ティアがエンフィールドに来てから…3日目の朝…。
「……う、ううん……ここは……?」とカーテンの隙間から漏れる朝日で目を覚まし、ベットから身を起こすティア…。
「……そっか…今、私、ナッツ導師長の家にいるんだ…」…一瞬、自分が何処にいるのか理解出来なかったのか、こう呟く…。
何しろ、昨日は…学園への入学手続きに、お店の手伝いに来ていたローラの『恋愛談義』攻撃、更に噂を聞きつけたトリーシャの
『ボクに教えて』攻撃を受ける等、一日中慌ただしかったのだ…ベッドに入ったと同時に眠りに落ちたくらいに…。
だから、欲を言うともう少し寝ていたいのだが…いくらなんでも居候の身で朝寝するのも失礼と思い、ベッドから抜け出して
普段着に着替えるティアである…。
「おはよう御座います」と階下へと下りたティアは、ダイニングキッチンで朝食の仕度をしていたミュンに挨拶をする。
「あら? おはよう。もう少し寝ててもよかったのに」顔だけティアの方に向けてこう挨拶を返すミュン。
「ですが…」「まだ子供なんだから、そんなに気をつかわなくてもいいのよ」とティアの反論を封じるかの様にこう口を開く。
そんな会話をしている時に。
「おはよう…ミュン、ティア…」と眠たそうな声で挨拶しながらダイニングに入って来るナッツ…。
事実…昨夜は遅くまで魔術書を読んでいた為、少々寝不足気味なのだ…。
「あ、おはよう」と挨拶するミュン…つい最近までは、学生時代のクセで『おはようございます』と挨拶していたのだが、
流石に新婚生活にも慣れてきたのか、今では『おはよう』となっている…。
「おはよう御座います、導師長」これはティア。
「おはよう…それよりもさ、『導師長』ってのはやめて欲しいなぁ…ティアだって、その『導師長』なんだし」とナッツ。
「そう言われましても…」「別に呼び捨てにしろとは言わないさ。出来れば『さん』付けとかに出来ないかな?」
「はい…次からはそうします」と答えるティア。
「そうかしこまるなって。オレは命令してるワケじゃないから」これはナッツ。
「そうですね…でも学園の先生に対しては、ちゃんと『先生』と言わなきゃダメよ」と皿にスープを盛り付けながら、こう
フォローするミュン。
「は、はい」「それじゃあ、朝食にしましょうか?」というミュンの台詞で…3人になったティアンズ家の朝食が始まった…。
「ナッツ〜、ミュン〜、二人ともいるぅ〜?」と開店準備をしていた3人−ティアは今日だけ午後からの登校になっている−に
パティがこう呼び掛ける。
「あ、おはよう、パティさん。どうしたんですか、こんな朝早くに?」とミュン…今の時刻は8時をちょっとまわったトコ…。
「ん、実はさぁ、今日の夕方、ティアの歓迎会しようと思ってさ…それでその確認」と答えるパティ。
「え? ええーっ!?」びっくりするティア。
「おいおい、驚くようなことじゃないだろう?」苦笑するナッツ。
「そ、それはそうですが…」と口篭もる様にティア…。
「それにしばらくはこの街にいるんでしょ? だったらね、いろんな人と知合いになっておいた方がいいってば」とパティ。
「で、ですが…私ごときに…」「なぁに遠慮してるのかなぁ〜、このコは? 子供なら子供らしく素直になりなさいって」
と諭す様に口を開くパティ。
「はあ…」と溜息まじりにこう呟くティア…。
「それはそーと…歓迎会すんのはいいけど、この前みたいなのはゴメンこうむりたいぞ」とパティに向かい、こう言うナッツ。
「あ、それは大丈夫よ。ティルトのヤツ、まだ入院してっから」「まだ入院って…もう自宅療養中じゃ…」
「…そう言えば…誰が看護するかで揉めた挙句…瀕死の重傷で医院に送り返されたんだっけ…?」と思い出すかの様にナッツ…。
「ん、それもあるけど…その後、頭に分厚い医学書だってさ」………ディアーナちゃん……キミってコは…。
「………ドクターに断って、≪ウンディーネ・ティアズ≫かけた方がいいな…」…微かに頭痛がして来たナッツ…。
「???」…一方、何も知らないティアは…顔中、?マークを浮かべながら小首を傾げていた…。
そして…その日の夕方、『さくら亭』では…。
「…ずいぶんと集まったなぁ…」と『さくら亭』の店内を見て、こう呟くフィム。
「ああ、そうだな」と相づちを打つアレフ。
「ま、みんな、お祭り好きよねぇ〜」笑いながらパティ…それはそうと…人事のよーに言ってない?
