中央改札 交響曲 感想 説明

悠久の刻 第十六話
らむだ?


〜さくら亭〜
「で、凌斗さんはどうなの?」「あ?」
カウンターの1つ離れた席でローラやパティ、シーラと話していたトリーシャが凌斗に話し掛けてきた。
「だ〜か〜ら〜、こういう恋愛がしたいとか、好きなタイプとか、そういうの有るでしょ。」
何かと思えばまた恋愛話らしい。
「好きなタイプねえ。特定の相手に対してだけ愛想を悪くしない、噂をばらまかない、物や壁を通り抜けない、あとは・・・・、」
凌斗がそう指折り数えながら言っていると、
パァン
と思いっきりパティにトレイで叩かれた。
「アンタ、それってあたしたちに対するあてつけでしょ。」「他にどう聞こえた?」「お兄ちゃんってばひどーい。」「僕がいつそんな事をしたっていうのさ。」
三者三様に文句を言う。
「パティ、お前自覚があったんだな。」
「悪かったわね。ほらシーラあんたも何か言ってやりなさいよ。」
明らかに動揺してシーラに振るパティ。
「でも言いたくないんっだたらしょうがないし・・・・。」
「そういえばシーラさんだけ特に言われてないよね。凌斗さんひょっとして・・・、」
「言う前にこの男女に、っと。叩かれただけだ。」
男女といった時点でパティは凌斗にトレイを叩きつけようとしたがさすがに2発目は受け止めた。
「・・・ちょっと。放しなさいよ。」「はいはい。」「わわっ。」
凌斗につかまれたトレイを取り返そうと引っ張っていたのを急に放されたため、パティは尻餅をうってしまった。
「ちょっと!急に放さないでよ」
「放せっつったり放すなっつったり、オレにどうしろっつうんだ?」
と、凌斗がパティをからかっていると、
バタン!!
息せき切らしてアレフがさくら亭に入ってきた。
「た、頼む。かくまってくれ。」「今度はなんだ?ダブル?それともトリプルか?」
凌斗が言っているのは当然ブッキングの事である。
5人とも―シーラは特に―冷ややかな目でアレフを見ている。
「み、水。」「パティ、水。バケツで。」「オッケー。」
先程のやりとりはなんだったのかと思わせる程のコンビネーションを見せる二人であった。そしてそれを呆気に取られた表情で見つめる3人。
「バケツって、バケツは飲むのに使うものじゃないだろうが。」
枯れた声で凌斗に言うアレフしかし、
「当たり前だ、バケツで水を飲むような馬鹿は世の中に居ない。」
特殊な状況下においては居るかもわからんが。
凌斗はパティから水の入ったバケツを受け取るとアレフを店の外に引きずり出した。
「ちょ、ちょっと待て。どうする気だ?」「この水はな、こう使うんだよ。」
そう言うと凌斗はアレフにバケツの中の水を思いっきりぶっ掛けた。
「風邪を引いても明日は休みにしないぞ。」
「鬼、悪魔。」「凍るか?」「何でもありません。」
これ以上言うと本当に凍結魔法でもされそうなので何も言わず帰ることにしたアレフであった。当然、帰り道で見つかったのは言うまでも無い。
「それにしてもアンタ、良くあんなひどい事するわね。」
席に戻った凌斗をパティが非難する。
「それはお前も同じだろう。バケツで、って言ってホントに出すか普通。」
「確かに。あっ、そうだ凌斗さん。宿題で分からない所があるんだけど。」
そう言いながらトリーシャはカバンの中から数学や、魔法物理の教科書などを出した。
「トリーシャ、こんなバカに教えてもらったら頭が悪くなるわよ。」
「じゃあバカはこの辺で帰るとするか。トリーシャ、パティに教えてもらうんだな」
そう言うと凌斗は席を立ち、店を出て行った。
「ちょっとパティ、どうしてくれるのさ。この宿題明日までなんだよ!」
凌斗は面倒だからパティの言葉に怒ったふりをしただけだが。
「そ、そう言われても。シ、シーラはできないの?」
パティがシーラに助け舟を求める。が、
「音楽とか歴史ならできるけど・・・。」
要するにダメという事だ。

