中央改札 交響曲 感想 説明

BackDraft Fighters Bible Rank11
regret man


「悠久幻想曲 OUTDOOR-story」
 


-BackDraft Fighters Bible-





Rank 11「困惑の・・・」



「・・・・・・・・ん」

 何度目か、Keiは目を覚ました。上半身のみを起こし、頭をぼりぼり掻く。周りを見回す。

(自分の部屋だ・・・)

 窓の外に目を向ければ、日はもう高く昇っていた。Keiの懐中時計は10時をまわっている。

「・・・・・・・・・・」

 再び、ベットに倒れる、Kei。

(寝直しだ・・・)

 Keiは別に好きで何度も、何度も床に入っているわけではない。まだ、平日であり、普通ならとっくに自警団事務所に赴いているはずなのだ。

 だが・・・・Keiは、この部屋にいなければならなかった・・・・・・・・・・・

(謹慎か、結構ヒマでしんどいな・・・)

 

 自宅謹慎一週間。それがKeiに与えられた処罰だった。あの雨の日の事件の後、Keiがそのまま事務所に引きずっていった人間は、実は稀少種族保護団体(RPO)の次長を務める男、ジュライン=レイダー氏とその秘書、護衛の3人であった。
 この稀少種族保護団体(RPO)とは、ライシアン等の珍しい種族の密猟、差別をなくすために、数々の国際的な人権保護の団体が協力し、設立させた。よって、その社会における地位は、かなり高い部類に位置する。
 何故、その次長がこんな片田舎の街に・・・ということだが、本人曰く遊説の為らしい。

 それで役所に向かう途中、Keiに馬車を破壊され、事務所で取り調べを受けた。(取り調べの際、結構理不尽なことがあったらしい<汗>)

 後は、牢に押し込もうとしたところを、目撃情報を受けて来た役所の人間に止められたのだ。

 

 カーライル曰く、

「まぁ、なんとかクビは逃れたが・・・RPOの次長を牢に放り込むなど世界広しと言えど、お前ぐらいだ ろう。向こうも狭い道で馬車を飛ばしてたことは悪く思っているみたいだから、とりあえずは10%減棒と謹慎だ」


  
ジュラインの遊説期間もちょうど1週間なので、「顔を見せない」という点では都合の良い処分であった。それももう、残すところ後一日であった。

(あ〜あ、ヒマだ・・・)

 ヒマだ、ヒマだと言ってるが、実は、この男・・・今日まで殆ど部屋にいなかったのだ。謹慎なのをいいことに、エンフィールド中を見て回っていたのだ。Keiがこの街に落ち着いて、1ヶ月以上たっているのだがなかなか見て回ろうと思い立つことが無く、いまだに知らない場所も多かった。Keiはこの5日でエンフィールドを知った(?)と言っても過言ではない。

 今日はどうやら出る気になれないみたいだ。(とは言っても、本当は出てはいけないんだよ・・・)

 ベットの上で、何度も寝返りをうつKei。瞼を静かに降ろしていく。

 そんなことをしながら、しばらくが経った時、

コン、コン、コン

 部屋のドアが軽くノックされた。

(・・・どーせ、いるかどうか点検しにきたんだろ・・・)

「開いてるよ・・・」

 うっとおし気に答える。

「・・・それじゃあ、おじゃましまぁ〜す♪」

 見回りに来たむさい隊員が来ると思ったKeiの予想に反し、軽い調子の声と共に入ってきたのは、女性であった。

 歳は20ぐらい、露出度の高い服を着て、金色の長い髪、髪と同じ色の綺麗な毛並みの狐のような耳と尻尾をもつ女性・・・そう、橘由羅であった。

 この予期しない訪問にKeiは驚き、慌ててベットから飛び起きた。

「!!・・・あ?お、おめーは・・・」

「由羅・・・橘由羅よ。Kei=Yestくんでしょ?」

「あ・・・ああ」

「それと、これ、ありがとね。これでメロディが風邪ひかずに済んだわ」

 由羅は綺麗に畳んであるレインコートをKeiに渡す。

「めろでぃ?」

 由羅の言葉に出てきた聞き覚えのない単語を聞き直した。

「ああ、『メロディ』っていうのはねぇ、この前一緒にいた、あの転んだ娘。あたしと一緒に暮らしてるの」

(ふ〜ん、あいつ、『メロディ』っていうんだ)

