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悠久の刻 第十八話
らむだ?


第十八話

〜ジョートショップ〜

「これは、また・・・。」「ああ、面倒で困る。」
依頼内容は戦闘訓練の指導、依頼者はリカルド・フォスター、ここまではまだ大したことではないが更に追記で葉崎凌斗氏に来ていただきたい。とか書いてあるから困りものだ。
「しかもお前指名じゃないか。リョウ。」「だから面倒なんだ。シュウの方にまわせない。手加減とか苦手なんだがな。」
アレフに対して軽く返すリョウ。
「アタシも受けるよこの仕事。」

〜自警団訓練場〜
「なんだ、リサも来てたのか。」
「ああ、自警団員に世界の広さって奴を教えてやるんだってさ。」
「おっさん、それならリサとおっさんで充分だろう。」
依頼を受けた時から気になっていた事を聞いた。
「いや、腰を痛めてしまってな。それでリサ君が君を推したのでな。」
雷鳴山の事等からだろう。
「面倒だな。で、どのくらい本気でやればいいんだ?全力?」
凌斗の問いかけに対してリカルドが渋い顔で応える。
「出来うるかぎり実戦に近づけたいが・・・、大きな怪我はさけてもらいたい。」
「へいへい、人数は?」「全部で8人と言う所だな。」
「まあ、お前なら大丈夫だろ。」
「シュウか、当然だろ。この程度ならどうって事無え。」
「で、どういうスケジュールでやる?」
「面倒だ9対2、俺とリサ対エルを含めたお前ら全員、その後指導かな。」
「お前バカにしてんのか?」「いや、いたって大真面目だ。最近これぐらいのケンカってしてないし。」
凌斗はシュウの意見をよくわからない理屈で返し、煙草に火をつけて言った。
「おっさん、合図。」「うむ、・・・・・・始め!」

結果は、といえば、
「テメエら、ナめてんじゃねえか?」
凌斗はそう言いながら次の煙草に火をつけた。
リサは傭兵として名が知られていたが凌斗は一部以外では全くの無名、当然攻撃は凌斗に集中した。が、凌斗はそれらの攻撃を造作もなくかわしながら一撃を入れ、いつの間にか立っているのはアルベルトとシュウだけになっていた。
「ボウヤ、少しはやる気を出しな。一撃で倒しちゃ訓練にならないじゃないか。」
「こんな事真面目にやっても面白くない。」
「アンタねえ。」
「冗談だ、少し真面目にやろう。」
凌斗はシュウとアルベルトに向かって2,3歩近づくと、
「二人まとめてかかって来い。」
と言い放った。
「アルベルト、1回で決めるぞ。」「ああ、わかった。」
二人は凌斗に向かって走り出し、
「連撃!!」
連撃は最初の一撃を避けなければその次の攻撃が避けられなくなる事が恐ろしい。つまり、数瞬の間に放たれる無数の攻撃をどこを攻撃するか、どこを防御するかの読み合いとなり、大抵の場合二撃目以降を防ぐ事は不可能。逆にいえば最初の一撃を潰せば恐ろしい攻撃ではなくなるのだ。
「みえみえだな、暗流表技 崩砕鎧。」
連撃の一撃目が放たれた瞬間、
凌斗の右手に炎の塊を、左手に冷気の塊を発生させ、右、左の掌打のワンツーから前蹴りで鎧を粉々に砕き、シュウの体が吹っ飛ぶ。
「ジエンドオブスレッド!!」
アルベルトにとっては当然想定外だったがそんな事はおくびにも出さず、凌斗への一撃を見舞おうとした。
シュウの連撃が敵の足を止め、アルベルトの爆発呼吸の一撃が敵を倒す、今までもこの連携で数多くの手ごわいモンスターを葬って来た。そして今回もそうなるはずだったが、
「ぬるいな。」
アルベルトの渾身の突きを槍の穂先を蹴り上げて弾き、次に飛び回し蹴りでアルベルトを蹴り飛ばした。
「まだまだ!」
とアルベルトは立ち上がろうとしたが、足に力が入らず立ち上がれなかった。
「やめるんだ、アル。お前の負けだ。」
アルベルトをリカルドが止める。
「隊長!自分は、・・・まだ、」「やめとけよ。次は手加減しねえぜ。」
凌斗のその言葉を聞いてアルベルトは愕然とした。自分が一撃で立てなくなるような攻撃が手加減だったというのだ。
「そういう事だ、凌斗君はまだ全力を出していない。」
「・・・・・・・・・」
場に重い空気が流れたが、
「う、うぇぇぇぇ。」
シュウが起き上がると同時に吐瀉している。
「あー、内蔵逝ったか。」
「内蔵逝ったか。じゃないよ。鎧はぶっ壊すわ、吐かすわって訓練でやることじゃないよ。」
シュウを見てエルが凌斗に文句をつける。
「技にそれくらいの威力がなくてどうする。」
この言葉に吐いているシュウが殺意を覚えたのは言うまでもない。
「てめえなあ。まあいい、肩貸してくれ、フラフラする。」
「あいよ。」
凌斗はシュウに肩を貸して医務室へ向かった。

