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Little Sorceress ≪前編≫REIM[HP]


 ここは…西方海岸都市連合の中核である魔法都市フィロン。
 海岸沿いに建設されたこの街は、その二つ名が示す通りに魔法関連の施設が多いことで有名である。
 その中でも最大の規模を擁する大陸魔導師協会の本部では、ある『事件』が起きようとしていた…。

 「…はあはあ…」と荒い息使いをしている赤毛の少女−歳の頃が11,2歳−が壁に手をつきながら長い石造りの廊下を何かを
 求めるかの様に歩いていた…。
 しばらくすると…彼女の前に一つの部屋−既に扉が開け放たれていた−が現れる…。
 「…ここ…なのか…?」と熱い息とともにこう絞り出すように呟く少女…。
 そして…何かに引き寄せられるかの様に…その部屋の中へと足を踏み入れていった…。

 「見つかったのっ!?」「ううんっ、どこにもいないのっ」先程の少女と同じ年頃の女の子達数人が慌ただしく走り回っていた。
 「もうっ! どこにいっちゃったのよっ!?」と彼女達の中で一番年上−それでも13歳であるが−の少女が声を荒げる。
 すると、
 「ちょっとちょっと、そんなトコでなにしてるのよ?」と有翼人の魔術師−外見からすると20歳前の女性である−から突然、
 声をかけられる…。
 「あっ!? ティーファ導師っ!?」とびっくりして萎縮しまう少女達…。
 「あんた達さぁ、お仕事はどーしたのよ?」と恐い顔をして問うティーファ…今ここにいる少女達は『ある事情』により協会が
 メイドとして雇っている者達なのだ…。
 「…ティアちゃんていうコを探しているんですぅ…」と今にも泣き出しそうな顔を答える少女…。
 「お仕事サボってぇ?」「…う…ぐす…すみませんですぅ…」…とうとう泣き出してしまったりする…。
 それと同時に。
 「なにやってんだっ、オメーはっ!?」怒鳴り声と同時に後頭部をドツかれるティーファ。
 「いったぁ〜いっ! なにすんのよっ、バティアセンパイっ!?」と振り返るとともに抗議の声をあげる。
 「はんっ、自分のムネに聞いてみなっ!」と後ろにいたダークエルフの女性がはき捨てるように言う。
 「お仕事サボっていたから注意しただけよっ! なぁんでティーファが殴られなきゃいけないのよっ!?」
 「ほぉ〜、わざわざ泣き出すように注意したワケかい?」半眼になるバティア…。
 「うぅ…」こう言われてしまっては反論出来ないティーファ…。
 「後で謝ってとけよ。で、どーしたんだい?」と少女と同じ視線になるようにしゃがんで尋ねるバティア。
 「…う…ぐす…あのね…バティア導師…ティアちゃんていうコを探してたんですぅ…」泣きながら答える…。
 「ティア? 確か……ルミナのトコのか?」「…うん…」頷く少女達…。
 「で、そのコがどーたっていうのよ?」と殴られたところをさすりながら尋ねるティーファ。
 「…あのね…ティアちゃんね、熱が出て今日お休みしてたの…」「それで、どれくらいあったんだい?」
 「…えぐ…お医者さんが40度近くって言ってた…」「なんだとぉーーっ!!?」思わず怒鳴ってしまうバティア。
 「うわぁ〜んっ!!」その声で火のついた様にに泣き出してしまう少女達…。
 「…センパイ…女のコ、泣かしちゃ…」「オレが悪かったっ!」ジト目で睨んでくるティーファを無視してすぐさま謝る…。
 「とにかく、オレもティーファも一緒に探してやるから、泣くな、な?」となだめる…。
 「ぶ〜っ! 勝手に決めないで…」「…えぐ…ぐす…」「ティーファも一緒に探してあげるっ!」と反射的に前言を撤回して
 いたのであった…。

