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BackDraft Fighters Bible Rank10
regret man
「悠久幻想曲 OUTDOOR-story」
-BackDraft Fighters Bible-
COUNT DOWN【0】
Rank 10「追憶の・・・・・・」
五月。春と言うには少し暑すぎ、夏と言うにはまだ涼しい。いずれ訪れる「梅雨」を運んでくるかの如く、南よりの風が吹く・・・
(詩人、Kei=“ポエミー”=Yestってか・・・)
・・・・何が、「ポエミー」だ、アホ!ったく、しかもそれ、晴れてるときに詠むモンだろ。今、雨降ってんだよ、雨!!
・・・・・今、Keiはエンフィールド中部地区にいた。街に出て、街の災害における対処状況を調査中だったのだが、いきなりの雨で、交差点にある商店の軒下で雨宿りをしている。自警団らしいダークブルーのレインコートのフードを取り、なんとなく空模様を見て、今のような変な詩を読んでいた。
レインコートを着てるなら、そのまま歩きゃいいじゃん、と思ってる人もいるかもしれないが、雨が強まった為、顔がずぶ濡れになりうっとおしくなったのと、鞄に入った調査用紙が濡れてないか確かめるのが、Keiを軒下に行かせた理由である。顔に着いた水滴を手で拭い、鞄を開けて、中の調査用紙を確認した。出来るだけ濡れないようにしてきたつもりだが、少し濡れた跡があった。
それを見て、嫌な顔つきになりながら用紙をしまう。そして、顔をあげるKei。
(ん・・・・)
Keiは道の反対側の建物の軒下に、自分と同じように雨宿りをしている2人を発見した。
(・・・ミンナ同じだな・・・でも・・・なんだ、あいつら?)
Keiが訝しがる理由。それはこの2人が人間とはやや違った特徴を持っているからであった。
1人は、頭に狐のような耳、お尻の辺りから生えてる狐のような尻尾を持った女性でもう1人は、同じ所に、猫のような耳と、白い猫のような尻尾を持った少女であった。
知っている人も多いと思うがその名を、橘由羅、メロディ=シンクレアといった。
2人は5月の陽気に誘われるように買い物に出たのだが、いきなりのにわか雨で動けなくなってしまったのだ。ライシアン族(由羅のような身体的特徴を持つ種族)の由羅は、気候になかなか敏感であったので、傘を1つ持ってきたのだが、雨が強まるとさすがに1つの傘に2人はきつくなり適当な軒下に入ったのだ。しかも、この2人は荷物を持っていた。由羅は、大好きな醸造酒の一升瓶を2つまとめたモノを手に提げ、メロディは日用品や果物の入った大きな袋を抱えていた。
「う〜ん・・・なかなか止みそうにないわねぇ、メロディ」
「ふみゅ〜・・・メロディ雨の日きらいなのぉ・・・」
「あたしもどっちかっていうと晴れてる方がいいな」
「メロディ、濡れるのいやぁ」
「みんな好きじゃないわよ。ほら、向こうにも雨宿りしてる人がいるわよん」
そう言って由羅は、向かいにいる男(Kei)の方に顔を向けた。
「みゅう、どこぉ?」
かかえている袋がメロディの視界を遮っているため、Keiの姿を見ることが出来なかった。それでも、何とかしてメロディは袋の向こう側を見ようとしたもんだから、
「みゃっ!」
バチャ バチャ バチャ ゴロゴロ
袋の中のリンゴ、オレンジなどの果物が、袋からいくつもこぼれ出てきた。雨にも関わらず、固いモノは転がる、転がる・・・。
「あ〜、まってぇ」
「あ、メロディ!」
由羅の制止も聞かず、いきなり飛び出すが、水溜まりに足を取られ、ばしゃ!と転んでしまった。
「ふにゅぅ〜・・・・」
「メロディ!大丈夫?!」
慌てて由羅も、メロディに駆け寄ってくる。また、メロディは転んだ際に袋の中身を全て道路にぶちまけてしまった。
(あーあ、なにやってんだ、あいつは・・・)
Keiは、転んだ猫娘(メロディ)の方を見て苦笑していた。
(あれじゃ川に落ちたのとそう変わらねぇかもな・・・)
由羅がメロディに駆け寄ってきて、何かを言い、メロディと落ちたモノを拾い集める。
(・・・・しゃあねぇ、手伝ってやっか・・・)
そう思い、由羅達の所に向かおうとした・・・・・が、
(ん・・・ありゃ、やべぇぞ!)
