中央改札 交響曲 感想 説明

悠久の刻 第十伍話
らむだ?


〜陽の当たる丘公園〜
カキン、カン、ギィン
二人の剣が交差する。しかし徐々に一方が押していき、ついにもう一方の剣を弾き飛ばした。
「ハア、ハア、ハア。」
シュウは肩で息をしている。
「どうした、もう少し付き合ってくれよ。」
剣を構えたまま凌斗が言った。
「だー!もう、やめやめ。」「何だよ、仕方ないな。メシにしようか。」
そう言うと剣を鞘にしまった。
凌斗はシュウに頼んで剣の稽古に付き合ってもらっていた。条件として夕食をご馳走することを出されたが。
「しかしお前、何であんなに反応がいいんだ?まるで俺の攻撃がわかってるみたいだったし、フェイントには反応しないし。」
「まあ、勘と経験だな。ケンカばっかりしてるとなんとなくわかるようになんだよ。」

〜ジョートショップ〜
「ニュースニュース。」
トリーシャが勢いよく入ってきた。
「トリーシャさん、もう少し静かに入ってきて欲しいッス。」
「ごめんごめん。あのね、」
と言い出したところで、
「話はメシ食ってからにしよう。トリーシャも食ってくか?」
凌斗が料理の盛られた皿を持ってきた。
「う、うん。今日はお父さん泊まりだって言ってたし。」

「ご馳走様でした、っと。お前ホントメシ作るのうまいよなぁ。」「そうよねえ。」
凌斗は時々料理をするが、その腕前はパティよりもうまいと言われるほどである。(ちなみにその話が出たときパティに思いっきり殴られた。)
「嫁に行ってやろうか?生活力ゼロの男。」「りょ、凌斗さん。それ怖い。」
恐ろしい冗談を言う凌斗。シュウは料理が出来ないので毎日夜鳴鳥雑貨店の缶詰を食べている。
「頼むからそういう冗談やめてくれ。イヴが聞いたら・・・。」
イヴは冗談を冗談として聞き流さない所があるのでこんな事を聞かれたらなんと言われるか分かったものではない。
「縁切られるか?切られちまえ。」「お前なあ。」「あらあら。」
そんな馬鹿馬鹿しい話をしているとトリーシャが話し出した。

「目薬茸?」「うん、目に関する殆んどの病気に効くんだって。これがあればアリサおばさんの目も治るんじゃないかな。」
「それがこの近くの天窓の洞窟に生えてる、と。シュウ、天窓の洞窟ってどんなとこだ?」
この辺の地理に明るく仕事で行ったことがありそうなシュウに聞いてみた。
「俺は行ったことはないんだけど、行った奴の話だとモンスターも少なくて強い奴は出ないし、奥にある広間みたいな場所はすごい綺麗だったって言ってたな。」
シュウは前に聞いた話を思い出しながら言った。
「それ、いつの話だ?」「確か、三ヶ月くらい前かな?」
「そうか、じゃそんなに変わってないだろう。そうだな、週末にでも行ってみるか?ピクニック気分で。」「そうだな。いつもの面子を誘ってな。」
この二人楽しそうだな。
「あ、そうだアリサさん。あまり期待しない方がいいですよ。」
「凌斗さんそれどういう意味!?」
凌斗の言葉にトリーシャが怒りだす。
「怒るなトリーシャ。そんな所にあるのにドクターがそれを使わないのはアリサさんには効果がないか、何か副作用があるからとしか考えられないだろ。」
「そう言われると・・・、そうだけどさ。」
そう言われてしょんぼりするトリーシャ。

その週末
「結構な人数になったな。1,2,3,…10人か。」「10人?全部で9人だろうと思ってたんだが。」
凌斗がシュウに聞いた。
「ああ、アルベルトに昨日目薬茸の事が知られてな。」
「それでアルベルトが暴走をはじめたと。馬鹿馬鹿しいな。」
いざとなったらどさくさにまぎれて生き埋めに・・・、するのはまずいか。
「その暴走したアルベルトを止める為にクレアが来るって言いだしたんだ。」
もはや呆れ顔をするしかない凌斗だった。
「まあ弁当はたっぷり作ったから一人ぐらい増えても問題ないけどな。」
「凌斗君、そういう問題かしら?」「違うのか。」