〜日の当たる丘公園〜
「くあ、あ〜、いい天気だし、寝るか。」
凌斗が木陰で寝ようとすると
「リョウじゃないか、どうしたんだ。こんな所で。」「見りゃわかるだろ。寝てんだよ。お前は何しに、」
そんな事を話していると二人の目の前にある樹にきしんだ。
「リョウ、まずくないかい。」「まずいだろうなあ。ガキが10人ほど登ってるし。仕方ない。」
二人は素早く立ち上がり走り出した。
「まずい、もう倒れるよ。」
「風の聖霊よ 其の加護を我に与えよ、シルフィード・フェザー。行くぞ。」
凌斗とエルは更にスピードをあげて走り出した。
「どうにか間にあったか。しかし、・・・クソ重い。」
(・・・そういえば、オレはいつからこんなお人よしになったんだ?)
「エル、ガキを下ろせ。」
(こいつらのせい・・・だろうな。いい奴を演じようとしてる間にそれが地になったか。まあ、いいか。)
「無茶だよ。アンタ一人で持ち上げてられる訳、」「早くしろ。」「・・・わかったよ。」
エルは凌斗の言葉に従い、樹の上にいる子供達を助ける事にした。
「リョウ、全員下ろし終わったよ。」「わかった。」
(さすがにこれを蹴り上げるのは無理か。エルが持ってるんだったら俺が蹴り飛ばせば済む話だが・・・。めんどくせえ、燃やす。)
「獄炎の竜巻よ、全てを塵へと帰せ!! フレア・トルネード!」
凌斗の魔法によって巨木は燃えて灰になりながら空へ吸い込まれていった。
「しかし、リョウもう少しやりようがあったんじゃないかい?」
「めんどくさい。しかし、こういう時に限って猪馬鹿は来ねえから困る。」
ぼやく凌斗の服には血がにじんでいた。
「ちょっとリョウ、アンタ血が・・・。」「傷が開いただけだ。騒ぐな。」
雷鳴山での戦いのときの傷が開いたのだ。
「早くドクターの所に行かなくちゃ。」「やれやれ、面倒な話だ。」
そう言いながら凌斗はクラウド医院のほうへ歩いていった。

〜クラウド医院〜
「ドクター、血止めと輸血パックくれ。」
「お前か凌斗。怪我人が無理をするなとあれほど・・・、」
血管が切れんばかりの勢いで怒りだすトーヤ
「それはわかったから血止めと輸血パックくれ。」
「お前には言うだけ無駄だな。まったく。」「あ、そうだドクター。」
「なんだ?他に何か必要なのか?」「あまり怒ると血圧上がるぞ。」
凌斗の一言にさすがのトーヤも何も固まってしまった。
「誰が怒らせてると・・・、まあいい、それよりも公園で火柱が上がっていたが何かあったのか?」「焚き火じゃないか?」
空々しいにも程がある。
「もういい、お前に聞いた俺がバカだった。ほれ、血止めと輸血パック。さっさと帰れ。」
凌斗はトーヤから受け取ると血止めで応急処置をして、輸血パックの針を腕に刺し、ベッドに寝転んだ。
「こんな格好で帰ったらアリサさんがうるさいだろ。着る物買って来てくれよ。」
血の臭いがすればすぐにわかると思うが。
「全く、仕方がない。少し待っていろ。ディアーナ。」
「はぁい、なんですか先生。あ、血・・・。」
トーヤに呼ばれた少女は凌斗のシャツについている血を見るなり気絶してしまった。
「ドクター、・・・新しいコント要員か?」「……ここは病院だ。」
あきれ返る2人。
「もういい、俺が買って来る。」「悪いな。」
トーヤが出て行ったあと凌斗はディアーナを見て、
「血ぃ見るだけで気絶してたら内科医にもなれんと思うが。」
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