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交響曲
感想
説明
BackDraft Fighters Bible Rank15 『格闘遊戯−中編−』
regret man
「悠久幻想曲 OUTDOOR-story」
-BackDraft Fighters Bible-
Rank 15「B−1の・・・」
『
格闘遊戯
B−1グランプリ
−中編−』
闘いに理由など要らない。男の意地と意地。信念と信念。互いの力をぶつけ合い・・・
勝利とは、即ち、最後に立ちし、笑う・・・
さあ、格闘家(おとこ)たちよ、己を賭け、闘いに散れ・・・。
殆どのブロックで1回戦が終わり、2回戦が始まろうとしていた。この合間に、審判の交代等僅かな調整が行われたのだが、その時、メインの司会兼実況者がこれまでの結果をまくし立て、最後に声を大にB−1グランプリのキャッチコピーを叫ぶ。それに呑まれるように、会場は更に熱くなっていった・・・
「くぅぅ!これ、コレ!!やっぱ、この熱気がなきゃあ、ダメよねー!」
パティが、拳を握り締めこの熱気を噛み締めるように言う。
「うん・・・いつもながら凄い盛り上がりようだね〜!」
トリーシャもそれなりに興奮している。
「Keiちゃ〜ん!!頑張ってねぇ〜!!」
メロディは会場が湧くたびに、Keiに声援を送り続けている。
「フフッ・・・・・」
リサは少し笑みをこぼすだけだが、心の中では楽しくてしょうがなかった。
『それでは、2回戦を始めます。選手、各位置についてください!!』
実況がコールを行うと、各コートに1回戦の勝者達が集まってきた。
そして・・・注目のAブロック。
「Aブロック2回戦、第1試合。1番『J』選手!!4番Kei=Yest選手っ!!」
J、Kei、共にバトルエリアの中央に引かれた開始線まで進む。
Jという選手は、かなり大柄かつ筋肉質な体格であった。身長は190台。赤色に近い髪の毛は、僅か1pという長さで揃えられ、ぎょろりとした目、太めの唇、そして右肩の『LOVE&KILL』という入れ墨が印象的な男だった。迷彩柄のタンクトップにピチリとしまった黒革の長ズボンをはいているため、彼の筋肉を更に強調していた。
このJとKeiの1戦は、観客達の注目の的となる試合であった。なんといっても、前回の決勝トーナメント出場者と今回の予選1位通過者がぶつかるのだから・・・。
「ねぇ、リサさん。あのKeiさんの相手の人ってかなり強いんでしょ?」
「ああ。少なくともさっきのヤツよりも倍は強いと思うね・・・でも・・・」
「でも?」
「あの『Kei=Yest』には遠く及ばないかもね・・・」
「それって、相手がベスト8だろうとKeiさんが圧倒的ってこと?」
「まあ、そういうことだね」
(へぇー、リサさんがそこまで認めてるなんて・・・Keiさんって、いろんな意味凄いかも・・・)
心の中で感心するトリーシャ。
(実際、さっきの闘いを見れば、Keiがどれくらいすごいか分かるさ。今回、出場者を見る限り、アイツ にかなうのは、『マスクマン(R)』ぐらいか・・・)
トリーシャには笑って答えつつ、リサは冷静に考えを巡らしていた。
とりあえず、今はJとの試合に期待した。
Keiを見下ろし、睨むJ。見上げるように、Jを睨むKei。さっきとは違い、かなりの闘気を秘めていた。
『始めぇっ!!』
主審の開始の合図。Jはズボンの後ろから、武器を取り出す。その体格には会わない、小型のダガーを両手に取る。Keiは拳を顎のあたりに右構え(左半身が前にくる構え)をとる。
先制は・・・Kei。左ジャブを2発。そして、顔面へ右ストレート。
ブオッ!!
Jは、上体を僅かにずらしこれをかわす。そのまま、右手のダガーを逆手から、順手に持ち替えKeiの首筋を狙う。刃が首に届くぎりぎりで、Keiはその手を左手で止める。体は右に開き、そこで「タメ」を作り、右フック。上体のみを沈め、これをやり過ごそうとするが・・・
ビタッ!
「しゃらぁっ!!」
なんと、右拳はフェイント・・・途中で止め、左拳をすぐに溜め、再びストレートを放った。
ゴオォッ!!!
「っぅ!!!」
Jは小さく呻き、ヘッドスリップで何とかこれをやり過ごしたが、反撃には移れず、数歩後退する羽目となった。
Keiは追撃はせず、またゆっくりと構えた。JはややKeiから距離をとって構えをとる。僅かな焦りと戦慄のため、呼吸を乱すJ。あれだけの動きをしながら呼吸1つ乱さないKei。
(コイツの左は・・・かなりのモノだ。パンチのテクといい、どうやらボクサータイプのファイターだな・・・)
Keiの出方を見ながら、冷静に敵の分析を始める。
(・・・それなら、アイツの左を誘い出し、一気にカウンターで倒す・・・)
打つ手
・・・
が決まったようだ。
Jが攻撃に出る。両手のダガーを逆手に持ち替えて、Keiに斬りつける。一振り一振りが少し大振りだ。これはKeiの攻撃を誘うモノだった。
(ふぅ・・ん。大振りで俺の攻撃を誘うか・・・)
Jの斬撃をかわしつつ、すぐに真意を見抜くKei。
(それなら・・・見せてやるか、最強の『とっておき』を・・・)
「しゃあっ!!」
気合いと共に繰り出された斬撃をバックステップでかわすと、Keiは左足を大きく踏み出した。
(これは・・・右蹴りっ!?)
