−Fanfare−ファースト・ミッションREIM[HP]
時は進み…4月14日、HR前の高等部2Cの教室では。
「あっと、そう言えば、今日ってさミッション授業のある日じゃなかったっけ?」とシェールが近くにいたヒース色の髪の
少女−ティセのこと−に話し掛ける…が。
「ほえ〜? そうなんですかぁ?」「がくっ…ティセちゃぁん〜」きょとんした顔でこう答えるティセとその答えを聞いて
情けない声を出すシェール…。
「あや? シェールさん、ティセ、変なこと言いました?」……何故、彼女が問題なく高1から高2に進級出来たかは…永遠の
謎であろう…。
「…もういいよ…とにかく遅れないようにしないとね…」「はいですぅ♪」
この会話の直後にHR開始の予鈴が鳴り渡った…。
ところ代わって、HR中の高等部2Bでは…。
フィム先生が教壇に立って−彼はこのクラスの担任である−出欠をとっていた…。
その最中…。
からら……
と控えめな音−この時点では誰も気付いてない−でドアが開くとともに…おっきな黄色のリボンを付けた少女がこっそりと…
それも床に這いつく張るように入って来た…。
そして…担任に気付かれないように−まわりのクラスメイト達は気付いていたが…呆れて黙っていた…−自分の席に向かって
行ったが、あと、もう一歩ってところで…。
「よう、トリーシャ。今日も遅刻かよ?」…その努力は、このビセット−席は彼女の隣−の一言で無に帰した…。
途端にクラス中−フィム先生も含む−の注目の的となるトリーシャ…。
「あは…あははは…おはよう、先生…」…取りあえず…バツの悪そうな顔で挨拶する…。
しかし、その内心は…(ビセットくぅん〜、あとで覚えてろよぉ〜)と女のコらしからぬコトを思っていたりする…。
「おはよう、トリーシャくん…ところで今日は何の日が知ってるかな…?」…口の端が微かに引き攣っていたりする…。
「え〜とぉ、確か…ミッション授業のある日…だよね…?」…ジト汗を2筋ほど垂らしながら答えるトリーシャ…。
「そのコト知ってて先生は嬉しいよ…でだ、トリーシャ・フォスターくん…」「はい…」…いやぁな予感がするトリーシャ…。
「そのまま廊下に直行っ!!」と言って、教室のドアをビシっと指差す担任の姿があったという…。
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その日の夕方…ミッション・ルームでは…。
「…ミッション・データの吸上げ…完了と…」と呟きながら端末からDVD−RAMディスクを取り出す…。
「新米、データの吸上げは終わったか?」「ええ終わりましたよ、ランディ先生」と答えるフィム先生。
「明日の朝イチに見る。今夜中に解析しておけ」と言い残して帰宅準備をするランディ先生。
「朝イチですね…コーヒーがたくさん要りそうだな…と…」とさっきのディスクをパソコンにセットしながら呟くフィム…。
しかし…。
「おい、新米っ! そんなもんは家でやって来いっ!」とランディ先生に怒鳴られる…。
「はあっ!?」と不思議そうな声をあげる…。
「聞こえなかったのかっ!?」「聞こえましたけど…」差し当たり、こう返事する…。
「聞こえたんならさっさと帰れっ」「なんなんだ…?」…疑問符を山のように浮かべながらもランディ先生に言われた通りに
帰宅するフィム先生であった…。
夜、シェフィールド家では…。
「先に帰っててもよかったのに…」と自室でティーカップを口に運びながら従妹にこう話し掛けるフィム…。
「うん…でもぉ…」「でも?」「ううん、なんでもないわ…」と二人で食後のお茶をするフィムとシーラ…。
…実は従兄と一緒に帰りたかったので…彼が来るまで玄関でぼぉっと待っていたりする…。
「あ、そうそう、お茶が終わったらお勉強見てくれる?」とお願いするシーラ。
「あっと、悪いんだけど、これから明日の朝に出さなきゃならない書類を作らなきゃならないんだ…また今度でいい?」
という答えが返って来る…。
「そう…うん、わかったわ。あ、何か私に出来ること、ないかな?」と尋ねる…。
「そうだな…それじゃあ、コーヒーを淹れてくれないかな? それもたくさん」「え…?」と紅茶党の従兄の口から出た台詞に
目を丸くするシーラちゃんであった…。
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「さてと…」と呟くとともにパソコンにDVD−RAMをセットし、解析プログラムを実行するフィム。
今、彼は今日行われたミッション授業の解析を行っているのだ…当然の事ながらシーラは自分の部屋に戻っている…。
さて、今ディスプレイには英文で、
1.カッセル大往生! (ミッション達成者:リーゼ・アーキス)
2.大江戸宿場争い (ミッション達成者:ルー・シモンズ,エル・ルイス)
3.白昼の決闘 (ミッション達成者:ローラ・ニューフィールド,クリストファー・クロス)
4.父のノート (ミッション達成者:マリア・ショート)
5.MAD4出動せよ! (ミッション達成者:ディアーナ・レイニー)
6.眠れる財宝 (ミッション達成者:ルシード・アトレー,メルフィ・ナーヴ)
と表示されている…。
一番目の『カッセル大往生!』をマウスでクリックして、ミッション経過をチェックした途端、
「…リーゼくんに…こんな一面があったとは…」と呟いて頭を抱えるフィム…。
何しろ…ミッション開始と同時にリオにバトルを仕掛け、パティを返り討ちにし、進路妨害をしていたシーラを排除…。
その結果、残りの3人は完全に出遅れてしまい…一方的にリーゼがミッション・クリアしてしまう有様…。
更に…『父のノート』と『MAD4出動せよ!』に至っては…他の面々が潰し合いしているのをもっけの幸いばかりにそれぞれ
マリアとディアーナの二人がタナボタでミッション・クリアしているし…。
唯一まともだったのは、役割分担した上にきちんと戦術を立てていた『眠れる財宝』のみ…。
「………はあ…こんなコトが続いていたら…実生活でもいがみ合いがおきかねないぞ…」と解析結果を報告書にまとめた後、
溜息まじりにもらすフィム…。
…しばし思案気な顔していたが…何かを思いついたらしく、彼の指がキーボードの上を素早く踊っていた…。