「でも、まぁ、よく俺のことが分かったな」

「そんなの簡単よ。この前、制服の名札がちらっと見えたし、さくら亭で着替えたときに、パティちゃん も知ってたし、後はアルベルトくんに聞いたら、寮に住んでるって・・・」

(アルベルト・・・ああ、あの「でかいヤツ」か・・・・)

 Keiの「アルベルト」に対する認識はこんなモノであった。

「ふーん。別に雨ガッパぐらい適当なヤツに渡してくれてよかったんだけど・・・」

「それじゃ、『命の恩人』に失礼でしょ・・・2、3日前にも来たんだけどいなくて。それにちょうど話しておきたいこともあったし・・・」

 由羅は普段の面倒くさがりようからは考えられないような行動をとっていたのだ。由羅にそのような行動をとらせた理由は今の由羅の言葉『命の恩人』が全てである。

「べ、別にそんな大層なものじゃねぇよ・・・ったく。で、なんだ俺に話してぇことって・・・」

 鼻の頭をカキカキ、照れながらも聞き返すKei。

「実はね、この前のお礼に今夜、ウチでお食事でもどうかなぁって」

「はぁ?!食事だぁ?」

 「話」と言うよりは、「お誘い」であった。由羅は笑顔でKeiに言った。

(・・・どうしようか・・・)

 Keiは・・・悩んだ。別に、謹慎とかがどうというわけではない。いきなりの、しかも女性からの誘いに困惑したからだった。



「う・・・・・んんん・・・・」

 遂に、両腕を組んで悩みだした。

「別に、大丈夫なんじゃないの?キンシンぐらい。メロディもちゃんとお礼言いたいって言ってるし・・・」

(・・・メロディ、か・・・)

 Keiの心の中に、メロディの顔が浮かんでくる。あの雨の日、キョトンとした感じでKeiを見つめた、あの顔。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・。よし、分かった。行くわ・・・」

 その返事を聞くと、由羅の顔がパッと輝く。

「ホント!!よかったぁ!メロディも喜んでくれるわぁ!」

 手をパンと叩いて喜んだ後、由羅は夕食の時間を告げて、帰っていった。

(メロディ・・・か。また、アイツに会えんだな・・・)

 顔が自然とほころぶのを何とか押さえようとするが、結局は、にやついてしまう。

(あぁ・・・夜まで・・・ヒマだな・・・)

 いつもとは違い、嬉しいのを隠すようにつぶやきKeiはベットに飛び込んだ。



 昼には、目が眩むほど白光し、高く昇りたっている太陽。それも、時が経つにつれ、鮮やかなほど紅く輝き、低く下ってくる。

 由羅の告げた時間ピッタリにKeiは、由羅の家を訪れた。この「誕生の森」の入り口にある由羅の家は、まさに一軒家なのでKeiは教えられたとおりに来ることが容易だった。

 ガラガラと戸を開け、

「うぉーい!Kei=Yestだ!今、来たぞー!」

 何の遠慮もせずに玄関で叫ぶ、Kei。

「はぁ〜い」

 奥から、由羅が出てきて、Keiを出迎える。

「いらっしゃい、Keiくん」

 由羅がKeiに向かって微笑む。照れて、由羅から目を背けるKei。

「ふにぃ〜、おきゃくさまですかぁ〜?」

 そして、台所から・・・今度はメロディが玄関にトタトタと走ってきた。

(メ、メイド服ぅ?!普通の家でこんなもん着せてんのか、コイツは・・・)

 メロディの『服装メイド服』を見て、メロディ、由羅と交互に視線をうつし、やや唖然とした。

「メロディ。カレがあたし達を助けてくれた『Kei=Yest』くんよ」

「ふみゅう!あなたがKei=Yestちゃんですかぁ。このまえはどうもありがとうございました」

 メロディはペコリと頭を下げる。

「い、いや・・・別に・・・まあ・・・。ヨロシクな・・・」

 メロディの前ではしどろもどろになってしまうKei。

「今ね、メロディがね、ごはん作ってるから、もうちょっと待っててくださーい」

 再び台所に向かって走っていくメロディ。それを見送りながら、由羅に居間に案内された。

 

