中央改札 交響曲 感想 説明

悠久の刻 第十七話
らむだ?


第十四話

〜旧王立図書館〜
「イヴ、誕生日おめでとう。」
シュウはそう言いながら丁寧に包装された箱を手渡した。
「開けてもいいかしら?」「いいよ。」「これは・・・。化粧品? 何故化粧品を? これ、新色でしょう、相当な値段のはずよ。」
イヴはローレライ洋品店にはあまり行かないがトリーシャなどがそういう話をしているので自然と詳しくなるのだ。
「そりゃ、いつものイヴも綺麗だけどたまには化粧した所を見たいと思ったからさ。いわば純粋な好奇心って奴さ。」
これを買うのに非常に苦労した。いや、買った後で苦労したのだ。一色買い逃したアルベルトに狙われたり、それを見たクレア二人まとめて説教されたり、されに化粧品を買ったという事からトリーシャに女装癖があると噂にされそうになったり・・。
「純粋ではないと思うけど。・・・今度使わせてもらうわ。ありがとう。」
やばい、後ろにハートが飛び始めた。
「・・・お前らそういう事は図書館じゃなくてどっか他所でやれよ。」
借りようと思って持ってきた本を持ったまま凌斗が立ち尽くしていた。
普段からは考えられないイヴらしからぬ行動である。
「凌斗さん。」「リョウ、いつから見てたんだ?」
イヴが顔を赤らめている。めったに見れない光景だ。凌斗にとってはそこら辺がおもしろいのだが。
「大体、『そりゃ、いつもの』の辺りからだな。」
「凌斗さん、デバガメはあまりいい趣味とはいえないわ。」
少し顔を赤らめつつイヴが言った。
「やかましい。こんなとこで白昼堂々といちゃついてる方が悪い。」
この時間帯は利用している人がほとんどいないと確認しての行動だったのだが。
「「・・・・・・」」
顔を赤くして黙り込んでしまう二人。
「分かったら早くこの本を貸してくれ。」
「え、ええ。」「ま、噂にしそうなのがいなくて良かったな。」
トリーシャ、ローラ、マリア、この手の話を好みそうなのはいくらでもいる。
「しかしお前、全部禁帯出じゃないか。」
シュウは話題をそらそうとした。凌斗ととしてはいじめたいのはやまやまだが後が怖いので話題を変える事にした。
「3冊を1週間の約束で貸してもらってる。一般開架の本はほとんど読んだからな。」
「凌斗さん、くれぐれもタバコを吸いながら読んだりしないように。」
イヴが恐ろしい目つきで凌斗に注意しながら貸し出しの処理をしている。
「へいへい、俺以外いないはずだから後はお好きなだけどーぞ。これからはTPOを考えろよ。」
凌斗はそういうと図書館を出て行った。
「リョウ!!」
二人の顔がますます赤くなる。
「・・・シュウさん。今日は五時には仕事が終わるからその後でラ・ルナに行くというのはどうかしら?」
少しうつむいたままイヴが言う。
「いや、そうしたいのはやまやまだけど・・・。」
ぶっちゃけお金がない。増してやプレゼントを奮発したのだ。給料日まで持たせるのでギリギリなくらいだ。
「わかってるわ。あなたの懐具合なんて。」
そう言ってイヴは微笑んだ。しかしシュウは
(・・・財布の紐ガッチリ締められそうだ。)
そう遠くない将来(予定)の事を考えて少しげんなりしていた。

(やれやれ。どうしてイヴはシュウが相手だとあんななんだか・・、さっぱりわからんな。)
図書館から出てきた凌斗は首を捻る。
(凌斗さまも女性と付き合えばわかると思いますよ。私がお相手になりましょうか?)(阿呆。)(・・・・・ひどい。)
声の主は少し本気だったようだが。