「・・・おい、もう効いた振りしなくていいぞ。」
医務室のベッドに座ったシュウに凌斗が言った。
「お前は少しは手加減しろよ」
ベッドのそばにの椅子に座っている凌斗に文句を言う。
「細かい事は気にするな。それで、どこまでわかった?」
ちっとも細かくないと言いたい所だったが、時間の無駄なので言わないことにした。
「ああ、まずあの事件で犯人を見たと証言したのは7人。うち4人がお前だと証言をした。4人とも5月か6月に街を出ている。」
「報復を恐れて、とは考えにくいな。多分ハメットから金が流れてるはずだ。そいつらはその辺から司法取引をすれば簡単に落ちるだろう。」
「ああ、リカルド隊長もその辺は大体同じ考えだ。ただ、リョウ。この街では司法取引は違法だ。」
「そしたら50年ぐらいで脅してやればいいんだよ。」
剣呑な事を言う。実際さっさと帰ろうと思ってたところに余計な火種を作られたのだからしょうがないといえばしょうがない。
「・・・お前なあ。まあいいか、次はショート科学研究所で人工生命体が生まれたらしい。」
「人工生命体?ホムンクルスとは違うのか?」
「似た様なものだが違うらしい。それについて調べていたらイヴが教えてくれたんだがどうやら昔の魔法科学の本、と言ってもほとんどおとぎ話としてしか見られていないような本らしいんだが、それに人工生命体の事が書いてあって、それによると余計なものが混ざりにくい清浄な土地がいいらしい。」
シュウがイヴに聞いたと言った時、一瞬考えたがイヴの性格からして口止めされなくともペラペラと他の人間に話すことは無いと思い言及するのを止めた。
「それでジョートショップの土地か。だがあそこはアリサさんが居るから綺麗なんであって、居なくなったら他の土地と大差無えと思うんだけどな。」
土地というものはそこに済む人間などの影響を受けてその属性が変わる。清浄な場所というのは聖霊の力に満ちている場合が多い。それは聖霊がそこに住む人間やそこの環境が気に入ってその場所に留まり、いわば聖霊の溜まり場になっている為である。
「いや、それだったら行く所が無いのはかわいそうだから、とか言いながらどっかに部屋を作るかもしれないぞ。」
「確かにな。清浄になるかどうかはともかくそれは否定できねえな。」
まあ、いくらなんでもそんな場所に留まろうとする聖霊がいるとも思えないが。
「後は、実行犯なんだが・・・、どうもハメットの手の奴じゃないらしい。」
「知ってる。そいつについては俺がやる。」「知ってるって、誰だよ。」
「シャドウとかぬかす野郎だ。あいつはこの前俺にその事を言ってきやがった。」
「お前あいつと知り合いなのか?」「知るかあんな眼帯。」
吐き捨てるように言う凌斗。シュウにはそれが嘘だとわかったがだからと言って聞く気にもならなかった。
「とりあえず今日までの時点でこんなもんだな。」
「ああ、また何かわかったら頼む。」
そう言ってベッドそばの椅子から立ち上がる凌斗。
「それはそうとして鎧弁償しろ。」
「あれぐらいで壊れるような安い鎧してるほうが悪い。」
無茶を言う奴だ。
「焼入れなんかされたらどんな鎧でも壊れるだろうが。」
焼入れとは、熱したものを急激に冷やす事によって硬さを増す方法である。しかしその反面脆くなる為、それを利用して鎧を砕いたのだ。
「イヴに誕生日プレゼントでもらえば?」「俺の誕生日は2月だぞ。」
シュウの誕生日になるまで半年以上ある。
「そこは・・・、待つとか。」「仕事にならねえよ。」

「リョウ。ちょっとやりすぎたんじゃないかい?」
訓練が終わり、ジョートショップに戻る途中の二人。凌斗はシュウに一通りの手当てをしていたとエルに説明した。
「そんな事はないと思うんだが。まあ、気にするな。」「アンタねえ。」
「それよりエル、今日誕生日だろ。」
凌斗は懐から包みを取り出して投げ渡した。
「あ、ありがとう。開けてもいいかい?」「ああ。」
包みを開けると複雑に細工されたブレスレットが出てきた。
凌斗はプレゼントする気はなかったがアレフがうるさいし、そのとき居合わせたアリサに、
「お世話になってる人にプレゼントするのは当然よ。」
と言われてプレゼントすることにしたのだ。
「あ、ありがとう。」
「さて、アリサさん達がパーティの用意してるはずだからさっさと行こうぜ」
そう言うと二人は足早にジョートショップに向かった。
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