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悠久の刻 第弐拾弐話
らむだ?


第弐拾弐話

〜雷鳴山〜
「シーラさん、ボク達これからどうなっちゃうのかなぁ?」
両手両足を縛られ、魔法を封じられているトリーシャが同じ状態のシーラに尋ねる。
大声で助けを呼んだが誰かが来る気配はない。
「いろいろ考えたけど、…助けを待つしかない。と思う。」「……だよねぇ。」
思わず溜め息をつく二人。

しばらくして、凌斗と亜輝が光の中から現われた。
「二人ともまだ無事だったか。」「凌斗さんっ!!」「凌斗……君。何で、」
凌斗は二人の無事を確認して周りを見渡す。
トリーシャは凌斗が助けに来た事を喜んだが、シーラは少し複雑な気持ちだった。
突然クビにされた事、さらわれた事、何故ここにいるのか、何から話せばいいのか、何から聞けばいいのかわからなかったのだ。
凌斗は黙って二人の縄をほどき始めた。その表情からなにをかんがえているかは読み取れない。
「ククク、天流 裂爪。」
亜輝が素早く振り下ろした腕から発生した衝撃波が凌斗達に牙を剥いた。
「チッ!破ッ!!」
凌斗は左腕で衝撃波を弾く。否、左腕を犠牲にして衝撃波を押し留めたのだ。
「驚いた、まさか左腕一本で済むとはな。」「亜輝、いや、シャドウか。やってくれるじゃないか。」
見るといつもの眼帯をしたシャドウが立っていた。
「で?シャドウ、主賓とゲストにおもてなしはこれだけか?主催者として客を楽しませるのは常識だろう?」
「当然だ。ゆっくりと楽しみな。」
シャドウの呪文によって異空間へとつながるトンネルがつながり、その中から獲物の臭いをかぎつけたレッサードラゴンが次々と出て来た。
「トカゲか、まさかこれで終わりじゃないだろうな。オードブルにしかならんぞこの程度じゃ。」
レッサードラゴンはドラゴンの中では一番下級だがそれでも決して弱くはない。自警団員レベルならばこの状況はオードブルなどといっていられる状況ではない。
「ヒャハハハハハ、お前の実力はよくわかってるさ。安心しな、アペリティフはないが、メインディッシュはこいつらを片付け終わったら出してやるよ。」
シャドウが笑いながら言うが
「とりあえず一つ言っておくが、オードブルの次はスープだ。」
凌斗は冷静にツッコミを入れる。
「残念だがスープやデザートは用意してなくてな。まあ、オードブルとメインディッシュだけだが楽しめよ。」
それだけ言うとシャドウは消えてしまった。
「ふん、面倒なことだ。シリル、出て来い。」「呼びましたか?」
光の中から一人の女性が現れた。ロングのウェーブがかかった翡翠色の髪、整った顔立ち、優美な佇まい、どこをとっても非の打ち所がない。
「わ、きれい。」
「オードブルもメインディッシュも楽しむ気はない。お前が処理しておいてくれ。」
「わかりました。運動不足でストレスがたまっていますからね。ちょうどいい運動です。」
いい笑顔でシリルが答える。・・・・確かにいい笑顔だがとても怖い。怒りがふつふつとにじみ出ている。
「・・・・わかった、今度埋め合わせするからその顔をやめろ。」「約束ですよ?でないと・・・、」
やれやれ、女は怖い。そんなことを考えながら凌斗はシーラたちと共に転移呪文で消えた。

「ここ、は、ジョートショップ?」
転移したシーラは辺りを見回していった。
「そ、ちょっと待ってろ。説教してくるから。」
「説教って、何のことかな?」「さあ。」
二人には凌斗の言葉の意味が分からなかった。

「リョウ?どうしたんだ?」
転移呪文によって現れた凌斗にシュウが話しかける。
「ちょっとな。おっさんはどこだ?」「ああ、そこにいるよ。」
シュウが指した方を見て、リカルドの姿を確認した凌斗はそのまま歩み寄り、思いっきりリカルドを殴った。
「なっ!お前いったい何のつもりだ!?」
リカルドが殴られたのを見てアルベルトが激昂し、凌斗に槍を向ける。
「やめろアルベルト。リョウは大した理由もなく人を殴るような奴じゃない。」
アルベルトをシュウが抑える。凌斗はそれに目もくれず、
「おっさんよ。娘の誕生日よりも仕事を優先するってのはどういうつもりだよ。返答次第じゃ二度と家から出れないほど殴る。」
凌斗が指の骨を鳴らしながら言う。
「凌斗君・・・・、」
「凌斗君。じゃねんだよ、おっさんよ。俺みたいにそれなりの歳なら誕生日なんてどうでもいいけどな。トリーシャがおっさんと一緒に誕生日のパーティをやるのを楽しみにしてたの知らねえ訳じゃねえだろ。」
凌斗の目つきが険しくなる。
「君の言うとおりだ。これでは娘に嫌われるわけだ。」
「てめえらもだアルベルト、シュウ、少しぐらい気を使うってのが出来ねえのかてめえらは。」
凌斗が二人のほうに向き直って言った。
「返す言葉もない。」「くっ、腹が立つが言う通りだ。」
「アル、シュウ君。ここは任せてもいいかね?」
「どうぞ行ってきてください。後は大した仕事は残ってませんから。」
シュウがリカルドにいい、アルベルトもそれに同調する。
「凌斗君、何から何まですまないな。」「そう思うんだったら俺が苦労せずに済むようにしてくれ。」
その言葉にリカルドはただ苦笑するばかりだった。

凌斗がリカルドと共にジョーとショップに戻ってきた。
「お父さん!!どうしたのその顔!」「ふむ、ちょっとな。」
リカルドの顔は大きく腫れていた。
「ま、そういうのは後にして、さくら亭に行くぞ。」
ポン、とトリーシャの頭を軽くなでながら言った。
「さくら亭に?なんで?」「誕生日にパーティ以外に何がある。」
「ありがとう、凌斗さん!!」「他に俺からのプレゼントはないぞ。これだけですっからかんだ。」
その言葉に皆で笑った。
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