〜日の当たる丘公園〜
(あれは・・、マリアか。何か探してるみたいだがガキのお守りは面倒だ。)
出店で軽く何かをつまんでいこうと思い、公園の中ほどまで入ったところでマリアの姿を見つけた。
(凌斗さま、困ってるんだから助けてあげた方が・・・。)(面倒だ。)
声の主の主張は一言で却下された。すぐさまUターンしようとしたが、マリアに見つかってしまった。
「あー、リョウ、いい所に。実は「却下、俺は忙しい。」
マリアが用件を言い終わる前に即答。
「マリアまだ何も言ってない。」「言われる前に答えただけだ。」
取り付くしまも与えない。マリアに対する対処法としてはほぼ完璧と言えるだろう。しかし、
「ねえ、リョウ。マリアのリス探すの手伝ってよ。」
マリアも一筋縄ではいかない。まるで何も聞いていなかったかのように協力を要請してきた。
「俺は今から昼飯を食うんだ。一人で探せ。」
「なによ、さっき公園に入ってきたんだったらお昼食べに行くのとは違うはずじゃない。」
公園に入るところを見られていたらしい。
(ちっ、・・・案外めざといな。)
凌斗は変なところで感心している。
「じゃ、言い直そう。面倒だから嫌だ。」
ストレートに拒否した。
「なによそれ、リョウの意地悪!」
「ああ意地悪でいいよ。とにかくめんどくさい。」
なんかもう投げやりだ。そこへトリーシャとエルがやってきた。
「ねえねえ、二人して何やってるの?」
凌斗はトリーシャを見て、丁度いい、押し付けて逃げるか。と思っていたのは言うまでもない。
「マリアのリスが逃げ出したの。」
「マリアの事だ。どーせまた魔法の実験台にでもしたんだろう?」
エルが鋭く突っ込みを入れる。
「そんな事ないもん。リスは大事な友達だもん。」
としっかりと反論するマリアしかし、凌斗はその言葉に
(つまりいつも実験台にされかけてる俺は愛玩動物以下か。)
心の中で非常にもっともな指摘をする。
「ねえお願い、探すの手伝って。」「うん、いいよ。ねっ、エルもいいよね。」
再び探すように頼むマリアとそれをあっさり承諾するトリーシャ。エルはトリーシャの言葉には答えない。やはりマリアの手助けなどする気はしないのだろう。しかし親友であるトリーシャだけにそれを押し付けるわけにもいかず、言い方は悪いが、出来るだけ角の立たない方法を考えていた。
「じゃ、俺は帰って飯食うから。」「待ちなリョウ。」
そう言って帰ろうと振り返ったところでエルは思いつきすかさず凌斗の服の襟を掴んだ。
「離せエル。」「アンタも手伝いな。」「めんどくさい。」
そのままエルは凌斗の首に腕を回した。
「チョークスリーパーなんかやりやがったら全力で肘打ちするぞ。」
殺気等が感じられない事がわかっていながら言う。
「そんなことしないって。頼むよリョウ。ここでマリアとケンカなんかしたらトリーシャや公園にいる人が危ないだろ。だからって押さえきれそうにないからアンタに止めてもらいたいんだよ。」
エルは凌斗の首に腕を回した状態で小声で言った。
「仕方ない。チョークどころか首の骨を折られちゃかなわん。」
「だからしないって。」
渋々ながらトリーシャに引っ張られる形でエルが、そしてさらにエルに引っ張られる形で凌斗がマリアのリス探しを手伝う事になった。
「で、どうやって探すつもりだ?ここには小動物が200匹前後、中型が60匹、ついでにゲテモノが一匹。この中からリスなんか探してたら日が暮れるぞ。」
おおよその大きさと数ぐらいなら半径10km程度なら簡単に認識することが出来る。
「ちょっと待ってよ、ゲテモノってなに。」
何でそんな細かい数がわかるのかも不思議だが。
「ゲテモノってのは・・、よっ。」
凌斗は小石を拾うと、樹の上にいるモノに投げつけた。
「こういうことだ。」
落ちてきたモノを拾い上げて言った。
「ただのペットモンス「あー!! マリアのリス!!」
トリーシャの言葉を遮って言ったマリアの言葉に他の三人は、
(リス!? これが!?)
と心の中で絶叫していた。当たり前だ。普通はペットに別の動物の名前をつける奴はいない。いや、言い直そう、たくましく育てという意味合いを持ってつけることはある。しかしリスは・・・・、
「すげえネーミングセンス。」「同感だね。」「ボクもそー思う。」
まさに満場一致。
「えへへ、可愛いでしょ。」
「何言ってるんだい、この馬鹿お譲。誰も誉めてやしないよ。」
「ぶ〜、魔法が使えないの〜なしエルフは黙ってなさいよ。」
喧喧諤諤、ケンカ突入、
そんな2人を尻目に、
「凌斗さん、クッキー作ったんだけど食べる?」
「ん、…まあまあだな。焼きが少し長い。」
とか、
「トリーシャ、今日はイヴの誕生日だからシュウでもからかって来いよ。」
「あの2人はからかう気にならないよ。」
など、2人のケンカを傍目で見ながらそんな事を話している。ちなみに“リス”は凌斗が魔法で動きを止めている。
「トリーシャ、カキ氷買って来てくれ。4人分。」「え?」
あの二人がカキ氷ぐらいでとまるとは思えない。凌斗はそんなトリーシャの考えを察し、
「そろそろ2人ともバテる頃だからな。」
そういうと凌斗は財布から4人分のカキ氷の代金をトリーシャに渡した。
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