 「…なあ…どー思う…?」「…あれだけ探しても見つからなかったんだもん…ここだと思うんだけど? ティーファは…」
 先程のメイド達と一緒にある部屋−冒頭の赤毛の少女が入っていった−の前に立って、こんな会話するバティアとティーファ…。
 「でもなぁ…確かここって…?」「うん…センパイの言いたいコトはわかるケド…」思わず思案顔になってしまう二人…。
 「こうウダウダしてもしょーがねぇな。誰かミュリエルを呼んで来てくれないか?」と傍らに少女達に呼び掛ける。
 「え? 大長老さまを…ですか…?」「うん、そーよ。早く行った、行った」と急かすティーファ…。
 「は、はい」と返事を残して少女が一人、ぱたぱたと走り出す…。
 しばらくすると…一見、20歳後半で眼鏡をかけた蒼いロングヘアの女性と一緒に戻って来る…。
 「あ、ミュリエルセンパイ、こっちです」と手を振るティーファ。
 「一体どうしたのですか? バティアさん、ティーファさん?」と尋ねるミュリエル…。
 この問いに…黙ってさっきの部屋−彼らが来た時から扉が開け放たれている−を指差す二人…。
 「…これは…一体…?」…目を見開くミュリエル…。
 バティアとティーファは彼女に今まであった事をかいつまんで話す…。
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 「…というワケなんだ…ちょっと調べて来て欲しいのさ」とバティア…。
 「うん、この部屋に入れるのってミュリエルセンパイだけだもん」と続けるティーファ。
 そう、この部屋は『開かずの間』と言われ…協会の長で大長老たるミュリエル・レティーシャしか入れないのだ…。
 …いや、彼女の他にも…何者かに入室資格を与えらた者が入れるのだが…。
 「…そうね…分かったわ…」と言うや否や虚空から一本の杖−『はじまりの杖』と呼ばれている−を取り出す。
 「それじゃあ、ちょっと待って下さい…」と言って部屋の中に足を踏み入れる…。
 (どう思います? デイル先輩?)部屋に入るとともにここにはいない誰かと念話をするミュリエル。
 (フツーに考えたら『答え』は一つじゃないかね、ミュリエルくん?)という答えが返った来た…。
 (…やっぱり…そうですか…)と答える彼女の目には…赤毛の少女が一本の杖を握ったまま床に倒れているのが入っていた…。

 その日の夜、協会の会議室では…。
 「…という訳です…何かご質問は?」と議長役のミュリエルが今日あった事を長老達に説明しているところであった…。
 「事情はよくわかったけど…それでどうするの?」とハーフキャットの女性が問い掛けて来た。
 「ところで…その子の魔法技量は…?」「無いに等しいと言っても過言ではないでしょう」眼鏡をかけたライトブルーの髪の
 女性の問いにこう答えるミュリエル。
 「それでしたら、先に魔術師としての修業が優先されるのではなくて?」と見事な金髪の女性がこう口を開く。
 「でも、ダナティアさん、それ誰にお願いするの?」とハーフキャットの女性。
 「当然、あなたではなくて? ルミナ?」とダナティアと呼ばれた女性が答える。
 「え? どうして?」「あら、その子はあなたのところのメイドではなくて?」とルミナ−ハーフキャットの女性−に答える。
 「そうですけど…」「あの大長老。『闇の賢者』のご意見はどうなのですか?」口篭もるルミナをかばうかのように尋ねる
 ライトブルーの髪の女性。
 「ええ、尋ねてみたところ…『理の導師』にお願いするのが適当との答えでした、ルフィミアさん」と答えるミュリエル。
 「『理の導師』…ですの…?」と念押しするように尋ねるダナティア…。
 「確か…その人の担当導師は…」「うん、私とティーファさんだったよ、ルフィミアさん」と答えるルミナ。
 「それなら適任ですね」と納得するルフィミア−ライトブルーの髪の女性のことである−。
 「ところで大長老。くだんの娘はどうなさっているのかしら?」とダナティア。
 「私の部屋で寝てるよ…まだ熱が下がらなくて…」と耳をぺたんと寝かせて答えるルミナ…どうやら心配らしい…。
 そんな彼女を気遣うかの様に…。
 「ルミナさん、様子を見に行って来てくれません?」と口を開くルフィミア。
 「え? は、はい」と言ってぱたぱたと会議室を出るルミナ…。
 「…とにかく、その女の子が快復してからのお話ですね…」とその場を締めくくったミュリエル大長老であった…。
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