中央改札 交響曲 感想 説明

BackDraft Fighters Bible 6th
regret man


「悠久幻想曲 OUTDOOR-story」 

 -BackDraft Fighters Bible-

6th Grade 「・・・・・再燃準備?」

Keiがここ、さくら亭を去ってから、すでに1時間がたとうとしていた。
 パティはKeiの食べ残したモノの後片付けを終え、カウンターでグラスを拭いていたりした。
 客も今は、2、3人程。静かなモノだ・・・・。1人を除いては・・・・。
「で、パティどんなんだったの、Keiさん?やっぱり、強かったの?」
「だから、さっきから言ってるでしょ!凄かったって!」
 トリーシャはさっきから似たような質問を繰り返していた。やれ、Keiは強かったかだの
どうやったかだの。パティとしては、さっきの闘い、KeiがLayに掌底を喰らわしたり、顔面を
踏み潰したりと、強烈に印象を受けたものしか分からなかった。後は、憶えているのは・・・

             あの笑顔

 これは出来れば、話したくなかった。というか・・・思い出したくもない。
「だってさあ、Keiさん、アルベルトさん達に連れてかれちゃうしさぁ」
「しょうがないでしょ!一応当事者なんだから。・・・・まあ、でもアルベルトさんとか フォスターさんなら、そんな変なことしないでしょ?大丈夫よ」
「まあ・・・ね・・」
 実は、トリーシャとシェリルは闘いが始まってすぐに、自警団に向かった。そこで、アルベルトやリカルドに助けを求めた。それを聞きすぐにアルベルトと数人が向かったわけだが、駆けつけた時には終わってた。んで、仕方なくKeiに任意同行を・・・ってところで、遅れてきたトリーシャ達とすれ違ったってこと。アルベルトに食い下がったトリーシャであったが、結局説得される形でトリーシャが引いた。でも、納得できずにこうやってパティに何度も聞いていたわけだ。
「Keiさんも・・・多分変な人じゃないと思うから。(?・・やっぱ変かな?)そうじゃないと・・」
 パティはそこまで言いかけて帳簿を出した。
「じゃないと?」
 トリーシャがオウム返しに聞く。
「食い逃げになっちゃうから」
 そう言って、「Kei・Yest 243G ツケ」と記入した。

 その夜・・・・・・といっても日没から約3時間ほどたった頃だが。
 エンフィールドの東区。シーヴズギルドのある辺りの路地を入り込んでいくとある、ボロッちい宿屋。「at knife」という看板がかかっていたが、妙な汚れや錆で何とか分かるってものであった。実際、この宿屋、一種の「隠れ宿」であった。表向きはただの安価な宿だが、裏はあまり自警団などの警察組織に歓迎されない人間が利用するようなところである。部屋の中には、簡易ベットが1つと、粗末なテーブルに鏡が添え付けてあった。
 その「at knife」での一室で、ベットに手を頭の後ろに組んで横になっている、やる気ZERO・・・ちゅうか格好見りゃ分かるわ!ってな男がいた。言わずと知れた、Kei=不発弾=Yestであった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 天井を見上げてはいるが目の焦点は合っていない。物思いにふけようとするも、深く考え程疲れてきて、すぐに頭から消し去る。浮かんでは消え・・・・。これの繰り返し。
(・・・・・・・・今日の・・・・こと・・・・)
 今日起こした「揉めごと」についても浮かんできた。
(・・・・・・・・・・・くだらん・・・あんなのが格闘家きどりか・・・)
 つまらないので止めたらしい。Keiの頭の中で今度は・・・自警団事務所でのことが浮かぶ。
(・・・・・そういえば・・・連れて行かれたとき・・・おもしれえおっさん・・・ が2人 ・・・いたな)
 だんだん眠くなってきたみたい。やべーぞKei!!寝るな!寝たら死ぬぞ!!(死ぬ か!!)
(・・・フォルターとなんだっけ・・・・カールルイルだっけか?・・・まあ、なん だっていいや ・・・やべー!眠い)
 Keiはガバッと起きあがる。何かしなければ・・・・、そう思い辺りを見回すと、床においてある自分の荷物入れ・・・麻で作られたプールバックのような袋が目に留まった。面倒ながらも立ち上がりそれをベットの所まで持ってきた。
 荷物の整理か・・・。これから色々買うんだから今やっても・・・って感じなんだが、別にコイツはそれが目的ではないようだ。ただ、暇だから。それが目的みてーだ。
 臨終を迎えた下着。古くなった保存食。なんかいろんな意味危なっかしいものが出てきた。そんな物に混じって、
「ん?」
 バックの底から一通の封筒が出てきた。
(『紹介状を書くから、どこか落ち着いた仕事に就きたいとき使うといい』)
 それは、Keiがかつてある人間から渡された、Keiの紹介状であった。
(別に落ち着く気なんか無いっすよ・・・・・)
 『それを書いてくれた』人に対してそんなことを考えながら、封筒をバックの中にしまう。
 そして、全部出し終えると今度は元に戻した。
 バックを放り投げ、再びベットに横になるKei。今度は布団をかぶる。
(明日は・・・何すっかな・・・。ええ・・・と、いいや明日のことは明日・・・オ ヤスミ)
 心の中で自分に挨拶。そうして、Keiは早めの床についた。