〜洞窟入り口〜
「なんだ犯罪者、目薬茸は俺達が持って帰る。引っ込んでろ。」
天窓の洞窟の入り口に行く途中アルベルト達と出くわした。
「兄様!!」「ク、クレア。何でお前が犯罪者と一緒にいる?!」
突然のクレアの登場に動揺しつつも問う。
「兄様、私の命の恩人に対してなんて失礼な物言いですか。」
「シュウ、何でこんな所に連れてきた。」
そう言いながらアルベルトはシュウを睨む。
「シュウ様は関係ありません。私は自分の意思でここにいるのです。」
「アルベルト、変な奴等が入ろうとしてるけどあいつらはいいのか?」
凌斗は二人を止め洞窟のほうを指差すとそこには変な仮面をかぶった男とその部下らしき数名がいた。
「ちょっと待てここに何をしに来た?!」
「私はここに隠された宝物を探しに来たのでございますよ。」
明らかにおちょくってる。凌斗たちはそう思ってたがアルベルトは見事にその挑発に乗った。
「てめえケンカ売ってんのか?」
ケンカ売ってるのはお前に見えるぞアルベルト。
「あなたなぞに誰がケンカなど売りますか。」「んだとぉ!!」
馬鹿と馬鹿が戦闘突入。
「はあ、さっさと行こう。」
凌斗たちは馬鹿二組をほっといて先に行くことにした。

〜天窓の洞窟〜
「全く兄様ったら恥ずかしい。」
「でもなんであんなに凌斗君に敵意をもつのかしら?」
それは凌斗がアリサと暮らしてるから。
「それよりあの変なお面をかぶった人誰なんだろうね。」
とトリーシャが興味を示す。
「俺はあれは何処の仮面か気になるけどな。」「大したものじゃないと思うけど。」
変なところを気にするルーに答えるイヴ。ルーは占いで仮面に注意と出たのだろうか。イヴはツッコミどころ違うし。
「あれはショート財閥会長の秘書のハメットだよ。確か。」「本当かエル。」
凌斗がその言葉に対して反応する。
「ああ、前に会ったことがある。」「そうか、あの変な仮面がねぇ。」
しばらく歩いていると大きな湖が見えた。
「地底湖か。こういうところの水はうまいんだよな。ちょっと待っててくれ。」
そう言うと凌斗はあっという間に湖のほとりまで走っていった。
「あいつよく転ばずにあんな速く走れるな。」「そうよねえ。」
アレフが凌斗を見て言い、ヴァネッサがそれに答える。
そんな事を言っていると凌斗は水辺に座り込み、水を口に含んで味を確認してから水筒に汲むと戻ってきた。
「待たせたな。」「おう。じゃ、行こうか。」
それからしばらく進むと少し日が差してきた。
「そろそろ奥のようだな、日が差してきた。」
しかし奥の開けた場所への入り口の前に魔物が立っていた。
「ごごばおでだぢの聖域、ごごがばっ!!」
濁った声で魔物が語りかけてきた。しかし凌斗は話を無視して蹴り飛ばした。さらに倒れた魔物の顔を数回蹴った
「くだらない芝居は止めろシャドウ。一度あった人間を忘れるほど俺はアホじゃない。」
凌斗は蹴飛ばした魔物を見下していった。
「シャドウ?」「えっ!?」
聞きなれない名前にシュウ達は頭を捻り、アレフ達は耳を疑う。魔物が立ち上がると雷鳴山で遭ったあの男になっていた。
「ヒャーハッハッハ。つれねえなあ、もうちょっと付き合ってくれよ。」
「役者が下手くそじゃなきゃあな。なんのようだ?」
「そうだな、お前の邪魔をしに来たってのはどうだ?」「そうか。」
二人が睨み合い、徐々に場が緊張していった。が、
「冗談だよ。いい事をお前に教えてやろうと思ってな。」「なんだ?」
「あいつを殺したのが俺だっていたらどうする?」
周りのシュウやアレフは話についていけず頭から?マークが出ていた。
「どういう事だ。」「それはな・・・、」
シャドウは凌斗に近づき耳打ちした。それを聞いて凌斗はシャドウに裏拳を放った。しかしシャドウはあっさりそれをかわし、
「凌斗よぉ、感情に任せて行動しちゃいけねぇなぁ。」
そう言い残すと消えてしまった。
「アレフ、何の話だ?」「俺だってわからねえよ。おいリョ・・ウ。」
シュウが先刻までの話の意味をアレフに聞いた。しかしアレフにもわからず凌斗に聞こうとしたが、怒りの感情を露にしている凌斗に声をかけるのはためらわれた。
「一番奥までついたことだしさっさと目薬茸ってのを摘んでメシにしよう。」
怒りを押さえながら凌斗が言った。

