第六話
「…というわけで、依頼された仕事の期間は様々で一週間かかるものもあれば、
片付き次第終了って仕事もある。」
と凌斗が仕事について説明をした。
「わかったから早くしなよ。」
とエルがせかした。
「わかったよ、今ある仕事はこれだな。とりあえず一日で終る仕事を選んどいた。」
と言いながら依頼書を出した。皆それぞれ自分にあった仕事を探し始めた。
「じゃ、俺はこのさくら亭の仕事をさせてもらおうかな。」
とアレフは言った。が、
「えーっと、さくら亭は接客手伝いか。…却下、お前は絶対仕事そっちのけでナンパするからな。シーラは?」
凌斗はアレフの要求を退けた。
「私は教会がいいな。」
「教会は結婚式の手伝いか、シーラなら大丈夫だな。エルは?」
「アタシは、サーカスでも行こうかな。」
「そうか。じゃ、俺はラ・ルナに行くか。」
「お前これバンド演奏だぞ。楽器できるのか?」
とアレフが疑問を口にした。
「当たり前だ、出来ない事をやるわけがないだろ。」
「それもそうだ。じゃ、俺も行こうかな。」
「よし決定。で、仕事が終わったら代金を貰ってきて領収書を書いて一枚はサインをしてお客に、もう一枚はサインをしてもらってうちに持って帰ってきてくれ。」
「それで終わり?」
とシーラが聞いた。
「まだある、俺とアリサさんが居なかった場合帰ってくるまで待つか、用事がある場合他の人に預けるかしてくれ。ただしアレフ、デートは用事と認めないからな。」
「えっ、マジで?」
「このぐらいか。じゃ、明日からよろしく。」
そう言って店を出て行った。
〜ラ・ルナ〜
「ところでお前何できるんだ?」
とアレフがリョウに聞いた。
「なにってギターだよ。」
「お前がギターねぇ。」
とリョウの顔を見て笑う。
「悪いかよ。それよりお前は何できるんだ?」
とそこへ支配人が来た。
「いやあ、お待たせしました。」
「おはようございます。ジョートショップです」
と凌斗が挨拶した。
「今日の仕事はディナーショーのバンド演奏です。」
「まっかせなさい。」
とアレフが答えた。
「では18時開演ですので、よろしくお願いします。」
と言って支配人は店の奥へ戻った。
「で、お前は何が出来るんだ?」
とリョウがギターを調整しながらアレフに聞いた。
「ハーモニカ。」
「それだけか?他には?」
「そういうお前はどのくらい弾けるんだ?」
「ま、こんなもんだな。」
と言って弾き始めた。
♪
「お前、凄いな。」
とアレフが驚いた。確かに素人とは思えないほどだった。
「大したことねぇよ。」
「いやいや凄いよ。これならお前1人で充分だな。」
と言ってアレフはラ・ルナを出ようとした。
「ちょっと待てお前どこに行く気だ?」
「いやぁ、ここはお前に任せて新しい出会いを探しに。」
と言ってアレフは笑った。が、
「天国での出会いを演出してやろうか?」
と凌斗は首の骨と指の骨を鳴らした。
「冗談だよ、冗談。」
アレフは冷や汗交じりで慌てて否定した。
「ったく、店の雰囲気に合わせてスローバラードやるぞ。」
「ああ、で楽譜は?」
「これだ。で、おまえはここ。」
「わかった。」
「じゃ開演まで時間あるからしっかりやるぞ。」
「さて、開演時間だ。始めるぞ。」
凌斗たちは演奏を始めた。
♪
(いい感じだ、このまま終わればいいんだけどな。)
と思っていたらアレフが間違えた。
(げっ間違えやがった。)
しかしアレフは気づいていないようだ。
(まあいいや、わざわざ伝える必要もないだろ。)
こうして多少間違えたものの無事終わった。
「ふう、なんとか終わった。」
「行ったろ、俺に任せれば大丈夫だって。」
「お前なぁ。」
と凌斗が渋い顔をすると支配人がやって来た。
「いやぁ、素晴らしい演奏でした。」
「ありがとうございます。」
と凌斗が礼を返した。
「特にこちらの方、素晴らしいアレンジでした。まるでプロですな。」
とアレフのほうを見て言った。
「えっ、いや、まあ、軽い軽い。」
とアレフは言われて初めて間違えたことに気が付いた。