 Keiエンフィールド滞在二日目。10の鐘で目が覚めたKei。
「やかましいな・・・・」
 寝起きは・・・最悪だった。まあ、服を脱がずに就寝したのは良くなかったな。その他にも、寝癖やら・・・なんやら。典型的な20代の目覚め・・・って感じか。
 これまで使ってきたボサボサ歯ブラシ・・・略して「ボサハブ」で歯を磨いた後、
「ありがとう、歯ブラシさん・・・」
 と、笑顔でいい、ボサハブをゴミ箱に捨てた。
 そして、荷物の中でも「まだマシな」Tシャツに着替え、3ヶ月はき続けているチノパンに足を通し、街に出掛けた。
 
 当然のこと・・・Keiは1時間以上街を彷徨う羽目になった。まあ、見ず知らずの街で地図も持たずに・・・ってのは、確かに狭い街とはいえ、無謀なことであろう。
 そんなこんなで、結局目的の物を全部手に入れたのは、午後しかも二つの鐘を廻っていた。
今は、「さくら通り」を歩いている。ここら辺は昨日歩いていたので何となく見覚えのある光景だった。そして・・・・
「ここだ」
 やがて、最後の目的地、さくら亭へと着いた。ここですることは・・・ツケの支払い。
カララン
 扉を開けると、いつものようにカウベルが店の中に鳴り響く。
「いらっしゃーい!・・・あら、Keiさん!」
「よお、パティ・・・(だっけ)」
 なんか語尾がしりすぼみだぞ・・・。ホントに名前おぼえんな、オメーは・・・。
 空いてるテーブルを拭いていたパティが声を掛けた。
「結局昨日、大丈夫だったの?」
「あ?・・・ああ、自警団のことか?別に、なんとも・・・」
「そう。・・・よかったわね」
 パティが安心したように言い、微笑んだ。
「それで・・・今日は何食べるの?それとも宿を取りに?」
 いきなり営業か?なかなか商売上手なことで・・・・まあ、気に掛けてくれていた所なんかが、パティのいいトコなんだけどさあ・・・。
「いや、宿はもう取ってあるし、今日は”ツケ”を払いに来ただけだ」
「そう・・・」
 少しがっかりするパティ。だが、気を取り直して、カウンターに戻り帳簿を取り出した。
「で、いくらだ?」
 それを、見計らいKeiが尋ねた。
「ええっと、243Gだけど・・・」
「じゃあ、これで。あ、釣りはいらんから・・・・・・」
「!!」
 Keiは500G金貨をパティに渡した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 つもりで、実は・・・・・100G金貨だった。
「お釣りどころか・・・足りないんだけど・・・」
 非難がましい目でKeiを見る、パティ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 Keiの背中に、冷たい汗。カッコつけたつもりが・・・・つもらなかった。
「す、すまん。これ・・・で・・・」
 動揺を隠しきれずに、今度は確認して500G金貨を払った。
「じゃ、じゃあこれで・・・」
 Keiは逃げ出すように店を出た。
「あっ!ちょ、ちょっとぉ!・・・」
カラランッ!
「・・・・・・・・・・・・・。もらい過ぎなんだけど・・・・」
 パティの手には、全部で600G。
「でも・・・・」
(なんであんな貧乏くさい恰好してんのにお金あんだろ??)
 それはね・・・・君のそのお金は彼が、『山賊狩り』をして巻き上げたお金だからだよ・・・。
 とりあえず、パティは適当な袋に”お釣り”をいれ、「Kei・Yest」と書いて、帳簿と一緒にしまった。