 橘家の居間には訳の分からないものが多数あった。陶器で出来た狸の置物。バレーボール大の20面サイコロ。紅白幕。etc、etc・・・

 それらが所狭しと、置かれている中、真ん中にちゃぶ台が置いてあった。台の上には、酒瓶が3つだけあった。

 ちゃぶ台につく由羅とKei。

「さぁ、お料理が来るまで、『食前酒』といきますか」

 そう言って由羅は、酒瓶の栓を開け、中の液体をグラスになみなみと注ぐ。

「Keiくんも、飲めるんでしょ?」

「まあ、普通のヤツよりはな。でも、空きっ腹に入れるってのは・・・」

「だから、食前酒って言ってるでしょ。男の子ならうだうだ言わないのっ!」

「ま、別にいっか。お前こそ、急性アル中には気を付けろよ」

 ・・・Keiは知らないのだ。由羅が、この街でも1、2を争う(?)程の酒豪であることを。後にKeiは、このことで後悔することになる。

 Keiがグラスを持ち、まず僅かに口に含む。アルコールのつんとくる辛味がきついが、その後には透き通った後味がする。

(なかなかに良い酒だな・・・)

「はーい!お料理ができたよー!」

 メロディがお盆に一杯に料理を乗せて居間に来た。

「じゃあ、みんなそろったことだし。乾杯といきましょうか」

 由羅が自分の空のグラスに再び、酒を注ぐ。

「俺らはもう飲んでンだから、今更って感じだけど・・・」

 そう言って、Keiもグラスに酒をつぎ直す。

 メロディはジュースの入った、ベルの絵が描いてあるコップを持っている。

「じゃあ、改めて・・・あたし達とKeiくんとの出会いを祝して・・・」

「しゅくしてぇ〜」

 由羅の音頭のあとにメロディが続く。

「かんぱーい!!」

「かんぱぁい!!」

「うっす・・・」

 3人のグラスがキンと、心地よい音を立てた。



「きゃははは!!Keiくぅ〜ん。もっとぉ、由羅ちゃんに、ついでぇ〜」

「まてってぇ・・・。お、オレがぁ・・・のんでからだぁ・・・うっく」

 それから、約1時間が経過した。最初のウチこそ3人で自己紹介をしたり、談笑していたりしていたのだが、今や酔っぱらいが2人に。

「ふにー!!お姉ちゃんもKeiちゃんも、もお飲んじゃダメェ!!」

 それを止めるメロディとで、収集が着かなくなってきた。

「まぁ、まぁ待てって、メロディ〜・・・なぁ、メロディ・・・」

「なに?Keiちゃん」

「お前は・・・料理が・・・うまいなぁ・・・」

「ふみゅう!ほんとぉ!」

「ああ、保証するぞぉ・・・」

「う・わぁーーい!Keiちゃんに誉めてもらっちゃたー!」

 飲んだくれてるKeiや由羅を止めるのも忘れ、無邪気に喜び出すメロディ。

「よかったわねぇ〜、メロディ」

「いい嫁になれるぞ、おまえはぁ・・・」

 Keiが酒の勢いで突拍子もないことを言う。

「あーら、Keiくん、『メロディをお嫁に下さい』なんて、少し早すぎないかしらぁ?」

「言ってねーよ!!この酔っぱらい!!」

「酔っぱらってるのは、キミ!!」

 まぁ、結局は・・・テメェ等両方酔っぱらいだよっ!!

「ふふふふ」

 メロディはまだ、喜びに浸っていた。



 楽しい「時間」とは、楽しい「瞬間」である・・・あっという間に終わりが来てしまう。

 さすがに、由羅のペースに最後まで着いていけなかったKeiは途中から、ジュースに切り替え、無事に帰れるよう酔いを醒ましていた。

 後は、宴会の後片付けを手伝い(由羅はいいと言ったのだが、Keiが酔った勢いで強引に手伝った)、帰るだけとなったのだが、

「うにゅぅ・・・めろでぃ・・・もぉ、おねむですぅ・・・」

 後片付けが終わって、今でゆっくりくつろいでいたメロディが、ウトウトし出したのだった。

「おい・・・。メロディ、こんなとこで寝んなよ、メロディ・・・」

「・・・ふみゅぅ・・・」

「・・・おーい・・・」

 ついには、眠りだしてしまった。

「しょうがないわねぇ。Keiくん、メロディ抱えて、こっち来て、今、お布団しくから」

「あ、あぁ・・・」

(べ、別にいいよな・・・不可抗力だ・・・多分)

 メロディを抱きかかえることに、かなりの抵抗を感じたのだが、背に腹は代えられずゆっくり、壊れ物を扱うかのように抱きかかえ、寝間にメロディを寝かせた。



(・・・・・・・・ん?)