「そーゆー、アンタもな」髪をかきあげて、ぽつりと呟くエル。
「うぐっ…あ、あたしはねぇ、みんなが歓迎会したいってゆーからっ!」と慌てふためく…。
「じゃあパティちゃん、さっきの『うぐっ』ってぇ〜、なぁんなのぉ〜?」とワザとらしく突っ込みを入れるローラ…。
「そ、それはぁ…」「あ、ひょっとして図星なんじゃあ…?」「ぐさぁ」というシーラの一言で更なる追い討ちをくらう…。
「さてと…これで全員かい?」と落ち込んだパティの代わりに出席者を確認するリサ。
「え〜と…リオくんが来てないよ?」「リオなら遅れて来るってよ」とトリーシャに答えるかの様にピート。
「え〜っ、リオくんがいないのぉ〜。なぁんかつまんなぁい〜」…これは誰の台詞か……ここで言う必要もないだろう…。
ちょっと補足しておくと…隣に座っているクリスにべったりとくっついていたりする(笑)。
「……いい加減にしてもらえません…? クリスさん、凄く嫌がってるじゃないですか…?」
…ちょっことだけ剣呑な響きがある声で瑞穂……その目は…ちょっと恐い……もろに吊り上がっていたりする…。
「え〜、べっつにいいじゃないのぉ、これだからお子様は…」ワザとらしく嘆息する由羅…最も瑞穂だって負けちゃいない…。
「……色ぼけオバン……」ぽそ…。
「あんですってぇーーーっ!!?」…結局…どっちが…『お子様』なんだか…(溜息)。
この二人の近くにいたセリーヌが…。
「瑞穂さん、『オバン』なんて言ってはいけませんよ。せめて『おばさん』とか『おばさま』とか……」
…ねえ…セリーヌちゃん…自分で何言ってるのか判ってる…?
「ちょぉっとぉっ! かえって頭にくる天然ボケフォローはやめてってばぁ〜〜っ!!」と悲鳴をあげる由羅…当然である…。
一方…。
「ささ、クリスさん、今のうちに…」と由羅とは別なテーブルにクリスを連れてく瑞穂であった……が…。
「今度はあんた達なのぉーーーっ!!?」「きゃんっ!!?」「いったぁ〜いっ!!」
「どうして、僕も殴られなきゃならないんですかっ!!?」「あのぉ〜、すごく痛いのですけどぉ〜?」
…もちろんバレて、由羅と大ゲンカとなり……何の罪もないクリスやセリーヌともども……パティのフライパンで速やかに
仲裁(『制裁』とも言う…)されたという…。
「…さてと…まあ、ほんの些細なドタバタがあったけど…」「……ほんっとに些細なドタバタって言えるのか…?」
とナッツの台詞に突っ込むフィム…。
「いちいちに気にしてられっか…んなもん…」…この面々に限れば…正論である…。
「ということでだ、これよりティアの歓迎会を開きます…アレフ、乾杯の音頭をよろしく」とアレフにふるナッツ。
「ああ…それでは、ティアがここエンフィールドの住人になったコトを祝して…かんぱ〜い」『かんぱぁいっ!』
を合図にあちこちでグラスが触れ合う音が鳴り渡る…。
「まずは…ティアちゃん、みんなのこと知らないと思うから…自己紹介からですね?」と口を開くミュン。
「そうだな…フィムやアレフ、パティにシーラ、エルの5人は最初に顔を合わせているから知ってると思うけど…」とナッツ。
「ねえねえ、あたしのコト、忘れてない?」「そーだよ。それとボクのコトも忘れてるよ」
「えと…ローラさんにトリーシャさん…だね?」確認するかの様にティア…。
「はい、よく出来ましたぁ♪」これはトリーシャ。
「まあ、トリーシャもティアと同じ様に学園に通っているからな…先にシェリル達学生組からやってもらうか…」
とナッツが言うや否や、
「はいはい、まずはマリアからね☆」と元気よく−碧色の瞳が生き生きとしている−手を上げるマリア。
「え〜とね、名前はね…」「マリアさんだね?」「へ? なんでマリアの名前知ってんの?」と小首を傾げるマリア…。
「おまえなぁ…自分で『マリア』って言ってんだろうが?」と呆れかえるエル…。
「てへ☆ それもそっかぁ……って、なぁんでエルに言われなきゃなんないのよっ!?」とエルにくってかかるマリア。
「…次、どーぞ…」二人を無視して先に進める事にするフィム…。
「あ、はい。私はシェリル・クリスティアです…一応、学園の最上級生になります」と自己紹介するシェリル。
「シェリルさん…『一応』って何なの…?」呆れる瑞穂…。
「え〜と…?」「あ、私は広瀬瑞穂といいます。瑞穂でかまいませんよ」と自己紹介をする。
「あとは…クリスだけだな………フィム、ちょっといいか?」「ん? どーしたんだ、急に?」
とナッツに問いかけられ、訝しがるフィム…。
「いや、たいしたコトじゃないんだが…クリスの本名、なんだっけ?」と尋ねるや否や。
どがったぁんっ!(×2)
と椅子ごと後ろにひっくり返るフィムとアレフ…。
「お、おいっ!? 新手のジョーダンかっ!?」驚くアルベルト。確かにそりゃそーだわ…。
「ナッツおにいちゃんってば、ひっどぉいっ!」これはローラ。
続けて、「由羅さんはとーぜん知ってるよね?」と由羅に話を振る…が。
「え〜とぉ………なんだっけ…?」というお答えが返って来た…。
ずがったぁんっ!