出された反撃がパンチではなかったことに少し焦ったものの、避けたり、カウンターが困難な体勢だったので、上体をかがめ、両手でガードを取った。だが・・・
(っ!??)
僅かな腕の隙間からKeiの顔を見たJだが・・・Keiは何故か笑っていた・・・。
ズドォゥンッ!!!!!!
大砲を撃ったような轟音。そして、宙に浮くJの巨体。いや・・・浮いたと言うより、むしろ「飛んでいた」。
ズガバシャァァッ!!!!!!
なんと彼は、後ろの観客席に突っ込んだ。前の数人の観客が不幸にも巻き添えを喰う。Jはそこから起きあがる様子はない。そして、さっきの笑みはJが最後に見たKeiの最後の姿だった・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
全ての客はその信じられない光景に唖然とした。本当に会場が「凍りついた」瞬間であった。
Keiは蹴り込んだ右足をスッと引き、普通に立った姿勢に戻る。
審判達も動けずにいたのだが・・・やがて、主審がハッと気付き、
『け・・・結果2分、4番Kei=Yest選手KO勝ちぃぃっ!!!』
動揺しながらも、勝敗を告げる主審。
・・・・・・・・ぉぉぉおおおおおおぉぉぉおおおおっ!!!!!!!!!!!
その声から波紋が広がるように会場が大きな歓声に包まれた。
「ふみぃー!!Keiちゃん、すごぉーい!!」
メロディもその歓声と一緒にはしゃぎ出す。
「な・・・なに、今の・・・」
「フ、フツーのキックだよね・・・?」
「多分ね・・・・」
残りの3人・・・パティ、トリーシャ、リサはあまりの驚きのため乾いた声を出す。リサはともかく・・・パティ、トリーシャにもその実力の差をはっきり感じさせていたのだ。
(わたしもアイツの武器は、左のパンチだと思っていたんだが・・・どうやら、あの右足。『蹴り』 こそがKeiの・・・本当の武器だったんだ。しかも、パンチとは比べモノにならない威力・・・ガードをしてもあれでは全く意味がない・・・)
リサは背中に冷えた汗をかいていた。別に自分が闘うわけではないのだが、Keiの実力に恐怖を感じ取った。
(あれでもまだ本気じゃなかったとしたら・・・いや、きっとそうだろう・・・)
リサは何故か口元に笑みを浮かべた。
すでにKeiは控え室に戻ったらしく、競技場にはいなかった。
他の試合は、Keiのせいで一時中断したのだが、やがて再開された。だが、しばらく観客はそっちのけでKeiの話題に熱中していた。
3回戦からAブロック決勝までは、Keiの相手がお粗末だったので、細かい記述は避ける。試合の部分部分を見てみると・・・
対二刀流剣士。通常の倍の斬撃を難なくかわし・・・
バチッ!!ベチンッ!!!
相手の両足へローキックの2連撃。ガクンと崩れ落ち、終了。
対総合格闘系ファイター。Keiの足にタックルを決め、すくおうとしたがあっさり見破られ、
ゲシッ!!