かなりのこちらに速度で走ってくる、お偉いさんがよく使う黒塗りの「高級馬車」だ。
「おい!!テメェ等!!馬車が来てっぞ!!」
Keiが2人に向かって叫ぶ。由羅がKeiの声に気付き、馬車の方を見た。
「っ!!!」
一瞬呆然とする由羅。だが、すぐに我に返りなんと、メロディに被さるように抱いた。
(!!!アイツ・・・)
結局由羅は自分をクッションにしてメロディを守るという無謀な手段に出た。
(ダメっ!!間に合わない!!せめて・・・せめて、この娘だけでも・・・・)
実際、メロディを促して2人でさっと道路の端に避ければすむことだが、一瞬でも呆けていたこと、メロディが馬車に気付いていなかったことが、由羅の判断を狂わせていた。
(ちぃっ!!!)
「ぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!」
心の中で舌打ちをし、Keiは猛りながら、2人の方へ突進していった。
(やむをえん・・・)
何かを決意し、更にスピードを上げた。
馬車と由羅達との距離が縮まっていく。
9メートル、8メートル、7メートル・・・・
Keiが由羅達の所に並ぶ。
そのまま駆け抜ける。
・・・5、4、3・・・・・
2頭いる馬の間をすり抜け、大きく地面を蹴り・・・
・・・2、1・・・・・
そして・・・
ズドガォォォンンッ!!!!!!!!!!!!
辺りに炸裂音が轟く。次に、
ドンガラシャァッ!!!!!!!
大破音。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
由羅がゆっくり顔を上げ、後ろを向く。
馬車はもうなかった。代わりに、腰を落として、脱力している男の姿があった。
「????」
訳の分からない由羅。頭の中が整理できずにいた。
その男がゆっくり腰を上げ、由羅達の方を向いた。
「まったく、来るぞって言ったろうが・・・」
少し困った表情で答える男。この時、この男の服装、前開きのレインコートの隙間から覗く制服を見て、自警団だと判断した。
「まあ、無事で良かった」
そう言って、笑顔を作る。
「そっちの女にコイツを着せてやれ。無いよりかマシだろ」
そう言って男は、レインコートを脱ぎ、由羅に手渡した。その時、由羅はこの男の名札を見た。
(Kei・・・・・・Yest?)
Keiは、レインコートを手渡すと、今度は自分が「吹っ飛ばした」馬車に向かおうとした。
だが、その時、
「お姉ちゃん、苦しいよぉ・・・」
由羅はずっとメロディを抱きっぱなしだったのだ。
「あ、ゴメンね、メロディ・・・」
メロディが由羅の体の中から、顔を出した。
(あ・・・・・)
・・・・・・・・・ドクン・・・・・・・・
Keiの心臓が大きく高鳴った。そして、譫言のように何かを呟いた。
「・・・・・ell・・・・・・・」
(!!な、んなわけあるか!あいつじゃねぇ!!・・・・あいつは・・・・あいつは・・・)
心に沸いた葛藤を振り切り、もう一度メロディを見ると、馬車の方に向かって歩いていった。
なんと・・・Keiはこの馬車を「馬ごと」吹き飛ばしていた。しかも、その距離は10メートルを越えていた。
「う・・うぅ・・・」
客車の瓦礫の中から3人ほどが這い出てきた。全員、なかなか綺麗な身なりをしている。
やっとの思いで最後の1人が這い出てきたが、
ガン ゴス バキ
3人ともKeiに殴られ、ズルズルと引きずられていった。
由羅とメロディは、3人を引きずっているKeiを雨に濡れるのにも構わず、しばらく見ていた。
やがて、
「・・・・せっかくだからこのカッパ借りましょ」
そう言ってレインコートをメロディに着せた。
「ふみゅう・・・お姉ちゃん・・・これ汗くさいよぉ・・・・」
「我慢しなさい。さくら亭まで行って、パティちゃんに着替え借りようね、メロディ」
「・・・うん」
(パティちゃんならあの「Kei=Yest」とか言う自警団の人知ってるかもしれないし、ちょうどいいわね)
そして・・・
(これ・・・くさいけど・・・とってもあったかいのぉ・・・・)
メロディは、Keiのレインコートに何故か、愛しさから来る「温もり」を感じていた。
誰も気付いてはいない・・・『ウンメイノクリカエシ』
それがまた、この街で始まろうと・・・・・・
・・・・・・いや、もう始まっていた・・・・・・
(作者から)
長かった。パソコン復活するのって案外時間かかりますね。
『Rank10』って何事?って思ってる人は、前の回(9th:かんなり前!!)をご覧下さい。
次回予告は・・・ナシ(!!)
ではまた。(って、オイ、コラ!)
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