
「そうだな、俺は・・・。犬退治でもするか。」
そのとき凌斗は複数の何か(恐らく犬だろう)に追われる人間の気配を感じ、走り出していた。
「えいっ!やあっ!」
少女は必死で野犬を追い払おうとするが、なにぶん数が多く、一向に状況は好転しない。
そこへ凌斗が走ってきてリーダー格の野犬を睨みつけた。
10数秒ほど睨み合うと敵わないと判断したのか野犬はすごすごと立ち去った。
「全く、こっちに来てからろくな事がない。」
そう言うと凌斗は少女の方を見た。少女は野犬が居なくなったのを見ると、倒れこんでしまった。
「歳はシーラやイブと同じくらいか。しかし、誰かに似てるような。」
そこへエルがやってきた。
「リョウ、誰だいその娘は?」
「知らね、それよりも熱があるみたいだ、体が熱い。エル、俺はドクターの所に連れて行くから、お前はラ・ルナに行ってからシュウを呼んできてくれ。」
と指示を出した。凌斗としてはアルベルトがうざったかっただけなのだが、この指示が的確であった事は後になってわかる。
「分かった。」
そしてエルは街の方に走っていった。
「やれやれ、ろくな事になりそうにない気がするな。」
そう言いながら凌斗は少女を肩に抱えて歩いていった。
〜クラウド医院〜
「ドクター、採ってきたぞ。」
凌斗は薬草の入ったかごを床に置いた。
「ご苦労だったな。で、そっちの娘は?」
「行き倒れっぽい。熱があるんだ。」
そう言うと少女をベッドに寝かせ布団をかけるとカバンを探り出した。
「身元の分かりそうなものは、と。あったあった。読みにくいな、クレア・コ、コー、レ、イン。コーレイン?」
聞き覚えはあるが思い出せなかった。
「リョウ、シュウを連れてきたよ。」
「お疲れさん、エル。シュウ、コーレインって知ってるか?」
「知ってるも何もアルの名字だろう。まさかその娘。」
アルベルトの妹、そんなものを拾ったことを知られたら街を20周は逃げ回らなければならなくなる。
「らしいな、これほど似てない兄妹も始めて見た。」
「同感だな。似なくて良かったという考え方もあるが。」
あの猪と似た妹、そんなのが居たらたまったもんじゃない。
「シュウ、俺はあの猪が来る前に帰るからあとよろしく。」
凌斗はアルベルトに色々質問されるのがイヤなのでさっさと帰っていった。
「アタシも仕事終わったから帰るよ。」
エルもそれについていった。
「ちょっと待て。この娘どうするんだよ。」
「んー、面倒だからお前が拾った事にしといて。」
責任放棄は良くないだろ。
「分かったよ。アルにはそう言っておく。」
しかしこのことはトリーシャによって噂にされいつの間にか
『凌斗がアルベルトの妹を拾ってクラウド医院に運んだ。』が、
『凌斗がアルベルトの妹をさらってクラウド医院に立てこもった。』
という噂になったのは別の話。