Little Sorceress ≪後編≫REIM[HP]
大陸魔導師協会本部で深刻な会話を交えてから…1週間後のジョートショップでは…。
「痛ちち…」「あ、ごめんなさい」とシーラに薬を塗ってもらっているフィムがうめき声を出す…。
「しっかし、見事な引掻き傷よねぇ」と彼の頬に出来た3筋の引掻き傷を見て呆れた様に感心するパティ…最もそう言う彼女の
腕にも擦り傷が出来ていたりする…。
…昨日、9月18日はティルトの誕生日だったので、お祭り好きないつもの面々が『さくら亭』で彼のバースディ・パーティを
開いたのだが…。
「まあ、あそこであの3人が暴れるとは思わなかったしな…」と左頬に湿布を貼ったエルが呟く…。
この時、何が起きたのかというと…。
ティルトの隣に誰が座るのかというくだらない理由(byリサ)でセリーヌ、トリーシャ、クレアの3人がいつものように
ケンカをおっぱじめたのだ。
「だけどなぁ…巻き込まれる身にもなって欲しいぜ…」これはアレフ…ちなみに彼の頭には包帯が巻かれていたりする…。
この時に起こったことを順序よく説明すると…。
1.セリーヌを狙ったトリーシャチョップがメロディに誤爆(セリーヌが運悪く(運良く?)いきなり転んだので…)。
2.同じくセリーヌ目掛けて放ったクレアの蹴りが勢い余ってトリーシャにヒット。
3.怒ったメロディがトリーシャを仕返ししようとして…誤ってシーラを引掻こうする(トリーシャが転んでいたので…)。
4.シーラをかばった為、代わりに顔を引掻かれるフィム…。
5.一方、蹴られたトリーシャ、クレア目掛けて報復のチョップを放つが妹の盾にされたアルベルトに命中…。
6.上司の娘を殴れないので…フィムに八当たりしようとして、シーラに椅子を投げつけられるアルベルト…。
7.吹っ飛ばされたアルベルトがエルの顔面に肘鉄を入れる…。
8.怒ったエルが近くにあった椅子を投げつけるが…外れてセリーヌの方へ…。
9.止めに入っていたパティごと、椅子を突き落とすセリーヌ…(これによって気絶するパティ…)。
10.トリーシャ、再度セリーヌを狙ったが…アレフに誤爆(これで昏倒するアレフ…)。
11.クレア、セリーヌを再び蹴り倒そうとして…ティルトの顔面にヒット…(アレフ同様、昏倒するティルト…)。
12.それを見たセリーヌが怒って、近くにいたマリアごとクレアを壁に叩き付ける…(クレアだけ気絶…)。
13.怒り狂って魔法を使おうとするマリアを見て…ナッツが慌てて魔力全開の≪スリープ≫を放つ…。
14.その場にいた面々が全員(術をかけた本人も含めて)寝てしまった為、ケンカ終了…(ちなみに目覚めたのは翌朝…)。
「それにしても…何とかならんのか、あいつらは…?」と引掻き傷の手当てが終わったフィムがこうもらす…。
「なんないんじゃないの…?」諦めの境地で答えるパティ…。
「…あのな…少しは考えろよ…」ちょこっと剣呑な声でフィム…。
からんからん♪
「おはようございます」とジョートショップに入って来るミュン…ナッツも一緒である…。
「ん? そっちはもういいのか?」とナッツに問い掛けるエル。
「ああ、一段落はついたよ…一人除くけどね」こう答えるナッツ…。
「誰だよ? その一人は?」「ティルト。ディアーナに手当てしてもらって全治9日だってさ」とフィムの問いに答える。
「なんせ、ティルトの上に器具棚倒したからなぁ…」と続けるナッツ…って、おい、ちょっと待て…。
「なあ…それは…悪化したと言わんか…?」「そうとも言うな」「なにやってのかなぁ…あのコは」「いつものコトだろ」
順にアレフ、ナッツ、パティ、エルの会話…。
そんな会話していると…。
「ごめんっ」という声が扉越しに聞こえて来た。
「ねえ、扉の前で誰かが謝っているわよ?」「…新手のギャグのつもりか…? パティ?」と呆れた様に突っ込むアレフ…。
「…パティちゃんって…そういうキャラだったの…?」とシーラにまで突っ込みを入れられてしまう…。
「な、なによっ!? ちょっとお茶目しただけじゃないのっ!!」と文句を言うパティ。
「絶対に似合わん」これはエル。
「…えるぅ〜、『さくら亭』のツケ、今すぐ全部払って…」怒りを押し殺した声で宣告するパティ…。
「………すまん…もう言わん…」と降参するエル…結構効いたらしい…。
一方…更に扉越しから、
「…ちょっとぉ…」と今度は困った声が聞こえて来た…。
「すいませんっ、今開けます〜」と扉を開けるアレフ…。
そこには…有翼人の女性と赤毛の少女がちょっと困った表情で立っていた…。
「お嬢さん、ご一緒にお茶でどうですか?」…おい、こら…いきなり口説くんじゃねーよ、アレフ…。
一方、有翼人の女性の姿を視認するや否や。
「ティーファ導師っ!!? 何故ここにっ!!?」と驚いた声をあげるナッツ…。
「ちょっと待てよっ、知合いかよっ!?」その声で今度はアレフが驚く。
「ああ…」「だったらさぁ、紹介…」「いいかげんにしなさいよっ!!」
ごすっ!