「これで全部か?」
見渡す限りの目薬茸を摘みおわり周りには一本も残ってなかった。
「さて、メシにしようか。」「待ってました。」
と皆で弁当を食べ始めた。
「おいしー。」「本当ね。」
「このお弁当凌斗さんアリサおばさんが作ったんだって。」
「当たり、いや、はずれをひくのは誰かが気になるな。」
「何だいそれ?」「すぐにわかるはずだ。」
などと話していると、
「辛ーーー!!」「アレフ様大丈夫ですか?」
アレフの隣りに座っていたクレアがアレフに用意していた飲み物を飲ませる。
「お、なんだアレフか、天罰だな。一つしかない激辛肉団子を食うなんて。」「え゛?」
その言葉に周りの人間の顔が引きつる。
「大丈夫、激辛なのはアレフが今食ったやつだけだから。アレフ、どのくらい辛かった?」
「一週間何食っても味がしなさそうだ。」
唇が見事にはれ上がっている。
「そうか、もうちょっと辛さを押さえようかな?」
そう言う問題か?
「りょ、凌斗君、そういうの作るのやめてくれないかな。」
シーラが周り全員を代表して言う。
「これが俺の趣味なんだがな。」
はた迷惑な趣味だ。そしてしばらくしてから彼らは帰っていった。

「こいつらずっとやってたのか。」
洞窟の入り口でへばっているアルベルトとハメット達を見て言った。
「アルベルト、本末転倒って言葉知ってるか?」「兄様・・・。」
アルベルトを見てあきれ返るシュウとクレア。
「見たところ南の方の仮面のようね。」
どうも観点が他と違うイヴ。アルベルト達の事がどうでもいいだけかも。
「さ、先を越された。」「ああ!私のお宝が。」
ああ、馬鹿が二人。

〜ジョートショップ〜
「で、トリーシャ。どうやって作るんだ?その薬は。」
「そ、そこまでは知らないんだ。」
トリーシャが答える。よく見ると冷や汗が一筋。
「ふう、片手落ちだな。」「その薬の作り方なら前に読んだ事があるわ。」
やや呆れる凌斗にイヴが言った。
「本当に物知りだねぇ、頭ん中に辞典でも入ってんじゃないのか?」
と凌斗がふざけて言うと、
「凌斗さん、人の頭というのは・・・、」
イヴが真面目に講釈を始めた。
「はいはい、真面目に答えなくてくれなくていいから作り方を教えてくれ。」
冗談を真面目に返されても・・・。

「何だか怖いわ。」
生まれつきの弱視が克服できる喜びよりも弱視だった今までの暮らしから見えるようになることへの変化への恐怖の方が大きいのだ。
「大丈夫だって、眼鏡をかけるくらい気軽に考えればいいんだから。」
「リョウの言うとおりだよアリサさん。」「そうッス。」「そうね。」
凌斗たちのこの言葉に背中を押されてアリサは薬を飲み干した。
「いかがですかアリサ様。何か御変わりは?」「・・・いいえ、何も。」
その言葉を聞いてその場にいた全員が落胆した。一人を除いて。
「予想通り、か。残りの目薬茸はドクターにでもやるとするか。」
そう言いながら凌斗はタバコに火をつけた。
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