膝を顔面に喰らい、これでKO。
対ボクサー。
・・・・・・・・・・・・・棄権。
・・・・・・・・・・・・・・etc etc・・・・・・・・・・・・・
結局、Aブロックの決勝も、左のミドルキックであっさり決め、Keiは決勝トーナメントへの出場権を獲得した。
観客はKeiのKOメイクに大きく興奮し、湧いていた。盛り上がりとしては例年の決勝トーナメント並だったと、後に主催者側は語った。そして、盛り上がっていると言えば・・・
「ふみゃあ!!Keiちゃん、すごーく強いのぉ!」
「ホント!喧嘩ばっかしてるって聞くけど、まさかこの大会でいきなり決勝にでちゃうなんて!」
「なんかボク、Keiさんの『ファン』になりそうだよ」
「フフッ・・・」
この4人もそんな観客達の一部と化してる。特に、メロディは、全くと言っていいほどこういうところに来たことがないのに、随分楽しんでいるみたいだ。
・・・・・・とは言ってもメロディはKeiが出場しているから、楽しんでいるだけだが・・・・・・
Keiの試合に比べると、他のブロックの試合はかなり退屈なモノに感じられた。
格闘技経験者ならまだしも、ここにいる観客の大半は「素人」である。素人は得てして、KOを求める。だが実際、KOを生み出すのはかなり難しく、特に時間も限られていることから、どうしてもKOする事が出来ず、判定にもつれ込む。KOがないと、見ている側としては冷めてしまう。KeiがいるAブロックでは、Keiの試合の全てがKO(一部不戦勝)だったため、観客は大いにわいた。だが、その他のブロックでは判定が殆どだったので、客の大半は決勝の方に気持ちがいってしまって、試合など見ていないに等しかった。
やがて、正午を少し過ぎたあたりに全ブロックのトーナメントが終わった。客席をまわって歩いている「売り子」から弁当を買い求める人が丁度、一番多い時間帯でもあった。決勝トーナメントが始まるまでまだかなり時間がある。会場中央では、新しい試合場の準備が行われておりその後には、幾つかのショーが行われる予定だ。
かの4人は、他の試合を見つつ、弁当を食べていたため、周りの人間よりも早く食べ終わり、パンフレットを改めて見ながら、おしゃべりをしてたりした。
「・・・なわけよ。わかったトリーシャ?」
「えぇ!ボクは違うと思うんだけどなぁ・・・」
「ふにゅ〜。メロディ、よくわかんないのー・・・」
今は、何やら「格闘技と八百長」について、パティ、トリーシャ、メロディが語っているみたいだ。
「でもさぁ、まだ始まんないの?試合・・・」
「うーん、ちょっと遅すぎるわねぇ?」
「メロディ、ねむくなっちゃったよぉ〜・・・」
トリーシャが不満を漏らし出すと、パティやメロディも同じように言った。
「もう少しだと思うんだけどね。ブーたれずに待ってな」
一応、リサが3人がおさまるよう言ってはいた。
だが、3人の退屈は治まらず、そのせいかトリーシャが突発的な提案をした。
「ねぇ、パティ、メロディ。あのさ、今から選手控え室に行かない?」
「えぇっ?!」
「あそこってさ、決勝に出る人達、凄い有名な選手がいっぱいいるんだ。でさ、もしかしたら、サインとか握手とかしてもらえるかも・・・マスクマンにも逢えるかなぁ・・・」
「た、確かに凄い人らがいるかもしれないけど、あたし達がはいれるわけないでしょ。特別なコネとか知り合いとかいなきゃ・・・」
そこまで言って、ハッと気付くパティ。
「『知り合い』なら、ちゃーんといるよ!だって決勝にでるんだから!」
トリーシャの言う『知り合い』とは、どうやらKeiのことを差しているようだ・・・・
「・・・というわけで、メロディ!ちょぉぉっとボクに着いてきて?」
「ふにぃ?トリーシャちゃん、どこいくのぉ〜?」
「?」といった表情でトリーシャを見るメロディ。
「メロディ。Keiさんに会いたくない?」
「Keiちゃんですか?メロディ、あいたいですぅ〜!!」
Keiの名を聞き、パッと顔を輝かすメロディ。
「だよねぇ、メロディ。じゃあ、Keiさんトコ行こうか?」
トリーシャはメロディに満面の微笑みを浮かべる・・・・・・その裏には、何か腹黒いモノを感じずにはいられないのだが・・・・・・
「うにゅう!はやくいこうよぉ!」
「め、メロディ、そんな焦らないで・・・」
せわしないメロディにそれを追っかけるような形になってしまったトリーシャ。
(ト、トリーシャ。なんて
あくどい
・・・・
・・・・)
パティはあっさいトリーシャの企みを読んでしまった。
メロディを連れて行けば・・・・・無下に追い返すことはできない・・・・・
(まったく・・・なんて娘なの・・・)
考えるのはそこまで。あんまり考えすぎると、置いていかれてしまう・・・
「ちょ、ちょっとぉ!あたしもいくわよぉ!!」
慌てて、パティも2人のあとを追った。
「やれやれ、困った娘たちだねぇ・・・」
「ふぅっ」と溜め息をつきながらも、微笑を浮かべるリサ。別に馬鹿にしているわけではなく、しょうがないなといった感じだ。
会場の中央では、猛獣ショーがクライマックスを見せていた。
闘いに理、無し。
あるとすれば、即ち、信念。
くじかれるとも、くじくとも、勝利こそ、全て。
強者、つどい、戯れ、この『
格闘遊戯
B−1グランプリ
』。
(つづく)
作者より
Rank15「B−1の・・・/『格闘遊戯−中編−』」お送りしました。
「細かく書いたの一試合だけ?・・・楽すんじゃねぇ!!」ってお怒りのあなた。
すいません。つい調子に乗って書いてたら、めっちゃ長くなってしまいまして・・・。
・・・といっても残りは「カス試合」なので、描写の必要なしです・・・(たぶん)
ちなみにKeiは、この『蹴り』でもって、馬車を吹き飛ばすという離れ業をやりました(!!!)
さ〜て、さて、さて(ア○フ調)、次回。僅かに油断を生むKei。そこに予想を超えた、圧倒的なパワーが襲いかかる!!
Rank15「B−1の・・・/『
格闘遊戯
B−1グランプリ
−後編−』」
では、また・・・。
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