(やっぱり気づいてなかったのか。まぁ支配人も喜んでるみたいだし成功ということにしとくか。)
とリョウは思っていた。
〜教会〜
「おはようございます。ジョートショップです。」
とシーラは挨拶した。
「おはようございます。シーラさん。」
と神父が挨拶を返した。
「本日の仕事の内容は?」
とシーラが聞いた。
「なに、簡単なことですよ。結婚式の演奏を頼もうと思いましてな。」
「そうですか、おまかせください。」
やはりと言うか予想通りと言うか見事に成功した。結婚式終了後、
「・・・さん、シーラさん。」
「えっ。」
振り向くと神父が立っていた。
「本日はご苦労様でした。どうなされました、考え事ですか?」
「ええ、ちょっと。」
「ははぁ、花嫁衣裳に憧れてましたな?」
「は、はい。」
と赤くなった。
「結婚式を見ると誰もが憧れるものです。」
「そうですか、ふふふ。」
〜クラウンズサーカス〜
「おはようございます、ジョートショップです。」
「おはようございます」
と団長は答えた。
「んで、アタシはなにをやればいいんだい?」
「ああ、怪我をしたジョンの代わりにナイフ投げをして欲しいんだ。」
「まかせときな。」
そして公演が始まり、エルの出番が来た。
「では次はナイフ投げです。」
と言う団長の司会と共にエルが出てきた。
「なにあの人、かっこいー。」
「綺麗ー。」
などといった黄色い?声援がエルに送られた。
エルは青年の頭に乗せたりんごを見事射抜くなどし、見事な技を見せた。
「見事なナイフ投げを披露してくれたエルさんに盛大な拍手を!」
と団長が言うと盛大な拍手が送られた。
「いやぁ、エルさん大人気でしたね。」
と団長がエルに語りかけた。
「恥ずかしかった。」
赤い顔をして言った。
「また手伝ってください。」
「ああ、考えとくよ。」
それぞれ仕事を終えミーティングをしていた。
「今日も一日お疲れ様。じゃ、仕事の出来を。オレとアレフはまぁまぁだな。」
と凌斗が言った。
「私はうまくいったほうだと思うわ。」
とシーラが顔を赤らめて言う。
「アタシは大成功。」
とエルが言った。
「そうか、じゃ、領収証出して。」
と言いながら凌斗はノートパソコンを立ち上げた。
「リョウ、なんだそれは?」
アレフがパソコンを指指して言った。
「ん?パソコンっつう文明の利器。」
凌斗が持っていたカバンの中に入っていたもので、その当時買い換えたばかり。
「説明になってないよ、リョウ。」
とエルがぼやいた。
「まあ気にするな。Excelをフロッピーに保存と、終り。」
凌斗はさっさと電源を落とした。
「皆ご苦労様、チーズケーキ食べていかない?」
とアリサがチーズケーキを持ってきた。
「アタシは食べるよ。」
「私もいただきます。」
「俺も。」
「じゃあ俺は茶でも入れて来るか。」
と凌斗は台所へ向かった。
「なぁシーラ、あいつのギター聞いた事あるかい?」
とアレフがシーラに話し掛ける。
「凌斗君の?ないけど、上手なの?」
とシーラが聞き返す。実際凌斗が人前で何かを披露するという事は少ない。
「それが結構うまいんだ。」
とアレフが言っていると、
「人の事を話の種にするな。」
と凌斗がティーポットなどを持ってきた。
「げ、聞いてたのか?」
とアレフが狼狽する。
「お前の声が大きいだけだ。シーラ紅茶どうする?」
「ミルクティー頂戴。」
「はいよ、ミルクティーね。エルは?」
「アタシは、レモンティー。」
「そうか。アレフは・・・、必要ないな。」
「だぁー、俺が悪かった。」
とアレフがあわてて謝る。
「お前は一言多いんだよ。で、何にする?」
「ストレート。」
「へいへい、ストレートね。アリサさんは?」
「私もストレートちょうだい。」
「わかりました。テディは白湯で充分だな。」
白湯=何も混ぜない湯。お茶などに対して言う。
この男、テディをからかう事を楽しんでいる。
「御主人様、さゆってなにッスか?」「普通のお湯のことよ。」
「ひどいッス、ぼくもお茶飲みたいッス。」
とテディが怒る。
「冗談だ、ミルクティーでいいな。」「うぃッス。」