「サンキュー、パティ…ここで話しすんのもなんだし、取りあえず、中にどーぞ」
パティちゃんにド突き倒されたアレフくんを見て、あっけにとられている来客に向かい、営業スマイルでこう切り出す
フィムくんであった…。
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「それでティーファ導師、本題に入りますけど…どうしてエンフィールドに?」…自己紹介も終え、人心地ついたところで
こう切り出すナッツ…。
ちなみに…外見20歳前に見えるティーファの実年齢が200歳以上と聞いた時のアレフくんの顔は見物であった(笑)。
「ちょっとちょっと、ティーファよりナッツの方が偉いんだから、敬語で呼ぶのはやめてよね」とティーファ。
「え? ナッツさんの方が偉いって…?」と疑問符を浮かべるシーラ…。
「えと…詳しいことは私もよくわからないんだけど…」と彼女の疑問に答えるミュン…。
要約すると…。
1年前に魔法都市フィロンにある大陸魔導師協会の本部で導師としての修業をしていた時の担当導師がティーファ・クローゼン
導師とハーフキャットの女性魔術師−今は協会の長老の一人である−であったのだ。
その上、彼が導師教程を終える直前に『ある事情』によって、ティーファより階級が上位になって教程を終えているのだ。
「それで…その『事情』ってヤツはなんなんだ…?」と口をはさむエル…。
「それはね、このコにも関わるコトなんだけど…」と赤毛の少女−名前はフロスティア・ルーシェンである−の方に視線を
向けるティーファ…。
「まさかっ!?」「うん、このコ、『光の王者』に導かれているのよ」と答えるティーファ。
「なあ…もうちょっと詳しく教えてくれないか?」と二人に問い掛けるアレフ…。
「わかった…これを見てくれ…」と言って、虚空から1本の杖を取り出すナッツ…。
「…なんだよ…それは…?」「協会内では『導きの杖』と呼んでいる」とフィムの問いに答える。
「それがどーしたっていうのよ?」と怪訝な顔でパティ。
「まあ、ハタから見るとドコにでもある杖にしか見えないけど…」
(どこにでもあるとは失礼じゃないですかっ!)という抗議の声がこの場にいる面々の頭の中に響く。
「えっ!? 今のなにっ!?」と驚いてフィムにしがみつくシーラ。
「そう怒るな。今のでわかったと思うけど、コイツは意思を持っているんだ」と説明するナッツ。
「それでね、こういう杖がコレも含めて全部で24本存在しているの」これはティーファ…。
(…『コレ』で悪かったですね…)と静かな怒りの声が聞こえて来たりする…。
「24本の『導きの杖』にはそれぞれ名前があってね…オレが持っているのは『理の導師』エイザードと呼ばれている」
あとは長くなりそうなので要約すると…。
24本の『導きの杖』達は、自らの持ち主として相応しい者を自分で見つけるのだ…。
そうして『導きの杖』のマスターとなった者を協会では『導かれし者』と呼び、彼らに『導師長』の階級を与えているのだ。
「…大体のコトはわかったけど…このコがここにいる理由は…まだ聞いていないぞ…」とフィム…。
「ティア…あ、このコの愛称のことだけど…ちょっとワケありなの…」これはティーファ。
「ワケあり…ですか…?」と先を促すナッツ…。
(彼女、『光の王者』レイアースに導かれていますけど…魔法技術がまったくありませんね…)代わりに答えるエイザード。
「ちょ、ちょっと待って下さいっ!? それじゃあ…」「うん、ティアに魔法を教えてあげてね♪」とティーファ。
「なぜ、オレですかっ!?」「だぁってぇ、『闇の賢者』がそう言ったんだもん☆」とブリっ子して答える…。
「………あんのヤロー……」とうめくナッツ…。
「…あの…ナッツ導師長…駄目ですか…?」とずっと口を閉ざしていたティアが遠慮がちに尋ねる…。
「…はあ…方法は任せてもらえますよね?」「もちろん任せるけど…」「で、どーするんだ? なにかいい手でもあるのか?」
順にナッツ、ティーファ、フィムである。
「そうだな…学園に魔法学科ってあったよな?」「…なるほどな…初級程度なら十分教えてもらえるな」と納得するアレフ…。
「というワケですから…学費の方、よろしく♪」と恩師に向かってこう切り出すナッツ。
「へ? それ、ティーファが交渉すんの?」きょとんした顔する…。
「当たり前じゃないですか。がんばって大嫌いな書類を山のように書いて下さいね♪」「うそぉぉぉぉっ!!?」
…協会一の書類嫌い−見るのも嫌い−のティーファのあげた悲鳴で…一同−ティアも含め−は爆笑した。
翌日、ナッツはティアをエンフィールド学園に連れていき、入学手続きを済ませた…。
一方…。
「うぅ…ナッツぅ〜、覚えてなさいよぉ〜」
…協会に戻ったティーファは、山のようにある学費支給申請の書類を泣きながら書いていたという…。
≪Fin≫
[あとがき]
フィム「今回は…えらく固い話だったな…」
REIM「ええ、まあ…でも一つだけ判りましたよ…」
ナッツ「何がだ?」
REIM「…どうも私は…シリアス話を書くのが苦手ということを…」
フィム「…書く前に気付けよ…(呆)」
REIM「あう…(半泣)」
ナッツ「で、今回の話はどういうコンセプトなんだ?」
REIM「そうですね…まず一つは『しすたーず・ぱにっく』でほんの数行だけ出てた…」
ナッツ「エイザードのことか?」
REIM「ええ、そうです。あと一つはティアさんを登場させることがメインになってます」
フィム「しかし…こんなにオリキャラ出して、大丈夫かよ?」
REIM「なんとかなりますよ…多分…」
フィム&ナッツ「…多分…ね…(ジト目&嘆息)」
うぅ…二人の視線が…とても痛い…。