(ちっ!恥かいちまった!!)
 Keiは、さくら通りを東へと進んだ。自分がいた宿に帰るためだ。さっきのさくら亭での失敗をずっと悔やんでいた。
(ま・・・でも、『旅の恥はかきすて御免』とよく言うし・・・)
 いや、なんかよけいなモン入ってッぞ!
 とにかく、そう自分に言い聞かせたKeiは、歩みを速めた。
(どーせ、明日までの滞在だ。別にいいだろ!ほっといてくれ!!)
 なに1人でいじけてんだよ、アホッ!!
 だが・・・結局この話は後に、さくら亭でいつも語られる爆笑話となるのだった。その度に、それを聞かされる本人、Kei=Yestは苦い顔・・・って、もう少し先の話なんだけど・・・。
 そう、もしこの『3日滞在』がなければこいつはただ流れているだけだっただろう。
 それが、この日のこの事件により・・・Keiを、この街に留めることになった。

ダダダダダダダダダッダ
「ん?」
 後ろから迫り来る大勢の足音。それに振り向いて見ると
(耐火服?)
 なにか銀色の作業着のような服を着た人間が十数人、通りを駆け抜けていった。
 道の脇に寄って、それを見送るKei。
「あれ?耐火服だよな?どっかで火事か?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 暫く考え中。
「あっち方向!もしや、俺ん家か!?」
 オメーの家ではないが、まあ宿の可能性はあらぁな。
「っくしょう!!」
 そう言って走り出した。

(煙・・・やっぱ火事か・・・)
 Keiの走っている方角からは、黒い煙の筋が上がっていた。
 コイツ・・・なんかさっきの「ミス」で気付かんらしかったみたい・・・・もっと早う気付け!!
 Keiは更に加速した。Keiにとって、荷物自体そんなに重い物ではないので、馬鹿みたいに加速していく。
 すると、さっきの耐火服軍団の5、6人程が消火栓を開いていた。
(おいおい、もっと早くしねぇと、焼死体が出るぞ・・・)
 その手際の悪さを脇目に、通り過ぎていった。
 それから、10分かからずにKeiは自分の宿についた。
 そこは・・・何も変化はなかった。
「ふぅ・・・ウチじゃなかったか・・・」
 だから、オメーの家じゃ・・・・・
「向こうか・・・」
 再び、煙の出ている方に走り出すKei。買った物も部屋に置かずに・・・。