あ? 今度は…ローラちゃんがひっくり返った…ちなみにクリスはというと…あまりの『仕打ち』により、うるうると
泣いていたりする…。
「もう…お二人ともひどいですよ…クリスさんの本名はクリストファー・クロスですよ」と本人に代わり答える瑞穂…。
「……なぁんでぇ、あなたが知ってるのかしらぁ〜?」
…こわぁい目で瑞穂を睨む由羅だが……ただそれだけだった…何故なら…。
「…ここで暴れたら…どーなるかわかってるわね?」と更に恐い目で彼女達を睨むパティの姿が目に入ったからである(笑)。
「…やれやれ…結局はこーなるんじゃないか…」座り直すともに嘆息するフィム…。
「…いちいち溜息をつくようなコトかよ…?」と突っ込むアルベルト…。
「それはともかく…ナッツ様も由羅様もクリス様に失礼なことをしておりますわ」『…………』
というクレアの指摘に反論出来ない二人…。
そう指摘したクレアの方はというと…何か思いついたらしく、
「ところで…フィム様のご本名は何とおっしゃるのですか?」とちょっとした悪戯を口にする………だが…。
「クレアさん、さっきの質問、もう一度お願い出来ます?」「ほおひわへはりわへん…(通訳:申し訳ありません…)」
速攻で…ちょっぴし怒りモードに入っちゃったシーラちゃんに頬を引っ張られていたりする…。
ちなみに…。
(…言わなくてよかったぁ…)と同じような悪戯を考えていたマリア、トリーシャ、ローラの3人が心の中で安堵の溜息を
もらしていた…。
それから…1時間半後のこと…。
「…遅くなっちゃった…みんな、怒ってるかな…?」と急ぎ足で『さくら亭』に向かうリオ…。
彼が遅れた理由は…図書館の蔵書整理を手伝っていた為である。
ちなみに…遅れて来る人がヴァネッサとディアーナ、美穂で、来れない人はイヴとルー、そしてティルトである…。
なお、ティルトについては…これ以上、休ませるワケにはいかなくなった為、団長の命を受けた美穂の神聖魔法により無理矢理、
退院してもらっている…。
(でも…今度、新しく来た人って、どんな人だろう…?)…一応、トリーシャやローラから聞いてはいるが。
「優しい人だったらいいなぁ」とかやってるうちに目的地に着いたようだ…。
カララン…♪
「遅くなって、ごめんなさいっ」と言って中に入るリオ…。
「きゃい〜ん♪ 早くこっち…」と真っ先に彼の姿に気付いた由羅を無視するかのように、
「リオ、ここ空いてるぞ」「あ、はい」と声をかけるナッツと彼がいるテーブルの方に行ってしまうリオ。
「………」…恨めしそうにジト目で睨む由羅…。
そんな彼女を綺麗さっぱり無視して、
「っと、ティアの隣に座ってもらうか…」「…ここでいいの…?」「ああ」と会話するナッツとリオ…ハタから見ると仲の
いい兄弟に見える…事実、手が空いてる時は『さくら亭』でリオの勉強を見てやってるし…。
「…えと…こんばんは…」とリオが自分の隣に座ると控えめな声で挨拶するティア…。
「………」「…あの…?」…急に黙ってしまったリオに訝しがる…。
「あ? こ、こんばんはっ。え〜とぉ…ティアさんで…いいんですよね…?」「はい」と答えるティア。
「おっとそーだった…リオ、彼女のフルネームはフロスティア・ルーシェンだ…魔法の勉強でこの街に来ているんだ」とナッツ。
「そ、そうだったんですか…ぼ、ボクは、リオ…リオ・バクスターって言います…」と自己紹介をする…。
「リオさんですか…いい名前ですね…」と微笑むティア…。
彼女のこの笑顔を見た瞬間、(か、かわいいっ)と思うリオ…。
そんなやり取りをしている彼らを見て、
「そーいや、リオとティアの歳って、そんなに離れていないんじゃねーか?」と問いかけるアルベルト。