 寝間に移ったとき、外から何か言いようの無い不審な気配を感じた。こんな時間に森に入るのは、少しおかしいし、何より僅かに、『殺気』が感じられるのだ。

(なんだ、一体?)

 由羅はいなかった。どうやら台所に水を飲みに行ったらしい。

 Keiは、メロディの顔を見る。無邪気な、見ているだけで幸せになれそうな、そんな寝顔。Keiは、それを眺めつつ、安堵感に浸りつつも、なにか深いもの悲しさを覚えていた。

「・・・・・・・・・・・・」

 無言のまま、メロディの頭に手を伸ばし、撫でてやる。

 その時、

ふにゅぅ・・・こわいよぉ・・・

(っ!!・・・・・ね、寝言か・・・)

 メロディの寝顔が、急に恐怖に曇る。メロディの寝言につい手を引っ込めてしまうKei。

こわいひとが・・・いっぱいくるよぉ・・・

「・・・・・・・・・・・・」 

 それを聞き、Keiは少々戸惑ったが、今度はメロディの手を布団から静かに出し、握った。

おねぇちゃんをつれてかないで・・・メロディ、いやだよ・・・

「大丈夫だ」

 Keiがメロディに優しく言う。

メロディになにするのぉ・・・・たすけて・・・

「大丈夫だよ、メロディ」

・・・たすけ・・・て・・・・

「大丈夫・・・」

 何度も優しくメロディに言う。眠っているメロディに聞こえるはずは無いのだが、メロディの寝顔は元の安らいだ寝顔に戻っていく。

 そして、メロディの「怖い夢」は去った。



 Keiは静かに目を閉じる・・・眠ったわけではない。外の気配に最大限集中するためだ。

(・・・いるな、数人。殺気の強い連中だ・・・)

 Keiは確信した。やはり外に、不審者がいるのだ。

(狙いは・・・オレじゃねぇ。この2人・・・)

 Keiはゆるりと立ち上がると、手で自分の顔をゆっくり拭い、玄関に向かって歩き出した。



「Keiくん、帰るの?」

「ああ・・・」

 Keiが、さっきとはうって変わって怖い顔をしていたので、わずかに焦る由羅。
 
「由羅、いいか。今日はもう家を出るな、分かったな?」

「え?ええ・・・」

 だが、由羅は意外に落ち着き払っていた。彼女は外の気配にとっくに気付いていたからだった。

「Keiくん・・・」

「安心しろ。俺は、あんな連中・・・・・には、やられん・・・」

 そう言ってわずかに微笑むと、外に出た。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 心配とも困惑ともつかない表情で由羅はKeiを見送った。



 Keiは出るとすぐ森の方に歩いていった。やがて道からそれ、森の中へ。

 さらに、歩く。

(ついてきたな・・・)

 気配が自分と共に動いていくのが分かった。

 Keiは、止まった。そして、大きく呼吸をし、暗闇に向かって言った。

「てめぇら、出てこいよ」

 刹那!!

ヒュンッ

 Keiの斜め前から、何かがKeiめがけて飛んできた。

 Keiはそれを僅かに横にかわしながら片手で取る。

「しゃあ!」

 次の瞬間には、木の上・・・Keiの直上から黒装束の男がナイフを振りかぶり飛んできたが、

「ふん・・・」

 体を入れ替え、その男をやり過ごし、着地したその男の顎を後ろから掴み、

「っ!!」

ズンッ

 Keiが先ほど掴んだ、「何か」をその男の背に突き立てた!!

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 男は激痛に暴れ、何かを叫んだようだが、Keiに口を塞がれているため、殆ど声を上げることなく・・・臨終した。

 その男はKeiに後ろから心臓を一突きにされたのだ。

 Keiは、返り血を浴びるもその男に興味は無かった。

「てめぇら・・・たたじゃすまねぇからな・・・」

 Keiが静かにそう言い放つと、周りから殺気が一気に膨れあがった。

(どんなことをしても・・・アイツに・・・・アイツ等に手出しはさせねぇ・・・)

 Keiの脳裏をメロディの純真な寝顔がよぎる。

 そして、ゆっくりとKeiは前に進み出た。




                                                    (つづく)


(作者より)

 やっぱり長い・・・文が。シリアスなの書こうとするとどうしても長くなってしまって。

・・・そんな泣き言はどうでもいいや。

 とりあえず次回は「バリバリ☆バイオレンスアクション!!」です。(ちょっと悠久世界にはあわない  残酷性が・・・)

じゃあ・・・。

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