がやがやがや、ざわざわ
「第2班は、裏手からのエントリーを!正面はまだ破れんのかっ?!!」
「ダメッす、隊長!!どの扉も魔法の強化がきつくて!!」
「テメー等!!はやく消しやがれ!!何のための自警団だ!コラッ!!」
「子供が、私の子供がっ!!」
 現場は、Keiの宿から路地をもう少し奥に入ったとこにある小工場地区の魔法アイテム工場であった。石造りの2階建てで、そんなに古くはない建物だ。ただ、魔法アイテムを取り扱う分、安全管理のため事故が起こった際、扉が重度の結界となり外に余波が及ばないような仕組みになっている。今、この火事の鎮火にあたっているのは、我らがエンフィールド自警団、災害対応の第5部隊である。そして、野次馬の罵声や他の隊員の報告の嵐の中、全体の指揮を正面で執っているのは第5部隊隊長のジャン=カーライル、その人である。
 今、その隊長さんは、工場の労働者と思われる中年女性に泣きつかれている。
「早く、子供を!!2階に、2階に寝かせてあるんです!!早くしないと!!・・・」
「分かりましたから、下がってください!!ウチの連中の声が聞こえません!!きっと助けますから!!」
「さっきもそう言って全然中に入って無いじゃないですか!?!あんたたち第5でしょう!!だったら・・・」
「おい、この女性を連れてけ!!」
 カーライルのその声で野次馬を押さえている隊員の1人が女性を引っ張って行った。
「ちょ、ちょっと!放してよ!!第5の奴らになんか!!こんな××××××××・・・!!」
 とても文には出来ない罵詈雑言を吐くおばさん。隊員に掴まれてとりあえず退場。
(うるせーな。オレだって分かっている・・・だが、オレが突っ込んだら誰がこの乱れた場を取り仕切るってんだ!!・・・)
 カーライルも内心は焦っていた。確かに今この場を離れては指揮系統の混乱が出るのは必至だ。代役を立てるにも、副隊長や補佐の連中は使えない。隊長なしでは殆ど何も出来ない。これが、今現在、第3部隊に次ぐ「税金泥棒」と呼ばれている、第5部隊の現状であった。
「何をしてるっ!!さっさとブチ破やぶらんかぁっ!!!」
 カーライルの怒声が正面からの突入班に飛ぶ。
「はいっ!!・・・・せーのっ!!」
ガンッ ガンッ 
 1班の隊員の2人が工事用の鉄の20キロハンマーで魔法金属製の扉を壊そうと試みるが、凹み1つ出来ない。しかも火の勢いが増し、離れながら叩くもんだから力が全く入っていない。
(なにやってんだ、アイツ等・・・はやくしねーと子供が死ぬんじゃねーの・・・。っつうか、あのおっさんがぶち壊せよ・・・)
 Keiはかなり苛立っていた。周りのように野次こそ飛ばさないものの、心中ではカーライルや第5部隊に対する文句でいっぱいだった。中に子供が取り残されていると知ってからはなおさらであった。
(さっさと、しろってんだ!!)
 今も壊れない扉から、視線を他の所に移してみると、
「お願いっ!!!誰かぁ!!子供が!!子供がぁっ!!!あああぁあ・・・」
 もはや半狂乱になりながら、飛び出そうとしているさっきのおばさんがいた。だが、他の隊員に押さえられていて・・・いや、それがかえって哀れさ、切実さを強調していた。
((・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・))
 カーライル、そしてKei。それを一瞥すると何かを考え込む。そして、
((仕方ねぇ・・・・・))
 2人が動いた。カーライルが前に出て、隊員からハンマーを奪い取る。
「っ!!た、隊長?!」 
「もういいっ!ど・・・!!」
どさっ
 「どけ」というつもりだったのだろう。でも、カーライルのその言葉は、後方から『吹っ飛んできた』隊員によって妨げられた。隊員は白目をむいている。カーライルは後ろを振り返った。
(あいつは・・・昨日の・・・)
 そこには、野次馬の囲みを越えて、1人の水浸しの男・・・Kei=”water”=Yestが立っていた。
「どけぇぇぇぇいっ!!!!!!!」
 聞いたものの下っ腹に響くような大声を上げると、そのまま正面の扉に駆け出していった。あまりのことに呆然とするカーライル。Keiはその勢いで大きく一歩踏み込み、体を沈め、右肘を上方に最大に絞った。そして、
「っつおっっっらあっ!!!」
っぐぁがん!!!
 右の拳を扉に叩き込んだ。
「っ!!!!」
 なんと、扉に大きな歪みが!!ハンマーで、ぶっ叩いても壊れなかった扉が、たった1撃で・・・
 さらに、Keiはその勢いを今度は左拳に持ってくる。
「っらあっ!!!」
どっがらああんごろんっ!!
 とどめの左ストレートと共に扉が破られた。Keiはそのまま、躊躇なく、中に飛び込んでいった。
(・・・・・・・・・!!)
 いきなりのことに、Keiを見送る形になってしまった。カーライルを含める、第1班。ハッとするとすぐに全員に指示を出した。
「扉が開いた!!第1班は『アイツ』の後を追い、突入しろ!!他の班は消火にまわれ!!おい、消 火栓の第5班は何してるんだ?!!・・・・テメーは寝てんじゃねぇ!!」
 カーライルの指示が飛び、蹴りが飛ぶ。少し遅れて反応する全班。だが、1班が突入を始めようとしたとき、
ガラガラガラガラ
 建物の中から、何らかの鉄骨やら、石材、燃えた木材が落ちてきた。
「っ!!1班退避!!」
 班長が隊員を外に出すのと同時に、再び入り口を塞いだ。
「た、隊長!!またですっ!!」
「くそっ!!」
 悪態つくカーライル。
(・・・ち、こうなったら、『アイツ』だけが頼りか・・・それにしても・・・)
 カーライルは破られた扉の方を見た。普通、『魔法結界を物理攻撃で壊せる』奴は・・・自分の知りうる限りは・・・そういない。
(・・・なかなかいいパンチだな・・・)
 そう思い、再び思考を切り替えた。
「訂正!!全班消火活動に集中しろ!!」
 と、新たな指示を出した。               (つづく)

作者より
 いやいやいやいや・・・・。なんか、展開が急で急で・・・。こっちとしても参ってる次第であります。
さて、次回、
「おもしれえ、じゃああんたの下に入ってやる。だが、誰かの為じゃねえ・・・。俺の為だ・・・」
 再び、火がついたKei(?)もう、不燃ゴミだなんて言わせない!!
 ・・・・意味わからんわ・・・またね!
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