「そーだな…確か…一つ違いだったと思うが…」と答えるナッツ。
「で、どっちが年上なんだ?」「多分、リオじゃねーのか?」「ああ、ティアが12だから間違いないだろうね」
とアレフの問いに答えるアルベルトとナッツの二人である。
更に。
「…なんか、リオくんとティアちゃん…すごくいい雰囲気…」と羨ましそうにローラ…。
「あら? もしかしてローラちゃん、焼きもち妬いてるの?」これはシーラ。
「ちちち違うわよぉ〜、や、やだなぁ〜、ヘンなコト言わないでよぉ、シーラちゃんってばっ」慌てふためいて否定する。
「…その割にはずいぶん慌てているけど? ホントは妬いているんじゃないのか?」とフィム。
「そうね、ローラちゃん、リオくんと仲が良かったしね」と恋人の指摘に同意するシーラ。
「だぁかぁらぁっ、違うって言ってるでしょぉ〜〜っ!!」と力いっぱい否定の声をあげるローラちゃんであった…。
一方…由羅はというと…。
(尻尾ムッカ〜〜〜ッ!!)とメルトダウン寸前になっていた…。
「はい、クリスさん、これ美味しいですよ」「あ、あのっ、瑞穂さん?」…マジ切れしかかってる由羅がクリスのコトを
忘れてるのをもっけの幸いとばかりに…ミニサンドを食べさせてあげようとする瑞穂…。
でも…やっぱり考えが甘かったみたいで…。
「くぉらぉ〜っ!! ぬぁわぁにぃしてんのよぉ〜〜っ!!?」……景気よくメルトダウンする由羅…。
…そして………。
…翌日、図書館では…。
「…昨日、一体何があったのかしら…?」「…マリアに聞かないで…お願いだから…」というイヴの質問に借りてた本を返しに
来たマリアが哀願する様に答える……その彼女の顔には…見事なアザがある…。
「あの、シーラさん…?」「…私も昨日のことは…ちょっと思い出したくないの…」同じ様に本を返しに来ていたシーラにも
尋ねるが…こんな答えが返って来ただけだった…ちなみに彼女の左足首の辺りには…包帯が巻かれている…。
「…フィムさん…?」「…イヴ…頼むから何も聞かないでくれ…」…シーラに付き合って一緒に図書館に来ていたフィムが
こう答える…そういう彼も右腕を吊っていたという…。
一方…。
「…………一度、厄払いしてもらって来い……」と呆れた口調で宣告するトーヤ…。
彼の目の前のベッドには…『さくら亭』であった大乱闘の鎮圧(最早、出動理由が『仲裁』ではない)に出動したが…その時に
誤爆のバーゲンセールをくらい…ミイラ男と化したティルトが横たわっていた…。
なお、彼は受けた誤爆は…トリーシャチョップにクレアトルネードキックとアルベルトの槍…更に…パティのフライパンに
メロディの引掻きとリサのナイフにセリーヌの突き飛ばし…止めは……マリアが彼目標に唱えた≪ティンクル・キュア≫の
暴走による大爆発であったという…。
≪Fin≫
[あとがき]
フィム「…やっぱり…こうなったか…」
パティ「…トラブルメーカー…多過ぎ…」
リサ「そーゆう、あんたもトラブルメーカーの一人だと自覚してるかい?」
パティ「うぐっ」
シーラ「…でも、誰か一人が騒動おこしちゃうと…どうして、みんな巻き込まれるのかしら?」
アレフ「まあ、少なくても作者の責任でないことは…確かだが…」
REIM「(私のせいにするつもりだったのか?)まあ、『類は友を呼ぶ』という諺がありますから…」
パティ&シーラ「納得出来なぁい〜っ!」
リサ「まあまあ…で、この話はどーゆう理由で書いたんだい?」
REIM「まあ…ふと思いついたから書いたんですけど…なにか?」
アレフ「…なるほど…な…でだ、覚悟は出来てるのか?」
REIM「え?」
ティルト「テメェェェーーーっ!!!(刀を振り下ろす…)」